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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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517/716

第五十六話 Result Ⅱ 前編 

(=ↀωↀ=)<書けたので更新


(=ↀωↀ=)<ここで更新しておくことで


(=ↀωↀ=)<次の更新がクロレコ三巻発売前日になるという寸法さ


( ꒪|勅|꒪)(……次の更新分を書き終わってからやればいいのに)


(=ↀωↀ=)<あと今回のResultは戦場も複数あったので二分割です


追記:

(=ↀωↀ=)<とあるキャラの乗りペットを間違えてたので修正


(=ↀωↀ=)<最近バイクばっかり乗ってたから……

 □■アルター王国北西部


 <バビロニア戦闘団>と【喰王】カタの戦い。

 <バビロニア戦闘団>は激戦の末にカタの半身を砕き、致命傷を負わせた。

 それがこの地での最初の戦闘の顛末だった。

 だが……。


 ◇


「ライザーさん、傷は大丈夫ですか?」

『ああ。ポーションを飲んだし、傷にもかけた。出血は止まっている』


 ラングが地に腰を下ろしているライザーを気遣う。

 ライザーは疲弊ゆえに腰を下ろしているのではない。

 彼の両足が噛み砕かれているために、立つことができないのだ。


 カタとの最後の攻防の中で、ライザーは彼の口中にあった脳と心臓を砕いた。

 だがカタもまた皇国屈指の強者。

 一瞬の攻防の中で捕食には至らずとも、ライザーの足を砕いていた。

 それゆえに、カタに致命傷を負わせた彼もまた動けずにいる。


『もう動いても問題ないさ。悪いが、ヒポグリフに乗せてくれないか。この足では、ヘルモーズの運転も難しいからな』

「ライザーさん……」


 死闘で力を出し尽くし、両足が砕かれてもなお彼は他の戦場で戦う仲間達の下に駆けつけるつもりなのだ。

 ラングもそれに異は唱えない。

 <バビロニア戦闘団>では彼が一番軽傷であり、彼自身もそうするつもりだったからだ。


「……みんな、まだ戦ってますかね」


 彼らが戦う間にも仲間達が向かった先では巨大な翡翠の雲が出現し、さらには異常な雷が発生していた。

 それが王国と皇国の激戦によるものであるのは、想像に難くない。


『彼らなら大丈夫だろう。だが、少しでも助力するに越したことはない。そのために向かうんだ』

「……はい!」


 ライザーはそう言ってラングの肩を叩き、ラングもまた笑顔でそれに応じた。

 ラングは愛騎のヒポグリフを呼び出し……それから些細なことが気になった。


「それにしても、あいつクランのオーナーなのに本当に独りでここに来てたんだな。<LotJ>の横槍が何もなかった」


 地に伏した下半身だけの死体を見て、ラングはそう呟いた。

 【喰王】カタは皇国第三位クランのオーナー。構成メンバーは多いはずだが、この戦場の彼は単独だった。


『<LotJ>は元々が報酬目当てでの戦争参加を望む者達の受け入れ先だ。各々が皇国の提示した報酬を獲得するために独自行動している。前回の戦争でもそうだった。元より、クランでの連携はなくパーティ……あるいは個人単位で動くのだろう』


 もしもこれが<バビロニア戦闘団>VS<LotJ>という図式ならば、万に一つも勝ち目はなかった。

 カタが単独行動だったからこそ、三人の連携で押し勝てたのだ。


『だが、これから向かう戦場では他の<LotJ>がいるかも、…………!』


 ライザーは不意に言葉を切り、仮面の奥の表情を険しくした。


「ライザーさん?」

『ラング……、俺が奴を倒してから……何分(・・)経った』

「足の治療もしてたから四、五分くらいの……あ!?」


 そこで、ラングもこの場において最も異常な現象に気づいた。

 【喰王】カタは、言うまでもなく<マスター>。

 <マスター>なのだから、死ねば死体も消える。


 ――それが五分経った今も残っている。


 《看破》で見えるHPはゼロ。

 死体の損壊度合いで言えば、一瞬で塵になって然るべき。

 脳を破壊されて行動不能になった【死兵】だとしても、一分程度で消えるだろう。

 五分は、異常だ。


『ッ!』


 ライザーは咄嗟にアイテムボックスから【ジェム】を……氷属性魔法の上級奥義である《ホワイトフィールド》の【ジェム】をカタの死体に投擲する。

 死体を凍結させて、万が一の行動をも封じるために。


 だが、死体はそれを待っていた(・・・・・)


