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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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第七十一話 運命

(=ↀωↀ=)<アニメ化から始まり、コロナにも影響された波乱の二〇二〇年


(=ↀωↀ=)<……いや、ほんと色々ありました


(=ↀωↀ=)<そんな今年もいよいよ終わりますが


(=ↀωↀ=)<来年もWEBと商業両面で<Infinite Dendrogram>の執筆を頑張ります


(=ↀωↀ=)<来年の目標は戦争を2.5日目まで終わらせることです


( ꒪|勅|꒪)(2.5日目ってなんだヨ……)


(=ↀωↀ=)<来年は一年みっちりデンドロ書きつつ


(=ↀωↀ=)<再来年用に新作準備する年になると思います


(=ↀωↀ=)<ロボメインを書きたい作者


(=ↀωↀ=)<「ロボ物は基本的に売れないよ」と忠告をくれた担当さんと弟


(=ↀωↀ=)<はたしてどんな作品が出来上がるのかは再来年をお楽しみにね!


( ꒪|勅|꒪)<……再来年とか、鬼が笑うどころじゃねーゾ

 □【聖騎士】レイ・スターリング


 俺の眼前で、機械の蠍が消えていく。

 操っていた【流姫】のデスペナルティに伴って特殊装備品である機体も消え、あとには【流姫】のランダムドロップらしき機械部品が幾つか落ちていく。

 頭上からは太陽も消えて、周囲が暗闇に包まれる。

 そうした幾つもの変化が……戦闘の決着を告げていた。


「終わっ……た」

『今朝の戦いに続き、ボロボロだのぅ……』


 今の防御に残った体力を使い切って膝をつく。

 イゴーロナク戦、夢の中での試練ラッシュ、そして目覚めてのこれ。

 ……一日目から地獄みたいな状況だった。


「けど、助かったよ。……ありがとな、ネメシス。それに、おかえり」

『うむ! ただいまだ!』


 ネメシスがルーク達と一緒にイゴーロナクの追撃に出たことは、先輩から聞いている。

 ネメシスが健在であることは分かっていたので安心もあったが、『無茶をする』とも思っていた。……俺が言えた義理でもないけど。


『向こうでの話は、此処を出てからルークも交えてするとしよう。それより、本当に大丈夫か? 全身がこんがりだぞ?』

「……痛覚はないけど、全身に変な感触がある」


 本当に、ローストビーフにでもなった気分だ。

 ……チビガルを出してたら食われそうだな。


 現在のHPは一割あるかないか。黒円盾(ネメシス)がいなければ、確実に死んでいただろう。

 それと、【VDA】の耐性も作用していた。

 あれには斧の試練でも助けられた。今後もあの試練を受けるならば、特典武具の代わりになる高品質の生産装備をフルセット揃えることも考えよう。

 ……しかし、やっぱりネメシスと斧以外の武器も要るよな。


『……御主、今、さらっと浮気を考えなかったか?』

「……浮気になるのか?」


 そんなやりとりをしていると、


「だ、大丈夫ですか!?」


 誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。

 体を捻って振り向こうとするが、上手く動かない。

 やはり、荷電粒子砲のダメージが大きいようだ。


「ポーションです!」


 そうして振り向けないまま、近づいてきた人にHP回復のポーションを振りかけられる。

 ようやく体が動いたので振り返ってみれば、それは<墓標迷宮>でも見た<AETL連合>の支援職の人だ。灯りを持っていたので、顔も確認できた。


「あ、どうも。ありがとうございます」

「こちらこそすみません、MPが切れているので今はアイテムだけで……あ、これ飲み薬です」


 そうして差し出されたポーションを飲みながら、話を聞く。

 何でも、<マスター>で生き残っている人は、この人を合わせて六人いるそうだ。

 いずれも後衛や支援職。……前衛はあの蠍との戦いで全滅したらしい。

 ただ、生き残った人たちも全員MPが尽きている。

 あの【流姫】の広域MPドレインの影響は大きいようだ。

 パーティの簡易ステータスウィンドウを見ると【撃鉄鎧】の効果で回復した先輩のMPも今はあまり残っていない。……あ。


「先輩は……」

「はい。私も無事です」


 蠍の鋏に捕まってから姿の見えなかった先輩を捜すと、すぐに返事があった。

 先輩も灯りを持ってこちらに近づいてきており、特に外傷もなく元気そうだ。


「もちろん、私も無事ですよ。レイ・スターリング」

「…………知ってた」


