第三十八話 眠るあなたに
(=ↀωↀ=)<今回は区切りの都合で短いですが
(=ↀωↀ=)<意図的にここで切りたかったのです
その他:
(=ↀωↀ=)<シャングリラ・フロンティア、本日より週刊少年マガジンで連載スタート!
( ꒪|勅|꒪)<何で他所様の宣伝してんだヨ
(=ↀωↀ=)<ファンとして嬉しかったので……
□国教教会
方針も定まり、<デス・ピリオド>も出陣準備へと移る。
今回の追撃メンバーは、レイとビースリーを除いたその場の全員。
レイは動ける状態でなく、ビースリーも<墓標迷宮>戦でのダメージや装備の損耗が残っている。装備の自然回復だけでなく王都に詰めている生産職に依頼しての耐久度回復の最中でもある。
「重傷のレイさん一人を置いていく訳にもいきませんしねー。ネメシスちゃんも追撃に参加してもらっちゃいますし。ちゃんとガードお願いしますよ? タンクでしょ?」
「言われるまでもありません」
煽るようなマリーの言葉に、ビースリーは眼鏡のブリッジを押し上げながら答えた。
「<連合>の皆さんも、お願いして大丈夫ですか?」
ルークは教会で治療を受けている幾人かの<マスター>……<AETL連合>の<マスター>達に声をかけた。
「ああ。オーナーが残ってたらそうするだろうしな」
「追撃に参加できるほど状態良くないですしね……」
ルーク達と共に教会まで移動した<AETL連合>の者達も、レイのガードに残る。
「追撃の件、サブオーナーにも伝えたかったんだけど……さっきから全然繋がらなくてさ」
「ヴォイニッチ氏が?」
「うん。フレンドリスト見るとデスペナにはなってないっぽいけど、通信機が壊れたのか、かなり立て込んでるのか。北の方の皇国の拠点を潰しに行ってるらしいけど……」
「まぁ、繋がったらそっちに向かってくれるように伝えるよ」
「お願いします」
ヴォイニッチは王国の数少ない戦闘系準<超級>の一人であるため、戦力として加わってくれるならば心強いが……ルークは現状では期待しない方が良いだろうと考えた。
「…………」
今回のルール上、ティアンの施設内部ならばそうそう狙われないだろうが、しかしそれでも安心できないとルークは考えた。
立地、ビースリーや<AETL連合>、それ以外にももう一枚、レイを守る手立てがいるのではないか、と。
しかし、ビースリーとマリーが呼び掛けたクランや、『ルーク自身が協力を打診した人物』はイゴーロナク追撃のために必要で、こちらには割けない。
追撃に使えず、しかし護衛には使える。
そんな都合のいい、あるいは使い勝手の悪い戦力は……しかし心当たりがなかった。
思考を続けながら治療施設を出て、聖堂へと移動する。
朝から人が多く訪れており、幾つも並べられた長椅子の八割近くは埋まっている。
今日から始まった戦争に際して思うことがあるのか、皆一心に何かに祈っている。
神なき宗教ではあるが、祈るという行為は神がなくとも発生する。
そうした祈る人々の中に……。
「――――」
ルークは一つの異物を見つけた。
それは黒い装いの人物だった。
キリスト教神父のカソックではなく、仲間であるレイやマリーの黒とも違う。
長椅子に座っていたのは――夜空模様のコートを着て片目を閉じた青年である。
「…………」
黒い青年は無言のまま、手元を見ないまま、掌中のメモ帳に何かを書きつけていた。
ルークは彼と直接会ったことはない。話したこともない。
しかし、その容姿と如何なる者であるかは……聞いていた。
ルークは意を決し彼に近づき……そして問う。
「どちら側ですか?」
それはシンプルな問い。
お前は敵と味方のどちらだ、という戦争において問うべき言葉。
対して、黒い青年の返答は……。
「この<トライ・フラッグス>が一つの物語だった場合」
質問の答えではない文言から始まり、
「――眠る彼を殺すと守るでは、どちらが面白いと思いますか?」
――答えとも言える質問で返した。
「…………」
