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第八十五話 第二陣

(=ↀωↀ=)<漫画版の掲載サイトが変わりました


https://firecross.jp/


(=ↀωↀ=)<見た感じ一巻分や最新二話は無料で読めて


(=ↀωↀ=)<それ以外の話はログインボーナスや動画公告で得るポイント消費制のようです


(=ↀωↀ=)<ポイントで読まれた分だけ作家陣にも還元されるらしいので


(=ↀωↀ=)<よろしければご利用ください


(=ↀωↀ=)<あと小説の書籍版も置いてありますので


(=ↀωↀ=)<月額コースの人がチケットとか余ってたら


(=ↀωↀ=)<デンドロだと12巻あたりがおススメです(書き下ろし【光王】パートなど)

 □■<ターミナル・クラウド>周辺空域


 <Infinite Dendrogram>において、広域殲滅型が機能しない場合の大人数集団戦闘は頻繁に攻守の逆転が発生する。

 必殺スキルや特典武具というオンリーワンの切り札が前提となる戦場。

 互いに切り札を使っても全滅に至らなければ、また別の切り札が発動する。

 <マスター>の数は切り札の数に等しく、戦局は揺れ動いて大勢が決するまで切り札の応酬が繰り返される。

 今回の空中戦はその典型例と言えるだろう。


 そして見えている戦力を評すれば、既に大勢は決している。


 ツィクロン達特別攻撃隊は、<ウェルキン・アライアンス>の戦術によって戦力の九割以上を損耗した。残存戦力は<ターミナル・クラウド>の周囲二キロにわたって展開されたガルグイユの滞空水域によって分断され、対空戦闘を得手とする<マスター>達に狩られていく。

