第四十六話 屍を越えて
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□■アルター王国北西部・皇国陣地
その瞬間に自身が観測した情報の意味を、アルベルトも全ては理解できなかった。
彼の拳は【トールハンマー】の上部を砕き、その下にあったマードックも叩き潰した。
しかし同時に、奇妙な隔たりの感触も覚えた。
それはこれまでも幾度か体験した【ブローチ】によって阻まれる感触。
強力無比な一撃も受け止め、装着者を守る上級者の必須装備だが、問題はない。
今のアルベルトは【エグザデモン】を纏っている。
拳は致死ダメージに数倍する威力を有し、【ブローチ】が砕けたならば続く二撃目かエメラダのレーザーで灼け死ぬのみ。
そう分析してアルベルトはトドメを刺す拳を振り下ろした。
――だが、拳が届く直前に【トールハンマー】が消えた。
同時に、残存していた【電波大隊】までも消え失せる。
ドロップ以外の所持品が消える現象……デスペナルティによるものかとアルベルトが考えたとき。
光の柱の外に、一人の……独りの男が立っていた。
ただ独りで立つ男。
俯瞰するアルベルトのコアは、この戦場で初めてその男を見た。
だが、その顔は既知であり、彼が相対していた相手でもある。
戦車に搭乗していた敵の<超級>……【車騎王】マードック・マルチネスに他ならない。
戦車乗りの<超級>が戦車を捨てて、自らの足を地につけている。
「…………」
マードックは、右手の指で一つの形を成す。
人差し指と中指を銃口に、薬指と小指を銃把に、そして親指を撃鉄に見立てた……子供の鉄砲遊びのような右手。
彼が銃口をアルベルトに向けて、
「BANG」
遊びのように呟いたとき、
――アルベルトの【エグザデモン】は一撃で砕け散った。
常識の埒外の衝撃と共に、最凶の鎧が破壊される。
だが、アルベルト自身に傷はない。
意味することは、彼自身が耐性を持つ何らかの攻撃によるものという事実であったが……。
次の瞬間には――アルベルトの鼻先に二種類の【ジェム】が浮いていた。
『!?』
二つの宝石は眼前で炸裂し、アルベルトが耐性を持たないダメージソースで頭部を粉砕した。
◆
その瞬間に何が起きたのか、王国のとある<マスター>はまるで理解できなかった。
王国勢を苦しめていた戦車群が一斉に消えたことで、彼は勝利を確信した。
だが、直後にアルベルトが殺される。
同時に、それを為したマードックの姿を見失った。
彼はどうやってアルベルトが殺されたのかも理解できないまま、敵の姿を捜して……。
「へぁ?」
ブクブクと膨れていく、自分の手足を見た。
加熱され、水膨れし、皮膚の中から蒸気と化した血が立ち上っていく。
やはり何も理解できないまま、彼はデスペナルティになった。
◆
その瞬間に何が起きたのか、エメラダは半分も理解できなかった。
エメラダは眼下の敵を捜していた。
自分の攻撃の只中にあったはずが、一瞬でその中から姿を消した敵を。
あまり賢くはない彼女だが、モンスターとしての本能がその身に危険を知らせる。
天候のエレメンタルであり、数多の気象を操る彼女をして……その敵手から急激に立ち上った気配は寒気のするものだった。
部分的に自分と同質であり――その一点において超越する。
先手を取られれば危ういと、攻勢を緩めぬように敵の姿を捜す。
だが、敵よりも先に敵の攻撃を見つけた。
そして見た瞬間には……遅い。
敵手は十の指を頭上の彼女に向けて掲げており、
――次の瞬間、雲海である彼女の体内に莫大なエネルギーが叩き込まれた。
それは彼女も持つ天の力の一つ、雷撃。
だが、彼女の扱うそれとは桁が遥かに違う。
雷属性超級職の奥義さえも凌駕する異常なる雷の奔流は、その内に蓄えた膨大なエネルギーで彼女を構成する分子の大半を消し飛ばした。
