第五十八話 やり込み要素(苦行)
(=ↀωↀ=)<更新再開
(=ↀωↀ=)<まだ15巻の作業中ですが
(=ↀωↀ=)<妹に原稿の下読み作業投げて待ち時間できたので本編書いて投稿
(=ↀωↀ=)<書き溜めようかとも思ったけど
(=ↀωↀ=)<そろそろ始めないと今年中に次のパート終わらないので開始
□【聖騎士】レイ・スターリング
目を覚まして、すぐに自分が『目を覚ましていない』ことに気づく。
ひどいダメージを負ったはずなのに、今は身体にも装備にも傷一つない。
しかしその上で、ネメシスの気配がない。
それらの情報から、ここがこれまでに何度も入った空間……【気絶】や【強制睡眠】で肉体が行動不能になった際、<マスター>の意識が放り込まれる空間だと分かった。
<超級激突>で迅羽も同じ空間に放り込まれ、真っ暗な中で結界が壊れるまで待っていたらしい。まぁ俺が度々放り込まれる空間は、ガルドランダが干渉して好き勝手に模様替えしたので暗闇ではないが……。
ただ、今回は……暗闇ではないがいつもと雰囲気が違う。
俺が立つここは――いつか夢で見た鍛冶場だった。
斧を打っていた<鍛冶屋>の姿はなく、槌の音も聞こえない。
ただ、この場所にいるということは……俺を呼んだのは斧なのだろう。
『汝の意識が戻るのを待っていた』
俺が思い至るのと同時に、後ろから声がかけられた。
振り向けば、<墓標迷宮>の戦いでも使った斧が浮いている。
ただ、その姿はかつての夢の中のような白でもなければ、呪布に包まれた黒でもない。
呪符が破れ、まだら模様の本体を晒している。
「お前、それ……」
『先の戦闘により、呪布が破壊された。結果、この空間に限定すれば汝と言葉を交わすことが可能となった』
【怠惰魔王】の夢の中で言葉を交わしたとき、呪布と怨念の影響で自分の意思で動けないと言ってたな。
そうか、イゴーロナクの攻撃を防いだときに呪布が破れた影響が出たのか。
『汝の意識がこの空間内で復帰するまで半日ほど待ちはしたが』
「半日……?」
単に肉体が【気絶】しただけじゃなくて、俺自身も気を失ってたってことか?
……まぁ、これまでも無茶をした後はそうなってたけど。
あるいは……極大召喚の反動の一種?
この空間なのにガルドランダの姿がないこともそれが原因か?
「…………」
それに、半日経っても俺の身体は目が覚めてないってことだ。
俺が眠っている間、他のみんなは……ネメシス達は無事だろうか。
『悩んでいるようだが、こちらも本題に入りたい』
「あ、悪い。……でも、本題って?」
『呪布の破壊に伴う、我の変化についてだ』
変化ってこうして話せるようになったこと以外に何か……あ!
「そういえばお前の属性と出力って……」
『然り。以前伝えた情報だが、怨念と呪布によって我は先代使用者に最適化されていた。先代使用者が耐性を持つ物理と闇属性、そして再生速度が破損を上回る程度の出力に、だ』
あ、属性と出力はそういう理由だったのか。
『だが、先の戦いで呪布が破れ、怨念も霧散し始めた。これにより最適化は解除された』
「おお! それなら……!」
夢の中で【スラル】と戦ったときみたいに、光属性に限定すれば俺も使えるように……。
『――結果、《選刃》の属性と出力の調整が不可能になった』
…………なんですと?
「えっ、どういうことだ……?」
『汝の制御権は0%であり、属性選択と出力制御がランダム化した』
……制御権とかいう知らない単語出てきたんだが。
『本来、我の使用には制御権の獲得が必要であり、能力のコントロールはそれによって左右される。これまで外部要因による強制調節により、属性と出力は一定だった。だが、今はそれがない本来の仕様に回帰しようとしている。いずれの属性が発揮されるか分からず、威力も反動で体が消し飛ぶものから相手にそよ風ほども与えぬものまで振れ幅がある』
……それさ、何て言うか……かなり劣化してない?