 攻め入ったはずが、もはや罠に落ちた獲物も同然だった。


「このまま押し切れるか」


 七眼はそんなことを言いながら、上空を飛翔するレックレスシリーズを次々に撃ち落としている。

 【疾風弓手】の奥義、《オーバーテイク・ソニック》による超音速弓術。

 アメノカゴユミから放たれた矢は、航空戦力に追われて回避運動が限界に達したレックレスシリーズを正確に射貫いていた。


「オーナーは敵に後詰めがいると見ていますね。まぁ、それでも対応はできますが」


 フォールは自陣営が有利になった時点で、イカロスを一度格納した。

 それで<ウェルキン・アライアンス>の航空戦力が得ていたバフも消えたが、必要なことだ。

 敵の第二陣が本当に現れたとき、再びイカロスの必殺スキルで撃墜するため。

 必殺スキルはMPとSPの消費が大きいが、それも既に大半回復している。

 元より長時間の飛行が前提となる<ウェルキン・アライアンス>には、他者のMP・SPを回復させるための乗務員も複数在籍しているからだ。

 仮に今すぐ新たな敵が現れても、イカロスの必殺スキルは再発動可能である。


「オーナーとサブオーナーが戦うという話ですが、なに、二人が出るまでもありません。何が来ようと空の戦いならば……我々だけで対処可能ですよ」

「いやー、フォールさん。そういうのってフラグって言うんすよ。そんなこと言ってると、いきなりドカンとやられちまうっすよ?」


 ガルグイユの展開した滞空水域に雷属性魔法を撃ち込み続け、電撃の膜を維持しているスライドがそんな軽口を叩く。

 時折、七眼の狙撃でレックレスシリーズを失って落下した特別攻撃隊の<マスター>が落ち、感電死で消滅している。

 まだ低空にいる特別攻撃隊はこれを突破できないために滞空水域を大きく回り込むしかなく、結果として戦力の漸次投入を強制されている。

 フォールが落とし、七眼が確実に数を減らし、スライドが戦場を制限する。

 この三人がクラン全体のペースを作り、他のメンバーもそれに乗って優位に戦えている。

 まして、フォールと七眼は二重の結界に護られた<ターミナル・クラウド>の上にいる。

 この連携を崩すのは容易ではない。

 しかしそれでも、仮にそれ(・・)を実行するならば……。


 ――狙うのは当然、結界の外にいるスライドからである。


「……は?」


 スライドは驚きとも困惑ともつかない声を上げた。

 それは、たった今、目の前で……自らの駆るガルグイユの首が飛んだ(・・・・・)ため。

 着弾点から円形に骨肉が弾け飛び、翼は力を失くしている。

 それゆえ自然の成り行きとして、背に乗っていたスライドは……残った胴体と一緒に()へと墜ちる。


「いや、俺?」


 『フラグを立てたの自分じゃないよ?』と言いたげな顔で、ガルグイユの胴体とスライドは滞空水域へと落下し、自らが帯電させた水に触れて黒焦げになった。


「上空警戒!」


 七眼が咄嗟にメンバーに呼び掛ける。

 彼の目には見えていた。

 今しがたのガルグイユへの攻撃の痕跡が、首に対してほぼ真円であったことを。

 攻撃方向は真下か真上。滞空水域を考慮すれば、一方に絞られる。


『……ありゃ、思ったより遠いな』


 ケイデンスの呟きを『空耳』が伝えるのと同時に、<ターミナル・クラウド>の上方から数十の機影が急降下した。


 ◇◆◇


 □■<ターミナル・クラウド>周辺空域――上空


 ガルグイユが落ちる少し前。

 <ターミナル・クラウド>の遥か上空、高度一二〇〇〇メテル……純竜クラスの限界高度。


『――――』


 そこに在ったのは、翼の生えた巨大な銃だった。

 側面にはまるで戦闘機のノーズアートのように、『二本の脚で弓を構えた竜』の紋章コート・オブ・アームズが描かれている。

 翼はあれども空に在ること自体に違和感を抱く兵器の上部には、キャノピーに覆われた操縦席らしき空間が設えられている。

 操縦席にはパイロットらしき一人の男。

 オールバックの金髪と胸元を開けたライダージャケットという装いは、このファンタジーに属する世界にはそぐわない。

 むしろリアルで不良バイカーの集会所にいる方が似合う……そんな雰囲気の男だ。

 彼は水平なシートの上で横ばいになり、引鉄のついた操縦桿をライフルのように構えながら、操縦席上部から下りたスコープを覗き込んでいた。

 レティクル越しに見えているのは、一匹の竜とその<マスター>。


『情報収集は完了しましたか、ガンドール』


 機内に設置された通信機から女の……ホールハイムの声が伝わる。


「おぅ。見えとったで。知らんかった手札も仰山な。ツィクロンの旦那達もええ仕事してくれたわ」


 <Infinite Dendrogram>の自動翻訳により、聞く者の母国語の中でも独特のイントネーションを持つ地方の訛りに聞こえる言葉で、男――ガンドールはホールハイムに応える。

