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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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第九十七話 クエスト×サブクエスト×イベントクエスト

(=ↀωↀ=)<うん


(=ↀωↀ=)<連続更新なんだ


(=ↀωↀ=)<まだの方は前話から


(=ↀωↀ=)<毎日更新じゃないけど連続更新は交えながら年内終了目途でエピソード進めます


(=ↀωↀ=)<先に言うと次回はクリスマスで連続更新


(=ↀωↀ=)<まだ書き終わってないので毎日更新より連続更新の方がやりやすい……

 ■とあるプレイヤーについて


 他の<マスター>と同様に、時が経つにつれて彼の<エンブリオ>も成長する。

 最初は出来損ないのデッサン人形のようだった姿は、進化を重ねて彼のアバターと同じ容姿となり、ジョブを含めた能力さえも同じになった。もはや彼の分身と言える存在だ。

 上級進化の頃には光による再生能力まで獲得し、【死兵】とのコンボで本人が『デンドロ()バグあったんですネ』と思うほどの不死身性を獲得。“常緑樹”のスプレンディダと呼ばれ始めた。

 できることが増えれば試したくもなり、彼は色々と無茶なクエストにも手を出しながらこの『ゲーム』を楽しんだ。


『ンフフフフ。ビルド考えるのも楽しいですねぇ。超級職も狙いたくなります』


 分身越しに、あえてリアリティの一部を排除して『ゲーム』を楽しむ彼。

 『ゲーム』というフィルターを通せば、ロールプレイにだって身が入った。

 気障で軟派な振る舞いをする一人称『ミー(・・)』など、リアルでやったら噴飯モノだ。

 『安全圏(ティル・ナ・ノーグ)は崩れない』などという決め台詞も『ゲーム』ならではのこと。


『誰が死んだら超級職ゲットできますかネ?』

 条件達成のためにあれこれと動くのも、『ゲーム』ゆえ。


 彼にとって、<Infinite Dendrogram>での生活は二重の意味でリスクがない。

 <エンブリオ>によって他の<マスター>よりも格段に安全性が担保されている。

 そもそも、<Infinite Dendrogram>でどうなろうとリアルの彼は痛くも痒くもない。

 だからこそ第三皇女……皇王の暗殺を手伝ったし、明らかに世界……全プレイヤーの敵になりそうな【水晶之調律者(クリス・フラグメント)】とも協力する。

 遊んで面白ければそれでいい。


 それがスプレンディダという<マスター>の本質。

 どこにでもいる『ゲームプレイヤー』である。


 ◆◆◆


 ■王国東・交易路


 チップを払って宿を後にしたスプレンディダは、宿場町の衛兵に見咎められないように町を出た。

 平原での竜車の高速移動時の速度を考えれば、あと四時間ほどで東の国境付近……<アジャニ伯爵領>に到達するだろう。

 彼が待ち伏せる予定の地点までは二時間といったところだ。

 分身を待ち伏せ場所に歩かせつつ、本人は影の異空間で装備を点検中だ。

 普段はいくら破壊されてもいい分身に高価な装備は持たせないが、今回はソロで実力者達と相対するので壊されたくない高級装備も使うことになるかもしれない。

 所持している妖刀の手入れを終えた後は、昨日も使用した【ディバイダー】の点検をする。


(今回も《冷たい方程式(ディバイダー)》を使えば問題なく隔離できるでしょうが……。一度しくじっていますし、あっちが対応してくる線もありうるんですよね。もうジュバ嬢もいませんし。まぁ、変化球&死球はできますが)


 手の内がバレた今は、【猛毒王】のスキルを隠す意味はない。

 隔離後に速攻で最終奥義《運命(デスティニー)》を使用。

 隔離空間内をレジスト不可能の【極毒】で完全汚染するという手である。

 難点は、ここで使うと十二時間は《運命》を撃てないこと。

 戦争の残り時間が約半分。まだ<超級>が多数残っていることを考えると、残り三、四発の切札を軽々には切れない。

 そして《冷たい方程式》も使いにくくなっている。

 ジュバがいないためMPの高速回復ができず、【猛毒王】として戦うならばMPは欠かせない。

 分身のHPをコストに使おうにも、既に光で回復する仕組みがバレているので制限される恐れはある。そしてSPではすぐに枯渇するだろう。


(まぁ、《運命》と《冷たい方程式》の使用は『本当にレイ・スターリングがいた場合』か『<超級>との交戦』に限りましょうか。他の戦力なら通常の奥義で何とかなるでしょう。……おや?)


