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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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第五十二話 <デス・ピリオド>VS“不退転”のイゴーロナク 後編

(=ↀωↀ=)<明日はいよいよ14巻の発売日!


(=ↀωↀ=)<今回も接続章などは新規ですが


(=ↀωↀ=)<蒼白Ⅱをまだ刊行していない都合でも変わってる部分あります


(=ↀωↀ=)<具体的には【冥王】関連


(=ↀωↀ=)<どう変わったかはお読みいただければー

 □■アルター王国北西部・森林


『……?』


 マリーがヒカルの撃破に向かった直後、ルーク達は狙撃への防御を続けていた。

 その中で、タルラーだけが不思議そうに周囲の気配を探るように首を回している。


「タルラー?」

『のぅ、るぅくや。件の敵は北であろう?』

「敵の動きや霞さんの探知ではその筈です。タルラーから見てもそうでしょう?」

『うむ。北に戯けた魔力を感じるなぁ。しかしるぅくよ』


 タルラーはリズで狙撃を弾くルークの耳にそっと口を寄せて、


『――見られておる。<墓標迷宮>では感じなかった視線と猛者の気配だ』

「…………」


 ルークはその言葉の意味を考える。

 <墓標迷宮>では感じなかったと言及するのだから、“不退転”のイゴーロナクではない。

 猛者と明言するならば、【ブロードキャスト・アイ】でもない。

 そして霞の探知に漏れがなければ、周囲に<デス・ピリオド>と“不退転”のイゴーロナク以外の<マスター>はいない。


(探知範囲外からの監視?)


 それができる<エンブリオ>も心当たりはある。

 特に覗き見の代表例は【光王】のゾディアックだろう。

 しかし、彼の人物は王都でレイの護衛についているはずだ。

 だが、タイキョクズの探知範囲外から見ているのでないならば……探知に掛からない者ということになる。


(ティアン? 皇国のティアン戦力が、この戦いを監視している?)


 そう考えたが、思い当たらなかった。

 皇国のティアン戦力は内戦でほとんど壊滅している。

 皇王や特務兵団唯一の生き残りである【無将軍】は、アルティミアらと共に国境の隔離施設。

 王都テロの際に出現したというティアン素体の改人という存在も考えたが、あれならばタイキョクズの探知に掛かる。

 他に目立つ戦力はなく、つい先日に元ドライフ皇国軍の【超操縦士】がカルディナでテロを起こして死亡したというニュースもあった。

 あとは表向きに存在しない戦力が――それもタルラーが猛者と明言する戦力が――いるかどうかだが……やはり腑に落ちない。


(介入もせずに監視のみ。そんな戦力があるなら、ここの監視に使うだろうか?)


 タルラーの言を疑いはしないが、監視者の正体が分からない。

 ルークが読み解くにも、情報が不足しすぎていた。


「……今は放置します。マリーさんによる敵のチェックの阻止と、霞さんとふじのんさんによるこちらのチェック。この両方を果たすまでの防衛に集中で」

『了承した』


 そうしてタルラーはその姿を薄れさせて隠れる。

 どこかから魔力式の奇襲、【ジェム】や【鋼裂】装備の【壱型】で仕掛けてきた際に魔力を食らって無力化するためだ。


(マリーさんがあちらを阻止してくれれば、後は……)


 そうしてルークは囲いを守りながら、その瞬間を待っていた。

 彼等も無傷で狙撃を防ぎ続けられるわけではない。

 ルークも、イオも、次第に傷ついていく。

 それでもルーク達はその瞬間を待ち続け……。


 彼は北に巨大な光が広がる光景……マリーとヒカルの戦いの決着を目撃した。


『『――準備、完了』』


 そして、霞とふじのんの二人から同時に告げられた言葉を聞いた。


 ◆◆◆


 ■【紅水晶之破砕者】コクピット


「――嘘だ」


 その瞬間に起きたことに対し、【紅水晶】のコクピットに座るみっちーはそう呟くしかなかった。

 モクモクレンを扱う彼だからこそ、当事者以外の誰よりも早くヒカルの脱落を知った。


(ヒカルの魔弾を超えて)(【命削り】の暴発)(相打ち)(ヒカルは戻って来れる)(この戦争中は無理)(預かってる魔力が切れれば)(このままだと地上の二人も)