 彼が発したのは、自陣営の惨状を観戦していたことを示す言葉。

 しかし、それで良い。

 ツィクロン達は最初から相手の戦術を晒すための捨て駒。

 その役目は、既に果たされている。


『それでは、第二陣(・・・)。お願いいたします』

「任しとき」


 ガンドールはホールハイムとの通信が切れた後、別の通信機に呼び掛ける。


「聞ぃとったな? 見とったな? 第一陣が仕事果たしとんのや。俺らも気張らな立場があらへんわ。ちゃうか?」


 通信機からは数十人分はあろうかという思い思いの返答があった。

 同時に翼の羽ばたきやエンジン音、ホバリング音も聞こえてくる。

 それはいずれも、この周囲にのみ伝わる音。

 眼下――今や一方的な狩りが行われている一万メテル下方には届かない。

 彼ら(・・)と戦場の間には、この場にいるモノ達の数名で構築した幕がある。

 音を遮断し、光を欺瞞する。

 耳を澄ませても、目を凝らしても、<ウェルキン・アライアンス>には気づけなかった。

 ましてや、眼前の敵を狩るのに集中していたならば尚更に。


「準備はええみたいやな。ほんなら……予定通り俺が一番槍や」


 そうして彼はずっと覗き込んでいたスコープ越しのターゲット……ガルグイユに引鉄を引く。

 彼の指先に連動し、滞空する巨銃から眼下に向けて超々音速の弾丸が放たれる。

 遥か彼方で起こった殺気は感知できず、迫る危険を察知したときには回避できる距離ではない。

 結果、一万メテルの距離を数秒で駆け抜けた砲弾によってガルグイユは絶命し、死体は<マスター>ごと帯電した水域に墜ちた。

 相手はどう見ても【ブローチ】を装備していない……装備できないガーディアン。

 撃って、当たれば、それで死ぬ。狙いやすいターゲットだったと言える。


「我ながら、ビューティフォーって奴や」


 狙撃を果たした彼は、ニヤリと口角を上げながら冗談めかして自賛した。

 スコープから目を離し、狙撃の前に懐へ仕舞っていたサングラスをかけ直す。


「ようやったな、相棒」


 ガンドールはそう言って、自らの跨るシートを撫でる。

 ソレに反応するようにシートは震える。

 操縦席前部のスロットからは『弓』のマークのカードが排出され、塵になって消えていった。


『――Coooooooo――』

 直後、唸り声のような排気音が空に流れた。


 それは忠実なる騎獣の咆哮。

 機械と獣の狭間の如き声であり――姿も正しくその通り。

 翼の生えた銃という異形が、その姿を本来のものへと帰していく。

 銃口を覆うように上下から顎が閉じ、銃身は曲がって『首』となる。

 戦闘機の如き胴体から左右に伸びていたスタビライザーは骨と皮膜を模した鋼の翼に、空中では無意味なバイポットだったパーツは爪腕(ランディングギア)に。

 伸びた尾には方向舵(ラダー)付きの垂直尾翼と昇降舵(エレベーター)付きの水平安定板。

 紋章も描き換わり、『弓を構えた竜』から『翼を畳んだ竜』となる。


 変貌を遂げ、竜と銃器と戦闘機を混ぜた自然界ではありえない機影がこの空に在った。


 操縦席もまた狙撃態勢から変形し、<マジンギア>の操縦席にも似たシート配置……デフォルトの操縦席となっている。

 一仕事終えたガンドールもシートに背を預け、息を吐く。


「ふぅ。っと、血の気が多い連中やなぁ」


 変形の間に、周囲からは彼ら以外の機影が消えていた。

 彼の狙撃を号砲として、既に動き出したのだ。


 数十の飛翔物体――特別攻撃隊第二陣は眼下の戦場へと急降下奇襲を敢行している。


 その速度は、レックレスシリーズやスーサイドシリーズの比ではない。

 彼らはいずれも上級の<エンブリオ>。

 第二陣は飛行能力を有する<エンブリオ>と<マスター>のみで構成されている。

 第一陣より少数なれど、より強力な航空戦力。

 その戦力を、第一陣で敵の手の内を詳らかにした上で投入する。

 特別攻撃隊が予定していた通りの戦術だった。


「言うてもまぁ、俺もヒトのことは言えへんけど……アカンな」


 ガンドールはキャノピーの外に視線を送る。

 外気に触れてすらいない彼だが、しかし――微かな変化と薄ら寒さを感じていた。

