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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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第十九話 未確認飛行要塞

(=ↀωↀ=)<いよいよアニメ最終回です


(=ↀωↀ=)<最速は本日28:30からAT-Xで放送です


( ꒪|勅|꒪)<……時間的に本日って言うのカ?


(=ↀωↀ=)<そして16日深夜から順次地上波等でも放送です


(=ↀωↀ=)<色々ありましたが、よろしければご覧ください


(=ↀωↀ=)<それとオンラインオンリーショップでのサイン本も明日から追加販売です


(=ↀωↀ=)<追加でサイン書いてます

 □【聖騎士】レイ・スターリング


 戦争前日の朝。

 王城のテラスから見上げた空には、見慣れないモノが浮かんでいた。

 小さな島と、それに乗った城。

 ガリバー旅行記、あるいはそれを題材としたアニメ作品に登場するモノとよく似ていた。


「……あれがラピュータか」


 <黄河四霊>の一人であるグレイ・α・ケンタウリ。

 その<超級エンブリオ>が、今王都上空に浮かんでいるあの城だ。

 以前に迅羽から聞いていた通り、ツァンロンとエリザベートの護送のためにやってきたのである。

 戦争前には出発するという話だったが、前日なのでギリギリだ。

 五月四日にネカフェで短時間ログインしたときも、トラブルで到着が遅れているとは聞いていたが……。

 ラピュータから街中の一角……開けた広場に光の柱が伸び、人や物がその中をエレベーターのように登っている。所謂トラクタービームという奴だろう。

 迅羽達に同行する人々と物資を乗せて、これから黄河への旅に出る。

 ティアンはツァンロンについてきた黄河の人達や、エリザベートについていく侍女達。

 <マスター>はランキング外で戦争に参加できない者から希望者を募ったらしい。

 いずれも【契約書】を用いて契約しているし、裏切られてどうこうという心配はほぼない。

 通常、ログアウトのある<マスター>は長期の護衛任務には向かないとされるが、今回は戦争期間と重なっている。

 三日間の戦争期間中はまずログアウトせずに同行できるため、護衛も可能だ。

 それに迅羽が同行するので、彼女の持ち物である移動式セーブポイントも活用できる。迅羽がいないときもツァンロンが代理で管理するらしく、それによって戦争期間後の移動も大丈夫らしい。

 また、グレイ氏がログアウトするときはカルディナに点在するオアシスに停泊する。それも含めて、カルディナからの許可は得ているそうだ。

 そんな訳で、彼らは続々とラピュータに乗り込んでいく。


 その様子を、<デス・ピリオド(俺達)>は招き入れられた王城のテラスから見ている。

 とは言っても、現在ここにいるのはメンバーでも一部。俺とネメシス、ビースリー先輩のみ。

 レイレイさんは常の不在。

 マリーは護衛を依頼したという人物に会いに行っているし、兄も知り合いだというグレイ氏と話しに行っている。

 フィガロさんは迅羽が黄河に発つ前に最後の模擬戦を希望したので、ギデオンにいる。ハンニャさんは付き添いだ。今頃は決着してギデオンから王都に向かっているかもしれない。あの三人なら然程時間は掛からないだろう。