 戦闘方針を定めながら分身を歩かせていると、進路上に奇妙な光景が見えた。


「うわぁぁぁああんっ!?」


 十歳未満だろう女の子が、泣きながら彼の方へと逃げてきている。

 その後ろには子供を追う(ゴブリン)系のモンスターの姿が見えた。


「…………」


 スプレンディダは内心で「これが罠ですか?」と思った。

 逃げている子供は<マスター>ではない。

 今、戦域である街の外に出られるのはランカーだけであり、ランカーやランカークランに属する<マスター>なら、あんな下級モンスターから泣いて逃げはしないだろう。

 必然、子供はティアンということになる。

 しかしそれはそれで、どうしてティアンの子供が戦時中なのに街の外へ出ているのかという問題になる。スプレンディダから見ても意味が分からない。

 そして追われる子供とモンスターを除けば、周囲で動くものはスプレンディダと風に揺れる草むらだけだ。


(まさかこの子供の死をミーのせいにするクソ戦術では?)


 無理筋だが、王国ではなくレジェンダリアならやりかねない手である。

 しかし戦時中に戦域にいるティアンは敵兵判定であり、殺しても問題ないと思い出した。

 だからと言ってわざわざ子供を殺す意味もない。ゲーム的には『無駄に功績点が下がりそう』な行為だ。

 無視もできないのでスプレンディダは仕方なく、


「《ポイズン・ミスト》」

 諸共に、ガスで眠らせた。


 自身の扱う任意の毒物から選択して霧状に噴射する【毒術師】のスキルだが、今回は眠り毒が選択されている。

 【猛毒王】の放つガス、凡百の存在が抗しえるモノではない。

 まして子供や、逃げる子供に追いつけもしない最下級モンスター(【リトル・ゴブリン】)ならば尚のこと。


「《ポイズン・バレット》をバーン」


 スプレンディダは眠る子供を拾い上げてから、寝ているモンスターに毒でトドメを刺す。

 毒を撃ち出す魔法だが、どうにもスプレンディダは動く目標に対して狙いが甘くなるので先に眠らせた形だ。

 流石に助けるために仕方なく眠らせる行動ならば、『危害』とは判定されないだろう。

 そも、最初に両者の動きを止めなければ誤射が怖い。


「うーん、しょぼい」


 モンスターから生じたドロップアイテムはちゃんと拾った。

 彼からすれば雀の涙だったがそれはそれ、これはこれだ。


「んー。で、この子供なんなんです?」


 拾い上げたとたんに隠れた者達が出てきて『誘拐の現行犯だ!』などと言われることもなく、本当にここにはスプレンディダと眠った子供しかいない。

 どこから来たのかも分からない。身に纏っているのは質の良い衣服だが、土埃と……微かに血で汚れている。

 それと、首からはなぜかアイテムボックスのついた首飾りを下げていた。


「……露骨に訳アリ」


 今から引き返して衛兵に預けるとしても、スプレンディダの立場では避けたい。

 なにせ今まさに戦争中である皇国所属の<超級>である。

 姿を変えるアイテムで対応しようにも、不審がられて時間を食う恐れはある。


「待ち伏せしたいのにタイムロスなんですよねぇ。殺すようなものでもなし。捨て置いても問題が起きそうな……」


 ジョブにもついていない子供。倒して経験値が入る訳でもなく、当然カルディナで指名手配される原因になった諸案件のように超級職でもない。

 ゆえに扱いに困りながら寝顔を見ていたのだが……。


【クエスト【迷子・亡命――ペネロペ・ボロゼル 難易度:六】が発生しました】

【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】


 ――イベント(自然発生)クエストのアナウンスを受けた。


「…………はぁ?」


 思わず、スプレンディダは本体と分身が揃って間の抜けた声を上げた。

 それもそうだろう。今のスプレンディダは皇国から戦争という巨大なクエストを請け負っている。

 システムを介してはいないが、クリス・フラグメントからも受注している。

 そこに重ねて、これだ。

 まさかのトリプルブッキングには「何これ?」と言いたくもなる。

 しかも【迷子】はともかく【亡命】などというクエスト内容も意味不明だ。


「えぇ……? これって何か変なイベント踏んだんですか? ちょっと、ミーはこれから大仕事があるんですけどネ?」


 『ゲーム』としてイベントはないよりあった方が良いが、重なりすぎれば消化が困難になる。それをよく知っているので、スプレンディダは嫌そうな顔をした。


「クエスト内容は……『ボロゼル侯爵家と縁のある皇国貴族家に連れて行く』ぅ? ボロゼル侯爵家って見覚えあるワードだけど、どこでしたっけ……?」


 ◆


 スプレンディダは流し読みした資料でしか知らないが、ボロゼル侯爵家は王国貴族だ。