 即座に自らの左手の甲の紋章から白紙のカードを取り出し、スロットに差し込む。


「――《象るは戦の栄光(ワイバーン)迅翼紋章(フライング)》!」


 ガンドールの宣言に応え、彼の愛機――ワイバーンは更なる変貌を遂げる。

 体を畳み、首を竦め、空気抵抗を抑え、より高速で飛翔するための形態への移行。

 機体側面の紋章も、『翼を大きく広げた竜』へと描き換わっている。

 翼の生えた銃、機械仕掛けの竜に次ぐ第三の姿は――完全な戦闘機。

 操縦席も戦闘機のそれに変形し、ガンドールは両手で操縦桿を握る。

 そのまま、機首を下げ仲間達と同様に眼下の戦場へと急降下を実行。

 瞬時に最高速度に達し、音速の数倍で天より墜ちていく。


 ――直後、彼らのいた高度に風の大渦が発生した。


 それは【嵐王(ケイデンス)】の奥義魔法、《大嵐(テンペスト)》。

 暴風によって周囲の物体を吸い寄せ、巻き込み、破砕する実体なき巨大粉砕機。

 ガンドールの狙撃から実時間で十数秒。

 たったそれだけの時間で一〇〇〇〇メテル上空を発動点に設定し、半径二〇〇〇メテルを呑み込む大魔法が放たれている。

 最初から第一陣ではなく、第二陣が来ると読んで時間を掛けて魔法を準備していたのだろう。

 己のクランのメンバーなら二〇〇〇体超の戦力を揃えた第一陣でも苦も無く倒せると確信し、後発に備えていたのだ。


「おっかない奴っちゃなあ!?」


 牙持つ嵐は音速の数倍で降下するガンドールとワイバーンを捉えることはなかった。

 しかし速度で劣り、ワイバーンに追い越された十数体の<エンブリオ>を呑み込み、バラバラに粉砕している。

 あるいは、此処が第二陣にとって最大の綱渡りだっただろう。

 もしも狙撃時の距離が近ければ、狙撃後の第二陣の動き出しが遅ければ、多重隠蔽が見破られていれば、それで第二陣は全て空の藻屑(・・・・)と化していた。

 ワイバーンが飛行能力と一万メテル超の狙撃能力を兼ね備えていなければ、この反撃で全滅する恐れもあったのだ。


「なンで空気薄いとこであんなん出せんねん!」


 風属性魔法……空気の動きを操る魔法の効果を下げるため、第二陣は空気の薄い高々度で控えていた。

 <ターミナル・クラウド>が高度二〇〇〇という比較的低い高度にあるのも、ケイデンスの魔法の効果を維持するためだと推察されていたからだ。

 だが、現実は発動までの時間が多少伸びた程度であり、被害は減らせたがゼロではない。


「せやけど……越えたで!」


 破壊の嵐と仲間達の残骸を背にして、ワイバーンは<ターミナル・クラウド>の高度へと到達。第一陣の残存戦力と<ウェルキン・アライアンス>が争う戦場の真っ只中に、戦闘機竜が舞い降りる。


「野郎っ!」


 第二陣で真っ先に戦場に到達したワイバーン目掛け、七眼がアメノカゴユミの矢を放たんとし……。


「――それはもう分かっとる」


 ガンドールの駆るワイバーンは、そのまま真っすぐに降下を続けた。

 結界に覆われた<ターミナル・クラウド>を横目に通り過ぎ、さらに三〇〇メテル低い高度で機首を起こし、水平飛行に移る。


「……ッ」


 その機首を起こす瞬間、狙撃の狙い目を……七眼は見過ごした。


(やっぱそうかいな)


 弓を射かけられなかったことは、ガンドールにとっては予想の範疇だった。


(さっきから近い奴や狙いやすい奴やのうて『上』にいるモンを優先して撃っとる。あの水が消えた後もや。せやからあれ、『自分より高度の高いモン』にしか撃てへんのやろ)


 【上射下奪 アメノカゴユミ】。

 モチーフとしたのは日本神話に登場する天若日子(あめのわかひこ)が所有していた天鹿児弓である。

 彼はその弓矢で天の遣いの鳥を射殺したが、矢は天上の高天原にまで届いた。

 高天原の神は「天若日子に邪心があるならばこの矢に当たるように」と誓いを込めて矢を地上へと投げ落とし、結果として天若日子は死に至った。

 アメノカゴユミがこの逸話をモチーフとして得たのは、『神の遣いをも射殺す弓矢であるが、下へと放たれるときは持ち主の命を奪う』という性質。

 ゆえに、アメノカゴユミより放たれた矢が七眼より高度の低い相手を打った場合……そのダメージは全て七眼自身に返る(・・・・・・・)

