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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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第二十五話 愛する者達へ

(=ↀωↀ=)<直前で微修正に気づいてちょっと遅れつつ本日二話更新


(=ↀωↀ=)<まだの方は前話から


(=ↀωↀ=)<更新不定期気味なので、どこから読んでないかご確認の上でお読みください


(=ↀωↀ=)<流石に次は休みたい(書けちゃったら更新するけど)

 □<墓標迷宮>・地下二階


『……追ってこねえな』


 大広間を出て逃げ出したバルバロイは、後ろを振り向いてイゴーロナクの姿がないことを確認する。

 あるいは転移で奇襲を仕掛けてくる恐れもあったが……バルバロイの推測が正しければあの転移能力にも何らかの制限があるだろう。

 むしろ、自由に転移で奇襲を仕掛けられるならば、初回と三回目は通路を歩いてくるのではなく大広間のど真ん中に出現すればよかったのだ。

 しかし転移を使ったのは二回目と四回目、どちらもイゴーロナクが大広間の中に入った後だった。

 それなりに面倒な条件があるのは間違いない。

 少なくとも、姿も見えない内にこの通路で奇襲を受けることはないだろう。


(レイ君とは……逸れてしまいましたか)


 視界のない状態、しかもイゴーロナクのいる方向を見ないようにして逃げたのだ。

 イゴーロナク自身の激突音や破壊音のせいで周囲の様子を窺うのも難しく、レイがどちらに逃げたのかは確認しきれなかった。

 結果として、バルバロイの傍に彼の姿はない。


(けれど、通路の分岐はそう多くない。ここに私一人ということは、彼の方は他の<マスター>の何人かと行動を共にしているでしょう)


 ならば、ひとまずは問題ないはずだ。


(彼はイゴーロナクの動きの違和感から、何かを察していた。それは恐らく……視界)


 バルバロイ自身も感じていた。

 相手の攻撃が妙にブレる……あるいは正確性を欠くことが多いと。

 それは<エンブリオ>で装備品をリビングアーマーの類に変えたためかと思ったが、大広間からの脱出劇でそれだけでもないと理解した。

 そも、イゴーロナクというのはクトゥルフ神話における神の名だ。

 自らが直接動くことはなく、従者によって悪徳を為す。遠隔操作の<エンブリオ>にマッチしたモチーフであるが、イゴーロナクにはより顕著な特徴がある。

 それは、モチーフのイゴーロナクには頭部がなく、イゴーロナクの力を受けた従者も目を持たないということ。


 つまり――イゴーロナクにまつわるものは目が見えない(・・・・・・)


 あのイゴーロナクは頭部のないパワードスーツだった。

 それは頭部が胴体に埋まった形状というだけではなく、センサーの類もないようだった。

 それはもしかすると、付けても意味がないからかもしれない。

 あれが一時的に装備品を<エンブリオ>化して遠隔操作する<エンブリオ>だとしても、装備品からは何も見えず、情報共有が発生しないのだろう。

 本来は<マスター>の視界内限定の遠隔操作なのかもしれない。

 だが、イゴーロナクは攻撃を仕掛けてきた。

 周囲に<マスター>と思われる人物がいない状態で、ブレはあってもある程度の狙いはつけていた。

 その理由が……。


(使っていたのは私達の視界、ですか)


 十中八九、イゴーロナクの正体は複数人で遠隔操作の鎧を運用するパーティだ。

 サポートは転移等だけでなく、視界確保の<エンブリオ>もいる可能性は高い。

 しかしそれは千里眼や【光王】のドローンとは異なる。前者であれば攻撃が不正確に過ぎるし、後者であれば戦闘の最中でそれらしいものが発見できるはずだ。

 恐らく、人間の視界をモニターする<エンブリオ>だとバルバロイは……そしてレイは読んだ。

 だから視界をモニターした人間の動きによって画面(・・)がブレ……動きも正確性を欠く。


(私達自身が中継カメラを身に着けて動き回り、イゴーロナクはそれを観ながら動かしていたようなものですね)


 ならばむしろ、あの程度のブレであったことは操縦者の技術の高さを示すのかもしれない。

 だが……。


『今は大広間が無人になって、誰もイゴーロナクを視認していない。煙幕の中を走ったから、レイがどう動いたのかも把握できないはず』


 つまり今、イゴーロナクは自機の位置もターゲットの位置も見失った状態だ。

 TPS――三人称視点シューティングゲームと考えてもまともに動かせるわけがない。


(ある程度はまごつくでしょうが、今の内に地上に出るべきですね)