レイから聞いていた言動や、嘘か真か小説家だという素性。
交戦の可能性を考えて調べたこれまでの前科。
そして今、向かい合って一言二言だけ言葉を交わす。
ルークと彼の関わりはただそれだけだ。
しかしそれでも、分かることはある。
ルークが情報を分析して彼に抱いた印象は、二つの単語で説明できる。
それは『愉快犯』と『演出家』。
金銭的な損得でなく、自身の好奇心のために様々な事件を起こしてきた『愉快犯』。
しかし同時に、展開を劇的にせんとする『演出家』でもある。
レイなどは『取材犯』の一言で片づけていた。
そんな人物であるならば……。
「物語と言うならば……寝首を掻いてレイさんを退場させるのは意外性ばかり重視した三文小説でしょう?」
「…………」
ルークの言葉に、黒い青年は無言のまま微笑んだ。
それが肯定の笑みであると、ルークには分かる。
彼はレイの物語の続きを……劇的な見せ場があると信じ、それを観戦したがっている。
だからこそ、この場面での退場を望まない人物の一人である。
ルークは、そう納得した。
そして銀の少年と黒い青年は共に沈黙して、暫し視線を交わす。
短くも長い時間が過ぎて、教会の外からルークを呼ぶ霞の声が聞こえたとき……両者の交錯は終わった。
ルークは彼に背を向けて、教会の外へと歩き出す。
「預けます」
「預かりましょう」
そうして二人の間で、一つの約束が交わされた。
敵か味方かも定かではなく、追撃に使えるはずもなく、最悪は背中から撃ってくる。
しかしある一点では信頼でき、レイの護衛も任せられる。
そう判断し……ルークは自身の戦場へと向かう。
そして黒い青年は……。
(<超級>を含む大規模戦闘。私が事前に皇国側の戦力を確認した限り、あちらも面白くなりそうだ。しかし、今はこちらを見ていよう)
――【光王】エフは物語の取材と彩りのため、かつて自分を倒した者の護衛を担う。
◇
「……レイよ。私は奴らを追う。私の感覚が、追跡には必要だからの」
教会奥の治療施設の一室で、レイは昏々と眠り続けている。
彼のベッドの傍らにはネメシスが立ち、二人以外の誰もこの部屋にはいない。
治療を終えた教会の【司教】は退室しており、仲間達も出撃準備を整えている。
今は、二人だけだ。
「追わねばならぬ。そうせねば、<墓標迷宮>の戦いで我らを護ってくれた者達に報いることができず、この戦い自体も敗北するかもしれぬ。御主もきっと、『それは後味が悪い』と言うだろうから」
眠るレイの顔を見下ろしながら、ネメシスは語りかける。
「……御主が眠っていてよかった。起きていれば、きっとその体でも一緒に追っただろうからの。御主はいつも、無理をし過ぎる」
ネメシスは苦笑しながら、眠るレイの髪を撫でる。
「しかし、眠る御主と戦場に向かう私、か。まるで、あのときのようだの……」
それは、まだ二人がこの世界に足を踏み入れて間もない頃。
<クルエラ山岳地帯>で、【怨霊牛馬 ゴゥズメイズ】と相対したときのことだ。
あのときも……ネメシスは眠るレイを置いて一人で戦場に踏み込んだ。
「けれどな、今度は『早く来ぬか』とは言わぬよ」
眠るレイの額に手を当てて、静かに呟く。
「私は必ずここに帰ってくる」
ネメシスは、レイの前髪を少しだけかき上げた。
「そして、御主が目覚めるのを待っている。いつも体を張る御主が……ゆっくりと眠って目覚めるのをな」
それから、そっと顔を近づけて、
「――だから今は、安心して休め」
――レイの額に小さく口づけをした。
「……ではな、行ってくる」
眠るレイにそう告げて、ネメシスは静かに部屋を出た。
To be continued
(=ↀωↀ=)<ヒロイン
( ꒪|勅|꒪)<また寝てるときにキスしてるな
(=ↀωↀ=)<でもね
(=ↀωↀ=)<今回は二章や三章と違って用途上の必要がないキスなんですよ
( ꒪|勅|꒪)(ていうか三章の口でやる《復讐》ってキスにカウントされるか?)