 その莫大なリスクゆえの、破格の飛行生物特効である。

 ガルグイユの滞空水域は敵を上方に限定し、七眼の射撃を助けるものでもあったのだ。


 無論、ガンドールらはそんな情報を事前には知らなかった。

 しかし、第一陣を犠牲にした情報収集の結果で推察はできた。

 アメノカゴユミの名もモチーフも知らずとも、行動を分析して弱点を読んでみせたのだ。

 ワイバーン以外も、可能な者は<ターミナル・クラウド>より低い高度を飛びはじめる。


「《翼は飛翔の()資格に非ず()天への畏敬()が資格なり()》!」


 迫る第二陣に対し、フォールが二度目の必殺スキルを発動する。

 初見殺しとして第一陣を壊滅に追いやった太陽(イカロス)の輝き。

 第一陣の残存戦力は先刻味わった衝撃から身構えるが、


「それも、もう見とる」


 ガンドール率いる第二陣に動揺はなかった。

 第一陣の被害の差や、太陽(イカロス)の出現後に離陸した<ウェルキン・アライアンス>の航空戦力。

 それらを真上から俯瞰していたガンドール達は、近づく行為や発動時点の距離がキーとなることを既に把握していた。

 それゆえ、ワイバーンのようにイカロスの必殺スキルが発動した時点で既に距離が近かった者達は構わず縦横無尽に飛び回り、<ウェルキン・アライアンス>の戦力を攻撃する。

 対して、発動時点で距離が遠かった者達は直線距離を維持しながら、あるいはその場から(・・・・・)攻撃を行った。

 彼らがいるのは<ターミナル・クラウド>より上方。

 ゆえに攻撃を真下に撃ち下ろせばそれは結界に覆われた<ターミナル・クラウド>という巨大な的へと届き、結界を損耗させる。

 水平位置にいた第一陣と違い、彼らの攻撃は三〇〇〇メテルの距離があっても然程のロスはない。

 上空からの攻撃を止めるために、<ウェルキン・アライアンス>のメンバーが迎撃に向かうが……それもまた第二陣にとっては問題ではない。


(初見殺しも初見やなければ何とかなる。第一陣には感謝やな)


 第一陣が犠牲となったからこそ、彼らを壊滅に追いやった三者の手の内は暴かれた。

 結界を破壊すれば、フォールや七眼を直接攻撃することもできる。

 敵味方が入り乱れはじめた状況では、ケイデンスも軽々に大魔法を放てない。

 ゆえに、残る問題は……。



「――トッカーン(吶喊)!」

 ――群れを成す五〇〇〇羽の影鳥(・・・・・・・・)



 それは雀ほどの大きさの黒い、何もかもが黒い小鳥。

 しかし飛行速度は亜音速に近く、AGIにして五〇〇〇に相当。

 そんなアンバランスな黒い鳥達が飛べば、空に暗幕が掛かったかのよう。

 そうしてその暗幕……影鳥の群れは第二陣へと襲い掛かる。

 迫る影鳥を超音速飛行で振り切る者もいれば、留まって火力で薙ぎ払う者もいる。

 影鳥はいずれも脆く、下級魔法未満の威力でも被弾すれば散る。

 しかし数は多く、何より減らない(・・・・)

 続々と、続々と、湧いて出ては敵に向かって直進する。

 そして火力の途切れた第二陣の<エンブリオ>に一羽の影鳥が接触し、


 触れた部分からごっそりと――<エンブリオ>の身体を消滅(・・)させた。


「ッ!」


 固定ダメージ攻撃を目にしたことがある者は、影鳥の突撃もその類だとすぐに察するだろう。

 特別攻撃隊にとっても中核メンバー三者と違い事前に情報を得ていた現象。

 だが、知っていても簡単に対応できるものではない。

 あまりにも、数が多すぎる。


(これが俺と同じ……<エンブリオ>と超級職、完全シナジー型(・・・・・・・)の……!)