 みっちーの思考は、混乱の中で幾つもの言葉を吐き出す。

 それはバラバラのようで、しかし今何が問題であるのかは示していた。


 ヒカルはデスペナルティになったが、メロと違って確実にこちらに戻って来られる。

 ショックはあれども、悲しみはまだない。

 それにヒカルはこの戦術をとる前に、パーティメンバー各員に残存魔力の半分を分割して預けていった。

 だからみっちーも【紅水晶】をしばらく動かすことは可能であるし、スモールの転移も何度かは使用可能だ。

 地上の二人が扱う【壱型】や武装も問題なく稼働できる。

 だが、それも永遠ではない。安全圏への移動を考えれば、魔力に猶予はほとんどない。

 依然として霞を撃破しなければならないのは変わらないが、決め手となりうるヒカルを失い、今後の行動への制限も生じた。


(どうするどうするどうする……! ここは地上の二人を回収して、全力で逃げを打って、他の皇国戦力に任せる!? だけど、平原の戦闘で近辺の皇国戦力は壊滅してる……! 周囲には僕達しかいない!)


 既に平原でのアルベルトとマードックの戦闘も終結しており、狼桜をはじめとする生き残った少数の王国戦力がこちらに向かってさえいる。遠からず、辿り着くだろう。


(地上に近づけば、あのレイスに預かってる魔力も食べられる……!)


 行動を選択しようにも、状況は彼等にとって雁字搦め。

 最悪なのは、このままでは地上に出ているヴィトーとラージの二人を回収できず……見殺しにすることだ。

 <超級殺し>が落ちた今、ヴィトーが預かっている【ベルドリオンF】で<デス・ピリオド>の壊滅は叶うかもしれない。

 だが、稼働時間の問題は依然ある。最も上手く機能したとしても<デス・ピリオド>壊滅が限界であり、王国の後続戦力が辿り着いたときに逃走手段がなければ二人は死ぬ。

 それを考えるならば、現時点で地上へ浮上し始めなければ間に合わないが……魔力で動く者の天敵であるタルラーがいる。


【PTメンバー<ヒカル>が死亡しました】

【蘇生可能時間経過】

【<ヒカル>はデスペナルティによりログアウトしました】


「…………え? あ、え? ね、ねえ、みっちー。今、ヒカルが……」


 そして目撃したみっちーに少し遅れて、パーティメンバー死亡のアナウンスを受け取ったスモールが、小さく震える声で彼に呼び掛けた。


「ど、どうしよう……!?」

「…………っ」


 それに答える言葉を、みっちーはもたない。

 どうすればいいかなど、彼にも分からないからだ。


『――二人とも。俺達を置いて離脱しろ』

 ――ゆえに答えは、地上にいるラージから齎された。


「!」

『【紅水晶(ローズ)】で、そのまま逃げろ。最寄りの皇国拠点でも、もっと北……王国の連中が法律で入れない<境界山脈>の地下でもいい。兎に角、連中から二人だけでも逃げて……戦争後に帰ってくるヒカルと合流するんだ』


 地中潜行拠点としての機能も有する【紅水晶之破砕者】。

 内部には長期間地中に潜伏するための住環境や食料なども積み込まれている。

 ヒカルがいなければこの後の活動時間に制限がつくが、待つだけならば一週間以上でも耐えられる。

 ラージは【紅水晶】を一種のシェルターとして、ヒカルの帰還まで耐えろと指示したのだ。


「だけど、それじゃ二人は……!」

『気にするんじゃねえ! 俺達は、こいつらを潰す!』


 躊躇うみっちーを、ヴィトーの声が制する。


『俺達は、まだ負けちゃいねえ! お前らがやられたときが負けなんだ! だから、さっさと行きやがれ!』


 乱暴な口調だが、守るべき友人達を逃がすための言葉だった。


『ああ。ヴィトーの言うとおりだ。それに、まだ悲観したもんじゃない。まだ、勝ちの目は残ってるさ。言っただろ。俺達は勝つし、守るし、三人全員無事に帰ってくるってな。だから、今は一時的にお別れだ』