 ――カタの死体の断面から手が伸びて、【ジェム】を掴み取った。


 否、それは掴んだのではない。

 手に生じた口で喰らった(・・・・)のだ。

 紛れもなく、【喰王】カタの<エンブリオ>能力。

 しかし、その腕は……彼のものよりも幾分細く、白い。

 細腕はゴリゴリという咀嚼音と共に【ジェム】を噛み砕く。

 そして……。


「…………」

 ズルリ……と死体の断面から上半身が這い出した。


 それは【喰王】カタではない。

 一糸まとわぬ女の躰が……カタの死体から這いずり出した。

 それが何者であるか、ライザーには察しがついた。


(【喰王】カタの、<エンブリオ>!)


 姿を見せず、能力だけを行使していた彼のメイデン。

 だが、その光景は異常だった。

 ルールの類であれば、あのように実体を露出することはない。

 だとすれば……。


(アームズ、いやガーディアンを身体の中に収めていたのか!?)


 それこそが、カタの<エンブリオ>であるニーズヘッグ。

 TYPE:メイデンwithフュージョンガーディアン。


 日常的に<マスター>と融合するガーディアンである。


 死体が残っていた理由は、死体が生きていたからだ。

 カタ自身は主要臓器とHPを全損したが、彼と融合したニーズヘッグの心臓と脳が彼の下半身を生かして繋ぎ止めていた。

 カタの体内には命が二つあり、だからこそ死体が残っていたのだ。

 カタの心臓と脳を消しただけでは足りず、融合したニーズヘッグの心臓と脳も潰す必要があった。


 これが決闘であれば、カタのHPがゼロになった時点でライザー達の勝利だった。


 だが、これは――決闘ではない。


「…………」


 ニーズヘッグは、普段帽子と袖で隠している素顔を晒している。

 だが、その目はひどく非難がましいものだ。

 まるで『もっと早くやってよね』と言いたげな視線だった。

 ライザー達が死体の異常に気づいて何らかの攻撃手段に出た時点で、それを喰らって回復のリソースに回す算段だったのだ。それが遅れたからこそ、ニーズヘッグの行動開始も遅くなった。不幸中の幸いと言えるだろう。

 だが今、【ジェム】を喰らい、そのリソースで回復を行い、ニーズヘッグはカタの体から這い出した。

 そして燃え残った神話級金属を手に取り、口元を両手で隠しながら捕食している。裸体よりも捕食を晒す方が恥ずかしいとでも言いたげに。


『ラング!』

「は、はいッ!」


 だが、それをただ見過ごすなどできる訳がない。

 ライザーの両脚、そしてビシュマルを犠牲にして勝利した結果が覆ろうとしている。

 そんな最悪の結果を阻むために二人は動いた。

 ライザーは動くこともままならぬ足でヘルモーズに飛び乗ってハンドルを全開にし、ラングもまたハレーの再展開を試みる。


 ――それを、白い壁が阻む。


「「!?」」


 それは肉の壁。

 ニーズヘッグの左腕が白く巨大な肉の壁――巨大な左腕に変貌して介入を阻む。

 腕の表面には巨大な口が幾つも並び、空気や地面に拘わらず触れたもの全てを捕食している。


(これはメイデンの部分変化……ガーディアン体!?)


 ラングは、それがカテゴリーの特性によるものと気づく。

 メイデンの<エンブリオ>はネメシスが自らの腕を剣に変えるように、メイデン体の一部だけをもう一つの姿に変えられる者もいる。

 ニーズヘッグもその類だったが……その左腕はあまりにも巨大すぎる(・・・・・)

 左腕から推し量れるサイズは、レヴィアタンや【グローリア】と比べても遜色がない。


(まさか……今までメイデン体のままで戦っていたのか!?)


