工房と遊戯 エピローグ
(=ↀωↀ=)<今年最後の更新ですー
(=ↀωↀ=)<連続更新なので前話から―
(=ↀωↀ=)<あと最近沢山更新したのでどこから読んでないかのご確認を―
(=ↀωↀ=)<こないだ妹にチェックお願いしたとき一話抜けてたりしました
□【装甲操縦士】ユーゴー・レセップス
両生類の男を口封じした者が襲撃してくることもなく、事件は終結した。
マニゴルドさんによれば、【ドラグノマド】内の機関がこの件についての捜査を進めているらしい。
ともあれ、件のかくれんぼから予想もしない方向へと転がった事件について、私の関わる部分では終わったと言える。
「……なんだか、ハードな一日だった」
「つかれてそうだね、ユーゴー」
「……うん」
マニゴルドさんの別邸のベッドに倒れ込みながら、心身の疲労で沈み込む。
いや、本当に……どうしてこんな話になったのか。
けれど、結果として孤児院の子供の誘拐も防ぎ、カルディナの連続行方不明事件も解決できた。
それに【アムニール】も受け取ったので、【ホワイト・ローズ】の改修もシルキーの最適化が終われば問題なく実行できるそうだ。
総じて考えれば、良かったのだろう。
「…………」
ベッドに倒れ込んでいると、邸のどこかから子供達の声が聞こえた。
事件の後、両生類から救出された子供達は、誘拐された孤児院が分かっている子供はそちらに戻されることになった。
ただ、少数だけど孤児院に入っていなかった浮浪児の子供達もいる。
そうした子達は、イサラさんが預かるらしい。
【ドラグノマド】の孤児院のスペースが空いてないとのことだったけど、マニゴルドさんが私も泊まっている別邸を家として提供した。
マニゴルドさん曰く、「使用人達も仕事がなかったから丁度いいだろう」とのこと。
実際、料理人の人などは作る料理が増えて嬉しそうだった。
また、キューコも子供と遊んでいる姿が時折見受けられる。
どうやらキューコは子供が嫌いではないらしい。
カウントがない相手、というだけでなく。
「……LSはちゃんと帰れたかな」
あの後、LS・エルゴ・スムはすぐに【ドラグノマド】を去った。
どうやらレジェンダリアの方で何かあって、帰る必要ができたらしい。
今回の事件解決の御礼ということで、マニゴルドさんが帰還の手配をしていた。
ちなみにその帰還方法は指名手配である。
一時的に国内指名手配にしてカルディナのセーブポイントを使用不能にし、ログアウトとログインでレジェンダリアに帰還するという手法だ。
今はもう指名手配も解除されている。
……まぁ、指名手配を出したり解除したりできる権力と結びついていなければできない荒業だ。本当に犯罪者になるのでもなければ、真似するのも難しい。
ちなみに罪状は児童性愛と関係ないものになったらしい。
手配される本人が強く拘ったそうだ。
「…………」
話を聞いて、ゲームに参加して、共闘もして。
それでも、私はきっとあの<超級>のことを理解できてはいないのだろう。
けれど、知ったこともある。
理解できる人間も、理解できない人間もいるということ。
人は他の人類全ての考えを理解できないし、してもらえない。
だからこそ、理解してくれる人と理解できる人を求める。
あのLS・エルゴ・スムに限らず、全ての人々が大なり小なりそうなのだ。
わたしも、そして姉さんも。
「……ちょっと、考えてたら、眠いかも……」
リアルでは中学生に過ぎないわたしには、この激動の一日はちょっとハードだった。
カリュートさんから、【ホワイト・ローズ】の新しい名前を考えてと言われていたけれど……頭が上手く回らないかも……。
でも、【ホワイト・ローズ重装改修型】じゃ……あんまりだもんね。
姉さんがつけてくれた、【ホワイト・ローズ】のように、綺麗な名前が良い。
そう……たとえば……。
「ふ、る……」
一つの単語を言葉にする前に、私の意識は眠気の中に溶けていった。
◇◇◇
「…………」
自らの<マスター>が眠りにつくのを、キューコは見守っていた。
そして彼女が眠りに落ちる寸前に発しようとした言葉を、メイデンである彼女はしっかりと理解していた。