 バルバロイは大広間を避けて一階への階段を進む。

 ティアンもいる地上に出てしまえば、イゴーロナクは戦闘行動は行えない。

 潜り抜ける手段があった時点で<墓標迷宮>は既に避難所として機能していないため、地上の方がマシと言える。

 地上に行く途中でイゴーロナクの本体に出くわす恐れもあったが……。


(……もしかすると、本体は<墓標迷宮>にさえいないのかもしれない)


 そもそも、転移ならば潜り抜けられる公算が高い。

 以前に与太話だと思って聞いた逸話の中に、『アクシデントサークルの転移でダンジョン内部に移動していた』というものもあった。

 物理的な移動でなければ制約も突破して入れてしまうとすれば、<墓標迷宮>にいるのは本体ではなく、手引きした仲間の一人でしかない可能性が高い。


(そうなると、転移自体にも制限がありそうですね。何でも転移で送れるのなら……それこそ【獣王】でも放り込めばいい)


 それをやられていたら今頃は全滅だったが、そうはされていない。

 できないと見るべきだろう。

 最低限、『生物』……あるいは『人間』を転移させられないと見るべきか。


(遠隔操作、復活、視界ジャック、転移。どれもこれも欠陥がある。それらを噛み合わせて一体の<超級>モドキとして運用できていたのなら、逆に褒めるべきなのかもしれませんね)


 バルバロイは相手をそう評して、地上への道を歩き……。


(……運用?)

 その足を止めた。


(なぜ、運用できている(・・・・・・・)?)


 バルバロイは気づいたのだ。

 仮に複数人で動かしているのだとしても、腑に落ちない。

 明らかに、<超級>ならざる者が扱うにはコストが重い能力だからだ。

 特に、転移だ。武装転移、短距離転移、どちらも複数回は使っていた。

 しかも間隔は短い。


『…………』


 転移は極めてコストが重い。

 長時間のクールタイムか、あるいは膨大なMP消費、どちらかでなければ使用が難しい。

 短時間の連続使用が出来ている時点で、異常だった。


『……レイ!』


 自身の感じた悪寒を無視できず、バルバロイは地上へのルートではなくレイとの合流を目指した。



 ◆◆◆


 ■王都――地下


 王都の地下……かつての業都の地下構造物と地下水脈を避けた位置を、巨大な兵器が潜行していた。

 それは、紅い薔薇のような装甲色の機械蜈蚣――【紅水晶之破砕者(ローズ・ブレイカー)】。

 蜈蚣(ワーム)型らしく持ち合わせた地中潜行能力で、王都近郊の地下にまで接近していた。

 だが、細心の注意で地上には影響を及ぼさないようにしている。

 幸いにして、【紅水晶】に搭載された高度なセンサーと人工知能は、そのオーダーを問題なく実行していた。

 【紅水晶】はソフト面に関してはオリジナルの煌玉馬に匹敵……機体内部スペースの余裕とそこに積んだ思考回路の量を考えればより高性能とも言える。

 そんな【紅水晶】の操縦席には、六つのシートがあった。

 元より一パーティで運用することが想定され、前に傾斜する六角形で配置された席に、今は左下の空席を除いて人が座っている。


 それは……バルバロイに『チームイゴーロナク』と呼称された者達である。


 【紅水晶】こそが、彼らの本拠地であり……彼らはここから<墓標迷宮>の内部に干渉していたのだ。


「クソッ! クソクソクソクソッ!」


 苛立ちと共に、一人の青年が自らの椅子の肘置きに拳を叩きつける。

 その手に装着されているのは、前世紀のグローブ型コントローラーのような機械手袋。

 特徴は、両方の掌に『口』のような意匠があったことか。

 その機械手袋こそ第六形態(・・・・)のTYPE:アドバンス・レギオン、【寄操纏鎧 イゴーロナク】の本体である。


「あんな手で、こっちを振り切りやがって!」


 イゴーロナクの<マスター>であるヴィトーは、レイにしてやられた怒りを吐き出していた。

 彼の<エンブリオ>であるイゴーロナクは防具又は人型の特殊装備品を、遠隔操作可能な<エンブリオ>に仕立て上げる<エンブリオ>だ。一度に操作できるのは一体のみだが、最近は仲間の一人が造った特殊装備品……【煌玉兵レプリカ・イゴーロナク壱型】をメインに運用している。