「……【怠惰魔王】の夢の中では使えたのに」
『あの環境は意思なきものが介在出来ない特殊条件だった。それゆえ、我が製作者が我の中に組み込んだ制御権依存の制限機構は呪布同様に対象外であり、我が意思での完全制御が可能だった』
どうも制限しているのは呪布と別口の追加オプションらしい。
斧自身にとってもややこしい話のようだ。
「何で制限なんてしてるんだ……?」
『回答する。制御権がない使用者が、大きな災厄を起こさないためである』
「うん……? ……あー」
言葉の意味を少し考えて、理解した。
斧は一度振るうだけならば、俺よりステータスが低くても絶命覚悟でやれなくはない。
では、その一度だけの攻撃を斧の最大出力に設定して振るった場合はどうなるか。
当然、反動か余波で振るった人間は死ぬが、その一撃で都市が消し飛ぶ恐れがある。
それが主用途となれば、斧は諸刃の武器ではなくただの爆弾として浸透するだろう。
斧を作ったという<鍛冶屋>がそんな使い方は望まなかったから、それを制限する仕組みを組み込んだのならば……理解はできる。
しかし、斧の口ぶりからすると制御権を持っていれば問題ないかのような印象なので、斧の制作者はどこか変なのかもしれない。
…………変じゃなければ斧や【アルター】は作らないか。
『我は自ら述べる。現状、我は呪いの武器未満の産廃である』
「自虐するのか……」
でも、それじゃいよいよ斧という名の盾として運用するしかないような……。
いや、制御権が必要と言うのなら……。
『ゆえに、我は使用者に制御権の獲得のため、試練への挑戦を望む』
やはり、それを手に入れる手段があった。
「試練って何をするんだ?」
『この精神世界において、コントロール制限機構の提示する敵性ユニット群を撃破せよ』
……脳筋の解決法だった。
でもそれならそれで話は速いし、精神世界で良いならこちらとしても助かる。
「いいぜ。こっちはまだ目覚められないみたいだしな。何もしないでいるより、少しでも力をつける道を選ぶ」
<墓標迷宮>ではパトリオットさん達に助けられなければ死んでいた。
まだまだ力不足と分かっていても、分かっているだけじゃ駄目だ。
少しでも、望む未来を切り拓く力がいる。
「……ちなみに、その試練で死んだ場合はどうなる?」
【怠惰魔王】戦みたいに夢の中でも死んだらアウトだと、戦争中は実行できない……。
『闘技場結界と同様。何度でも復活と再挑戦が可能だ。リスクはない』
「ああ、それなら良かった。」
『それでは、試練を開始する』
斧がそう言うと、鍛冶場だった空間が様変わりする。
それは俺もよく知る<デス・ピリオド>の本拠地、第八闘技場だった。
……斧を振るった回数で言えばここが一番多いからだろうか。
「っと、なんか現実感が増したな」
夢の中ではなく、実際に<Infinite Dendrogram>で動いてるときと同じ感覚だ。
『使用者に、試練に際して二点の忠告がある』
闘技場の舞台で体を動かして準備している俺に、斧がそう切り出した。
リスクはないって話だったけど……。
『まず、汝の半身たる<エンブリオ>と特典武具は使用不可能だ』
「……え?」
言われて、気づく。
【瘴焔手甲】、【紫怨走甲】、【黒纏套】。いずれも形は同じだが、周囲の存在感が増した中でこれらだけがいつもより存在感が薄い。
加えて、依然としてネメシスの気配はこの空間内にない。
もしかすると、現実でも傍にいないのかもしれないが……。
『装備としてのステータス補正は維持しているが、装備スキルは使用不可能だ』
「なんでまたそんなことに?」
『我に元来備わっている機構ゆえ、異物……否、追加要素であるその二点は介入できない。汝には、ジョブの力のみで挑んでもらう』