「お兄ちゃん……!」


 そうしてラージも友と妹を勇気づけるように、背中を押すようにそう言った。


「……分かった」


 彼らの意思を受け取って、みっちーはこの場からの撤退を決断する。

 友との一時か、あるいは永い別れを覚悟して。


 ◆


 だが、この時点で彼らの思考は一つの形に固定されていた。

 それは、『命の危険にあるのがヴィトーとラージの二人』という前提。


 ――そうした心の間隙を、【魔王】は見逃さない。


 ◆


「【紅水晶】、深度を維持したまま北に移動を、……?」


 友との別れを決意したみっちーが【紅水晶】にそう告げたとき、不意に奇妙なものが視界に入った。

 みっちーは、ソレを錯覚の類かと思った。

 ソレはモクモクレンのモニターに映っているものとどこか似ていたからだ。

 <デス・ピリオド>の囲いを構成する壁役の一つ、【バルーンゴーレム・トループス】。

 その召喚モンスターに似た風船状のソレはモニターの中ではなく、


 ――【紅水晶】のコクピットに在った。


「これは――」


 みっちーがソレについての言葉を述べようとした瞬間。



 ――ソレは爆発(・・)し、密閉されたコクピット内部に破壊をばら撒いた。



 ◇◆◇


 □■アルター王国北西部・森林


「……う、うん、……まず、一回……」


 囲いの内側で、目を開いた霞が緊張しながらも慎重に自らの<エンブリオ>を操作していた。

 盆のような形態であった彼女の<エンブリオ>は、しかし今は形を丸っきり変えている。

 平面の図であったそれは、いつしか立体映像の如き球体を盆の上に展開していた。

 球体の中心に在るのは彼女を示す記号であり、球体の下層にはみっちーとスモール……二人の<エンブリオ>を示す記号が表示されている。

 高さまでも含めた、三次元立体図。


 それこそが霞の<エンブリオ>であるタイキョクズ。

 その必殺スキル、《万象遊戯盤(タイキョクズ)》使用形態である。


 タイキョクズは王都テロにおける【アピス・イデア】戦で活躍し、<エンブリオ>探知能力という戦術上強力な特性ゆえ、王国にとっても皇国にとっても注目された戦術能力の高い<エンブリオ>である。

 レーダーとして頼られ、あるいは畏れられ、今回の<トライ・フラッグス>においても超級職を除けば、特に注目された戦力の一つだった。

 だが、タイキョクズの機能はもう一つ(・・・・)ある。

 <デス・ピリオド>の戦術を担う者達があえてレーダーとしての性能を世間に喧伝しつつ、その裏で隠した機能。



 それは……召喚モンスターの転移。

 チェンジリングと同様に、彼女もまた転移型の<エンブリオ>である。



 そして《万象遊戯盤》は転移の行使に特化したスキルだ。

 より正確な三次元での転移座標の決定。何より必殺スキル展開中のタイキョクズに魔力を注ぎ込むことで、注ぎ込んだ魔力の範囲内ならばクールタイムなしでの連続転移が可能となる。

