第七話 ウォーゲーム・オア・ウォー
(=ↀωↀ=)<昨日のワンフェスにて
(=ↀωↀ=)<グッドスマイルカンパニー様からネメシスのねんどろいどが発表されましたー
(=ↀωↀ=)<作者も実物を見てきましたがとても可愛かったです
(=ↀωↀ=)<コトブキヤ様のネメシスフィギュアもとても良い感じです
(=ↀωↀ=)<スカートのフリルと髪のクリア・グラデーションがすごいです
(=ↀωↀ=)<なお、コトブキヤ様にて2/12までのご予約で確実にお届けできるそうです
(=ↀωↀ=)<コトブキヤ様だと笑顔パーツもつきますよ
( ꒪|勅|꒪)<フィギュア以外のワンフェスの思い出は?
(=ↀωↀ=)<レイ君のコスプレしてる人がおられて、喜びつつビックリしました
追記:
(=ↀωↀ=)<ちょっとギリギリまでチェックできなかったので投稿後に端々を直しています……
□【司祭】レイ・スターリング
先日のホットラインの後、王宮から国内に向けて正式に<戦争>が告知された。
そしてデンドロ内で三日が経ち、リアルでも丸一日が過ぎた四月二九日。
今日このとき……アズライトの名で王城に多くの<マスター>が招集されている。
それは、<戦争>の前に王国内で話す場を設けるためのもの。
対象は討伐・決闘のランカー、ランキングクランのオーナーとサブオーナー。
そして、王国に在籍する<超級>達。
言うなれば、王国における<マスター>のトップ層。
王国各地に散らばっていたため、招集のために三日の猶予を作った。
複数ランキングの重複者や招集に応じない者もいたが、それでも一〇〇人近くの<マスター>が招集された形だ。
俺もまた、二位クラン<デス・ピリオド>のオーナーとして呼ばれ、今は会場となる議事堂の席についていた。
俺の隣にはルークがサブオーナーとして座っている。
まだクランのサブオーナーを決定していなかったため……話し合いの結果、ルークがサブオーナーになったからだ。
兄達やビースリー先輩が固辞したこともあるが、頭脳面でルークに任せるのがいいと判断したメンバーが多かったためでもある。
「…………」
周囲を見回せば、やはり<マスター>らしく装いは多種多様だ。
多くの者は事前に王国から配布された基本ルールを再確認している様子だ。
それらは皇国が提示したもので、今回の会議はここに足し込む王国側のルールについても発表されるのでは、とも言われている。
また、未定だった開戦日時や期間、戦闘エリアも同様だ。
これらについては、俺達もまだ聞いていない。
ただ、戦闘エリアに関しては旧ルニングス領になるのではと噂されている。
両国の係争地であると共に、既に人が住んでいない地域だからだ。<マスター>……広域殲滅型同士がぶつかっても人的被害が生じる恐れがない。
街での噂も、この場で聞こえてくる話し声も、そのような予想で成り立っている。
「初めて会う人も結構多いな」
決闘ランカー上位は全員が顔見知りだが、下位や討伐ランカー、クランの方は初顔合わせの人も多い。
あるいは、見たことはあるが話したことはない人だ。
例えば二つ隣の長机でなぜか椅子ではなく雲に腰かけて浮いている人。“トーナメント”でマリーを破ったという討伐三位にして四位クラン<ウェルキン・アライアンス>のオーナーである【嵐王】ケイデンス氏だ。
隣ではサブオーナーの【飛将軍】リーフ女史が手に乗せた小鳥にエサをやっている。
<ウェルキン・アライアンス>は人や物の空輸を担うクランであるが、天竜や怪鳥が跋扈する空を行き来するだけあり、戦闘力も高い。オーナーとサブオーナーが準<超級>であることからも実力の高さがうかがえる。
また、準<超級>がメンバーにいるのは八位のクランも同様だ。
それが八位の<AETL連合>。王女達とリリアーナのファンクラブ連合である。
いや、連合であった……と言うべきか。
俺と少しだけ因縁があるというか……俺のせい(?)でリリアーナのファンクラブが離脱してしまい、規模を縮小してしまったクランだ。
サブオーナーが準<超級>で、第三王女テレジアのファンクラブリーダーである【鎌王】ヴォイニッチという人らしい。
そしてオーナーはアズライトのファンである【聖騎士】パトリオット氏だ。
そう、【聖騎士】のはずなのだが……。
――なぜか彼は髑髏ヘルムと黒色でコーディネイトされた恐ろしげな装備だった。
何と言うか、モンスター狩るゲームのデス〇ア装備。
「…………あの人、何であんな格好しているんだ?」
「あははは」
隣のルークが小さく笑うが、なぜか副音声で「レイさんには言われたくないと思いますよ?」と聞こえた気がした。
でもあの人、前に見掛けたときはもっと白とか青とか爽やかなカラーリングだったと思うんだけど……?