 『自らは表に出ず、従者によってさまざまな悪徳を行う神』の名を冠した<エンブリオ>に相応しい能力とも言える。

 また、イゴーロナク化した装備はヴィトーの持つスキルを最大三つまで使用可能になるという追加効果もある。(大抵は銃器の威力上昇スキルと、装備切り替えのための《瞬間装備》しか使用されないが)

 ただし、欠点もある。

 遠隔操作できるが、視界は得られない。

 バルバロイの読み通り、元の装備にセンサー類があったとしても機能しないため、遠隔操作と言ってもヴィトーの視界内でしか動かせないのだ。

 明確な欠点だが、その欠点をカバーするのが他のメンバーの<エンブリオ>だ。


「みっちー! 視界は!」

「見ての通り」


 ヴィトーの声に神経質そうな眼鏡の少年が答える。

 【紅水晶】の操縦席にはモニターが二種類ある。

 一つは【紅水晶】が元々備えている機体のモニター。周辺の光学情報やセンサーで獲得した地下の地形情報が表示されている。(最も近い構造物の情報は、<墓標迷宮>であるが内部のスキャンはできないようで白化している)

 加えてもう一種、どこか和風且つ生物的な装いのモニターが最前列のシートに座るヴィトーの前に置かれていた。

 まるで鏡の妖怪のようなモニターには、レイの姿……レイの傍にいる誰かの視界をハッキングした映像が映されている。

 それは次々に切り替わって王国の<マスター>や<墓標迷宮>の風景を映すが、そのどこにもイゴーロナクの姿はない。


 そのモニターこそ、みっちーの<エンブリオ>であるTYPE:テリトリー・カリキュレーター【集団環視 モクモクレン】である。

 モクモクレンのスキル、《籠目籠目》は他者の視界を覗き見て、本体であるモニターに映す。

 ゆえに、敵や第三者の視点からイゴーロナクの周囲の映像を獲得することができる。

 視界が安定しないため射線や操作にブレは出るが、遠隔操作の欠点を潰してはいる。

 ただしこちらにも欠点はあり、最大射程が長い代わりに長距離・多人数と繋ぐほどにMP消費が激しくなる。


「駄目だね。完全に相対位置を見失った。迂闊だった。レイ・スターリングの戦法に瘴気による煙幕もあったことを失念していたよ」

「と、咄嗟に閉じたから、毒ガスはこっちまで流れてこなかったけど……」


 そう述べたのは、帽子を目深にかぶった気弱そうな少女だった。

 彼女の前にあるのは、小石程度にまで縮まった金属環。

 あまりに縮まって、輪ではなくなってしまったこれは<エンブリオ>だった。

 メンバーの一人であるスモールの<エンブリオ>、【指輪交換 チェンジリング】。

 その能力特性は、世にも珍しき転移ゲート(・・・・・)

 眼前の縮小した金属環は本体だが、これと幾つかの子機を繋いで様々なものを行き来させることができる。

 ただし、人間範疇生物は通れないという制限と、輪の直径に応じて時間ごとに莫大なMPを消耗する欠点がある。

 だがイゴーロナクとその武装は問題なく通過でき、イゴーロナクを<墓標迷宮>に送り込んだのもチェンジリングの力である。

 また、ガトリング砲を撃つ際は、イゴーロナクの背中に隠したゲートから給弾チューブを通し、【紅水晶】操縦席側の巨大弾倉に繋いでもいた。

 ただし、最小にまで縮小した今は音しか通らず、通信機程度の役割しか果たせない。(余談だが、イゴーロナクから発せられた声もチェンジリングを介したものである)


「お、お兄ちゃん、ジャンプは?」

俺の方(・・・)のチェンジリングは配置換えスキルだからな。イゴっちが見えないんじゃ仕方ない」


 スモールに兄と呼ばれた男……リアルでも双子の兄であるラージはやれやれといった様子でそう述べる。

 彼の<エンブリオ>は、【立場交換 チェンジリング】。

 妹の<エンブリオ>と同じ銘であり、同様に転移系だが効果は異なる。

 それは予め彼の<エンブリオ>の本体――刃のついた指輪――でマーキングしたものに限り、彼の視認範囲内に限って任意対象と位置を入れ替える形で転移可能というものだ。

 視認範囲はモニター越しも含まれ、煙幕を使われる直前の攻防ではモクモクレンのモニター――レイとイゴーロナクの双方を視認していた<マスター>の視界――の中のイゴーロナクをレイの背後の空気と入れ替えて転移させていた。