都市規模の体積を持つエメラダのHPがレッドゾーンに届き、主であるキャサリン金剛の定めた帰還域に突入して、彼方の【ジュエル】へと帰還した。
◆
突然の状況の急転を、その二人はぼんやりとしか理解できなかった。
「…………あれ、何だい?」
『我に聞かれても……』
皇国陣地の外。まだ二人だけで戦っていた狼桜と虎櫻は、矛を持つ手を止めて遠巻きにその惨事を見ていた。
戦車の消滅、大鎧の爆砕、<マスター>の悶死、頭上の雲を抉る巨大な雷球。
そして、超級職をして目視困難な速度で、未だ生存する者達を屠り続ける何か。
恐ろしく速い何かが、皇国陣地を動き回り、王国の<マスター>を殺す。
目にも止まらないそれは、しかし明確な軌跡を残しているがために目撃できる。
それが動くたびに雷光が尾を引き、見る者の目に残像が焼きついていく。
『でも、電気であるし、大佐殿では?』
「大佐……ってマードック・マルチネスかい? 随分と、聞いてた話と違うじゃないか」
『わ、我とてあんな大佐殿知らぬ。クランの試験場ではいつも戦車に乗っておった』
虎櫻から見た彼はあくまでも戦車乗りであり、どちらかと言えば広域制圧型の部類だと思っていた。
だが、今の彼は間違いなく個人戦闘型……その中でも上位のバケモノに見える。
動くだけで人間が死に、頭上の巨大モンスターまでも倒してしまった今は……人間サイズでありながら広域殲滅型にさえ見える。
「…………」
狼桜は皇国陣地の外からその様子を観察する。
傍目八目と言うべきか、マードックと今は直接戦っていないからこそ理解できることもあった。
(あいつ、明らかに電力を使いまくってるね。どっかに溜めてたものを全開にして垂れ流すみたいな……。そうかい、アタシやレイと同じタイプかい)
猛者と呼ばれる<マスター>でも戦闘の型は違う。
いや、この場合は性質が違うと述べるべきだろう。
たとえば、狼桜のクランのオーナーであるカシミヤは、『常に同じだけの力で戦える』安定型の実力者だ。
だが、彼女自身や<デス・ピリオド>のオーナーであるレイは、『事前に溜め込んだリソースを解放することで戦力を増す』……言わば決戦型だ。
そして……マードック・マルチネスという<超級>も後者である。
発電と蓄電。
トールが常時発電し続けた電力を、皇国への移籍からこの戦争までの長期間で蓄電し続けた電力を……解き放っている。
だからこそ、桁違いのエネルギーを発して他者を圧倒しているのだ。
(エネルギー切れを狙うのも手だろうけど……難しいね。これまで自分の本当のバトルスタイルを世間に隠し続けてきた奴だ。どれだけの電力を溜め込んでるか分かったもんじゃないよ。だったら……)
狼桜は、横目でチラリと武人風の<マジンギア>を見る。
『大佐殿、なんと圧倒的か。……しかし、なぜ今まであの力を隠して』
「――《背向殺し》」
『げふぅ!?』
マードックの変容に何事かを悩んでいた虎櫻は、背部装甲をぶち抜いたガシャドクロによって本人まで貫かれた。
ギリギリ致命傷ではなかったために、【ブローチ】も発動していない。
『ひ、卑怯な……』
「ハァッハッハァ! 戦闘中に背中を見せる方がマヌケなんだよ! 覚えときな!」
キャラ被りを気にしていた二人だったが、【伏姫】にして熟練PKの狼桜が遥かに不意討ち慣れしていた。
二人は皇国陣地での虐殺を尻目に戦闘を再開したものの、不意打ちのダメージ差は大きく、虎櫻は間もなくデスペナルティとなった。
その時点で平原の皇国戦力は……マードック唯一人。
◆
マードック・マルチネス。
皇国最強の戦車乗りであり、軍人ロールプレイの気さくな男。
そう、周囲には見せかけていた男。
<超級>になってから、彼はそのキャラクターを被り続けた。
意地でも、普段から戦車に乗り続けていた。