 俺と先輩、王国勢の生存者六人が集まっていると、上空から……魚みたいなモンスターに乗った【光王】も降りてきた。

 周囲にはゾディアックが浮かび、それぞれが灯りとして周囲を照らしている。

 魚が消えて、【光王】も地面に降りた。


「…………」


 周囲のゾディアックの位置に注意しつつ、黒円盾を掲げておく。


「そんなに露骨に警戒しなくてもいいでしょう?」

『それは以前の行いを振り返ってから言うのだな』


 こいつはフランクリンと似たタイプであり、目的のためには手段を選ばない。

 その上で、興味や好奇心で状況を引っ掻き回すタイプだ。

 今回、俺達の味方として動いてくれたとはいえ、次回以降もそうである保証はない。


「心配せずとも、もう私のストックも底を尽きかけですよ。ご存知でしょう? 私も君と同じで事前にストックを溜め込んで戦うタイプなので。そもそも今回は敵対の意思もありません」

「…………」


 嘘はなさそうだと感じた。

 しかし、こっちは【光王】よりも余力がないので背中を刺されるとまずいか……気をつけよう。


「さて、君があのバリアを破ってくれたお陰で、【流姫】ジュバを倒せました」

「あんたがチャージしたんだろ」

「ええ。バリアを破る、一種の攻城兵器としての役割を期待していましたから。いえ、レーザー(光条)兵器と言うべきですか」

「今なんて」

「何でもありません。さて、残る問題は……あれです」


 そう言って【光王】が指差したのは、灯りに照らされてもなお暗黒に包まれた空間。

 皇国の<超級>、スプレンディダを封じた一角だった。


「【流姫】ジュバを倒しても、この空間から解放されません。となると、なぜかまだ生きているスプレンディダを殺すか、三名の生存者を選ぶ必要があります」

「それ、選ぶ意味あるか?」


 仮にスプレンディダを倒しても解放されないとしても、まずは撃破を試みるべきだ。

 それで解放されなければ……後者を選ぶしかないのだろうが。


「ですが、スプレンディダは回復源である光を遮断しても生命を維持しています。これをこの場に生き残った面々だけでどうやって倒せばいいのか、私にも見当がつきません」

『ビースリーは?』

「……一応、他の生存者の<エンブリオ>の特性も聞きましたが、スプレンディダに有効そうなものはありませんでした」

「そうですか……」


 <エンブリオ>には相性がある。

 俺と先輩、【光王】。それと生き残りの六人。

 合わせて九人いても、スプレンディダに相性のいい<エンブリオ>はいなかった。

 いや、封じられるだけ【光王】のゾディアックは相性が良いのかもしれないが。


「ただ……この場にいない人間であれば、あるいはと思える人物もいます」

「?」

「それについては、後ほど。今使える手段ではありませんから」


 さて、【光王】と先輩には当てがないらしいが、俺はといえば……あることはある。

 それは斧の使用。

 制御権を1%獲得したので、望む威力と属性の攻撃を1%の確率で放てる。あるいは属性の中にはスプレンディダの再生力を無効化する攻撃もあるかもしれない。

 が、99%の確率で失敗する上に、反動で俺が死ぬ。

 ここで俺が落ちた場合、この戦いは何だったのかという話にもなる。

 だから結局、俺にも打つ手はない。


「……とりあえず光を遮断したまま痛めつけましょうか。重力で圧縮して……」


 先輩が怖いことを言い始めたが、ひとまず【光王】に聞くべきことを聞く。


「なぁ、スプレンディダって、俺と同じ【死兵】持ちだよな?」

「そのはずですよ。致死ダメージを受けてから十分以上経過していますが」

「そうか……」


 回復できないままそれだけの時間放置されれば、【死兵】でも死ぬ。

 だが、ふと思い出した者がある。

 死ぬはずの者が死なない現象を、俺はつい先日“トーナメント”で見た。


 それはアルベルトさん。HP1で耐える【殿兵】を一種のブラフとして、本当はHP1のコアが本体から分離していた。

 あるいはスプレンディダもそのパターンではと考えたが……。


「ああ。コアが別にある可能性は低いですよ。スプレンディダは以前にこの空間で【獣王】と戦っていますから、【殲滅王】のようにコアが別にあるなら攻撃に巻き込まれるはずです」


 俺の考えを読んだように説明した【光王】によって否定される。

 【獣王】の<超級エンブリオ>は一〇〇メートル級の大怪獣。

 この空間は半径二〇〇メートルの半球……駆け回り、飛び回って蹂躙するのも容易な範囲だろう。


「私も時間はありましたからこの空間全体を探りました。コアは見つかりませんでしたね」

「そっか……」


 そうなると、あいつはどういう仕組みで死を回避しているんだ……?