『それはですね。ひとえにあなたの影響なんですよ』
俺の疑問に答えるように、机の上から声がした。
いつの間にか、そこには一つ目だけがついた頭部をした……小さな天使が浮いていた。
『あ。私は<AETL連合>のサブオーナー、ヴォイニッチです。これは私の<エンブリオ>ですね。まぁ、動く通信機みたいなものですよ』
<AETL連合>の席を見ると、ヴォイニッチ氏がひらひらと手を振っていた。
「はぁ……それで、俺の影響って?」
『ほら、あなたはアルティミア殿下と仲が良いでしょう? 度々話されているそうですし、<マスター>への態度が軟化したのもあなたのお陰という噂で』
「仲が良いというか、友人だよ」
『だからまぁ、うちのオーナーも参考にしてるんです』
「参考?」
一瞬、かつてリリアーナファンクラブ会長に門前払いされたときのような話かと思ったが、そうでもないらしい。
『うちのオーナー、いなくなったリリファンの人達と違って「ずるいずるい」と文句言うタイプではないんですけど……その分だけ自分を突き詰めるタイプでして』
「…………つまり?」
『殿下と仲良くなるために、殿下と仲が良いあなたのファッションを参考にしてます』
「待って!? ちょっと方向違わない!?」
俺はあそこまでドクロドクロオドロオドロしてなくない!?
『「同じでは意味がない。俺は先を目指す」、とかなんとか……』
「それ完全に明後日の方向に進んでるよ!?」
多分衣装関係ないよ!? 俺も初対面のときは剣突きつけられた上に「【憤怒魔王】の衣装より悪い」なんて言われたし!
『そういう訳なのでオーナーのことは生温かい目で見てやってください』
「生温かい目でいいのか……」
<AETL連合>の人達も思ったより変わり者であるようだ。
さて、そうして多くの<マスター>が集まっている議事堂だが、姿を見ない人もいる。
まず、トムさんが出席していない。
あの人は運営側という噂もあるし、前回の講和会議の護衛に参加したこと自体が異例だったらしいので不思議はない。
他に見知ったランカーの不参加者はと言えば……【光王】がいない。
討伐ランキング三〇位に位置するが、実力は恐らくカシミヤ級の怪物。
かつて、とある事件で遭遇・交戦した相手でもある。
王国では指名手配されていないが、性質の悪さはフランクリンに近い男だ。俺の他にも因縁のある人は多いだろうし、この場に顔を出さないことは予想がついていた。
それでも『俯瞰』と『干渉』という彼のスタンスを考えれば、この<戦争>にはどこかで関わってくるだろう。
彼がどちらサイドで干渉するかも……今は分からない。
そこまで考えた頃、議事堂の時計が予告された刻限になった。
◇◇◇
□アルター王国・王城
会場となる議事堂の扉を前に、アルティミアは瞑目する。
彼女がこれから話す内容は、国にとって災厄の種に過ぎないのかもしれない。
戦争を前に、自らの意思で国のスタンスを定めようとしている。
エゴと言う者もいるだろう。
平和を愛した王である父ならば選ばない道だと、国内からも非難されるかもしれない。
けれど、それは……彼女の父も同じなのだ。
方向性が違うだけで、前回の戦争の父の決断は……エゴと言える。
アルティミアが父であるエルドルをあえて評するならば、彼は未来を夢見ていた王と言える。
<マスター>の増加という時代の大変遷に、エルドルはそれが人類の未来を切り拓くものであると考えていたのだろう。
旧ルニングス領で行われていた<マスター>による農地改革をはじめ、<エンブリオ>という超常の力は人間範疇生物を救うものになりえたからだ。
だが、エルドルは<マスター>の良い面しか見ていなかった。
まだあの【疫病王】がメイヘムを滅ぼす前とはいえ、悪意を持った<マスター>の恐ろしさを彼は実感していなかった。
あるいは……彼は他により恐ろしいモノを知っていて、その未来を覆す手段も<マスター>に求めていたのか。
いずれにしろ、<マスター>という存在を『神の遣い』のように考えていた彼は、<マスター>の手によって生まれた災厄に殺された。
そして父を亡くしたアルティミアや多くの者にとって、<マスター>は不信の対象であり、『怪物』のような存在だっただろう。
アルティミアにとって前回の戦争からの日々は、起伏と曲がり路だけを進んできたと言ってもいい。
多くの困難があり、自らを責め苛む日々であった。
けれど、迷いの森のような暗闇の中、出会った光が彼女の道を照らし……今がある。
その出会いからは、自らの過去と考えを見つめ直す日々でもあった。
