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第十六話 天の星、海の澱 後編

(=ↀωↀ=)<ブルーレイ一巻発売記念の連続更新


(=ↀωↀ=)<まだの方は前話から


( ꒪|勅|꒪)<四月二日からのオンラインオンリーショップもよろしくナ


(=ↀωↀ=)<それにしても今回の前後編


(=ↀωↀ=)<書籍12巻とツイッターSS読んでる人が一番楽しめそう


( ꒪|勅|꒪)<あいつ、「WEBの人は初めまして。書籍の人は二ヶ月ぶりです」だからナ……



追記:

(=ↀωↀ=)<ご質問多かったので前書きに明記


(=ↀωↀ=)<【光王】関連のエピソードは書籍12巻の追加パートです


(=ↀωↀ=)<WEBは経緯と時期は違いますが同じような戦いがありました


(=ↀωↀ=)<しずかちゃんと結婚してもジャイ子さんと結婚しても


(=ↀωↀ=)<未来でセワシくんが生まれているようなものです

 □■物資集積地・隣接エリア


 物資集積地の十二キロ北に、木のない禿山があった。

 かつては多くの植物が繁茂する自然豊かな山だったが、【グローリア】という厄災の通過によって全て枯死してしまっている。

 そんな禿山の一角、自然岩の隙間に一人の男が腰かけていた。

 奇妙な男だった。

 夜空模様のコートを羽織り、手には手帳とペンを持ち、何事かを書きつけている。


(一七名死亡。現在ログイン中の残りは……八二名。内一人は【魔砲王】ヘルダイン・ロックザッパー)


 しかし奇妙なのは装いと行動ではない。


 彼は――両の目を閉じている。


 両目を閉じたまま、見えているように思考し、記録するようにペンを走らせている。

 実際、見えている。瞼を閉じた彼の目には十キロ以上も先の物資集積地の戦闘の様子が手に取るように……否、俯瞰(・・)するように見えている。


(流石に、第二位クランは立ち直りが早い)


 彼こそが、物資倉庫を焼いた者。

 彼こそが、今も光線で<フルメタルウルヴス>を狩る者。

 彼こそが、王国遠距離最強の準<超級>。


 彼こそは、――【光王キング・オブ・シャイン】エフ。


(ともあれ、物資は焼いた。これで最低限)


 彼が介入した理由は、戦争を観戦するため。

 長く戦争を見るため、途中で勝っている方を削りに来るとは皇国側の準<超級>達も考えていた。

 しかしながら、そもそもスタート段階で総戦力は皇国側に傾いている。


 そして、ワンサイドゲームよりも鎬を削る戦いの方が見応えのあるシーン(・・・・・・・・・)は多くなる。


 だからこそ、エフは事前に戦力を削りに来た。

 今回のルールで最初から皇国側が不利に立たされている……物資を燃やした。

 王国側の数の不利を、皇国の物資の不利で埋めるために。

 また、『物資が枯渇した状態で戦う集団』も、アイテムボックスがある<Infinite Dendrogram>ではあまり見られないため……そうした状況の取材も兼ねている。


(バランスを考えればもう少し人も減らすべきか)


 戦争前に<マスター>をデスペナルティに追い込むことは無駄ではない。

 既に戦争開始の四八時間前。

 三〇倍加速も考えれば、ここで死ねば復帰不可能。

 欠員の発生は、事前に立てていた戦術にも齟齬を起こすだろう。

 それが、皇国第二位クランの全滅ともなれば尚更だ。


『総員、空中警戒! 奴の<エンブリオ>は球状のドローン群だ! そこからレーザーを飛ばしてくるぞ! 光学迷彩も併用している! 探知スキルや風属性魔法で位置を読め!』


 ドローン……【光王】の魔法を遠隔使用する<エンブリオ>、【光輝展星 ゾディアック】から見える景色の中でヘルダインがメンバーに指示を下している。

 その指示は的確だった。

 これまでに使い続けた【光王】の手口。既に彼の被害者となった経験がある皇国の準<超級>達には把握されており、対処法も編み出されている。

 ゾディアックが幾つか落とされはじめたことで、【光王】もそれを実感した。


(情報の差。同様に他のランカーも把握されているなら、やはり王国は分が悪い。<DIN>以外の情報網で現在万全に機能しているのはギデオンの忍者くらいだ)


