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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第三章 <超級激突>

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第三話 マリー先生の新人講座 世情編

 □【聖騎士】レイ・スターリング


「え? レイさんって《聖別の銀光》を使えるんですか?」

「使えるけど?」


 サンドイッチを食べてから昨日の顛末をマリーとルークに話していると、マリーから疑問の声が返ってきた。

 ルークも話は聞いているのだろうが、元々少食らしいのに無理してサンドイッチを食べたせいかダウンしていて言葉がない。

 ネメシスとバビはまだ食べることに集中している。


 さて、話を戻そう。

 《聖別の銀光》についてだ。

 《聖別の銀光》はあの地下通路で、俺が子供達のアンデッドを荼毘に伏した際に修得したスキルだ。

 《聖別の銀光》は対アンデッドスキルであり、破格の性能を有している。

 昨日の戦いに勝てたのもこのスキルがあったことが大きい。

 なにせ、攻撃がスピリットにも有効な聖属性になった上で、アンデッドに対するダメージに十倍の補正がつく。

 そう、十倍だ。

 《復讐するは我にあり》のダメージは固定値なので影響を受けないが、通常攻撃だけでも十分すぎる。

 普段の俺の与ダメージが300~400とすれば3000~4000。

 HPだけで言えば三回程度で【デミドラグワーム】を削り殺せる。

 もっとも、実際の【デミドラグワーム】には高い防御力やダメージ減算スキルもあるのでそう上手くはいかない。こちらはむしろ固定値の《復讐するは我にあり》の方が効くタイプだ。


 しかしそんな《聖別の銀光》だが、【ゴゥズメイズ】は付与された攻撃を何回浴びても大して効いていなかった。

 コアに《デッドリー・ミキサー》二発分と諸々のダメージを倍加した《復讐するは我にあり》を叩き込み勝利はしたが……あいつのHPっていくつだったのだろう。

 毎回コアに必殺叩き込んで終わるとも限らないし、相手モンスターのHPを見られるようになるスキルがないものか。


 話を戻そう。

 《聖別の銀光》には対アンデッドダメージ十倍化の他に、アンデッドに負わせた傷の回復不可効果もある。

 【怨霊牛馬 ゴゥズメイズ】は傷ごと周辺組織を切除する荒業で回復していたが、それ以外のアンデッドはアンデッド特有のタフネスを発揮する間もなく消滅していった。

 昨日の戦いは本当に《聖別の銀光》がなければ危うかっただろう。

 《復讐するは我にあり》と《煉獄火炎》だけでは、【ゴゥズメイズ】戦以前に負けていたかもしれない。


「…………」


 と、何やらマリーの反応がおかしい。

 何やら心底驚いている様子だ。


「どうやって使えるようになったんですか? 《銀光》」

「【条件該当モンスター討伐数100体】、とかいうアナウンスは出てきたけど……」

「ちょっとカウント見せてもらってもいいですか?」

「カウント?」


 ……カウントって、何の?


「メニューウィンドウを出してください。ここです。戦歴画面の付記事項、種族別討伐カウントです」

「あ、これか」


 開いてみると、そこにはズラリと「アンデッド」、「魔獣」、「怪鳥」、「ドラゴン」、「悪魔」、「エレメンタル」、「鬼」、「人間」等々の表記と、それに並ぶように数字が書かれている。

 俺で一番多いのは「アンデッド」の158。次が「魔獣」や「鬼」だ。


「これって、これまでに倒した数の合計か?」

「はい。……条件は一定数討伐、でもこの数……少なすぎる」


 マリーは俺のカウントを覗きながらブツブツ呟いている。

 俺も改めてカウントに注視する。


「人間もあるんだな」


 俺のウィンドウに表示された「人間」のカウントは0だ。

 どうやら【大死霊】メイズは元々「人間」だが、「アンデッド」としてカウントされたらしい。


「「人間」って、どこまで?」

「ジョブにつけるのが「人間」だけなので、ジョブ持ちだったら「人間」です。専門用語で人間範疇生物とも言われますね」

「でも、俺が倒した【大死霊】の分がカウントされていないけど」

「ああ。【大死霊】はジョブ特性で種族が「アンデッド」になるって効果があるので、なった時点で「人間」から外れるんですよね。数少ない例外ケースです」

「へぇ」


 判別方法があったとしてもパッと見でわからなくてモンスターっぽい見た目の「人間」が襲われるケースありそうだけど、そのあたりは大丈夫なのだろうか。


「けど、モンスターの「アンデッド」とも違うところはありますよ。ほら、モンスターだと頭の上に名前表示されるじゃないですか。元「人間」の【大死霊】の場合は表示されませんから」