そうした日々の中で……少しずつ定かになっていく思いもある。
それは、敬愛する父と自分の違い。
きっとこれから自分が下す決断は、平和と未来を愛した父ならば決して選ばなかった道だ。
エゴかもしれない。
けれど、王とは自らの意思で国の行き先を決め、その背に責を負う者だと知っている。
だからもう彼女は決断して両目を開き、扉を自ら押し開けた。
◇
ランカーを招集した場に、アルティミアが姿を現した。
アルティミアに続いて、リリアーナをはじめとした騎士やインテグラも入室する。
アルティミアはゆっくりと、最奥にある壇上に向かう。
「国王代行、第一王女アルティミア・アズライト・アルターよ」
壇上に立ったアルティミアは、会場の<マスター>を見回して自らの名を名乗った。
「事態が差し迫っているから、前置きの言葉は長くするつもりはないわ。けれど今日、集まってくれたことにまず感謝するわ」
彼女がそう言って議事堂の<マスター>達に一礼すると、参加者や護衛の騎士からも僅かなどよめきがあった。
髑髏ヘルムのパトリオットなど、髑髏の眼窩から涙を流している。
世界派も遊戯派も混ざったランカー達だが、王が頭を下げる意味を軽く捉える者はいない。
アルティミアは首を上げた後、言葉を続ける。
「まず、周知したとおり、皇国との間で戦争が実施されるわ。ルールは<トライ・フラッグス>。戦闘にはランキング内の<マスター>のみが参加可能。そして、勝利した国が相手国の支配権を得る。勝者総取りの戦争よ」
負ければ終わりの戦。
その事実に、参加者が息を呑む。
「事前に配布したルールに加えて、まずは協議で決まったことを通達するわ。開始日時は」
そう言ってアルティミアはこちらの暦を述べるが、今の月と替わっていることもあって<マスター>にはピンとこない者も幾人かいる。
それゆえか、彼女は言葉を重ねる。
「皇王からは『<マスター>相手ならこう言えば分かる』と言われたわ」
彼女はメモを取り出し、そこに書かれていた日時を読む。
「――グリニッジ標準時、五月七日午前零時」
それは、地球の暦。
不思議はない。皇国側にも【獣王】をはじめ、密接に連携した<マスター>がいる。
日本での日時は、五月七日の午前九時。リアルでは今から一週間後。
ゴールデンウィーク最終日、である。
「<マスター>にとっては、参加しやすい者が多い日だと聞いているわ」
時差で前後十二時間ズレても土日であり、参加はしやすいだろう。
双方の戦力を注ぎ込むならば、間違いではない。
「そして戦争の開催期間は――――三日間よ」
アルティミアの発言に、会場中が今までで最大のどよめきを見せる。
三〇倍加速の<戦争結界>を維持できるのは、こちらの時間で三〇日。
それをあえて、三日間と区切っている。
「こちらにとっても、あちらにとっても、それが利のある期間ということよ」
王国は<マスター>の数で大きく劣っている。
長期戦になればなるほど、その差が響いてくるのは想像に難くない。
対して、皇国は早期に決着をつけなければカルディナの介入を招く。
それに長引くほどに皇国の飢餓も進行する。
どちらにとっても、短期間で決着をつけるに越したことはない。
これで日時と期間は明らかになった。
残るは、戦闘エリアと追加ルール。
「開戦日時はあちらの希望。期間は両方の同意。そして、戦闘エリアは王国側に一任されているわ」
つまり、アルティミアの意思で戦闘エリアを決定できるということ。
「そして、私が定めた戦闘エリアは旧ルニングス領――」
アルティミアは大方の予想通りの地名を挙げ、
「――を始めとした放棄地区を除く王国全土よ」
――それを否定し、真逆の答えを述べた。
「な!?」
今までで最大のざわめきが、会議場に満ちる。
この場において、その答えを予想した者はいない。
レイはおろか、シュウやルークでさえそれは読めていなかった。
恐らくは……後に聞かされる皇国の者達にとっても同様だろう。
「な、何を考えてるんだい!? アルティミア!?」
その声は、インテグラから発せられた。
【大賢者】であり、今現在の王国の知恵袋である彼女も、これは聞いていなかった。
それゆえ、動揺の声が口から発せられていた。
だが、それはレイを始めとする幾人かの<マスター>も同じだ。彼女がそう言うのがもう少し遅ければ、同じ行動をしていただろう。
これ以上の被害を出さないための<トライ・フラッグス>だというのに、王国全土を戦場にするのでは本末転倒。
だからこそ、アルティミアの意図が読めなかった。