 これをふじのんなどは『タワーディフェンスゲームのユニット配置みたいね』と言っていたが、実際の用途はご覧の通り……極めて攻撃性が高い。

 霞のスキルは距離に比例して負担が増すが、高度や場所は考慮しない。

 たとえそれが地下深くであろうと。

 たとえそれが地底戦車のコクピットであろうと。

 位置を把握し、足りるMPがあれば送り込める。


 それが――自爆型(・・・)の召喚モンスターであっても。


 あたかも<墓標迷宮>襲撃の意趣返しの如く、<デス・ピリオド>は“不退転”のイゴーロナクの安息の地に爆弾を送り込んだのである。


 ◆◆◆


 ■【紅水晶之破砕者】コクピット


「か、は……!?」


 ボムムン。【バルーンゴーレム・エクスプロシヴ】という名の自爆特化の召喚モンスターは、送り込まれた【紅水晶】のコクピットで爆裂した。

 ゲートを介した攻撃ではなく、掘り起こすわけでもなく、敵中枢への自爆転移。

 あたかも<墓標迷宮>でされたことの意趣返しのような、ルークの策は……“不退転”のイゴーロナクのメンバーに重大なダメージを与えた。

 密閉空間での爆発は非戦闘職のみっちーとスモールにとっては致命であり、一撃で【ブローチ】を破損させた。


『コクピット内部にて爆発を確認。機内の密閉性、異常なし。ただし、システムに一時的なエラー。溶融式地中航行形態(ローズ・ブレイカー)、使用不能。復旧まであと二六〇秒。通常航行、可能』

(転移攻撃!? あっちも……!?)


 みっちーは自分が何をされたのかを、理解していた。

 囲いの内側で<デス・ピリオド>がやろうとしていたことは、これなのだと。

 だが彼の視点では、霞とふじのん、どちらの仕業であるかまでは分からない。


「【紅水晶】、ランダム機動!」


 だが、スモールのチェンジリングのような媒体がないことから、相手がみっちー達の座標をピンポイントで指定して転移を行っていることは予想がついた。

 だから【紅水晶】を動かして、次弾を回避しようと試みる。


『了解』


 コクピット内部を爆破されてなお、【紅水晶】はこの深度での地中潜行能力を機能させていた。

 その堅牢さは煌玉馬をも上回る見事なものだったが……。


『――エラー。当機周辺の地質が急激に変化。硬度、大幅に上昇。移動阻害』

「!?」


 【紅水晶】の地中潜行能力を上回る岩盤の類は、この深度にはないはずだった。

 機能の一つとして地中の地層の探査は可能であるし、緊急時の移動に問題がないからこそここに陣取ってもいた。

 だが、その環境が大きく変わりつつある。


「……合体魔法(・・・・)、発動したのか!」


 何が原因であるのか、今度は彼にも理解できた。

 囲いの内側で連動する八つの魔法陣、それによって行使されるかもしれないと危惧していた合体魔法。

 件の魔法陣は、用途(・・)を除けば事前に推測したとおりの危険度だった。


『周辺岩盤の溶融による離脱……エラー。溶融式地中航行形態、使用不能。復旧まであと二三〇秒』


 そして、この状況を逃れるための術は……今の彼らにはなかった。


 ◇◆◇


 □■アルター王国北西部・森林


「ムーン、マーキュリー、ヴィーナス、サン、マーズ、ジュピター、サターン、スターズ。全魔法陣連動状態良好! 合体魔法、《インムーバブル(不動の)アース(地球)》維持!」