 あ、それがあったか。

 それなら事故が起きるケースは少なそうだ。


「しかし、「人間」を殺した数もカウントするのか」


 ちょっと……生々しいなこれ。

 殺人鬼のスコアボードみたいで。


「ここみたいな決闘都市にある結界内で倒した分も入るので、「人間」のカウントがあるときも殺しているとは限らないですけどね」

「そうなんだ」

「はい。ここの常連の方々なら数百人は殺していますねー」


 物騒な発言だ。


「あのー」


 と、ダウンしていたルークが頭を起こして会話に加わってきた。


「テイムモンスターの倒したカウントってどうなるのでしょう?」

「キャパシティの範疇で所有者の戦力にしているときは所有者のカウントに追加。キャパシティの範疇外でパーティメンバーの枠を使っている場合は、所有者ではなく各モンスターにカウントされますね。こちらはモンスターのステータス確認から見られますよ。あ、ガードナー等、<エンブリオ>が行った殺傷は自動で<マスター>のカウントに追加されます」

「なるほど。それでは【魅了】を掛けた相手が他の相手を殺傷した場合はどうなるのでしょう?」

「えーっと、【魅了】されている側にカウントされますね。【魅了】を掛けた人にはカウントされません。ちなみに【猛毒】等を掛けた後で戦闘を離脱、しばらくしてから状態異常を受けた相手が死んだ場合はカウントされます」


 “手を下したのが誰になるか”が重要であるらしい。

 モンスターはキャパシティ内であれば所有者の“戦力”として扱われカウントも所有者に。

 パーティ枠を使用していればモンスター自身のカウントに。

 状態異常でも【猛毒】のように直接的ならば自分自身に。

 【魅了】のように間接的ならば【魅了】された殺傷の実行者に。

 それぞれカウントされていく。


「じゃあ僕がレイさんのように一定数撃破の条件を満たすには、【魅了】やパーティ状態のマリリン、オードリーに頼らず、自分自身かキャパシティ内のリズで倒さないといけないわけですね」

「そうなるみたいだな……リズ?」


 その名前聞き覚えないのだけど……モンスター増えたのか?

 どこにいるのだろう、今は<ジュエル>の中か?


「不思議です」


 うんうん唸っていたマリーがそんなことを呟く。


「何が?」

「《聖別の銀光》、プレイヤーで持っている人は初めて見ました」

「……初めて?」

「スキルの存在自体はティアン、有名どころだと先代の騎士団長や今の副団長が使用しているから知られていましたけどねー。実際にプレイヤーで会得した事例は一つもないです。《グランドクロス》と並ぶ【聖騎士】の切り札で、強力な効果自体は情報としてありましたから、ゲットしようと躍起になった人も多かったのに」

「え? だって、アンデッド100体討伐だろ?」


 少なくともアナウンスではそう言っていた。

 それなら他の【聖騎士】だって簡単に修得できるはずだ。


「そうですね。ティアンからの聞き取りで、討伐数により開放されることは判明していました。けれど、アンデッドを五千体以上倒した熟練の【聖騎士】でも習得していませんでしたよ。下級職も含めてカンストしていたのに…………あれ?」


 マリーが何かに気づいたように顎に手を当てて首を傾げる。


「レイさん、【聖騎士】のレベルはいくつでしたっけ?」

「41だな」


 朝のテストが終わった時点で、また少し上がった。


「合計レベルは?」

「それも41だな」


 他のジョブついてないし。


「……多分それですね」


 それ?