例外は、ソロクエストでの失敗が見えたとき。
戦車では対応しきれない巨大な群れ。
【車騎王】が強化した先々期文明の試作兵器でも太刀打ちできない神話級の怪物。
そんな状況でだけ、彼は戦車を降りた。
そして<エンブリオ>の力を解放し、あらゆる敵を葬ってきた。
莫大な発電量と、無尽蔵に電力を溜めこむ蓄電性能。
はっきり言って、この超電力を放出する以上の攻撃手段はない。
戦車のレールガンなど、これと比べればそれこそ遊びと言われても仕方がない。
全てのセーフティ……制御を外した電力使用こそ、雷神の銘を持つ<超級エンブリオ>が最も力を発揮できる。
溜め込んだ電力を、湯水のように流して全てを焼き尽くす。
それはあたかも、今の<マスター>自身。
準備を続け、この戦争に備えた全てが……水泡に帰したマードックに似ていた。
「クッ!? なんなんだこれは!」
「見えない! 奴も、奴の攻撃も……!」
王国の<マスター>達は恐怖する。
自分達と全く異なる速度で動くがゆえに捉えられず、
回避不能なほどの面攻撃を仕掛けても電磁バリアで阻まれ、
そして雷撃であること以外原理不明の攻撃で仲間を葬っていく。
得体の知れないバケモノと化したマードックに恐怖する。
だが電磁バリアに限らず、彼が使う力は先刻までと変わっていない。
アルベルトの【エグザデモン】を破壊し、そしてエメラダを撃退した力はトールの能力特性――送電。
【トールハンマー】と【電波大隊】を動かしていた力。
あれらはトールからの無線送電で稼働していた。
TYPE:アドバンス。対象に電気を付与する力だ。
だが、考えて欲しい。
機械は過剰な電力で破壊され――生物は電気を送り込まれれば死ぬ。
指の形を子供の鉄砲遊びのように整え、照準を合わせ、撃つ。
その動作で対象の体内に直接膨大な電力が送電され、全身の血が沸騰・蒸発して死亡する。
間に盾があろうと無意味。
対象内部への直接攻撃と同義であり、迅羽の必殺スキルに近い。
目視と指による照準合わせが必要だが、送電能力に捉えられれば感電死不可避。
また、敵の攻撃の全てを回避する超速移動もトールによるもの。
その正体は、自身への必殺スキルの行使。
《雷神の残照》によって、三つのプログラムを自身に課している。
第一のプログラムは、【トールハンマー】の持つ《電磁跳躍》の模倣。
自らをレールガンの如く撃ち出して移動するスキルを、必殺スキルで再現している。
第二のプログラムは、間合い内の動体反応の自動回避。
自分に迫る攻撃は、《電磁跳躍》での回避をオートで実行している。
だが、この二つのプログラムの使い方は防御だけではない。
「――――」
マードックの目が【ブローチ】を失った王国の<マスター>を捉えた瞬間、彼の拳はその<マスター>を撃ち抜いていた。
《電磁跳躍》での超速状態による激突。
雷電の速度が生む破壊力は、容易く人体を破壊する。
「が、ぁ……!?」
撃破された<マスター>には、周囲の<マスター>には、理解できない。
なぜあの速度で激突できるのか。
なぜあの速度で――連続移動できるのか。
【トールハンマー】……その完成形である【黄金之雷霆】さえ、《電磁跳躍》には搭乗者保護のための演算時間が必要であり、連続使用は二度が限度だった。
だが、マードックの《電磁跳躍》はそんなレベルではない。
ピンボールのように、弾かれるように、動き続けている。
その上で、オリジナルの《電磁跳躍》のような肉体保護を計算に入れていない。肉体を電磁力で撃ち出し続けているだけだ。
マードックのENDは、決してその異常な行動に耐えられるほど頑健ではない。真っ先にマードックが死んでいて然るべきだ。
「ッ! 守りを固めろ! あんな電力、いつまでも出せるわけがない!」
「耐えて、少しでも……!」