 戦争をより均衡した状態で観戦したいならば、やはり削っておくべきだろうと【光王】は再認識する。

 遠隔操作のゾディアックからレーザーを放ち、<マスター>を一人撃ち殺す。

 しかし続いてもう一人と狙いを定めたとき、その<マスター>は姿を一変させた。


 それは<マジンギア>だが、【マーシャルⅡ】ではない。

 新型の<マジンギア>が出現し、レーザーを受け止めてみせた。


 さらには、そのまま機体を盾としてレーザーから仲間を守っている。

 他の【高位操縦士】や【装甲操縦士】も新型に乗り込み、壁が増える。

 濃緑色の【マーシャルⅡ】と違い、黒い装甲の機体群。装甲表面に塗布された対魔法コーティングでレーザーを受けてもすぐには貫通せず、壁役(タンク)の機能を果たしている。


(あれが<叡智の三角>の新型。噂通りなら、《クリムゾン・スフィア》でも二、三発は耐える仕様。他のクランにも配備できたなら、やはり皇国側の戦争準備は万全)


 【マーシャルⅢ】とも、【ゼルバールTypeB】とも呼ばれる新型機。ゾディアックの通常レーザーに耐えるならば、<マスター>同士の戦闘でも有力なレベルに仕上がっていると言えた。


『奴は単独(ソロ)のPKだ! 戦力としてはこちらが有利! ドローンを迎撃しつつ、周囲に潜む奴を見つけ出せ』

『了解!』


 <フルメタルウルヴス>は既に完全に混乱から立ち直り、反撃も行っている。

 彼らの<エンブリオ>や【ゼルバール】の機銃掃射によって、ゾディアックの撃墜頻度も増えていく。


「…………」


 今の【光王】は光学魔法で視ているだけで、聞いてはいない。

 しかし、彼らが何を言っているのかは概ね察しがついていた。


「ソロ……ですか」


 思考ではなく声に出しながら、笑みを浮かべる。


ありがとう(・・・・・)


 続く言葉は……意味不明な感謝だった。


「そう読んでくれて、とても嬉しい。私の手口に対処してくれて。撃退や撃破が可能であると考えていてくれて。つまりは……」


 彼は笑みを深めて……。



「――想定外の事態(・・・・・・)に直面した反応を、取材できるということ」

 ――スペクタクルショーを待ち望む観客のように、楽しみを口にする。



「普段、私はソロで活動しています。正体をバラしていませんし、一人の方が好きに取材できます」


 それが【光王】というPKだ。

 神出鬼没で事件を起こし、その様を観察する愉快犯……否、取材犯(・・・)