 そして、ライザーも気づく。

 自分達が決死の覚悟で戦った【喰王】カタが……その実は<エンブリオ>の機能を制限していたのだと。

 今、左腕に見えている口の表面積だけで、先ほどまでカタの肉体に形成されていた口の総面積を超えている。

 しかしあえて言えば……先ほどまでの【喰王】カタも本気ではあった。


 ――人間の姿(・・・・)での、本気だった。


 その姿で戦い続けた理由は、彼自身のあるポリシーによるものだったが……。


「久しぶりに……しんどかったなぁ」


 白い肉壁の向こうから声が聞こえると同時に、波が引くように肉壁が消えていく。

 消えた肉壁の向こうにはカタの姿があった。

 上半身の装備が燃え尽きたために上半身は裸であり、背中から生えたニーズヘッグが人に戻った左腕をマフラーのように彼の首にかけている。

 だが、どちらも既に傷一つない。

 完全回復が完了していた。


『…………!』


 自分達の決死の戦闘結果を無に帰された。

 いや、それよりも……相手の底知れなさが判明した今の方が状況は悪い。


「先に言っておくと、君達の戦いは、意味があったよ」


 だが……カタの方からライザー達を慰めるような言葉が発された。


「俺の回復はリソースの捕食依存。安定回復手段である自前のアイテム……俺の持ってきたものは今ので全部燃えたし、喰ったからね……。安定した回復はもうできないんだ。お金にすると何十億も吹っ飛んだし……。ああ、やっぱり味を優先して燃えてしまうモノを多くするんじゃなかった……」


 ビシュマルの炎で灰になった自分のアイテムを見下ろしながら、カタは悲しそうな顔でそう言った。少し泣きそうですらある。遠足で弁当をひっくり返した子供に近い。

 彼の背中から生えたニーズヘッグが後ろから彼の頭を撫でて慰めつつ、また非難がましい目でライザー達を見ていた。

 見ようによってはコミカルなシーンだったが……相対するライザー達はそれどころではない。


 自前の食い物がなくなったカタが次に『喰うモノ』の想像が難くないからだ。


 ビシュマルとのターゲット分散でギリギリ持ちこたえた攻防。

 まして、相手には未知の巨大ガーディアン体がある。

 勝算は限りなく低くなっている。


『…………』


 それでも、ライザーは砕けた両足で立つ。

 この場での一分一秒が、彼らの先にいる者達の運命を変えると信じて。

 ラングもまた、ライザーに殉ずる覚悟だった。

 そして……。


「じゃあ、――俺はもう帰るから」

 ――カタは踵を返して、ライザー達に背を向けた。


『…………なに?』

「今回は俺の負けだよ。この戦争中はやることもないだろうけど、戦争終わったら決闘で遊んでみよう。燃えてる彼もね」

『ど、どういうつもりだ!?』


 圧倒的優位に立ちながらライザー達を見逃してさっさと帰ろうとしているカタに、ライザーは理由を尋ねずにはいられなかった。


「だから、もう食料がないんだよ。帰って補充しないとだし……正直疲れたよ。知ってる? 思考器官が潰れた<マスター>って、何もない暗いところに放り込まれるんだよ。精神的にしんどい。おなか減ったし、美味しいもの食べたい。帰る」

「『…………』」


 本当に疲れた顔で、カタはそう述べた。

 アバターの体力ではなく、動かすプレイヤーの精神力が切れかけている。

 本気で帰るつもりらしく、先に進んだルーク達を攻撃しようという意思は全くないようだった。


「それじゃ、ばいばーい」


 カタは手を振り、ニーズヘッグはまだ恨みがましい目で見ていたが<マスター>に合わせて手を振った。

 そうして、ひどくマイペースに……皇国最強の準<超級>はこの戦場を去った。


『……ひとまず、先に進もう』

「…………了解です」


 ライザー達は暫し顔を見合わせた後、ルーク達と合流するために移動するのだった。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<次回更新の後は商業作業(15巻準備とクロレコ脚本)でお休み期間入ります


(=ↀωↀ=)<ご了承ください



〇【喰王】カタ


(=ↀωↀ=)<世界派エンジョイ勢


(=ↀωↀ=)<ちなみに七章の第六話みたいに


(=ↀωↀ=)<普段からニーズヘッグが傍にいて彼にくっついてるけど


(=ↀωↀ=)<実は接触点から融合しててカタの口に強度無視捕食能力付与してる

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― 新着の感想 ―
[気になる点] フュージョンガーディアンは命が2つあるみたいなエンブリオの共通仕様の開示とカタの復活を同じタイミングでやっていいの?なんか…すごい不自然というか…後だしじゃんけんされた気分だわ。
[一言] やっぱりメイデンは食費が、、、
[一言] カタのエンブリオがTYPE:メイデンていうのが恐ろしい… ゲームではないと理解しつつマスターなり鉱物なり食べてる…((((;゜Д゜)))
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