言葉に引っかかるものはある。
まるで、それらの要素とジョブが本来全く別であったかのような言い方だ。
しかし、そういう仕様だというのなら仕方がない。
「だけど、これだと俺の戦力が八割減だな……」
『甘く見積もって九割では?』
……かもしれない。
「……まぁ、ステータス補正があるだけマシと考えるか」
ネメシスがいないから……武器はどうしようか。
メインがネメシスで、サブが斧だった訳だし……。
『武器は用意可能』
「え?」
俺が悩んでいると、斧がいくつかの武器を空間に出現させた。
大剣、斧槍、大盾、双剣。武器なので流石に風車と鏡はないようだが、手に取ってみるといずれもネメシスの各形態と同じ刃渡りと重さだった。
恐らく、ステータス上の性能も同じだろう。
『スキルはないが、武器としてはこれで問題ないだろうか』
「ああ。十分だ」
慣れ親しんだ感触だ。これなら問題ない。
「よし、いつでも大丈夫だ」
最初はやはり大剣を構えて、倒すべき敵が出てくるのを待つ。
一人で尚且つ戦闘手段が制限されてるとしても、勝ってみせる。
……少しの心細さはあるが、あいつが入れない戦いなら独りでも頑張らなきゃな。
『二点目。敵性ユニットについてだ』
ふと、斧が言葉を続けた。そういえば、忠告は二つあるのだったか。
敵性ユニットとはどんなものなのだろう。
制御権という言葉の印象では、どこか機械的な敵が出てきそうな気もする。
あるいは属性選択可能な武器だから属性ごとに敵がいるのだろうか?
……まぁ、流石に何が出てきても、俺がこれまで戦ってきた奴らほどひどくはないと思いたい。
ソロでも負けるつもりはないが、【獣王】クラスをお出しされると……。
『コントロール制限機構は我が記録に繋がり、アップデートを繰り返している』
「……アップデート?」
若干不穏な雰囲気の漂い始めた説明の最中、舞台の上に黒い光が集まっていく。
それは徐々に濃度を増し、やがて人型を取り始めた。
『それゆえ敵性ユニットは――我が歴代使用者の姿をとる』
「…………え?」
俺の驚きは、斧の説明によるものではない。
黒い光が象る、シルエットのような人間に対してだ。
それは、男だった。
それは、王だった。
俺の前に立っていたのは――かつて夢で見せられた王のような男。
それが誰かを理解した瞬間、間違いなく斧の歴代使用者で最強の人物が出てきたと知る。
「……一番手がこれ?」
『…………健闘を祈る』
斧から視線を逸らすような気配がした直後。
俺は――【覇王】の一撃で消し飛んだ。
To be continued
(=ↀωↀ=)<ここからレイ君の試練ガチャ&リトライマラソンが始まる
( ꒪|勅|꒪)<ジョブオンリーでボスラッシュとか無理じゃネ?
(=ↀωↀ=)<あ、次回からは現実サイドです
〇制御権獲得試練
(=ↀωↀ=)<上で試練ガチャと述べたように
(=ↀωↀ=)<ちゃんと【覇王】以外の歴代使用者も敵性ユニットで出てきます
(=ↀωↀ=)<ただし、制御兼の獲得割合は強さも関係するので
(=ↀωↀ=)<結構な割合で【覇王】コピーが持っていってる
(=ↀωↀ=)<ていうか前任の【邪神】眷属妖精巨人が呪布なんか使ってたのは
(=ↀωↀ=)<【覇王】コピーが持った分の制御権がゲットできなかったからだよ
(=ↀωↀ=)<制御権の七割獲得すると属性と出力の完全制御可能になるけど
(=ↀωↀ=)<【覇王】一人で三割以上持ってるよ
( ꒪|勅|꒪)<それもう無理でハ?
(=ↀωↀ=)<ちなみに歴代使用者いなかった≒少なかった頃は
(=ↀωↀ=)<神話級悪魔とか伝説級悪魔
(=ↀωↀ=)<要するに閣下でお馴染みの連中が出てきた