 一回ごとのMP消費は激しく、転移距離が延びればさらに消耗するが、クールタイムは一分程度と短い。

 だが、誰の視界内にも対象となるイゴーロナクがない現状では、それもできない。


「でよ、このまま<墓標迷宮>の外に出られるのはまじぃよな?」


 ラージの言葉に、仲間達も頷く。

 <マスター>しかいなかった<墓標迷宮>とは違い、地上にはティアンも数多くいる。

 戦闘になればイゴーロナクを操作するヴィトーがデスペナルティになるため、追跡を断念せざるを得なくなる。


「……またメロのところの子機から再出撃するか?」


 ヴィトーはこの場にいない六人目の仲間、王国所属(・・・・)として<墓標迷宮>に入った女性の名を挙げる。

 【イゴーロナク壱型】も含めて運用する装備品の生産担当であり、つい先日まで王国の遺跡調査のために別行動していた仲間である。

 スモールのチェンジリングの子機を持たされており、イゴーロナクを投入できたのは彼女のお陰だ。


 そして、彼女の<エンブリオ>……【偏執複製 パラノイア】こそがイゴーロナクの不死身の要でもある。

 パラノイアのスキルはラージのチェンジリングと同様、物品に刻印することで効果を発揮する。

 パラノイアのスキルを付与された物品は損傷を負ったとしても、損傷度合いに応じて使用者のMPを投入することで万全の状態に回復(リスポーン)することができる。

 それゆえ、イゴーロナクや装備品である銃器に使用した場合、操縦者であるヴィトーのMPさえ担保できるならば半永久的に戦闘可能だ。

 しかしながら、本来は物品にとって対象外である状態異常は回復できない。

 そのため、【石化】などで封じ込められると修復自体が不可能になっていた。


「連中もこちらのトリックには気づいているだろうね。次の出撃はメロが危険だ」


 冷静なみっちーの言葉に、一同が唸る。

 【石化】で封印された際はメロの手元の子機から予備のイゴーロナクで再出撃したが、あれも危うい橋だった。

 あちらもトリックに気づいた今、次の再出撃は仲間のデスペナルティが掛かることになる。


「……連中、ダンジョン専用の【テレポートジェム】で抜けてないよな?」

「しないだろうな。あれでの転移直後は動けないし、アクティブスキルも使えない。何より脱出先が固定なんだ。見張られていれば、無防備を晒すことになる。その危険は向こうも知っているだろう」


 彼らを使った<墓標迷宮>への奇襲を提案したのは皇国である。

 彼ら以外に潜伏・奇襲に特化した<マスター>を潜ませている可能性は十二分にあった。


「だから警戒しつつ階段上って脱出するってことだ。まだ間に合うぜ」


 しかし、手をこまねいていれば徒歩でもすぐに迷宮を脱出してしまうだろう。


「『命』を見つけた以上、逃がす手もない」


 そのとき、操縦席の最上段にある席から声が掛けられる。

 彼らのリーダーである女性――ヒカルの言葉だ。


「初日の初戦だが、ここで切り札を一枚切るぞ」


 <叡智の三角>の本拠地でフランクリンやマードックと会話したときとは異なる口調。

 ヒカルは仲間達のリーダーとしての強い言葉遣いと共に、右下のシート……みっちーを見る。


「みっちー。必殺スキルの用意を」

「一階と二階、ついでに三階も含めよう。万が一にもティアンを巻き込む危険は冒せないから、対象は<マスター>と<エンブリオ>に絞る。……かなり多いね。相当な消耗になるよ?」

私なら問題ない(・・・・・・・)

「それはそうだ」


 モニターに映ったレイの姿を見ながら、ヒカルは言葉を発する。


「バルバロイ・バッド・バーンとレイ・スターリング……流石だ。私達の戦闘スタイルと弱点を八割方看破してみせた。修羅場を潜った数が違う。遠隔操作同士でやり合った【光王】戦より、余程に熾烈だ」


 集団に対し何度も見せたとはいえ、自分達の手口をこうも読まれたのは驚きだった。

 紛れもない強敵と言えるだろうが……。


「だけど、残りの二割で致命的に間違えた」


 ヒカルは冷たい視線をモニター内のレイに向けながら、言葉を続ける。


「<超級>のフリした二流パーティ、か。たしかに、ヴィトーのイゴーロナクはまだ<超級エンブリオ>じゃない」


 操縦を担当するヴィトーはバルバロイの挑発に激昂し、ヒカルの制止も聞かずに動いてしまった。

 しかし今、似たような言葉をヒカルから聞いてもその表情に不快さは一切ない。

 むしろ、笑っていた。

 怒るのも、笑うのも、理由は同じ。


 ――自分達の力を、知っているからだ。


「だけど、私達は嘘じゃない」


 ヒカルの左手の、魔女の釜を象った紋章が輝く。

 それは彼女の有するTYPE:アドバンス・ルール、【鴻大霊釜 ケリドウェン】の、



「教えてあげよう――私達(イゴーロナク)を」

 ――<超級エンブリオ(・・・・・・・)>の紋章である。



 ヒカルはみっちーへと、自分の左掌を向ける。


「《愛する者達へ(ケリドウェン)》――MP供与一五〇万(・・・・・・・・)