 だが……。



「でも、今日は特別で――ゲストがいるんですよ」



 ◆◆◆


 ■ドライフ皇国実効支配地域・ルニングス領――物資集積地


「…………?」


 最初にその違和感に気づいたのは、ヘルダインだった。

 彼はクランのオーナーであり、所属するメンバー全員を把握している。

 だから、気づいたのだ。


 ――いつの間にか人数が減っている。


 レーザーに撃ち抜かれたのではない。

 唐突に、いなくなっている。

 誰かの目の前で消える……死ぬわけではない。

 目を離した隙に、集団から離れた時に……いなくなる。

 たとえば、レーザーの射線を避けるように【マーシャルⅢ】の影や、壁の暗がりに飛び込んだ後……そのまま見えなくなる。

 夜の闇の中に溶けてしまうように。


 今も彼の目の前で、【マーシャルⅢ】の足元の陰にメンバーが一人消えてしまった。


「……ッ!?」


 ヘルダインが気づいたことがきっかけだったのか。

 空間の、色が変わる。

 それは不可思議な現象によるものではない。

 ゾディアックのレーザーが、物資集積地の配電盤に当たる機構を撃ち抜いたのだ。

 供給されていた魔力が途切れ、施設の照明が一気に落ちる。


 炎を残す倉庫以外は……一斉に闇夜に落ちた。


 その直後、まるで落水したかのようにヘルダインの足が地面に沈み込んだ。


「!?」


 咄嗟だった。

 フェンリルを空砲(・・)で撃ち放ち、その反動で飛び上がって地面から脱する。

 空中に飛びあがり、炎の灯りで照らされる倉庫の屋根に着地する。


「ひ、引きずり込まれ……!?」

「……オーナーッ!」


 だが、脱出できた者は決して多くはない。

 信頼するサブオーナーも含め、メンバーのほとんどが地面に……地面だった闇に沈んでいく。

 人だけではなく、巨人のような【マーシャルⅢ】までも抗うことはできず、沈むだけ。

 何とかして脱出しようと藻掻く者もいる。

 しかしある者は空中からのレーザーに撃ち抜かれて絶命し、


 ある者は……闇の中から伸びた手によって闇の中へと引きずり込まれた。


「……月影、か!? 奴が【光王】と組んで……いや!?」


 ヘルダインは一瞬そう考えて、違う(・・)と気づく。

 ヘルダインが知る月影の<エンブリオ>が動かす影は、『手』だ。

 あれは手であっても、手ではない。


 ――触手(・・)だ。


 蛸に似た触手。リアルの国籍によっては忌避感を覚えるフォルム。

 闇から現れた無数の触手が、<フルメタルウルヴス>を襲っている。

 否、そもそもこれは闇ではない。


 闇であったはずの空間が、いつしか……澱んだ水面(・・)に変質していた。


 水面から伸びた触手が、次の犠牲者を沈めていく。

 魂さえも溶かすかのような……黒く淀んだ水底に。

 正気を喪失するような光景だった。


「どうなって、いる!」


 ヘルダインは叫ぶ。

 それが理解不能の存在……ではなかった(・・・・・・)から。

 ヘルダインがそれを可能とする存在を知っていたからこその、驚愕だ。



「なぜ、ここに……【魔王(・・)】がいる!?」



 <デザイア>の【魔王】。

 レジェンダリアの<神造ダンジョン>を踏破した、三人の<超級>にして犯罪者達。

 【怠惰魔王(ロード・アケディア)】ZZZ。

 【暴食魔王(ロード・グラ)】ディス・サティスファクタリィ。

 今ここで猛威を振るうのは、それらと並ぶ三人目。


 ――【嫉妬魔王ロード・インヴィディア】ジー。


 彼女が、戦争に先駆けて悪夢を運んできたのだ。


「…………ッ!」


 ヘルダインには分からない。

 なぜ、【光王】と【嫉妬魔王】が手を組んでいるのか。

 なぜ、今ここで皇国を襲っているのか。

 彼には、全く分からない。

 一つだけ分かるのは……。


「……相手が、<超級(スペリオル)>の【魔王】であろうとも!」


 退くわけにはいかないということ。

 このままでは物資どころか、拠点ごと壊滅する。

 戦争までの猶予期間を考えれば、再建は難しい。

 ここでの完全敗北は、皇国全体の動きに……勝率にさえも影響を及ぼす。

 だからこそ、ヘルダインは退けない。

 何が相手であろうとも、命を擲ってでも、自分達の任務を全うする。

 戦力であれば、自分以外にも後を任せられる仲間達がいる。

 思想は違うが、味方ならば最も頼もしいと思っている(カタ)もいる。


 自分が力を尽くすべき時間は今だと……ヘルダインは決断した。


「フェル! 出力最大!」

『イエッサー』


 ヘルダインの指示に応じ、フェンリルは最大攻撃形態……列車砲に変じる。

 自重で倉庫の屋根をひび割れさせながら、俯角を最大限にとり、地に成り代わった澱んだ水面を狙う。

 【嫉妬魔王】本人の姿は見えないため、《魔弾の射手》によるターゲットに選べないが……構わない。

 見えている(・・・・・)ものはある。


(狙いは、あの触手の本体)


 既に一部が見えているあれならば、ターゲットに選択可能だ。

 無論、触手を撃ち抜いても死にはしないだろう。

 だが、ヘルダインは自身のスキルの特性を知っている。

 《魔弾の射手》は『どこにでもいいから当たれ』というスキルではなく、最優先で狙うのは頭部や胴といった致命部位。そこを目指して、砲弾は誘導される。

 相手に接触した時点で誘導効果は切れるが、逆に触れなければそれを狙って砲弾が飛ぶ。

 そして、フェンリルの必殺スキルは……防御力・防御スキルを完全無視した最大砲撃。

 仮に致命部位を避けるためにあれらの触手を壁にしようと、その全てを撃ち抜いて射線の先にある致命部位を消し飛ばす。


(この水面とあの触手、おそらくは複合(ハイブリッド)。テリトリーを複合したガーディアンの類。環境型の<UBM>に近いのだろう。ならば、触手の主を殺せば……!)


