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第十七話 流浪剣

(=ↀωↀ=)<ブルーレイ発売とかオンリーショップとかアニメの色々とか


(=ↀωↀ=)<ネメシス付録のカードゲーマー買おうとしたら売り切れてたとか


(=ↀωↀ=)<MtG新弾にゴジラ怪獣大量参戦とか


(=ↀωↀ=)<色んなことがありすぎて作者の気持ちが落ち着かない


( ꒪|勅|꒪)<最後のはうち関係なくないカ?



(=ↀωↀ=)<一日目に突入したいけど必要なイベントが多すぎて困る戦争編


(=ↀωↀ=)<既に今年の目標が『二日目まで終わる』になってる


(=ↀωↀ=)<間違いなく今までで一番長い章です

 □王国某所


 そこは寂しげな雰囲気の、開けた土地だった。

 四方に目をやっても建物はなく、しかし一つの碑……慰霊碑だけがある。

 ここは城塞都市クレーミル……その跡地。

 あの【グローリア】の《終極》が薙いだ都市は、全てが消滅していた。

 建造物も、住人も、何一つ残ってはいない。

 住民が全滅した街は再建されることもなく、事件の慰霊碑だけが置かれている。

 既にセーブポイントまでも消失しており、運営もここを街とは見做していないことを示していた。


 そんな都市だった地の慰霊碑、その前に幾人かの人影があった。

 十七人。老若男女様々で、ティアンだけでなく<マスター>も含まれている。

 彼らは、かつてこのクレーミルに暮らしていた者達だ。

 事件の折、【グローリア】の力の範囲外に避難できた者や偶然他の都市にいた者など、生き残りと言える者達。

 彼らは事件後に王都で暮らし、元クレーミルの住民として互助会も作っていた。

 その一部が今日、クレーミルを訪れている。

 こちらの時間で明後日には戦争が開始される。開戦すれば都市の外は戦場に様変わりし、ティアンが行き来することはできない。

 そして戦いの後、この国が残っているかも分からない。滅ぼされ、自分達が死ぬこともあると……【グローリア】の悲劇を経験した者達は考えていた。

 それゆえ、最後の機会かもしれないと墓参りに訪れたのだ。


 生き残りの全てではない。

 あの出来事を思い出したくないから、来ない者。

 まだ開戦前とはいえ、皇国の<マスター>が跋扈する都市外に向かうことを恐れた者。

 結果として、墓参りを願った者は合計で十一名。

 いずれも、これまで墓参りに訪れることができなかった者達だ。

 そうした者達を、<マスター>……ライザー率いる<バビロニア戦闘団>六名が護衛についている。

 かつてこの都市を拠点としていたクランであり、互助会から頼まれ……そして護衛を快諾したクランでもある。

 現在の<バビロニア戦闘団>は少数であり、ランカークランでもないため、メンバーの多くは戦争に参加できない。

 参加できるのは決闘六位のライザーと、ギリギリのタイミングで決闘三〇位に返り咲いたラングだけだ。(かつて彼を破ったマックスが、より上の順位になっていたお陰でもある)

