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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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閑話 ケイとI

(=ↀωↀ=)<遅れたけど本日二話更新


(=ↀωↀ=)<後編ではない


(=ↀωↀ=)<このパートだけはケイデンス退場した日に投稿したかったのだけど


(=ↀωↀ=)<書き終わってなかったので今まで書いてた


(=〇ω〇=)<この後はスパロボ30やるんだ……


( ꒪|勅|꒪)<発売日更新予定のResult後編書いとけヨ

 □リアル・米国某所


 その日、ケイ・ノーデンスは自分に宛がわれている部屋のベッドで目を覚ました。

 白い壁、白い天井、白い床……はカーペットで覆っている。

 『医療施設でもこの露骨な白さはちょっとアレじゃない?』と、思ったケイが自分で敷いたものだ。

 この部屋に踏み入る靴は全て内履きなので汚れもしない。

 と言うよりも、土のついた靴などこの施設に持ち込めば厳罰ものだ。


「……何で死んだのさ、僕」


 数秒で死ぬ予定ではあったが、予定より早い。

 しかも一瞬のことで何で死んだかも分からない。

 もしかすると収まったと思っていた空間の復元は収まってなどおらず、余震のように彼のアバター……ケイデンスを圧殺したのだろうか。


(それなら仕方ない。でも運が悪かったな。今日の使用時間がまだ残ってたのに時計がなくなってたし。……まぁ、元々あまり運が良くないのは自覚してるけどさ)


 ケイは溜息を吐いてベッドから起き上がり、デスクの端末を立ち上げる。

 メールで連絡を取っているクランの中枢メンバーに、『僕も死んだー。【獣王】出てきた』とメールを送る。

 ついでに『ねぇ、知ってるー? 【獣王】って空間破壊かましてくるよ』と腹癒せに敵の手札を映像込みでネットに拡散した。こんなとき――あるいはISBNへの土産――のためにケイデンスの装備の一つは自動の映像記録装置だ。