 霞達は王都でアイテムの購入などの準備中。

 そしてルークは……分からない。

 同行していた霞曰く、内部時間で十日ほど前には先に返されていたらしい。

 ルークは、一人でどこかに籠っているのだそうだ。

 それがどこかを尋ねても、口止めされているらしく霞は話さなかった。

 ただ、霞のタイキョクズを必要としたそうなので、<マスター>を避けながら移動した先であることは察せられた。

 ……目を離すとトンデモになるルークだ。今回も何かおかしなことになっているかもしれない。

 ともあれ、今は無事に戻ってくることを祈るしかないだろう。


「それにしても、何だか事務的な搬入だのぅ」


 ふと、ネメシスがラピュータのトラクタービームを見ながらそう呟いた。


「本来なら式典も執り行われるのでしょうが、情勢が情勢ですからね」

「……そうですね」


 隣でラピュータの出発準備を見ている先輩の言うとおりではあった。

 王女の輿入れ。平時であれば、盛大に送り出せただろう。

 けれど、この国は明日には……今日の深夜には戦争に突入する。

 ゆえに、式典もできない。むしろこれは、避難にも近いからだ。


「…………」


 今、アズライトと妹のテレジアは、エリザベートと最後の別れをしている。

 あるいは今生の別れになるかもしれないと考えながら。

 そこに分け入ることは誰にもできない。

 だから俺達<マスター>だけでなく……リリアーナやインテグラもここにいる。


「リリアーナさん達は、この後にアズライト達と移動でしたっけ」

「はい。国境地帯に建てられた施設まで。……不安はありますが」


 今回の戦争で設定されたルールのうち、基本である<トライ・フラッグス>から少し逸れたルール。


 『指定人物は戦争期間中は国境地帯の指定施設から動かない』、というものだ。


 両国の<マスター>、及び両国のトップと接触した<マスター>は、施設に一定以上近づかないこと。

 施設内での戦闘行為をはじめとした害する行為を行わないこと。

 施設への攻撃を行わないこと、などである。

 これら一連のルールを持ちかけたのは皇王である。

 曰く、『明確に勝敗を決めるために<トライ・フラッグス>のルールを設定したのに、ここで首脳陣が害されようものならその後の裁定も破綻しかねない』という危惧のためだ。

 一理ある。たしかに両国の上層部が消失した場合、戦争後も混乱が収まらないだろう。

 また、ルール内で前回の講和会議での【盗賊王】のようなケースにも対処されている。範囲外からの攻撃も同様だ。

 それでも懸念はある。


「二人とも心配そうだね。まぁ、安心したまえよ。戦闘は禁止されているから、あちらも手荒い手段はとれないさ。それに【大賢者()】がいれば、大抵のことは何とかしてみせるとも。最低限、アルティミアを逃がすくらいはね」


 俺とリリアーナに対し、インテグラはそう言って胸を張った。


「……だけどこのルール。もしかしなくてもアズライト封じだろ?」


 あらゆるものを断つ【元始聖剣】使い。

 戦場に出れば、あの【獣王】や皇国が雇ったという個人生存型の<超級>をも破りうる。

 だからルールで隔離しておきたいのだろうと、兄も言っていた。


「その通りだろうね。それに自慢じゃないが、私も王都襲撃で色々やったから指定されちゃってるよ。ただ、それと引き換えにあちらのティアン戦力も封じられるならありがたい。特に【無将軍】の厄介さは君もカルチェラタンでご存知のはずさ」

「……たしかに」


 特務兵でもあるマリオ先生の人形軍団。フラッグ破壊を目的とするこの戦争で、索敵にでも使われようものならひどく厄介だ。

 【衝神】クラウディアにしても、アズライトと互角の戦闘力を持つと聞く。

 お互いの重要ティアンを隔離するというルールは、お互いに利はある。

 相殺、とも言えるだろう。

 ……これまでがこれまでなので、どこに罠が仕掛けられているかという不安は拭えないが。


「もしもの時のために私も手は打っているから。君は君で、戦争を頑張りたまえ。大変らしいからね」

「ああ。……アズライトのこと、頼む」

「任せておくれよ」


 インテグラはそう言ってニッコリと笑った。


「…………」


 ただ、横で一人、落ち込んだ顔をしている人物がいた。


「リリアーナさん?」

「……いいんですよ。私、二人に比べればまだまだ弱くて頼りになりませんから……。レイさんにもレベルで追い抜かれてしまいましたし……」


 落ち込み……そしてちょっと拗ねている。

 リリアーナがこんな態度とるの初めてでは?

 そう思っていると、インテグラが耳打ちしてくる。


「あー。私もアルティミアも超級職だしね。幼馴染で一人だけ置いてかれた気分なんだろう。……【天騎士】の転職条件は教えたけど、戦争までにクリアできなかったんだ」


 そういうことか……。


「ちなみに条件って?」

「教えても良いけど他所に漏らさないでね。リリアーナが可哀そうだから」

「分かった」


 小声で言うインテグラに、頷く。

 情報拡散してどこかの<マスター>がゲットしたら、流石に気の毒が過ぎる。


「強敵撃破。【聖騎士】カンスト。騎士系統レベル一五〇以上。《聖別の銀光》使用状態での与ダメージ二〇〇〇万。《グランドクロス》での与ダメージ二〇〇〇万。《聖騎士の加護》で減らした被ダメージ二〇〇万。回復魔法での回復量二〇〇〇万。要するに【聖騎士】でできることの詰め合わせ」