 そのとき、この澱んだ水面がどうなるのかは不明だ。

 消え去って内部のものが排出されるのか。

 あるいは地面に戻って取り込まれたものが圧壊されるのか。

 どちらでも、構わない。

 前者であればメンバーが戻り、後者であれば【嫉妬魔王】も死ぬ。

 賭けの結果がどちらに転ぼうと、引鉄を引かぬよりは好転する。

 だからこそ、ヘルダインは迷わない。



「――《黄昏の牙(フェンリル)》!」

 ――決断と共に必殺スキルが放たれる。



 北欧神話の主神を噛み殺した狼をモチーフとする<エンブリオ>、フェンリル。

 あらゆる防御を喰い破って命を奪う彼女の砲弾が、澱みに着水。

 巨大な波紋を発生させ、砲弾は水面下へと突き進


 ――まない。


「!?」


 それまで多くの者を呑み込んだはずの水面が、その侵入は拒絶するように……砲弾の先端さえも沈み込ませなかった。

 だが、《黄昏の牙》の放つ莫大な運動エネルギーとターゲットを追尾する《魔弾の射手》の力で、それでも砲弾は水面下を目指す。

 水面と砲弾の奇妙なせめぎ合い。

 いつまで続くのか、数秒か、数十秒か。

 それでも、砲弾は沈まない。

 その事実に、ヘルダインが驚愕する。


(どういう事だ……!? フェンリルは、防御スキルならば貫通できる。これがバリアの類であれば、容易く破れる……! ならば、これは……)


 防御スキルではない。

 水面は、壁ではない。


 それはきっと――法則(・・)だった。


「……っ! 【狂王】のサンダルフォンと同じか!」


 ヘルダインは答えに気づく。『生物と装備品』のみに特殊な移動法則を適用するサンダルフォンの《天死領域》、その同類だと。

 この水面は、【嫉妬魔王】の<超級エンブリオ>である空間は……同様に『生物と装備品』しか入ることができない。

 外部から放たれた砲弾も、魔法(レーザー)も入れない。

 内部へと、移動できない(・・・・・・)