 ふじのんは自身の周囲を巡る八つの魔法陣が機能しているのを見ながら、状態を確認し、知らせるためにそう述べる。

 星の名を冠する八つの魔法陣は、天動説の如く彼女の周囲を公転しながら、彼女と連動した合体魔法を今も演算し、維持している。


 《異界の天球図(アルマゲスト)》。

 魔法をコピーするという性質を持ったアルマゲストを、更に発展させたスキル。

 それは単純なコピーではなく、自ら魔法を編む……言わば魔術師AIとでも言うべき存在と化している。

 それゆえにふじのんの望む形で魔法を構築し、彼女自身と合わせて九人分の力……それも完全連動した状態で合体魔法を行使している。

 無論、アルマゲストの魔力消費は全てふじのんにかかってくるが……彼女もヒカルほどではないがMP補正は高い。

 この場で合体魔法を一度や二度行使するくらいならば、超級職ならざる身でも可能であった。

 今の彼女が行っているのは、地属性魔法による物質硬度の上昇。

 かつて【地神】がギデオン地下の【NDW】に対して行ったものに近い芸当を、ふじのんは行使している。


「潰すまでは無理だったわ! 距離が遠いし、相手も硬いからダメ! 霞、お願い!」

「う、うん!」


 ふじのんと霞。この二人による【ブローチ】破壊と撃破が地中に潜伏するスモールらを倒すために<デス・ピリオド>が執った策だった。

 しかし確実に相手に爆弾を送りつけられる霞と違い、ふじのんの魔法は相手の強度次第では倒すに至らない。

 その場合はふじのんが拘束に専念し、霞による二度目の爆撃で勝負を決める手筈だ。


「二回目、い、いそがないと……」


 霞は……二度目の爆撃のため、召喚待機状態に戻ったボムムンの再召喚準備を始めていた。

 《万象遊戯盤》への魔力充填は、既に完了している。再召喚さえ済ませば、それで勝負を決められる。

 だが、ふじのんと霞の二人で倒す案と違い、こちらの場合は……二度目の爆撃までタイムラグが生じる。

 この場合に重要なことは、二つ。

 【紅水晶】に逃げられないために、ふじのんが拘束を維持すること。

 そして……。


『――やらせるかァァッ!』

 ――仲間を護らんとする者達から、霞をいかに護るかということだ。


 ラージ、そしてヴィトーが動かす【壱型】が突撃を仕掛けてくる。

 タルラーの吸収を警戒しての遠距離狙撃を止め、なりふり構わずに二度目の転移爆撃を阻止するための特攻を行っている。

 ラージの【装着式壱型】は狙撃銃ではなく、より短銃身の火器……ヒカルが用いたショットガンを【装着式壱型】のサイズに拡大したような武装を取り出す。

 内部に装填された弾丸は、魔弾。

 しかしヒカル以外は自爆の危険のある追尾式の魔弾ではなく、純粋に火力を高めた魔弾である。

 アルカンシェルの赤と黒に近く、接触した瞬間に対象を爆裂する魔弾だ。

 追尾の魔弾同様にタルラーが備える場所に打ち込めば無力化されかねないが、ラージは形振り構わずに突撃する。


「!」


 霞は咄嗟に指をスワイプし、囲いを形成していたバルルンズが三重の壁になるように短距離転移させる。

 放たれた爆裂魔弾はバルルンズを次々に爆砕するが、三体目を破壊した時点でルークとマリリンが割りこみ、霞達には届かない。

 その間に、ラージと反対の方角からヴィトーが遠隔操作する【壱型】も同様の攻撃を仕掛けようとするが……。


『こちらは余の領分よな』


 地中を透過して出現したタルラーに接触され、内部の魔力を根こそぎ奪われて機能停止した。


『クソッ! はやく、動きやがれこのポンコツがッ!』


 自らの遠隔操作する【壱型】が無力化される間、ヴィトーはヒカルから託された【ベルドリオンF】を起動させようとしていた。

 だが、ヒカルが魔力を充填していたユニットを取り付けられた機体は、まるでPCの起動時の如く、稼働音と共に少しずつその機能を立ち上げていく。

 一刻を争う事態での動作の遅さにヴィトーは強く焦るが、【ベルドリオンF】はまだ起動しない。


『……仕掛ける!』

『ラージ!』


 それを待ってはいられないと、ラージがルーク達の護りを抜いて霞を討たんと接近する。

 今ならばタルラーは反対側であり、接近して仕留める時間はあると考えての行動。

 その後に無力化されて殺されようとも、地下で窮地に陥った妹と友を護るために彼は動いていた。


「やらせないよ!」


 そして立ちはだかるのもまた、友を護ろうとする者。

 超重武器を構えたイオが、ラージの前に立つ。