「推測ですけど、習得条件の一定数討伐って同レベル帯のアンデッド討伐みたいですね。それも合計レベルの」

「同レベル帯……」


 そういえば、<適正合計レベル帯アンデッド>の条件がどうとかアナウンスでもあったな。


「恐らく下級や上級同様に50刻みでしょうから、合計レベルが50以下ならモンスターもレベル50までの下級モンスターが対象、51以上100以下ならモンスターも51以上100以下の上級モンスターが対象。そういうことでしょう」

「なるほど」


 それなら俺がすぐに修得できたのも納得だ。

 俺の合計レベルはまだ50にも達していないのだから。

 でもその条件なら達成できる人もいそうなものだ。

 【騎士】の後に【聖騎士】になって、レベル51以上のアンデッドを倒せばいいのだか……ら?


「……あれ?」


 何か物凄く引っかかるぞ。

 合計レベル51以上とはいえ、【聖騎士】のレベル低い状態で高レベルアンデッドとやれるのか?

 俺が【大死霊】と戦っているときに通路で出た【ハイエンド・スケルトン・ウォーリアー】が相当するだろうけど、あれ多分《銀光》とシルバーなかったら余裕で負けていたぞ。

 あったから粉砕してしまったけれど。


「これはひどい。《聖別の銀光》が欲しかったら、他のジョブを捨てろと言っているようなものです」

「そんなにひどいのか?」

「普通上級職になるには最低一つ、条件が難しければ二つ三つ下級職をカンストしないと成れませんからねー。【聖騎士】とか難しめの上級職の代表ですよ」

「……かもな」


 金銭だけでなく、亜竜クラス以上のボスモンスターに一定割合以上ダメージ与えるとかもあった。

 亜竜クラスは一体で下級職一パーティに相当すると聞いている。

 騎士団関係者の推薦とかもあるし、まともに転職条件をクリアしようとすれば下級職一つカンストしても足りないかもしれない。

 

「で、なったころには合計レベルが100を超えているので、《聖別の銀光》条件が厳しい……というか不可能です」

「レベル101以上のモンスターってどんなのだ」

「普通のモンスターはボスでも100までしかいません。それより上は<SUBM>ですが……これは置いときましょう。問題はそれによって実質条件の達成が不可能になっていることです」

「いや、それだとティアンが覚えるのも無理なのでは」

「ティアンの場合は、【聖騎士】になるのはほとんど偉い人のご子息、ご息女ですからねー。条件の内、寄付と信任は軽いものですし、残るボス討伐にしても色々サポートつけてもらえますから」

「……なるほど」


 レベルの高い者に盾役を務めてもらい、相手の妨害もして、支援魔法も受けて、長時間かけて倒す。それならばできそうだ。上手いことやると、【騎士】をカンストする前に【聖騎士】の条件クリアできそうだ。


「それだったらプレイヤーでも知り合いに支援してもらえば」

「プレイヤーの場合は騎士団重要人物からの信任貰うのが難しいんですよ。下手な人紹介すること避けていますし。それこそ本当に実績積んでからでないと紹介をしてもらえません」


 で、貰える頃には合計レベルが上がって詰んでいる、と。

 ……こうして考えると、綱渡りで【聖騎士】になって《銀光》修得できたんだな、俺。

 そりゃ、こんだけ条件厳しければ破格の性能になるわ。


「そんなわけで普通にやっていると修得できませんけど、この条件だと一つだけ簡単に取る手段があります」

「それは?」

「……【聖騎士】以外のジョブをリセットするんですよ」


 ジョブのリセット。

 ジョブ選びのときに兄も言っていた。

 合わないと思ったらジョブをリセットできる、と。

 なるほど、それならば簡単だ。

 【聖騎士】になってから【聖騎士】以外をリセットすれば、合計レベルは低くなる。

 あとは<墓標迷宮>の下級アンデッドを狩っているだけでも《銀光》を修得できる。

 ひょっとしたらそのために【聖騎士】は<墓標迷宮>へ自由に入れるのかもしれない。

 でもそのときは……。


「リセットしたジョブのステータスとスキル、無くすよな?」

「無くしますよ。……同系統の【騎士】を含めて」


 ……うわぁ。

 何と言うか、うわぁ。


「あとでwikiに情報投稿してみますけど実行する人がいるかは疑問ですねー」

「育ってからだとリスク高過ぎるものな」


 《銀光》はアンデッド相手だと無類の強さを発揮するが、それ以外の場面では特に意味がない。

 また、これは正しい情報ではあるが、正しくない情報だった場合は泣くしかない状況だ。

 そのリスクも考えると……実証する人は殆どいないだろうな。


 ◇


 余談だが、後にリリアーナにどうやって習得したのか聞いてみたら、「【聖騎士】以外のジョブをリセットして、《聖別の銀光》を会得してからまた【騎士】などのジョブを上げ直しました」、との回答を受けた。