 そして『これはばら撒いていい情報』、とケイは判断したのである。

 もしも二日目の半ばも過ぎようかという時間にまだリアルで過ごす呑気な参加者がいれば、もしかすると三日目あたりで何か効果があるかもしれない。

 未来のことなど、もちろんケイにだって読めはしないが。


 気を取り直して、ケイは自室を出て目的の場所に向かう。

 そこに行くことに意味はないが、しかし気持ちの問題だ。

 途中、通路ですれ違った職員が、「主任、こんばんは」などと彼を見下ろし(・・・・)ながら挨拶してくるのに、「うん。こんばんはー」などと愛想よく返す。

 年齢と身長に対し、役職と能力が噛み合わないのだ。せめて外面くらいは合わせようとケイは心掛けている。

 カードキー認証式の扉を四つほど通り、最後にレベルA職員用の門をくぐって目的のブロックに辿り着く。

 そこにも職員がいて「主任、どうなさったんですか?」などと尋ねてきたので、「少し彼女の様子が気になって見に来ただけだよ」と答えた。

 そうしてさらに扉を潜り、ケイは無人……否、一人だけ住人がいる部屋に入り込む。

 この医療施設……医療研究センターの中で室温が比較的低く保たれた部屋の中でケイは歩を進めて、一つの装置の前に辿り着く。


「やぁ、I」


 まるで筒のような装置に、ケイは笑顔で呼び掛ける。

 無論、耳も目もない装置に呼び掛けたところで意味はない。

 装置の中の彼女(・・)――と定義する――に呼び掛けるならば、装置に付属の端末に文字を打ち込む必要がある。

 ともあれ、本当の意味で用件を済ませられるのはだいぶ先になってしまったが、自分の気持ちの整理のためにケイは彼女に呼び掛ける。


「ご希望通りの対戦相手だったけど負けちゃったよ。いやぁ、最強って怖いね」


 やはり端末に打ち込むではなく、声で話しかける。


「……折角、君に教えてもらって、僕も頑張って、手に入れたんだけど……何で負けちゃったんだろう」


 その理由は泣き事を言いたいが、聞かせたくはないという気持ちゆえ。

 端末に打ち込むと、ログに残って後で読まれてしまうかもしれないため、空気に消える言葉で伝えている。

 王様の耳はロバの耳でもないだろうが、似たようなものだ。


 しかしながら、前日まで打ち込んだログが読まれた形跡はない。

 それは当然だ。彼女はずっとあちらにいる。

 昔は端末を介して言葉を交わした友人であるが、今はあちらに引き籠っているのでログイン(・・・・)しなければ話せない。


 今でも少しだけ忌々しさを覚える。

 彼女とまた話すために、ケイは<Infinite Dendrogram>を始めたのだから。

 ケイにとって、友人を隠した天岩戸にも等しいゲームもどきを。


「でさー、折角隠してた僕とハスターの関係もバレちゃって……ていうか手札全公開で未だかつてないくらい後に響きそうで……いや本当に泣ける……」


 アポストルを代役に立ててたことまで、ガンドールにはバレた。

 今後情報が広まったら、契約のことについて王国からとやかく言われるかもしれない。

 そうなる前にログインして所属を移すべきかとケイは思案。『デスペナルティ明けで間に合うだろうか?』、『戦争後の混乱で後回しにされて欲しいな』と真剣に考える。


アポストル(ハスター)に影武者してもらうの、便利だったんだけどな)


 男性型のアポストルはレアなので、そういう意味でも疑われにくかった。

 <マスター>に求める傾向ゆえに、孵化しにくいのだ。

 アポストルは<Infinite Dendrogram>が嫌い、あるいは<Infinite Dendrogram>以外(・・)の目的を持って始めた者に孵化しやすいという。

 ならば自分はどちらかと考えて、『やや後者だろう』とケイは分析する。

 また、今なら嫌いでもなかった。彼女に関する事柄を除いた部分、趣味や嗜好の部分では、これ以上なくケイ……ケイデンスを表現できる場であったから。


 もっとも、当初の目的である彼女については悪化の一途を辿っている。

 なにせ、ログインしてから一度もログアウトしていない。

 しかもどういう訳か――いや、訳はケイも分かっているが――()の蒐集に勤しんで指名手配されている。

 このままではいけないと思ったときもあるが、どうにもできない。

 強制的に<Infinite Dendrogram>のハード――の用途を為すアタッチメント――を装置から分離して強制ログアウトさせたときは、きっともう友人とは見てもらえない。

 ならば内側から出せばどうかと考えたが、これも駄目だ。

 一度『力比べしようよ』と挑んだときは、<Infinite Dendrogram>内での自分の手札の確認という目的もあったが……『デスペナしたら出てきてくれないかな』という思いもないではなかった。

 結果は、惨敗だった。

 あるいは《終末時計》と【風狂魔】とハスターを組合わせた今ならばやれるかと考えて……手札の数を考えるとまだ何か対策されるだろうなと考えた。

 また、不意打ちで殺した場合も友人ではなくなってしまうだろう。


 そんな風に、止まらない彼女はエスカレートにエスカレートを重ね、最近は悪い友人も増えてしまった。

 ともあれ、そうした問題……蒐集とログイン継続と<デザイア>……以外は、そこまで悪くもない。

 それにかつてのように言葉を交わせないのは寂しいが、彼女にとってはずっとログインしていた方が幸せかもしれないことも理解している。

 ゆえに彼の望みは我儘であり、自分の悦楽の一つ――こちらで彼女と話すこと――だけを考えた独り善がりでもある。

 それを自覚しているし、対等な友人としての立場も失いたくないため、ケイは強硬な手は使わない。

 あるいは、こうして半端にブレーキを掛けるがゆえに自分は彼女の領域……<超級>に届かないのだろうとケイは自嘲する。


 それからしばらく装置の前で泣き事を言って、ケイは部屋を出ることにした。

 『デスペナ中に溜まってた仕事片づけよ』などと考えながら、部屋を振り返る。


「じゃあね、I。デスペナ明けたら会いに行くよ」


 そうして部屋の扉をロックして、自室に戻る。


 ◇◆


 彼が去った後には稼働中の筒のような装置が残された。

 『I』と刻印された装置の中には、一人の少女――と生物的には定義されるモノ――が入っている。

 四肢は並べる肩を含めて存在せず、人間が生きるのに必要な臓器もなく、人間が考えるのに必要な器官だけが溶液や機械と共に入っている。

 それは、<Infinite Dendrogram>の中で彼女が作るモノ(・・・・・・・)とよく似ていた。


 To be continued

〇ISBN


(=ↀωↀ=)<たまに忘れるかもしれませんが、リアルの時代は技術発展した二〇四五年です


(=ↀωↀ=)<そういうことです


(=ↀωↀ=)<ちなみに彼女にハード対応アタッチメント持ってきたのもルイス・キャロル

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― 新着の感想 ―
ミ=ゴにノーデンスにハスターに…クトゥルフ盛々だったな
[一言] 脳だけ少女と天才少年 デンドロの上位にいくほど現実での個性や肩書きが常人離れするのって何か理由あるのかな まあ、思想や価値観、自他に対する向き合い方が影響する世界観とシステムだから当然と言え…
[気になる点] あれ?脳だけで性別付けられるのか? それとも、他は切り捨てられたのかしら。
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