「なるほど……」


 多分、<マスター>は《聖別の銀光》がネックになって【天騎士】に就けなかったんだな。

 俺も与ダメージや回復の条件はまだまだ届かない。

 しかし、頑張れば取れそうでもある。

 ……先に条件満たしてしまったときはリリアーナに相談しよう。

 他所の誰かにとられる前に、一時的に預かるという考えもあるし。


「しかしこれ、ティアンだと《聖騎士の加護》がきつくないか?」


 他より数値が少ないとはいえ、命の危機に直結している。

 一度に大ダメージを受けるのは危険なので、細かく何千、何万回と被弾する必要があるだろう。


「うん。それにリリアーナは強敵撃破もネックなんだよね。それこそ最上位純竜クラス……【竜王】とか、あとは超級職相手にMVPとれるくらい活躍しないといけないから」


 【聖騎士】の転職条件の一つが『亜竜クラスのHPを五〇%以上削って倒す』だったが、その条件のグレードアップ版ということだろう。

 ……やっぱり死んだら終わりのティアンにはきついのでは?


「私がサポートするにしても、ちょうどいい相手が中々見繕えなくてね。<UBM>とか相手だと、策を練っても殺されかねないし。後味悪いでしょ?」

「そうだな……」


 親友が自分の手引きでそうなってしまったら、後味悪いで済まない気もするが。


「ところでインテグラよ。一つ尋ねたいのだが」

「……なーに?」

「【死兵】が絡む超級職の条件を知らぬか? 今、条件を探っておるのだが……」

「んー?」


 ネメシスの問いに、インテグラが考え込む。


「他に【聖騎士】や呪術師系統も絡むらしい」

「【死兵】……んー。【聖騎士】……んー。…………」


 腕を組んで唸った後、瞑目して無言になった。

 随分と深く考え込んでいるようだ。


「…………その情報だけだとちょっと確かなことは言えないよ、ごめんね」


 再び目を開けた時、インテグラはそう言って謝った。


「そうか……」


 まぁ、斧もかなり複雑な条件らしいことは言ってたしな。

 複合系統超級職の中でも特異な条件、とか何とか。


「まぁ、少し調べてはみるよ」

「ああ、頼む」

「ともあれ、だ。条件不明の超級職なんてそうそう就けるものじゃないからね。君にはもっと分かりやすいものを提示しておこうか」


 分かりやすいもの?


「【煌玉騎】、今朝方解禁されたよ」

「…………マジか」


 戦争前日のこのタイミングで……?

 転職してもレベルアップする時間ないぞ?


