第六十話 1%への光明
(=〇ω〇=)<区切りと作業の都合で今回短めです……
(=〇ω〇=)←ようやく15巻の初稿が完成した
(=〇ω〇=)<今回ページカツカツで書き下ろしパートをほぼ盛り込めなかったので
(=〇ω〇=)<その辺はページ数自由なツイッターキャンペーンで頑張ります
〇告知
( ̄(エ) ̄)<本編漫画版が明日更新予定クマー
(=ↀωↀ=)<クロレコ掲載のコミックアライブは明日発売
(=ↀωↀ=)<ジュリエット達のまさかの対戦相手とは!
□【聖騎士】レイ・スターリング
「三回に一回は【覇王】が出てくるんだが!?」
都合何十回目かも分からない死亡の後、俺はそう叫ばずにはいられなかった。
出てくる相手がひどすぎてクソゲーになりかけているこの試練だが、救いはある。
一戦ごとに相手は変わるという点だ。
最初に出てきた理不尽の化身を倒さなければ次に進めないなどと言われれば詰んでいたので、本当に助かった。
が、三割以上の確率で理不尽の化身……【覇王】が出てくる。
『解答する。出現頻度は各敵性ユニットが持つ制御権の割合に比例する。先々代使用者を模したユニットは最大の制御権を持ち、33%を保持している』
道理で頻繁に対面する訳だ……が。
『なお、一体が保有可能な理論上最大値が33%である』
「だよな! 明らかに戦闘力おかしいもんなアイツ!?」
上限振り切ってるじゃないか!
道理で他の人達出てきたときが癒しに見えるはずだ……全員に全敗してるけどな!!
『先々代使用者に関しては、追加要素である特典武具出現後の人間範疇生物であるため、あれでも特典武具の分だけ弱体化している。条件は対等である』
「おぉぅ……」
フル装備のアイツが活躍してた三強時代ってどんな地獄だ……。
「……ちなみに、次点でよく出てくるトロールさんの制御権は?」
『先代使用者は18%である』
……やっぱり強かったか。彼も彼で理不尽だった。
だが、【覇王】とは理不尽さのベクトルが違う。
【覇王】は攻撃面の理不尽さで、トロールさんは耐久面の理不尽さだ。
斬った瞬間から再生されて、傷つけられない。
今の俺の火力では『再生速度以上の攻撃力で倒す』という手法が使えない。
おまけに振るう武器のシルエットは不気味で、武器種すら不明。
振るう度に武器自体が変形・伸長し、俺を捉えて捻り潰した。
「……あれ、斧ではないんだよな? 何なんだ?」
俺も含めて、試練では全員が斧を使わない戦闘スタイルで戦っている。
あの呪布を巻いた張本人であるトロールさんも例外ではない。
『【亡骸の槍】……先代使用者の骨と髪で作成された武器である。先代使用者の再生能力が槍にまで伝播し、再生と膨張で敵を捕らえて砕く。我を用いていた際も、サブウェポンとして運用していた』
……なにそれ怖い。
「一体どんなジョブスキルであんなことになっているんだ……」
『先代使用者は人間の範疇を外れた眷……生物であるため、固有能力である』
「……なるほど」
アズライトの御先祖と戦ったらしいけれど、一体どんな戦いだったのか。
……あ、そうか。【アルター】ならトロールさんの再生力を潰せるのか。
ってことは、純粋に剣と斧の白兵戦になった可能性が高いか?