「こんにちは! 今日はいい天気ですね!」


 ガンドールを含めた第二陣の戦慄に対し、場違いなほど陽気な声が戦場に響いた。

 拡声器も何も使っていない肉声だというのに、この空にはよく響いた。


「私達も皇国の皆さんも、どっちも頑張って戦いましょう!」


 声の主は南米の民族衣装のような服装の女だった。

 しかしその女の奇異な点は、服装ではない。


 女は雲の上に立っている。

 <ターミナル・クラウド>ではなく、固定化もされていない雲の上に。


「私とペリュトン、それに小鳥ちゃんたちも頑張りますので!」


 否、それは違う。

 女は雲の上に立っているのではない。

 雲の中に身を潜めていた……巨大な怪物の頭の上に立っている。


『…………』


 怪物が首を起こす。

 雲より突き出たのは鹿の如き二本の角であり、頭部もまた鹿のそれ。

 だが、翼を持つそれは、間違いなく怪鳥であった。

 鹿角の怪鳥が雲海から浮上し、雲間に映るその影からは――撃ち落とされたものや特攻したものと同じ数だけ、影鳥が湧いて出ていた。

 女の陽気さに比例するように、色濃く浮き出る影鳥の群れ。

 その数、常に五〇〇〇羽。

 固定ダメージ砲弾に等しい亜音速飛翔体が――五〇〇〇羽である。


「私は【飛将軍(スカイ・ジェネラル)】リーフ! 対戦よろしくお願いします!」

「さよかい……。俺はガンドール」


 聞こえてしまった場違いな自己紹介。

 しかし、聞こえたからこそ彼も名乗りを返す。


「――【竜征騎兵(マスター・ドラグナー)】ガンドールや」

 ――鳥を駆る者の頂点に対し、竜を駆る者の頂点の名を。


 怪鳥系将軍職【飛将軍】、影鳥の長【形影葬鳥 ペリュトン】。

 竜騎兵系統超級職【竜征騎兵】、可変戦闘機竜【竜紋機 ワイバーン】。


 大空戦の最中、準<超級>同士の激突が始まった。


 To be continued

〇【飛将軍(スカイ・ジェネラル)


(=ↀωↀ=)<フライ・ジェネラルやウィング・ジェネラルと最後まで迷った


(=ↀωↀ=)<ちなみに彼女はジョブが<エンブリオ>でバグったパターンではなく


(=ↀωↀ=)<<エンブリオ>がジョブでバグったパターン



〇【竜征騎兵(マスター・ドラグナー)


(=ↀωↀ=)<この話が難産だった最大の理由。竜騎兵系統超級職名称


(=ↀωↀ=)<代表的な没名称の流れは次の通りです


・【大竜騎兵】(グレイト・ドラグナー)

仮の名称。命名規則的には妥当だがイマイチかっこよくないので没。


・【竜騎王】、【騎竜王】(キング・オブ・ドラグナー)

主体が人間から外れて竜王の一種っぽくなったので没。


・【神竜騎兵】、【竜神騎】(ゴッド・ドラグーン)

「竜+神は竜神装あるから軽々に使えないんだよ!」で没。


・【竜騎兵総長】(ドラグナー・ヘッド)

軍団系とか部隊指揮系になりそうな名前なので没。


・【竜巻】(ワールウィンド)

絶影みたいに系統の名称からちょっとズレた奴でいこう。嵐王vs竜巻は中々味がある。

けどドラゴン要素が漢字一字まで薄くなったので没。ていうか海外翻訳されたときに困る。


・【竜英傑】、【竜公】

mtgから持ってこようとしたけど竜騎兵からズレてる気がしたので没。


・【竜星】

流星とかけてる。でもジョブに星が関係ないし遊戯王とモロ被りだよ没。

……遊戯王?

そういえば遊戯王には他にも「竜」の字が入ったクソ強テーマいたな……。


(=ↀωↀ=)<という流れで征竜から着想して【竜征騎兵】になりました


(=ↀωↀ=)<竜を征する騎兵で意味通るし字面もカッコいい


(=ↀωↀ=)<ここまで考えてようやく枕を高くして眠れた作者です


( ꒪|勅|꒪)<何でそんな拘ったんだヨ


(=ↀωↀ=)<可変戦闘機竜なんてカッコイイの塊に乗ってるのに超級職の名称で手は抜けなかった


(=ↀωↀ=)<ちなみにここで出さなかった没名の一つが竜騎士系統の超級職名になりましたが追々



〇ガンドール


(=ↀωↀ=)<関西弁ですが一人称はワイではなく俺です


( ̄(エ) ̄)<これがワイのワイルドワイバーンや!


( ꒪|勅|꒪)<どこからワイルド出てきタ


(=ↀωↀ=)<あと関西弁だけど日本人ではないです


(=ↀωↀ=)<外国のイントネーション強い地域の言葉が関西弁に翻訳されているのです

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[良い点] ワイルドワイバーンの使い手... 一体どんなブレーダーなんだ()
[良い点] 関西弁ではないけどそれに相当する外国語訛りとして関西弁を外人に喋らせるっていいですね
[気になる点] ペリュトンってガーディアンなのかな でも影鳥が【飛将軍】の強化範疇ってことはレギオン? それとも同種複合型か
2021/09/16 18:34 退会済み
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