そもそも雷電で人が死ぬならば、制御を外した最大電力を使った時点で真っ先にマードックが死んでいるはずだった。
かの【炎王】が自らの生み出した最終奥義で焼け死んだように。
今も大電力の余波が、彼自身の肉体にも<エンブリオ>の保護機能なしで届いている。
「――――」
実際、かつてはこれで死んでいる。
神話級を倒した、あの日。
<UBM>の脳に最大出力で送電を行ったマードックは、余波によって相討ちになったのだ。
命と引き換えの、自爆同然の大技。
だが、今のマードックは身を焼くことすらなく生きている。
差異の答えは、彼が軍服の内側に身に着けた――ベルトの如き神話級特典武具である。
◆
黄河で彼が倒した神話級……【弔突盲神 シーグースー】は狂気の怪物だった。
盲目でありながら、超音速の巨体で縦横無尽に走り回る。
何があろうと前に進み、ぶつかって、砕いて、殺して、食って、進んでの繰り返し。
狂った山神と畏れられた神獣。
その盲進する怪物を倒して、彼は武具を得た。
得られた武具の装備スキルは唯一つであり、シンプルなもの。
スキルの名は、《自故死の否定》。
効果は、『反動ダメージの消去』。
即ち――彼と彼の半身であるトールに由来する現象は彼を傷つけない。
宿る力は、その一事のみ。
だが、それだけは完全であり、あらゆる法則はこの一事の前で捻じ曲がる。
彼の雷光は彼自身を灼かず。
プログラムを流しても神経は焼き切れず。
《電磁跳躍》で激突しても砕けるのは相手のみ。
人に過ぎた莫大な雷電……神の力を飼い慣らす神話の武具。
<超級エンブリオ>と神話級特典武具、その完全シナジーの一種。
その足は何者よりも速く、その身には何者も届かず、その雷光は何者であろうと砕く。
――彼自身があらゆるモノを蹂躙する最強戦車である。
◆
「…………ハァ」
膨大な電力を放ちながら皇国陣地を駆け回った彼は、やがてその足を止めた。
それは、陣地内の敵影が消え失せたからだ。
陣地の外には狼桜をはじめとする<マスター>がまだ残っているが……それも指で数えるほどでしかない。
王国に傾いたこの戦場の優劣は……彼一人でひっくり返せてしまった。
「…………」
彼は無言で、彼以外には一人も立っていない陣地を見る。
不意に足元に転がるモノ……黒三鬼の【FSC】が落としたシールドの残骸を見つけ、歩み寄る。
だが、シールドは彼が近づいた瞬間に……内側から爆散した。
「……だよな」
今の彼が纏う電力は膨大だ。
漏れだす電磁波は近づくだけで人体の水分を沸騰させ、破裂させる。
それは一切の区別なく……皇国の<マスター>がいても諸共に弾け飛ぶだろう。
<マジンギア>でも、内部から破壊される。
こんな力……仲間がいては使えない。
だが、使えば……圧倒的だ。
皇国の仲間も、彼の好む戦車も、枷でしかなかったかのように……敵を蹂躙した。
そうして今の彼は、独りだけで戦場に立っている。
それは戦争とも呼べない惨劇であるし、彼の望んだ展開でもなかった。
「そういえば……いなかったな」
彼が呟いたのは、とある<マスター>……ルークのこと。
ヒカルに問われ、初弾の映像でこの戦場への参戦を確認した人物。
だが、少なくとも自分が倒した中にその姿はない。
陣地の外でマードックに近づくことを躊躇う王国勢の中にもいない。
ではどこにと考えて……気づく。
「あのときか……」
彼が思いだしたのは空を雲が覆い、アルベルトが広域殲滅を繰り返していたときだ。
あのとき、アルベルトは途中で広域殲滅の威力を落としていた。
威力の高い兵器の残弾が尽きたのかと考えたが、あえてそうしたのだとすれば。
最初の殲滅攻撃で撃破しきれなかった時点で、方針を変えていたとすれば。
【FSC】との拮抗状態を作り、上空を雲と爆風の幕で索敵不能状態にして、
――その間に空からこの戦場を飛び越えたのだとすれば?