『こちらからも質問する。なぜ彼は「トロールさん」と呼称しているのか』
何でかと言えば、まぁ……。
「トロールさんの巻いた呪布のお陰で、これまでお前を使えてたからな。それで助かったこともあるし、お前と会ったきっかけも呪いがあったからだ。だからちょっと感謝してる」
『……理解した』
「それにしても、この試練で出てくる人達は強いな……」
さて、あの二人が群を抜いて目立つが他の敵性ユニットも決して弱くない。
全員が戦闘系超級職かそれに匹敵する力を持ち、その上でティアン超級職特有の磨き上げた戦闘技術を駆使してくる。
彼らが何者であったかは、斧が教えてくれた。
木刀の素振りで舞台の端から端まで届く剣圧を放ち、俺を断ち切った【斬神】。
自分の拳を自切して飛ばし、宙を舞う拳が空間ごと俺を砕いた異形の【破壊王】。
手も触れずに無数の武器を操り、一本一本が達人の動きで俺を解体した【阿修羅王】。
ロストジョブなので斧がジョブ名を教えてくれなかったが、魔法で俺を瞬殺した誰か。
【覇王】やトロールさんの合間に現れる彼らは、それぞれが<超級>に匹敵するのではないかという実力者だった。
【覇王】とトロールさん以外はいずれも二〇〇〇年以上前……先々期文明以前の実力者たちだという。
そんな彼らにジョブのみで挑むには、俺自身の決め手が大きく欠けていた。
相打ち覚悟で《グランド・クロス》を零距離で使用しても、回避や防御で突破される。
接近戦技術では……言うまでもなく。
「……普段の俺がどれだけネメシスや特典武具に助けられていたか分かったよ。誰も彼もが、俺よりも圧倒的に強い……」
自分のピーキーさを身に沁みて再確認している。
あと、熟練のティアンの動きを学べているので、戦闘技術の良い修行にもなる。
……あ、勝負の形にもならない【覇王】は抜きで。
『試練で出現する敵性ユニットは、いずれも制御権を最低1%は保持している。歴代使用者の中でも「制御権を持つに値する」と判断された猛者達だ』
斧を偶々拾った人間や、斧が人手を渡る過程でたまたま手にした商人などは入っていないのだろう。
……ネメシスと特典武具が駄目なら、きっと俺も入っていない。
「制御権獲得までの道は遠い……。ところで、100%じゃなくても意味はあるのか?」
『ある。70%の獲得で、基本機能……《選刃》の制御は可能となる』
そこから先には基本じゃない機能があるってことか。
まぁ、アズライトの【アルター】も奥義の使用で斬れるものが増えるらしいし、似たような機能が斧にあっても不思議はない。
『また、属性と出力選択の成功率は制御権に比例する。制御権が10%あれば、望んだ属性と出力の攻撃が10%の確率で放たれる』
「属性か威力のどちらかに絞った場合は?」
『選んだものに限り、20%の成功率だ』
なるほどな。ってことは……。
「70%の前に俺が目指すべきは1%、次に50%か」
『その心は?』
「0%は論外だ。望む可能性そのものが存在しない。そして、50%となれば属性か出力……そのどっちかは完全制御可能となる」
属性を選べればあの夢の中みたいに光属性で運用できる。
あるいは威力を選べるようになれば、土壇場で使う切り札になりえる。
どちらだとしても、50%という数値は重要だ、……うん?
「……【覇王】の制御権は?」
『33%』
「……トロールさんの制御権は……」
『18%』
うん。合計51%だな。
「どっちかは倒さないとダメってことじゃないか!?」
『肯定する』
攻撃型理不尽と耐久型理不尽が壁になって立ち塞がっている!
試練ってそういうモノなんだろうけれど……《選刃》の完全制御は【覇王】撃破が必須かぁ……。
「……途方に暮れていても仕方ない。今はこれしかやることがないんだ。やってやるさ」
『試練を再開する』
斧の声と共に、再びシルエットが舞台上に浮かび上がってくる。
それはこれまで出てきたシルエットとは見た目が異なっていた。
ここまでの数十回は【覇王】やトロールさんを含めて、前衛らしい装備か体躯だったが……今度の相手はローブを着ており、露骨に魔法職だ。
「初めて見る相手だな……」
しかし……異様に体が細い。
まるで枯木がローブを纏っているかのようだ。
あんな手合いを……以前にも見たことがある、な。
『2800年前の使用者である。ジョブは――【死霊王】だ』
「――なるほど」
案の定のアンデッド……かつて相対した【大死霊】が目指した超級職か。
なるほど。なるほど。道理で雰囲気が似ている。
そして……これならやりようはある。
「――ようやく1%への光明が見えてきた」
俺は斧槍を構え――銀の光を纏わせた。
To be continued
〇歴代使用者
(=ↀωↀ=)<世界の始まりからある斧なので
(=ↀωↀ=)<当然先々期文明以前の使い手もいる
(=ↀωↀ=)<強力かつ異常な使い手は何人もいたけれど
(=ↀωↀ=)<一番使いこなしてたのはやっぱり【覇王】
 