 ……<マスター>以上に気軽にジョブのリセットはできないだろうに思い切り良すぎる。

 

 ◇


「それにしても、レイさんの道程は実に数奇ですね。ここまでの人は中々いませんよ。昨日も大変だったみたいですし」

「実際、今回も死ぬかと思った。<ノズ森林>でデスペナされたときより肝が冷えたよ」


 それでも<ノズ森林>のときのようにデスペナルティには成らずに済んだが。

 ……そういえば、<超級殺し>は【破壊王】から逃げた後はどうしているんだろうか。


「死ぬかと思った、ですか。レイさんはメイデンの<マスター>ですからね」

「ああ。……そういう風に言うってことはマリーも知っているんだな。メイデンの<マスター>は」

「“メイデンの<マスター>は此処をゲームだと思わない”、ですよね」


 やっぱり知っていたか。


「奇異に見えるだろうな。自分でも頭じゃゲームだと考えているんだが」


 心の方はそう感じていない。


「奇異って程じゃないですよ。<Infinite Dendrogram>を長期間プレイした人の中には多いですし」

「そうなのか?」


 多い、というほどいるとは思わなかった。


「ここはリアルにないものが多々ありますけど、五感はリアルそのものですからね。それにティアンの人々もいますから」


 たしかに、ここの感覚は痛覚を除けば現実と同じ。

 その痛覚だって自分でウィンドウから設定を変更すれば、現実同様に受けるようになる。

 それに、ティアンの人々の知性。

 長く接する内に、ここをゲームだと思わなくなる人は……いるのだろう。


「同様に、あくまでここをゲームだと考えている人もいます」

「それはもちろんいるだろうな」


 ゲームとして発売されたものなのだし。


「ティアンや街々、ひいてはこの<Infinite Dendrogram>に対するスタンスは個々人によって違いますが、ここがリアルとゲームのどちらであるかって前提を持つ人は多いです」

「前提、か」

「リアル前提を世界ワールド派、ゲーム前提を遊戯ゲーム派と呼ぶこともありますね。そして世界派からすれば遊戯派は人でなしに見えますし、遊戯派から見れば世界派は痛い奴です」


 なるほど。

 俺は……今はどちらの言っていることも理解できる。


「世界派と遊戯派みたいなのって他にもあるのか?」

「そうですね、どっちもあるかもって曖昧な人も沢山いますし……あとは<Infinite Dendrogram>に接している内にやめちゃう人が沢山いますね」


 やめる?


「ここが面倒になってしまってやめるんですよ」

「面倒……」

「リアルと寸分違わない人間との人付き合い、自分の身体を動かす感覚、その上での行動そのもの。それらが面倒になってしまうのですよねー。「こんなのはゲームじゃない」ってね」


 たしかに、そういう見方もできる。

 ここがゲームであろうと世界であろうと、画面越しにコントローラを動かすのとはまるで違うのだから。


「あるいは何か辛いことがあって、心に傷を負ったり、ね」

「…………」

「続けた人がやめるのはそんな理由ですが、すぐにやめる人もいますね。そういう人は最初の戦闘の後にやめちゃいます。完全なリアリティの中で他の生物と戦うのって怖いしストレスにもなりますからね。最初のチュートリアルで視覚をアニメやCGにしなかった人に多いです」