「カルチェラタンまでの移動も今のタイミングだと危険ですし、避けた方が無難ですね」

「……そうですね」


 移動中に皇国の<マスター>に襲われてデスペナとかシャレにならない。

 ……【暗黒騎士】と入れ替えるとしても、戦争後になるか。

 シルバーの第三スキルの解禁も、それまでお預けだ。


「……レベルアップツアー前に解禁されていれば良かったんだけどな」

「まぁ、人生には望む段取りと違うことなんて幾らでもあるものさ」


 インテグラはそう言って、慰めるように肩を叩いた。

 その声は、何処か実感が篭もっているようだった。


 ◇◇◇


 □【未確認飛行要塞 ラピュータ】


 王都上空に浮かぶ飛行要塞、ラピュータ。

 要塞の指令室にあたる一室には、二人の人物の姿があった。

 いや、二人(・・)には見えないかもしれない。


 なぜなら……両者共に着ぐるみを着ていたからだ。


『で、何で遅れたクマ?』

『カルディナの戦闘を避けるために迂回していたトド。まさかあんな規模の戦いが起きるとは思わなかったトド』


 クマの着ぐるみの問いに、トドの着ぐるみが答える。

 クマは、言わずと知れた【破壊王】シュウ・スターリング。

 そして、トドは……【総司令官】グレイ・α・ケンタウリである。


『例のカルディナとグランバロアの紛争か?』

『違う。それから派生したものだとは思うが……トド』

『なに? それなら何が戦ってたクマ?』


 シュウの問いに対し、グレイはラピュータの端末を操作して応える。

 指令室のスクリーンに、幾つかの写真が映し出される。


『一方は、カルディナの【地神】。貴殿も御存知の“魔法最強”トド』

『だろうな』


 写真には巨大な砂嵐や砂漠そのものの隆起、そして山と見紛う巨大なゴーレムが映し出されている。

 かつてシュウも相対した、ファトゥムの規格外魔力に寄って行使される地属性魔法の数々である。


 だが、今この写真の中でシュウがより注目したのは……()だ。


 天を覆う雷光。

 吹きすさぶ嵐。

 そして、不自然な雲の切れ間から注ぐ陽光――地を焼く灼熱。


 あるいは【地神】の操る大地に輪を掛けて、空が異常をきたしていた。


『カルディナにおいて、【地神】とこれほどの大規模戦闘を行った者がいるトド』

『……そいつはまさか』


 写真の現象に……それを引き起こせる存在にシュウは心当たりがあった。

 ある意味で、ファトゥムの同類とも言うべきその者の名は……。



『――【天神(ジ・アトモス)】』

 その推測を肯定するように、グレイは一つの名を述べた。



『六〇〇年前の生き証人。かの【覇王】を封じた三神の頂点。長命種の寿命を以て、大乱の後も魔法の研鑽を続けた伝説の魔人……トド』

『…………』


 かつてファトゥムが“魔法最強”と呼ばれる前、ティアンの中で“魔法最強”と呼ばれていたのは先代の【大賢者】だった。

 その前にも、同じ二つ名を賜った魔法職は何人もいただろう。

 だが、それらの襲名は……かの魔人が俗世との関わりを絶ったがゆえに得られたものかもしれない。

 それほどの、規格外なのだ。

 “覇王封じ”の【天神】……スヌスムムリクは。


『……予想外のビッグネームクマ』

『魔法……天属性魔法の扱いにおいて、【天神】を超える者はいないトド。そんなものと【地神】の戦い、ルートを変えるのは仕方ないことトド』

『判断は間違っちゃいないと思うクマ。で、どっちが勝ったクマ?』

『……その結果を確認していたら、また墜落していたかもしれないトド』

『かもな……』


 かつて大陸北方の<厳冬山脈>において、このラピュータは一度墜落している。

 強大な力の激突は、時にそうした事態を引き起こすと身をもって知っていた。


(……しかし、何でまたその二人が戦うことになった?)


 歴代最強の【天神】と【地神】。

 魔法界の最強決定戦。

 遠距離からの写真を見ただけでも、広域殲滅型同士の激しい潰し合いであることは一目瞭然だ。

 残留魔力だけで<アクシデント・サークル>が頻発しているだろうから、その後の通過も危うい。

 ルートを変えたグレイの判断は正解だったと言えるだろう。


『遅れた最大の理由はそんなところトド』

『ん? 他にもあるのか?』

『……そっちは守秘義務があるトド』


 グレイの言葉に、シュウは『黄河の上層部絡みか』と察した。

 今回、グレイが迎えに来たのは第一皇子の意向によるものだったはずだが、そこに横槍が入りかけたのかもしれない。

 他の皇子や皇女……あるいはもっと上の存在によって。


(ま、王国所属の俺には言えない話か)