「――モード、撃砕!」


 彼女が叫ぶと同時に、イオの握るゴリンが異なる形態に変じる。

 それは、巨大な片刃大剣型の超重武器。

 しかし刃は鉄板の如く分厚く、まるで舟の櫂のようであった。

 それこそゴリンのモチーフとなった五輪の書をしたためた剣豪、宮本武蔵が佐々木小次郎を破った武器の如く。


『オォ!』


 イオの武器の変化を見ても、ラージは止まらない。

 【突撃銃士】としての力と【装着式壱型】の性能を合わせ、囲いの内にいる霞を討たんとする。

 仮に攻撃を受けても【ブローチ】で凌ぎ、その後の追撃で死するとしても妹と友を守るために、最も危険な敵を仕留める算段だった。


 だがそれは……立ちはだかる彼女も同じ。

 イオもまた、友を守るためにラージの前に立つ。


「――《照見五蘊皆空(ゴリン)》!!」

 ――そして、必殺スキルの宣言と同時にイオも踏み込む。


 片刃の大剣の背が開き、無数のロケットノズルが展開。

 爆炎を噴射する大質量の刃が、パワードスーツを纏うラージに激突する。

 致命の刃。

 だが致命であるからこそ、耐えられる。

 ラージはそう考え、


 しかし【ブローチ】が攻撃を無効化する気配はなかった。


『――!?』


 攻撃性能特化の超重武器アームズ、ゴリン。

 必殺スキルの名である《照見五蘊皆空》は、人間を形作るものは実体のない『空』であるという仏教の文言の一つ。

 ひいてはこの世の全てが『空』であるという教えに繋がる言葉。

 その言葉を、攻撃特化の<エンブリオ>がどう解釈して名付けたかは不明だが、


 ――ゴリンの必殺スキルは【ブローチ】をはじめとする防御スキルの無効化である。


「らぁああああ!!」

『――――』

 阻むものなどないかの如く、片刃の大剣はパワードスーツごとラージを両断した。


 【ブローチ】の無力化によって刺し違えること叶わず、ラージが絶命しながら地面へと落下する。


「ボムムン、いきます……!」

 その最中に――霞が二度目の転移を実行する。


 スワイプによってボムムンは再び【紅水晶】のコクピットに送り込まれる。

 そうして間もなく、地下に在った二つの反応を消滅させた。

 同時にラージの身体も光の塵となって消え失せる。


 それが、顛末。

 “不退転”のイゴーロナクと呼ばれたパーティは、<デス・ピリオド>によって壊滅した。


 ……一人を遺して。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<他作業もあるので次回はお休みです



〇霞


(=ↀωↀ=)<<マスター>なら街一つ分の範囲で位置を把握


(=ↀωↀ=)<MPさえ足りればそこに自爆モンスター送り込める


(=ↀωↀ=)<MP上限とモンスターのラインナップ整うほどやばくなる


(=ↀωↀ=)<そしてちょっとルークに似てくる



〇ふじのん


(=ↀωↀ=)<一人魔法部隊


(=ↀωↀ=)<使うMPは当然として


(=ↀωↀ=)<魔法陣の性能も本人の魔法職としてのレベルに比例するので


(=ↀωↀ=)<魔法超級職とるとかなりヤバいことになる



〇イオ


(=ↀωↀ=)<攻撃偏重でついに突き抜けたタイプ


(=ↀωↀ=)<ダメージ防ぐ系のスキルなら大体何でも無効化してぶっ壊せる


(=ↀωↀ=)<まず【ブローチ】を壊すというこの作品の前提条件抜きに一撃必殺


(=ↀωↀ=)<ただ、空間操作して攻撃徹さないタイプは無効化できない


(=ↀωↀ=)<簡単に言うと『防がれる』と『届かない』の違い


(=ↀωↀ=)<あとスキル抜きの防御力で耐えることなら可能


(=ↀωↀ=)<バリアは無効化できても防御力バフは無効化できないからね


(=ↀωↀ=)<まぁ要するにイオはSTR上げていくのが一番です

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― 新着の感想 ―
[良い点] 三人娘もデスピリに並ぶようになってきた!
[一言] 3人組が着々と強くなってて草
[一言] 三人娘の手口が 霞が自滅前提モンスターを相手拠点に送りつけるところがフランクリンに、ふじのんが地中の相手の周囲の土の硬度を高めて行動不能にしたのがファトゥムに、イオが本来破壊不能な物を破壊し…
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