 どれだけ傷つけても光さえあれば回復し、跡形もなく消し飛ばしても、HPをゼロにしても蘇ってくる。《ラスト・コマンド》の期限を過ぎても死なない。コアさえもない。

 それこそ、不死身としか言いようがない。

 そんな相手は……。


「…………?」


 いや、まだ何か引っかかるものがある。

 やっぱり既視感だ。けれど、アルベルトさんじゃない。

 似たような存在をどこかで……。


「!」


 俺が新たに湧き出た考えをまとめようとしたときだった。

 不意に、俺達の身体が大きく揺れた。

 地震を連想したが、地面ではなく……空間の空気さえも揺れているようだった。

 そう、急にこの空間そのものが大きく揺れて……俺達は……。


 ◇


 俺達は聖堂の中にいた。


 俺も何度か来たことのある、王都の教会の聖堂。

 スプレンディダが結界を発動して周囲の<マスター>を閉じ込めたという切っ掛けの場所に、俺達は揃って戻ってきていたのだ。


「!」


 咄嗟にゾディアックに囲まれたスプレンディダに注意を向けるが、そちらは今も暗闇に包まれまままだ。

 てっきり、こいつが何かしたのかと思ったが……そうではないらしい。

 ……ついでに、【光王】にも怪しい動きはなかった。わざわざ暗闇を指差して、監視は問題ないという風に頷いている。

 何でいきなり解除されたんだ……?


「レイさん?」


 俺が疑問を感じていると、不思議そうな声がかけられる。

 声の方を見れば、珍しくとても驚いた表情で俺を見るルークの姿があった。


「ああ、ルーク。……その、ただいま?」


 なぜ元の場所に戻って来れたのか分からないまま、俺は曖昧に笑って軽く手を挙げる。


「はい。僕も、ただいまです」


 ルークもルークで、遠征からの帰還を俺に告げた。

 サブオーナーからオーナーへの報告、ということなのだろう。

 周囲では、他の人達も仲間との再会に安堵している様子だった。

 張りつめていた空気が、見慣れた風景に戻ったことで弛緩しているのを感じる。


「こちらでも話は伺っています。突然何十人も<マスター>が消えたと……戻ってきたのはここにいる十人だけですか?」

「ああ。向こうで戦いがあってさ。リストにあった<超級>のスプレンディダや【流姫】ジュバと戦った。【流姫】は倒したけど、他の人達はみんなデスペナになって……え?」


 ――十人(・・)


「ッ!?」


 俺は、背後を……共に隔離空間から帰還した<マスター>達を見る。


 そこに――いた。


 それは、知らない顔だった。

 直前までにいた九人の誰でもない。

 資料で見た顔でもない。

 だが、その顏は不快な笑みを浮かべていて。

 同時に、あの空間の中での先輩の説明の一つが脳裏に浮かぶ。


 ――変装のためのオーダーメイド。


「……!?」


 咄嗟に、その人物へと《看破》を発動させる。


 ◇


 スプレンディダ


 ◇


 そこには予期していた名が可視化され、


 ◇


 職業:【猛毒王】

 レベル:一〇〇(合計レベル:五〇〇)


 ◇


 ――予期していない情報までも、露わになる。


「な!?」


 姿を変えたスプレンディダは、笑みを浮かべたまま俺を指差す。

 スプレンディダの指先には――幾度も見た状態異常魔法の昏い輝きが灯り、



「――《運命(デスティニー)》」

 ――不気味な声音で、その魔法を発動させた。



 To be continued

(=ↀωↀ=)<なぜスプレンディダが復活したのか


(=ↀωↀ=)<いつ紛れ込んだのか


(=ↀωↀ=)<そして最後の魔法の行方は


(=ↀωↀ=)<――次回、ResultⅢ


(=ↀωↀ=)<本日連続投稿

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― 新着の感想 ―
[一言] レイくんには逆転があるから状態異常は無意味なはず だとしたら怠惰魔王みたいな精神系かな……?
[一言] これってトムの分身みたいなのじゃ…
[気になる点] こいついつの間に超級職ついてんの [一言] えぇ…お前が分裂すんのー
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