 付け加えれば、ギデオン伯爵家の失点とするため秘密裏に第二王女暗殺を仕掛け、失敗。

 さらに報復として不正の証拠となる機密資料をマリー・アドラーに盗まれ、それを利用した告発で大きく地位を落とした家でもある。

 既に当主は獄中にあり、この戦争後には取り潰しもありうると言われている家。

 それゆえ、一族の主だった者は戦争のドサクサに紛れ、私財と王国の資料を持って他国に亡命せんと試み……折悪しく強力なモンスターと遭遇してしまった。

 家族と護衛はモンスターと戦いながら幼い子供――ペネロペ・ボロゼルを逃がし、子供の首には私財と資料を詰めたアイテムボックスを掛けた。

 結果、ペネロペ一人遺して全滅したのである。

 ペネロペは運良くその惨劇の場から逃げ出せたものの途中で【リトルゴブリン】と遭遇し、スプレンディダの見ていたような展開になった。


 要するに……それだけで凝った冒険譚の一つになりそうな物語の始まり(ハンドアウト)がスプレンディダの前に転がり込んだのである。


 ◆


「って今そんなことしてる暇ありませんヨ!?」


 『もっと暇なときに来てくださいよ! それならやるから!』とスプレンディダは憤慨した。

 面白さを求めるプレイヤーであるがゆえに、できるだけイベントは通りたいのである。

 しかし時と場合は考えなければならない。

 優先すべきことが何かくらいは彼も分かっている。


「……遺憾ですが、誰かに委託しましょう。事の顛末は後で教えて貰うとして……皇国行きでしょう? 機動力のある飛行系に頼んで……あー!?」


 独り言を呟いてから、皇国の飛行能力持ちが<ウェルキン・アライアンス>攻略に総動員されていることを思い出した。

 さらに言えば、一人を除いて全滅することになる。


「ンンンンン……。巻き込み警戒と面白さ優先でここの待ち伏せはミーだけ。王都周辺の残存戦力は他の三ルートに回しましたし……」


 スプレンディダは『クゥ……【獣王】と戦ったときより困ってますよ今』などと、他人が聞けば『何言ってんだお前』と言うに違いないことを宣った。


「こうなったら子供を連れたまま戦いましょう。《フェイタル・ミスト(奥義)》含めた広域の毒散布が制限されましたがまだ大丈夫。下手に遠くに置くとモンスターに襲われてクエスト失敗しますから分身からは離せません。ハイドラは子供の護衛とか死ぬほど向いてないでしょうしネ。……いっそ影の中(こっち)に入れて……いやいやダメダメ」


 独り言で状況の分析を行っていたスプレンディダの本体は、背もたれ代わりの木の幹に体重を掛けながら溜息を吐く。


「……しかしまぁ、これでもかってくらい余計な制限(・・)がついてきますネ……」


 まるで、『誰かがスプレンディダに枷をつけようとしている』ような嫌な気配を感じていた。

 しかし流石に考え過ぎなのだろう……とスプレンディダはもう一度溜息を吐いて気を取り直す。


「何かプラス要素もないですかネ?」


 そう呟いて、リンクした分身の視界を巡らせたとき……。


「あ」


 ふと、身近にあるとあるモノと……それが生み出す戦術に思い至った。

 ターゲットの性格を考えれば、確実に効く(・・・・・)だろう一手を。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<クエスト遂行中に全く筋の違う他クエストが生える


(=ↀωↀ=)<デンドロだとわりとよくある



〇超級職欲しい


(=ↀωↀ=)<蒼白登場時のスプレンディダがマニゴルドに言及されていたこと


(=ↀωↀ=)<超級職欲しさのティアン殺害


(=ↀωↀ=)<彼に限らず、多くの<マスター>(及びティアン)がやる


(=ↀωↀ=)<結局倒した超級職の条件はスプレンディダにマッチせず


(=ↀωↀ=)<無関係のところで死んだ【猛毒王】がマッチした


(=ↀωↀ=)<余談だけど天地でやってれば特に言及されなかった


(=ↀωↀ=)<あそこそういう場合の指名手配は形式が特殊だから



〇亡命


(=ↀωↀ=)<発生率の低いイベントクエスト


(=ↀωↀ=)<何らかの事情で国から逃げる高い地位のティアンを


(=ↀωↀ=)<亡命先の人間が助けると発生する

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― 新着の感想 ―
[一言] ターゲットに対してやろうとしてる事わかるけど、それ地雷だよ
[気になる点] デンドロを放置ゲームとして楽しむことに特化したエンブリオとかいそうですね…
[良い点] 更新ありがとう御座います! [一言] 最高
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