 ヒカルの掌から、濃密な輝きがみっちーへと流れていく。

 それは彼の身体にまとわりつき、みっちーは自身のステータスを見ながら苦笑した。


「……少し多いよ。でもこれなら間違いない」


 それはみっちー自身の最大値を超えてオーバーフローした、一五〇万のMP表示。

 ヒカルから彼に、使用権を譲渡された(・・・・・・・・・)魔力である。


 ケリドウェン。

 それはケルト神話において息子に知性を与えるため、知識と霊感の大釜で秘薬を作らんとした魔女の名である。

 その存在をモチーフとしたケリドウェンの能力特性は、他者へのMP供与……のみ(・・)


 代わりに……ケリドウェンのMP補正はEX(・・)である。


 無論、かの“魔法最強”の<超級エンブリオ>であるグラールには大きく劣る。

 同じEX補正と言っても、S補正の三〇〇%よりは多いがという程度の意味でしかない。


 精々で――三〇〇%アップから三〇〇()になる程度の話だ。


「必殺スキル発動と同時に眼を放ち、仕掛ける。戦闘ではヴィトーの必殺スキルも使う。やれるな?」

「あったりまえだ!」


 ヴィトーが吼え、コントローラーでもあるグローブを強く握りしめる。


「みっちー、実行だ」


 ヒカルの指示にみっちーは頷き、


「――《うしろのしょ(モクモ)うめんだあれ(クレン)?》」

 次の瞬間、膨大なMPを消費して放たれたみっちーの必殺スキルが<墓標迷宮>一階から三階の全王国<マスター>を捉えた。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<はい。<超級>と見せかけた偽装<超級>


(=ↀωↀ=)<――と思わせて<超級>がリーダー務める複合ユニットです


(=ↀωↀ=)<この一時間を楽しむための連続更新



〇ヒカル


(=ↀωↀ=)<イゴーロナクリーダー、ヒカル


(=ↀωↀ=)<全<マスター>No2のMP保有者にしてMPパサー


(=ↀωↀ=)<生産型とも異なる『自分一人で完結しない<超級>』


(=ↀωↀ=)<表面上は不死身が売りだが、本質はMP大富豪パーティ(リアル幼馴染パーティでもある)


(=ↀωↀ=)<復活でMP、視界探知&ハックでMP


(=ↀωↀ=)<トドメに転移が二人もいて燃費最悪のパーティをMP特化の<超級>が無理やり動かす


(=ↀωↀ=)<ちなみに燃費極悪煌玉蟲の【紅水晶】も彼女一人で動かしてる


( ꒪|勅|꒪)<……ン?


( ꒪|勅|꒪)<三〇〇倍補正で届かないって、【地神】どうなってんダ?


(=ↀωↀ=)<パサー抜いて全部補正にぶち込んだので……


( ̄(エ) ̄)<…………


(=ↀωↀ=)<ちなみに似てるようで正反対の<マスター>が皇国にもう一人いる



〇イゴーロナクの役割分担


ヒカル:MP供給

ヴィトー:<エンブリオ>化・遠隔操作

みっちー:索敵・視界確保

ラージ:戦闘中の空間転移

スモール:イゴーロナクと操縦席を繋ぐ転移ゲート

メロ:装備作成と復活(本人不在でも刻印済みなら実行可能)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 第六形態のTYPE:アドバンス・レギオン、【寄操纏鎧 イゴーロナク】 イゴーロナクのレギオン要素はどこか教えてください!
[気になる点] デンドロにおいて、地脈とはどういう扱いなんですか? [一言] MPを受け取りすぎて体が爆発四散したりはしないんですね。
[一言] この仕様だと一対一、あるいは自分以外は全て敵の状況下で勝ったあとイゴーロナクは行動不能に陥りそうだけどみんなで歩いて取りに行くのかな…? 流石に乗り捨てるのはもったいないし回収すると思うけど…
感想一覧
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