 開戦後に戦争の舞台に上がれる者が限られるからこそ、戦争前にできることはしておきたいと考えた。

 また、彼ら自身も今回の墓参りには賛成だった。

 彼らもまた、親しかったティアンを数多く亡くしている。

 いつ襲撃されるか分からないため警戒は続けていたが、彼ら自身もまた……慰霊のために訪れたのだ。


『…………』


 順に慰霊碑に花を手向け、それぞれの形式で死者に祈る。

 その後は各々がかつての家……自分と共に生きていた人々の亡くなった場所へと向かう。

 【グローリア】の《終極》によってクレーミルは城壁も建造物も全てが光に消え、あとは平らになった地面だけが残っていた。遺体さえもありはしない。

 けれど、長く暮らした街。周囲の山々と見比べて歩けば……何とはなしに住んでいた家の付近が分かるため、そこにまた花を手向けるのだ。

 <バビロニア戦闘団>も同じ。ライザーはかつての思い出の場所へと歩いていき、四人は人々の護衛に散った。


 そうして慰霊碑の前にはラングと、一人の少女が残った。


「……お嬢ちゃん、寒くないか?」

「だいじょぶ」


 ラングは<戦闘団>で唯一、純粋に護衛のために参加した。

 彼がクランに加わったのは、クレーミルの本拠地が壊滅した後。

 今この<戦闘団>を率いるライザーとの縁があって参加した形だ。

 だから、彼にはこの街での思い出はない。

 しかしメンバーの多くがここに忘れられない記憶があるのだろうとは、理解できた。

 そして彼の隣の少女が花を手向けに行かないのは、家の場所が分からないからだ。

 今でも六歳かそこらの少女。

 このオブジェクトが消えた街で、当時自分が住んでいた場所など分かるはずもない。

 彼女は、ギリギリで避難できた者の一人だ。

 クレーミルに住んでいた両親が、『彼女だけでも逃がしてほしい』と近隣に住んでいた<マスター>に頼んで街から連れ出してもらった。

 結果として彼女だけが生き残り、今は王都で養父母の下で暮らしている。

 今回の慰霊も養父母には心配されたが、彼女のたっての希望で同行した。

 彼女は慰霊碑の前で指を組み、今も祈っている。

 ラングは従魔のヒポグリフと共に、少女を守るために周囲を警戒していた。


「……ん?」


 不意に、風景の中に紛れ込むような何者かを見つけた。

 何者かは、ゆっくりと慰霊碑の前に近づいてくる。


「アンタ、それ以上近づくな!」


 ラングは少女を庇いつつ、現れた人物を警戒した。

 見覚えのない男だったが……異様な気配を纏っている。

 装備は襤褸布同然で、古びた案山子にも見える。

 だが、それ以上に目が普通ではない。

 多くの<マスター>と関わったラングでも見たことがない……底知れぬ陥穽があった。

 危険だ、と直感が働く。

 そんな彼の後ろで、少女は不思議そうにラングと男を見比べている。


「皇国の<マスター>か……!」

「……いや、違うな」


 ラングの言葉を、男は否定した。

 武器を向けるラングに対しても、男が武器を取り出す様子はない。

 左手の紋章から<エンブリオ>を出す様子もなかった。


「お前の方こそ、誰だ? なぜここにいる?」

「俺は護衛だ! この子や、ここに来ている人々を守る役目がある!」


 男の物憂げな問いに、ラングはそう答えた。


「護衛? ……花。ああ。同じか」


 納得するように呟いた男は、アイテムボックスから花を取り出した。


「俺も、花を手向けに来ただけだ」

「なに?」

「俺も、この街に住んでいた<マスター>だ。……本当はもう少し早く来るはずだったが、他の用事が差し挟まって、来るのが遅くなった」


 その言葉に、嘘はないようだった。


「…………そうか、すまなかったな」

「いいさ。戦争中、なのだろう」


 ラングは少女を連れて、完全には警戒を解かないまま慰霊碑の前から退いた。

 男は会釈し、慰霊碑に近づいていく。


「お前は? この街に住んでいた<マスター>は顔見知りが多かったが、見覚えがない」

「俺は<バビロニア戦闘団>のラングだ」

「…………」


 ラングの言葉に、男はその目を僅かに見開いた。


「……なるほど、内部では一年以上経っているからな。新顔も、増えるか」

「?」


 男はそれ以上ラングについて言及せず、慰霊碑の前で膝をつき、花を供えた。