「…………大胆なこった。最初に空で痛い目に遭ったのに、あえて行くか」
アルベルトが広域殲滅から狙撃に切り替えて黒三鬼を倒したのは、そのタイミングで彼らがこの戦場を突破したからだろう。
あの時点で、防衛線は突破されていたのだ。
ヒカル達もどうなっていることか。
「……本当に、上手くいかねぇ」
この戦場で彼が指揮した任務がやはり達成できなかったのかと……彼は天を仰ぎながら、言葉を漏らした。
「仕方ない……。ソロで取り返すか」
残った<マスター>を倒し、ルーク達を追い、間に合うならばヒカル達を救援する。
彼がそう段取りしたとき、
――彼の背後から双頭の蛇の如き火炎が襲い掛かった。
「……ハッ」
彼は背を向けたまま、プログラムによる自動回避で火炎を避ける。
その炎にはデータで見覚えがあり、振り向いたときに見えた顔もやはり知っていた。
「……復活は七回までじゃなかったか?」
『――I’ll be back』
――そこに立っていたのは、八度目の死を迎えたはずのアルベルトだった。
セプテントリオンの蘇生回数を超えて、アルベルトは立っている。
「……その台詞は戻って来てから言うもんじゃねえぜ」
マードックはスキル宣言がブラフだった可能性を一瞬考えたが、視界の端に狼桜を見つけ、よりありえそうな答えに気がついた。
それは事前に王国について調べていた情報の一部。
“骨喰”狼桜の持つ致命傷回避のデコイ特典武具。
そして……“トーナメント”の景品の一つ。
「復活の特典武具か」
【バルーベリー】。瀕死からの強化復活能力を有する<UBM>の珠。
それを賞品とする“トーナメント”の優勝者は扶桑月夜だった。
だが、何らかの取引でアルベルトがその特典武具を入手したのだとマードックは察した。
そして復活してなお、今まで姿を現さなかった理由は……。
「仲間を見殺しにしながら、俺の電力切れを期待してたってわけか」
『…………』
トールに蓄積された電力の減少を待っていたからだと、結論付けた。
戦術的に正しいが……マードックは少しだけイラついた。
『…………』
だが、アルベルトはそれを否定するように首を振った。
彼は仲間を見殺しにしたのではない。
仲間から……『待て』と言われたのだ。
彼の復活に最初に気づいた<マスター>達こそが口にした。
『このまま戦ってもまたやられるかもしれません』
『俺達であいつを少しでも消耗させます』
『その後で、あいつに勝ってください!』
――『俺達の屍を越えてゆけ』、と。
戦場で肩を並べた、名も知らぬ仲間の言葉に彼は伏したまま頷いた。
仲間達は言葉通りに少しでもマードックの力を消耗させるべく尽力し、散っていった。
そして今、仲間の屍を越えて超えて……アルベルトはマードックの前に立っている。
共に仲間が全滅してから立ち上がった二人だが、その有り様はどこか対照的だった。
「……そうか」
マードックは、アルベルトの無言の言葉を理解できない。
だが、その機械の目に疚しさも迷いもないことは十二分に理解できた。
そしてマードックは、雷電を発しながら構えをとる。
「【トールハンマー】で一敗。さっきので一勝。……決着の第三ラウンドと行くか?」
『…………』
アルベルトは彼の言葉に、無言で頷いた。
――そして、雷光と炎は交差する。
To be continued
(=ↀωↀ=)<各種作業と作者のスケジュールの都合で
(=ↀωↀ=)<前回に続き次回更新日もお休みです
(=ↀωↀ=)<次回更新日は代わりにコメント返しを更新いたします
(=ↀωↀ=)<申し訳ありませんが、ご了承ください
〇《自故死の否定》
(=ↀωↀ=)<たぶん質問来そうなので先に明記しますと
(=ↀωↀ=)<これ自分由来(<エンブリオ>含む)の反動限定なので
(=ↀωↀ=)<装備品の反動ダメージは消せません
(=ↀωↀ=)<だから例の斧は使えませんし
(=ↀωↀ=)<【トールハンマー】に乗ってるときの《電磁跳躍》もゴルド以下の性能で一回ずつです
(=ↀωↀ=)<……まぁ、降りたら無制限で《電磁跳躍》しまくるんですけどね