「……内部で戦うしかないということか!」


 あるいはそれは、【グローリア】にも近いだろう。

 相手の能力圏に入らなければ、傷つけることさえできない。

 恐るべきトリック。

 しかし、ヘルダインはこれまでに収集したデータと己の戦闘経験から、唯の一度で導き出したのだ。

 それは彼の実力を示すものだ。

 もしかすると彼ならば、二戦目以降はこの【魔王】に一矢報いることができるかもしれない。


 だが、――今ではない。


「フェル! ……っ!」


 彼は自身の<エンブリオ>に呼び掛け、携帯砲モードであの水面に飛び込もうとした。

 しかしそれは叶わない。


 列車砲モードの彼女を、光の矢が貫いていたから。


『マ、ス……すみ、ま……』


 十二キロ北の山中から光速で放たれた光の矢。

 【光王】の一撃、《天に描く物語(ゾディアック)射手(サジタリアス)》。

 黄道十二星座(ゾディアック)の名を冠する十二種の必殺スキルの一つ。

 射程距離と貫通力に秀でた一撃は、必殺スキル発射後の無防備だったフェンリルを貫いて……破壊した。


「フェル……!」


 光の粒子になって自身の紋章に戻されるフェンリルを見ながら、ヘルダインが悲痛な声をあげる。

 いつしか、水面とせめぎ合う《黄昏の牙》も消えていた。

 水面に変化はない。

 波紋は既に消え失せて、静かなもの。

 水面に囚われたメンバーも、すでに全員が水底に沈められている。

 己の<エンブリオ>までも消えて、もはや残っているのはヘルダイン唯一人。


『うふふふふ。あはははは』


 しかし、それに代わるように……彼には聞き覚えのない笑い声が空間に響く。

 その発生源は……水面。

 しかし、まるで幾つもの口から発せられているように、水面の彼方此方からの笑声だった。


『どうしたの? どうしたのかな?』


 それは、明確にヘルダインを嘲笑っていた。


『勘違いしたね! 勘違いしちゃったんだね!』


 少女の声が木霊する。

 既に、ヘルダイン以外は誰もこの施設に残っていない。

 いつしか、触手が彼以外の全員を引きずり込んでしまった。

 皇国第二位のクランを皆殺しにした【魔王】は、楽しそうに嗤う。


『でも面白いね! 面白かった! 普段、HENTAIばっかり相手にしてるから、すごく真っ当で楽しくてカッコよくて面白かった!』


 普段の彼女の抗争相手……レジェンダリア第一位クランと比較し、<フルメタルウルヴス>は相手取って楽しい相手だったと彼女は言った。

 それは、言われた方からすれば誉め言葉にならない言葉だ。


『だけどね、でもね……』


 しかし、彼女の言葉から唐突に笑いが消えて……。


『たとえ神殺しの牙(フェンリル)であろうとも――』


 敗者であるヘルダインに対し、



『――海の澱(ルルイエ)までは届かない』

 ――神からの布告のように彼女はそう言った。



 あたかも、万物の法則を下知するが如く。


『さようなら。さようなら』


 そうして、【魔王】は楽しい相手に別れを告げる。


「まだだッ!」


 ヘルダインはそれでも諦めず、魔力式銃器を片手に水面へと飛び込まんとする。

 身一つであろうとも、まだ戦ってみせると。


 しかし諦めていなかった彼を……全周からのレーザー斉射が撃ち抜いた。


 撃ち落す者のいなくなったゾディアックが集結し、彼一人を殺すためにレーザーを放ったのである。


「…………ァ」


 耐性を付与した軍用コートの防御も、膨大な火力には持ちこたえられなかった。

 防御越しでも全身を貫かれ、瀕死となったヘルダインが水底に沈んでいく。

 沈む彼は、澱みの海に巣食う巨大な触手にすり潰されようとして……。


「……ッ、オーナーッ!」


 その間際に、水中の泡音に紛れて聞き知ったサブオーナーの声を聴いた気がした。


「《幸福への(ロワゾ)帰還(ブル)》……!」


 そしてヘルダインは沈む身体に不確かな浮遊感を覚え……。













 

 ◇◆


『んー? んー? 変だなー。変だねー。超級職倒した割に経験値が少ない? 少ないかも?』

「ジー。今日はお疲れさまでした」

『あ! 兄さん! ねえ兄さん! これで良いのかしら? 大丈夫かしら?』

「ええ。ジー。とても良かったですよ。良い取材になりました」

『そう! それなら良かったわ! とても良かった!』

「私ももう少し動くべきだったかと思うほどです」

『いいの、いいのよ! 兄さんは私より弱いんだから、強い私の方が頑張るの!』

「そうですね。さて、私はこれから観戦します。ジーは……」

『私はランカーじゃないし残れないから帰る。おうち(縄張り)に帰るわ』

「分かりました。今日はありがとう」

『いいの、いいのよ! じゃあね兄さん! 今度こそレジェンダリアに遊びに来てね!』

「ええ。もちろん。楽しみにしています」


 ◇◆


 そうして戦争が始まる二日前……一つの前哨戦が決着した。


 前哨戦。

 勝者、アルター王国。

 皇国物資集積地壊滅。

 皇国補給物資喪失。

 皇国第二位クラン<フルメタルウルヴス>、戦力九割損失(・・・・・・)


 To be continued

(=ↀωↀ=)<注:【光王】と【嫉妬魔王】は今回味方サイドです


(=ↀωↀ=)<開戦前に勝手に戦争おっぱじめて重要拠点一つ潰したけど味方です



〇ヘルダイン


(=ↀωↀ=)<相手が悪い


(=ↀωↀ=)<目視範囲に出てこないから本人に《魔弾の射手》できない【光王】と


(=ↀωↀ=)<本人が水面下で見えない上に外部からの攻撃拒絶の【嫉妬魔王】


(=ↀωↀ=)<相性最悪すぎてちょっとどうしようもない


(=ↀωↀ=)<だけど……



〇【マーシャルⅢ】


(=ↀωↀ=)<<叡智の三角>がお届けする新型の量産機


(=ↀωↀ=)<横でマードックからの依頼もこなしつつ頑張ってレシピまとめた


(=ↀωↀ=)<装甲を耐魔法仕様にしたので王国の魔法職相手に壁役ができる


(=ↀωↀ=)<ちなみに【ゼルバールTypeB】は開発時のネーム


(=ↀωↀ=)<元々ゼルバールという人(リアル技術者)が次世代機作りたかったんだけど


(=ↀωↀ=)<『換装機能で全環境対応!』とかやろうとして迷走しまくった


(=ↀωↀ=)<三章エピローグで水中に沈んでた奴がその一つ


(=ↀωↀ=)<で、共同開発してた他メンバーから『やめたら? 換装機能?』と言われ


(=ↀωↀ=)<渋々諦めて一番完成度の高かった【TypeBブロッカー】をベースに改善


(=ↀωↀ=)<【マーシャルⅡ】後に作った特化機体の技術(【インペリアル・グローリー】や各種オーダーメイド)をフィードバック


(=ↀωↀ=)<お値段ちょっと上がるくらいで魔法防御上げて(コーティングなので被弾回数制限あり)