 不意に、花を置いた男の手が止まる。


「おや、この花は……」


 男は、手向けられていた花の一つに目を留めた。

 それは、あるはずのないものを見るようだった。


「なぜ、今この花が?」

「これね、わたしがね、あげたおはな」


 男の疑問に答えたのは、少女だった。


「あのね、おくすりになるね、おはななの。いたいいたいの、けしちゃうの。おとうさんとおかあさんにね、あげたの」

「そうだな。……そうだった」


 理解している様子の男に対し、ラングは男がなぜそこまでこの花を気に掛けたのか分からない。

 それを見てとったのか、男が説明する。


「……かつて、クレーミル周辺の山林にのみ自生した薬花だ。【グローリア】の一件で、森もなくなったと聞いていた」


 《終極》の破壊と《絶死結界》による大規模枯死。

 クレーミル周辺の生態系は地形諸共に壊滅していた。

 この花も、今はもうどこにもないはずのものだ。


「おとうさんとおかあさんがね、おまもりにね、たねをいれてたの。いっぱいふやそうとおもってね、かだんでね、がんばって」


 少女は一生懸命に話そうとしている様子だった。

 それは少し舌足らずだが、彼女の言わんとすることは二人にも分かった。


「そうか。……ご両親の花、大切にな」

「うん!」


 それまでの雰囲気と異なる男の優しげな言葉に少女は頷き、ラングは少し驚いた。


「……ただ、昔を思い出しただけだ」


 ラングの驚きも察したのか、男が溜息と共に答える。


「俺の家にも、あの花は沢山あったからな。……妻が【薬師】だったんだよ」


 それは昔の風景を思い出すような……懐古と悔恨の混じった声音だった。

 慰霊碑に花を供えて祈りながら、発せられた言葉。

 その意味は、ラングにも分かった。


「……花の数からすると、大勢で来たのだな」

「ああ。クレーミルの互助会の護衛だ。開戦前に王都に戻る」

「そうか」


 男は納得するように頷き、立ち上がる。

 そしてラングの肩を叩きながら――ラングが反応できない動きをしながら――言葉を続けた。


「護衛を引き受け、護ると決めたのなら……護れよ、<バビロニア戦闘団>」

「……言われなくても」


 内心の驚きを抑えつつ、ラングは本心からそう答えた。

 ラング自身は世界派寄りの遊戯派だが、それでも王国のティアンを守りたいという感情はある。

 彼の言葉に満足したのか男はまた頷いて、懐からアイテムボックスを取り出した。

 それを、ラングの手に預ける。


「これは?」

「ライザーに渡しておいてくれ」


 それだけ言って、男は立ち去る。

 ラングは男の背中を目で追ったが、いつしか見えなくなっていた。


 ◇


 ライザーが親交のあった鍛冶師達の家とかつてのクランの本拠地に花を手向け、とある別件も済ませたときには他の者達も全員戻っていた。


『ラング、異常はなかったか?』

「慰霊に来た他の<マスター>と鉢合わせたくらいですね」

『他の<マスター>……どんな人物だった?』

「えっと、襤褸布みたいな装備で、目が怖くて、昔ここで暮らしてたって」

『クレーミルに住んでいた<マスター>か』


 かつてのクレーミルはセーブポイントもあり、それなりに賑わった都市だった。

 居を置いていた<マスター>は多い。


「それで妻が【薬師】って」

『…………何?』


 だが、妻を娶った<マスター>で、その妻が【薬師】という人物ならば……ライザーに思い当たる人物は一人しかいない。

 ライザーは受け取ったボックスから、格納されていたアイテムを取り出す。

 それは、一枚の用紙だった。


『ッ……!』


 文面を読んだライザーは、仮面の奥で顔を驚愕に歪めた。


「ライザーさん、それは?」

『クランオーナーの委任状だ……<バビロニア戦闘団>の、な」

「え!?」


 オーナー権限を他者に移すもの。

 <バビロニア戦闘団>のそれを持っている人物は、この世に一人しかいない。


『……オーナー。戻ってこられたんですね、この世界に』


 帰還を待ち望んだ人が、今この世界に立っている。

 だが、クランに戻る気はないと……ライザーの手の中の委任状が告げていた。

 そのことに……ライザーは喜びと悲しみの混ざった感情を抱いた。


(……今はまだ、クランで待っています)