アルティミアは表情を崩さないまま、言葉を続ける。
「王国全土と言っても、市街地はエリアの範囲外。<砦>の設置はできず、<宝>と<命>も市街地では機能停止。もしも<砦>が破壊された状態で残り二つが市街地にあれば、その時点で敗北になるわ」
「…………」
だが、それも市街地での戦闘が発生する確率は下げているものの、旧ルニングス領での戦闘より危険であることに違いはない。
そう考えたとき、アルティミアは追加ルールも口にした。
「そして追加提案するルールは唯一つ。『戦争期間中のティアンへの加害禁止』」
「!」
「正当防衛や重犯罪者といったケースを除き、危害を加えた者は即死亡。これを参加する<マスター>に徹底させるわ。参加には【契約書】への署名が必須、として定めておくべきかしら。それと、お互いの有力ティアンにも、ね」
「そうは言っても、それは……」
ティアンへの加害を【契約書】で縛れば無為な殺生は制限される。
だが、縛ったところで危険はゼロではない。
最悪、デスペナ覚悟で大規模攻撃を仕掛ける<マスター>もいるかもしれない。
「……旧ルニングス領じゃ、駄目なのかい?」
「旧ルニングス領は皇国の実効支配地域。現時点で何が仕掛けられているか分かったものではないわ。最悪、<砦>の位置を詳らかにするセンサーの類が敷設されていても不思議ないのよ」
「それは、そうかもしれないけれど……」
インテグラはアルティミアの意見に納得はしたものの、承服しきれないようだ。
このエリア指定は王国の知恵袋である彼女の想定とも、まるで違ったのだろう。
あるいは、<戦争>に際して狙っていた思惑がズレたのか。
「でも、折角の<マスター>だけの<戦争>だろう? 王国ティアンに被害が及ぶ危険を冒すべきじゃないと……」
「――ソレよ」
インテグラの発言に、アルティミアが待ったをかけた。
その言葉こそ、彼女がこの決定を下した理由とでも言うように。
「インテグラ、そして列席いただいた<マスター>の方々。既に聞き及んでいることでしょう。皇国、そして世間ではこれをウォーゲームと呼んでいる……と」
<マスター>だけの戦争。
死人の出ない戦争。
最もクリーンで、派手で、ゲーム的な戦争。
だが……。
「<マスター>に頼った死なない戦争……」
アズライトはそこで言葉を切り、会議室に揃った者達の顏を見回して、
「――馬鹿を言わないでほしいわ。戦争は遊戯ではないし、他人事でもない」
――己の心を、口にする。
「そこを履き違えて、委ねるだけならばこの国に意味はないのよ。<マスター>は……願えば解決してくれる神の遣いではない。私達と同じ、生きている人間。同じだからこそ……貴方達と同様に、貴方達と共に……私達も力を尽くす」
「――――」
それはきっと、彼女の決意の言葉だ。
かつての彼女には、言うことができなかった言葉だ。
<マスター>を『神の遣い』のように考え、戦争への参加を求めなかったのが彼女の父。
彼女はその言葉に囚われていたが、それでもあのカルチェラタンで違う道を踏み出した。
そして今、完全に父の言葉を振り払った。
共に、歩むために。
「戦闘要員がアナタ達だとしても、王国のティアンは総力でサポートするわ。物資や食事、休息、治療、情報。バックアップのためには、王国を戦場にする必要があるの。異存はあるかしら?」
否は――ない。
否定の声も、動揺の声も、既にない。
彼女の覚悟を、受け止めている。
その場にいた全ての<マスター>が……続く言葉を待っている。
そして彼女は彼らを見据えて、言うのだ。
「この<戦争>――私達で勝ちましょう」
応じる声は――会場中から沸き上がった。
To be continued
〇蛇足
(=ↀωↀ=)<ちなみに市街地を範囲に含むと
(=ↀωↀ=)<民間人の被害がひどいことになりかねない代わりに王国側にも一つ利点あったんだけどね
( ꒪|勅|꒪)<それハ?
(=ↀωↀ=)<<墓標迷宮>にフラッグ配置すれば三つとも破壊されない
(=ↀωↀ=)<皇国の<マスター>はあそこに入れないからね
( ꒪|勅|꒪)<…………ア
(=ↀωↀ=)<まぁ、そうなると流石に皇国も<トライ・フラッグス>での決着を断念して
(=ↀωↀ=)<他の手を強硬してただろうけど
(=ↀωↀ=)<クラウディアならエリア設定で市街地含めた時点で「<墓標迷宮>は入りますの?」って絶対聞くし
(=ↀωↀ=)<お互いに勝ちの目があるからこそ、<トライ・フラッグス>に乗ってるわけだしね
 