(=ↀωↀ=)<他ステータスも少しは良くなった新型機になりました


(=ↀωↀ=)<売ってもらった<フルメタルウルヴス>の【操縦士】達も大満足


(=ↀωↀ=)<まぁ、<フルメタルウルヴス>に納入された奴は


(=ↀωↀ=)<全部海中に沈んで内部機械ぶっ壊れたけど


(=ↀωↀ=)<水中用で成功しなかった耐水性がオミットした機体で上手くいくわけない



〇【光王】と【嫉妬魔王】


(=ↀωↀ=)<極めて性質の悪い兄妹


(=ↀωↀ=)<上下どちらかに注意を払った瞬間に一方が殺しに来る


(=ↀωↀ=)<なお、二人とも普段は別行動&別スタンス


(=ↀωↀ=)<たまたま【嫉妬魔王】が王国に来ていたタイミングで


(=ↀωↀ=)<【光王】が「少し手伝ってくれないかな?」とか言ったせいで


(=ↀωↀ=)<<フルメタルウルヴス>がひどいことになった


(=ↀωↀ=)<なお、この後に【嫉妬魔王】はレジェンダリアに帰宅してHENTAIと抗争再開


(=ↀωↀ=)<【光王】は観戦モードに入る



〇何で【嫉妬魔王】が王国に来ていたか


(=ↀωↀ=)<暇が出来たので、兄さん(【光王】)倒したレイ君を捜しに来た(御礼参り)


(=ↀωↀ=)<でもレイ君が墓標迷宮に篭ったり帰省したりで空振った


(=ↀωↀ=)<代わりに他の出会いもあったけど


(=ↀωↀ=)<そのエピソードは多分しばらくやらない(やれない)


(=ↀωↀ=)<できればクロレコとかでやりたい


( ꒪|勅|꒪)<何年後だヨ……


(=ↀωↀ=)<続くといいな!



〇ZZZとジー


(=ↀωↀ=)<二人とも、自分の絶対優位空間に相手を引きずり込む<エンブリオ>です


(=ↀωↀ=)<同時に、その空間に飛び込まないと倒せないタイプでもある


(=ↀωↀ=)<【魔王】倒すには魔王城に入らにゃならんのです


(=ↀωↀ=)<……前読んだ作品で城ごと水攻めしてたのあったけど


(=ↀωↀ=)<まぁ、それはそれとして


(=ↀωↀ=)<【嫉妬魔王】の<エンブリオ>は生物とその装備品以外は沈みません


(=ↀωↀ=)<レベル即死の代わりに広大な海底フィールドでの戦闘を強制する《絶死結界》みたいなもんです


(=ↀωↀ=)<普通は窒息して死ぬ


(=ↀωↀ=)<アクセサリー等で何とかしても水中に完全適応した触手さんと


(=ↀωↀ=)<この戦場でむしろバフ掛かる【嫉妬魔王】とのバトルが待っています


(=ↀωↀ=)<地元(レジェンダリア)にいるときは魔王軍、もといクランメンバーもついてくるよ!


(=ↀωↀ=)<魔王かな?


( ꒪|勅|꒪)<【魔王】だロ



( ꒪|勅|꒪)<今回のあとがき長かったな


(=ↀωↀ=)<うん。書くネタ多かったから


( ꒪|勅|꒪)<そのわりにクマがいなかったナ


(=ↀωↀ=)<明日発売の一巻に付属する書き下ろし小説で主役やって疲れたらしいよー


( ꒪|勅|꒪)<……最近マジでダイマ多いナ


(=ↀωↀ=)<気づくとダイレクトマーケティングしている……

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― 新着の感想 ―
猫耳猫読者なのか あれ面白いよね
まさか四年後にジーが書籍に出ると、作者さん思っていなかったのであった。
[良い点] F(エフ)とG(ジー)。お互い英文字の名前で、兄妹って分かりやすくて良いですね! [気になる点] もしかして、リアルの名前のイニシャルとか? [一言] この話まで読み進めたタイミングで、小…
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