 追いかけて捜そうとは思わなかった。

 彼があえて会わずに去った意味があるのだろうと、ライザーは悟っていた。

 だから彼は……今まで通りクランを維持して待とうと決めた。


 いつか、彼が戻る決断をしたときのために。








 ◇◆◇


 □■クレーミル跡地・西方フィールド


 ラングと別れた後、男……<バビロニア戦闘団>のオーナーであるフォルテスラは、当てもなく荒野を歩いていた。


『マスター。ライザー達に会わなくてよかったの?』

「ああ。むしろ、会ったのが新顔の彼で良かった」


 彼の<エンブリオ>であるネイリングの言葉に、フォルテスラは悩む様子もなくそう答えた。


「俺が奴の提案に乗るにせよ、乗らぬにせよ。合わせる顔がない」


 フォルテスラは装備しているブレスレットを見ながら、そう言った。

 それは彼にとある打診を行った存在からの贈り物。

 管理AIの監視を逃れるアクセサリー……ログを記録されないアイテムといったところか。


「乗れば、俺はこの世界を運営するモノを壊す。乗らなければ、また去る。……どちらであっても、<バビロニア戦闘団>をこれまで守ってきたアイツに合わせる顔はない」

『マスター……』


 自身の<マスター>の思案に、ネイリングは意見を挟めない。

 彼がこの二択に追い詰められた原因の一端は自身の力不足だと、自覚していたからだ。

 そうして二人は無言になり、歩いていく。


 しかし、その進路上から、喧しいエンジン音が聞こえてきた。


 それはバギーやバイクなど、魔力式機械に乗って移動する集団だった。

 一様に武装し、先刻までフォルテスラがいたクレーミルを目指している。


「ヒャッハー! 飛ばせ飛ばせーッ!」

「獲物はこの先だぜぇ!」


 彼らは露骨に悪党じみた服装をした……かつての<凶城>に似た方向で<Infinite Dendrogram>を楽しんでいる集団だった。


「この先に王国の決闘ランカー、“仮面騎兵”のマスクド・ライザーがいる! 開戦前に仕留めるぞ! <フルメタルウルヴス>の連中がだらしなく壊滅したからな! あっちも削らなきゃどうにもならねえ!」