「……そうだな」


 最初の【デミドラグワーム】との戦いは恐ろしかった。

 何より、<超級殺し>には一度殺されている。

 食われる恐怖、殺される恐怖を実感すれば、<Infinite Dendrogram>から逃げ出しても不思議はない。

 逃げ出さなくても、いずれは辛い思いをしてやめてしまうこともある。

 それらの選択を経てここに残った者の中には、この<Infinite Dendrogram>とどのように接するかを考える者もいる、と。


「あの<超級殺し>は世界派と遊戯派の、どっちなのかな」


 ふと、俺を倒したあのPKは果たして<Infinite Dendrogram>をどちらだと考えているのかが気になった。


「……なんともわかりませんねー。わからない以上は中間とでも考えればいいのではないかと」

「……そうだな」


 あいつはわからないことだらけだ。

 俺を含めて<ノズ森林>の初心者を一掃した。

 そうかと思えば、【ガルドランダ】との戦いで窮地に陥っていた俺に助け舟を出した。

 行動理念が分からない。

 そして奴自身の姿も、あの靄に包まれて窺い知ることが出来ない。

 どんな奴なのか、背が高いのか低いのか、アバターの年嵩さえも分からない。


「…………」

「?」


 なぜかルークがマリーをジッと見ていた。

 お年頃の男子の熱が篭った視線かとも思ったが、ルークにそんな様子もない。

 どちらかと言えば、床の間でクロスワードパズルを解いていたときの兄と似たような眼差しだ。

 ……なぜかアラビア語だったな、あのクロスワード。


「そうそう、思い出しました。お二人に渡しておきますねー」


 マリーはそう言ってアイテムボックスからチケットを二枚取り出し、俺とルークに差し出した。

 チケットには<超級激突>という文字が少し派手に描かれ、その下には番号と日時が書かれている。

 日付は今日で時間は夜だ。


「これは?」

「ほら、【ガルドランダ】の賞金のプール分の使い道を任せて欲しいって言ったじゃないですか。それの結果ですね。今夜あの中央闘技場で開かれるイベントのボックス席チケットです」

「イベント?」


 そんなのあるのか。


「……あれ、ご存じない?」

「うん」


 ギデオンについてからこっち、色々あったからなぁ。

 言われて見ればこのチケットに描かれているタイトルと似た感じのチラシはあちこちに貼られていた気はするけど。


「そうですか。でもこれは見ていて損はないと思いますよ。なにせ<超級>同士の試合です」

「<超級>同士?」

「はい。<超級エンブリオ>の<マスター>が戦うことはこれまでにも何度かありましたが、公的試合では初めてのことです」

「試合は誰と誰が?」

「片方は当然ながら決闘都市の王者【超闘士】フィガロ。対戦相手は黄河の決闘ランキング二位【尸解仙】迅羽です」


 フィガロさんの試合か、それは是非見てみたい。

 そういえば色々あってまだ挨拶にもいっていなかった。

 ギデオンまでの道を封鎖していたPKを廃してもらった御礼もまだしていない。


「楽しみだ」

「それで、プール分の賞金はこれに大半を使ってしまったのですけど、大丈夫でした?」

「問題ない。きっとその価値はあるだろうからな」


 <超級>、トッププレイヤーの激突を見ることに損はない。

 見ただけで俺の実力の何が変わるわけでもないが、見なければ目安も分からない。

 この<Infinite Dendrogram>で俺達……<マスター>がどこまでできるか、その目安。


「僕もそれで構いません。僕としても対人戦の勉強はしたかったので」

「はーい。それじゃあお二人とも、チケットの時間には入場して下さいね」

「ああ」

「承知しました」


 そこで一旦解散。

 あとは各人自由行動の後に、イベントの入場時間に合わせて再集合だ。

 俺は冒険者ギルドの方へゴゥズメイズ山賊団討伐の報告に向かわないといけないしな。

 ルークはマリーに何かしら相談することがあるそうだ。

 何の話と聞いてみたが「秘密の相談です」とはぐらかされた。

 直前に耳打ちされたマリーがなぜか顔面硬直して「なんでばれてるんですか……」とか謎の言葉を呟いていたことに疑問は残るが、秘密なら仕方ない。

 

 余談だが、マリーが購入した大量のサンドイッチは九割方ネメシスの胃袋に収まった。

 ……明らかに一回の食事量が増えている。

 これが基準になると食費が圧迫されるな、と思いながら俺は冒険者ギルドに向かった。


 To be continued


次回の投稿は明日の21:00です。

なお、明日の夜は所用によりコメント返しができません。

翌朝以降にコメントを返させていただきます。

ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
これティアン、少なくともリリアーナは聖別の習得条件知ってるってこと? マスターは誰も聞かんかったんかな
[気になる点] この主人公めちゃくちゃあやふやなんだよな。 もうちょい自分で考えられる主人公なら良かったのに...
[一言] そういえばルーくん、親しい人の心を読めるんだった 超級殺しさん、乙…w
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