 この着ぐるみ宇宙人がそれなりに義理堅い性格だとは知っているので、シュウも聞こうとは思わなかった。

 また、それはそれとして他に気になることもある。


『ところでいつツッコもうか考えてたんだが』

『何トド?』


 シュウの問いに、グレイがトドの首を傾げながら聞く。


『その語尾は何だよ。以前会ったときはそんな口調じゃなかっただろ?』

『……着ぐるみを着たら、動物名を語尾につけるのがマナーではないのか?』


 大真面目に聞き返すグレイに対し、『もしかしなくても俺の影響だったか……』とシュウは溜息を吐くのだった。


 ◇◇◇


 □王都・乗り入れ待機エリア


 王都の一角には、本日ラピュータに乗り込む者達が待機していた。

 指定された広場で、順番にラピュータへと引き上げられていく。

 それはまるでアトラクションの順番待ちをしているようでもある。

 護衛の<マスター>の中には「ラピュタは本当にあったんだ!」や「バルス!」など、とあるアニメ作品のモノマネで遊んでいる者も散見された。

 今回、ここにいる<マスター>の多くはランキングからあぶれた者達だ。

 しかし、<マスター>である以上は無力ではない。

 かの<AETL連合>から離脱したエリザベートファンクラブの面々はその代表だろう。

 また、かの“トーナメント”の一つで優勝したグリムズ率いる<童話分隊>というパーティも、今回の黄河行きの護衛に参加していた。

 しかしながら、今回の王国からの護衛に……超級職は一人しかいなかった。


「本当に良いんですか?」


 ラピュータへの乗り入れと搬入を見送りながら、マリーは横に立つ人物に問いかける。


「構わない。私自身も希望したことだ」


 彼女の問いに答えたのは、指揮者の装いをした老人だった。

 彼の名は、【奏楽王】ベルドルベル。

 かつてギデオンの事件でマリーと相対して敗れ、カルチェラタンではレイと友誼を結んだ元皇国の<マスター>である。


「それに、私はかつてあの子に……エリザベート王女に迷惑を掛けたからな」

「まぁ、それはそうですね」


 エリザベートがフランクリンに誘拐されたギデオンの事件。その際、フランクリン側の戦力として参戦し、多くの<マスター>を倒したのがベルドルベルである。

 不意討ちかつ音速による殺傷であったため、王国で彼の正体を知っているのは彼を倒したマリーだけであったが。


「……ていうか、ボクが持ちかける前から依頼受けてたんですよね」

「ああ。カルチェラタン伯爵夫人からな」


 ベルドルベルはカルチェラタンにおいて、伯爵夫人の目に留まった。

 以来、お茶会での演奏を任され、加えて孤児院の子供達や復興に従事する人々のために演奏活動を行っていた。

 そして今回の輿入れに際しても、伯爵夫人から「もしよければ……」と頼まれていた。

 それはカルチェラタンの事件で、子供達を守るために戦った人柄も評価されてのことだった。


「私達の演奏が故郷を発つあの子にとって少しでも慰めとなるのならば、意味はあろうさ」

「良い音してますからね」

「……フッ、最高の名演奏を聞かなかった輩に言われてもな」


 かつての戦いの顛末を述べながら、ベルドルベルは小さく笑った。


「だけど、あなたって英雄が立つ瞬間が見たいんでしょ? 戦争なんてベストタイミングじゃないですか?」

「かもしれん。だが、私もかつては皇国にいた身だ。クランでの待遇や交流に不満はなく、良い創作仲間達もいた。カルチェラタンでの【魔将軍】との交戦はともかく、大手を振って王国側で戦争に参加する訳にもいくまい。不義理というものだ」

「そういうものですかね」

「出版業界にもそういうことはないかね?」


 ベルドルベルが何気なく放った言葉に、マリーはドキリとした。


「…………いつお気づきに?」

「必殺スキルの弾丸だ。あの後、リアルの書店で翻訳された君の本を見つけた。筆致が同じだからすぐに気づいたとも」


 マリーは『……このお爺さん、耳だけじゃなくて目も良いの?』と内心驚いていた。


「いずれアニメ化したときは声を掛けたまえ。私の寿命が尽きていなければ、作曲を担当しよう。君が希望すればだが」

「……できますかね。今、連載もってないんですけど」

「再び歩き出す時間など、君には幾らでもあるだろうさ」

「そんなものですか?」

「そんなものだとも」


 そうして二人は言葉を止めて、空を見上げる。

 やがて、ベルドルベルが乗り込む順番がやってきた。


「……ボクの代わり、任せましたよ」

「無論」


 そうして、マリーに見送られ……ベルドルベルは黄河への旅に加わった。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<ちなみにインテグラは情報を聞いてとある超級職を思い浮かべたけど


(=ↀωↀ=)<「確定じゃないし教えてもなー。条件自体は知らないし」って感じで流した

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― 新着の感想 ―
天神機関の暗闘か…。 書籍と同じなら色々大変なのに良くやるわ。
[一言] 着ぐるみを着た超級は必ず素敵大好き着ぐるみ愛好会のオーナーに会って真似るのかな
[気になる点] 超級は着ぐるみを手に入れたら1度は着てシュウに会うというルールでもあるのでしょうか? [一言] いつも読ませて頂いてます。ここの話を何度読んでも上記の疑問が湧いてくるので質問させていた…
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