「お行儀よく説教してくるくせに肝心なときに役に立たねえ奴らだぜ!」

「やっぱ最強クランは俺達<LotJ(ロットジェイ)>だってーの!」


 彼らが口にしたのは、皇国第三位クランの略称。

 <LotJ>は彼らのように数パーティ単位で王国内を活動し、王国側の戦力を削いで回っている。


「いいか! <バビロニア戦闘団>はティアンの護衛で来ている! 数はたったの六人、護衛対象はほぼ倍だ! 足手まといを抱えた連中は楽に狩れる!」

「開戦前だからティアンを攻撃してもデスペナにはならねえ! 全員殺しても戦争に勝てば有耶無耶にできるぜ!」

「ヒャッハー! ワンサイドゲームだぜー!」


 要は、ティアンごとライザー達を倒してしまおうという計画だ。

 彼らがどこからライザー達の動きを知ったのかは定かではないが、このまま進めば凡そ彼らの狙い通りになってしまうだろう。

 しかし誤算があるとすれば……。


「…………」


 進路上に、それを不快に思う男がいたことだろう。

 エンジン音に紛れた遠方の会話も、汎用スキルで聞こえていた。


「……ネイ」

『うん!』


 フォルテスラの言葉に、ネイリングは少し明るい気持ちになった。

 合わせる顔がないと言い、あるいは将来的に敵対するかもしれないとしても。


 今この場では、かつての仲間のために動くと彼が決めたから。


「おい! 進路上に誰かいるぞ!」

「皇国の<マスター>なら道を開けな! 王国の<マスター>なら死んどけやオラァァァァァ!」


 形ばかりの警告を発しながら、乗車していた者達が武器を構える。

 だが、彼らよりも……先に発見し、AGIにも優れていたフォルテスラの動きは数手先だった。


「《オーヴァー・エッジ》。――《ソード・アヴァランチ》」


 静かに発動させたのは、二つのスキル。

 第一のスキルは、かつての【グローリア】との戦闘時よりもさらに長大で強靭な刃を形成。

 第二のスキルは、刃の間合いにある全てを切り刻む連続剣。


 射程延長の連撃は何を斬ろうとも刃毀れひとつせず、――人も機械も地面も諸共に細切れにしていく。


 一撃を【ブローチ】で防いだとしても、連続剣相手に意味はない。

 間合いに入ってしまった<LotJ>小集団は、それで全滅した。


 だが、一人だけスキル発動の直前でその間合いから離れていた。


「ヒュウ……! とんでもねえことしやがるぅ!」


 咄嗟にバギーから跳躍し、フォルテスラの間合いから逃れた男。

 他の者同様に悪役然とした格好だが、見る者が見れば高級なオーダーメイドを使い込んでいることに気づくだろう。

 加えて、両腕には禍々しい爪甲を装備している。


「全滅かよぉ……。足もなくなっちまったぞオイィ。だが、俺っちは生きてるぅ!」


 妙なアクセントをつける男に、フォルテスラが視線を向ける。

 ネイリングを《ソード・アヴァランチ》の反動で痺れた右手から左手に持ち替えながら……男の間合いとジョブを探る。


「何もんだおめぇ?」


 かつて名を馳せた【剣王】フォルテスラの名は、皇国も知っている。

 だが、引退したと思われていたために情報としての優先度は低かった。

 まして、今のフォルテスラの姿と纏う雰囲気は以前の彼とは似ても似つかず……それゆえに気づかなかった。


「…………」


 男を対象に《オーヴァー・チェイサー》を発動。

 相手より劣るステータスに補正を掛けるスキルは、SPとAGIで反応した。

 STR・AGI二極型のフォルテスラに対し、AGIでも上回る。

 加えて、前衛超級職である【剣王】を超えるSPの高さ。


(AGI型前衛超級職……おそらくは拳士か斥候。俺が誰であるか読めていないならば、斥候超級職はない。拳士系統。長期耐久戦に秀でた爬虫類型ではなく、短期高速戦に特化した哺乳類型の獣拳士派生? いや、STRが俺を超えていないならば……爪拳士派生か。腕部の爪は鑑定不能……アームズの<エンブリオ>。形状から判断して、病毒系状態異常付与)


 相手のステータスと装備からビルドを読み取る。

 かつての決闘で幾度も繰り返し、<Infinite Dendrogram>を離れていた間も忘れてはいなかった戦いの習慣。

 用いるデータやセオリーは、今もなお彼の中に残っている。


「クックック! 大した剣だがよぉ、俺っちよりは遅いんだぜぇ?」

(【爪拳士】の奥義は同時発生する二度の付随攻撃、《タイガースクラッチ》。超級職の奥義も十中八九その流れ。先手を許せば、連撃で【ブローチ】と命を砕かれる)

「俺っちにはお前の攻撃が見えてるぅ! なにせ俺は<LotJ>所属の準<超級>、その名も」



 ――男が自らの名を述べようとした瞬間には、フォルテスラが踏み込んでいた。



 男は逃れたはずの剣の間合いに、再び囚われる。

 動く前に仕留める、それがフォルテスラの判断だった。


「ドミ……あぁ!?」


 フォルテスラの踏み込みは、男の想定よりもはるかに速かった。

 なぜなら、今は《オーヴァー・チェイサー》が発動している。

 劣っていたAGIは、第七形態に進化したネイリングの《オーヴァー・チェイサー》でプラス一〇〇%の補正を受けている。

 STR・AGI二極型のフォルテスラを僅差で上回っていたAGIは、逆に引き放されていた。

 そして初太刀の《サンダー・スラッシュ》で切りつけられる。

 致命傷を避けられたがゆえに軽減されず、同時に電撃による一時的な麻痺に掛かる。


 その間隙に、奥義ではない連続剣が丁寧に男の【ブローチ】と命を絶った。


 <LotJ>の準<超級>は、名乗ることすらできないままデスペナルティとなった。

 <バビロニア戦闘団>を襲撃するはずだった者達は……<戦闘団>の長の刃で全滅したのである。


「…………体は覚えているものだな」

『うん!』


 かつて闘技場で何百回と繰り返した決闘のセオリー。

 それは久方ぶりの対人戦でもフォルテスラの身体を動かしていた

 フォルテスラ自身は特に感慨を抱かなかったが……ネイリングは嬉しかった。

 やっぱり自分の<マスター>は、<マスター>なのだと。


「……ん」


 フォルテスラは懐に手を入れて、通信機を取り出した。

 現在進行形でフォルテスラと交渉している者が、彼に預けたものだ。

 かけてくる相手も、その者だけだ。


「俺だ。ああ……分かっている。この戦争とやらが終わる前には、結論を出す」


 短い通話の後、フォルテスラは通話を切った。


「…………」


 そうして、フォルテスラは歩みを再開する。

 当初ログインした目的だった慰霊も済ませ、相手との交渉は今も思案の最中。

 目的もないままに、何処へ行くかも定まらないままに、彼は進む。


 どこに辿り着くか、誰にも分からないまま。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<実は今回、戦争編に必要な前振りが二つ入ってる



〇フォルテスラ


(=ↀωↀ=)<その能力、知識、戦術眼、センスゆえに


(=ↀωↀ=)<対人の一対一では物凄く勝率が高い人です


(=ↀωↀ=)<例外はセンスが突き抜けた上、微妙に能力相性もあるフィガロ


( ꒪|勅|꒪)<お前ハ?


(=ↀωↀ=)<だって僕の場合は一対一じゃなかったし


(=ↀωↀ=)<進化した今なら普通に負けるだろうけど



〇ヒャッハー


(=ↀωↀ=)<北斗の拳の雑魚みたいな<LotJ>メンバー


(=ↀωↀ=)<ぶっちゃけ書くのすごい楽で助かった


(=ↀωↀ=)<深く考えないキャラの方が書きやすいってあるよね



〇ドミンゴス・ロドリゲス


( ꒪|勅|꒪)<……誰?


(=ↀωↀ=)<今回負けた人


(=ↀωↀ=)<ジョブは爪拳士派生超級職【搔王キング・オブ・スクラッチ


(=ↀωↀ=)<<エンブリオ>は【疾病磨爪 ウェンディゴ】


(=ↀωↀ=)<ヒットごとに『相手が耐性持ってない病毒系状態異常』からランダム判定


(=ↀωↀ=)<【快癒万能霊薬】飲んでると、逆にえげつない特殊状態異常になる


(=ↀωↀ=)<そしてジョブの奥義はスキルレベル×二回(現在はスキルレベル五)の付随攻撃


(=ↀωↀ=)<要するに一回の攻撃で耐性持ってない状態異常判定十一回放ってくる


(=ↀωↀ=)<AGIに自信あったけど、先手取られて攻撃する前に負けました


( ꒪|勅|꒪)<普通に強いのにナ……


(=ↀωↀ=)<普通に強い、は本作では勝率低いワードですよ




(=ↀωↀ=)<あ。発売一、二週間目途にブルーレイ特典関連のみのコメント返し書きますので


(=ↀωↀ=)<疑問点などある方はお早めに活動報告までどうぞ


(=ↀωↀ=)<それとよく聞かれる男女比の変更ですが……


(=ↀωↀ=)<熱血新人軍人風青年キャラより


(=ↀωↀ=)<「~であります!」口調の一生懸命でちょっとドジな女の子にした方が良いと


(=ↀωↀ=)<書いてる途中で判断してプロットから性別変更したキャラがいるからですよ


(=ↀωↀ=)<これ作者の判断間違ってないと思うの!

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― 新着の感想 ―
ミロちゃんかわいかったです
[一言] まぁ、一時間足らずの試合に何年も掛かる漫画とか幾らでもあるし…
[気になる点] 戦争の前の必要なまえ振りてなんだろう?フォルテスラが大賢者に貰ったブローチで戦争参加可能に?そしてフィガロとの共闘とかあったなら胸熱すぎる。
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