与えられた部屋の卓上にあるメモとペンを手に取り、その言葉を書き留める。
それから眠る<マスター>に毛布を被せ、自分もその隣で横になる。
「おやすみ、ユーゴー。おつかれさま」
労いの言葉と共に、彼女もまた瞼を閉じて眠りについた。
卓上に置かれたメモには、一つの名が記されている。
<マスター>の消えかけた言葉を、メイデンが繋いだもの。
綴られた言葉は――『White Rose Full Bloom』。
『満開の白薔薇』という美しい銘が、記されていた。
◇◆◇
□■【漂竜王 ドラグノマド】・機密格納ブロック
【ドラグノマド】には、市庁舎の奥にあるエレベーターから続く特殊なブロックがある。
職員であってもほとんどの者は入ることができず、入室を許されているのはこの【ドラグノマド】を治める議長とその直下の者達のみ。
「…………」
たった今訪れたマニゴルドは、<セフィロト>のメンバーとして入室資格があった。
ブロックに入ってすぐ、マニゴルドは誰かの視線を感じた。
その視線の主は……シルキーだった。
赤い髪のシルキー、レッド。
しかしその色合いは……レストラント・マルクトやカリュートの工房にいる者とは僅かに違った。
レッドは無言のまま、客人を案内するようにマニゴルドを先導する。
そして少しだけ歩いて通路を抜けると……すぐにそれが目に入った。
この格納ブロックの大半を占める、巨大な構造物が。
「……全く、どこまで読んでいたのか」
それを見上げながらマニゴルドは呟く。
「【エルトラーム号】は事件の後、運営会社の経営が傾いた。損失を補填するために虎の子の動力炉を手放すことになり、それは議会に引き取られた」
あの【エルトラーム号】の事件。
ドライフ正統政府と<IF>は共に先々期文明由来の動力炉を求めたが、果たせなかった。
結果としてそれを手に入れたのは、両者を妨げたカルディナである。
「LS・エルゴ・スムの所有していた【アムニール】は枝一本。……それだけで船舶を上回るサイズの枝だった。【ホワイト・ローズ】の全ライン、予備を含めたとしても九割以上が余る。それは珠を賭け代にしたカルディナのものだ」
ユーゴーからも了解を取っている。
実際の勝者であるキューコからは【ホワイト・ローズ】に使えるだけ使うように言われたが、問題ない。<マジンギア>数機分だろうと、誤差だ。
「こうして先々期文明の動力炉と、そこからのエネルギーを余すことなく伝導できる素材の両方が手中に収まった」
巨大な構造物を見上げながら、マニゴルドは息を吐く。
「……【七光要塞】。俺は既に完成したと思っていたんだがな」
「性質を考えれば、基礎性能が高いに越したことはないでしょう?」
マニゴルドの独り言に、資材の陰から言葉が返る。
「今日はそっちですか、議長」
振り向いた先にいたのは【ドラグノマド】の長にして、<セフィロト>の雇い主。
カルディナ議長、ラ・プラス・ファンタズマだった。
「俺はのほほんと昼飯を食っていたあっちの議長の方が好きですがね」
「あら、どちらにしても人妻だけれど?」
先日、レストラント・マルクトで同席したときとはまるで雰囲気が違う彼女は、そう言ってマニゴルドを見つめ返す。
マニゴルドは視線を逸らし、今しがた格納ブロックに搬入されたと思われる動力炉と枝を見た。
「大したパーツだ。しかし、このために二回も俺が奔走する羽目になった。もっと早くに伝えてほしかったところです」
「伝えれば、ズレるかもしれないもの。逆に、伝えなければ読み通り。それだけ私はアナタを評価しているということよ。ファトゥムとシルキーの次かしらね」
「…………」
そこでシェフではなくシルキーの名を挙げることが、議長の本心である証左だろう。
同時に、伝えればズレる……予知が外れるという言葉は、あの【エルトラーム号】の事件で謎の<UBM>の存在を伝えなかった理由であるとも、暗に語っている。
「…………」
疑念はある。
だが、国家として、組織として、未来を予知する議長の思惑に沿うのが、自分達にとってもベストではあるはずだ。
……無論、その予知によって自分達が切り捨てられることになれば、真っ向から抗う覚悟もマニゴルドは決めている。
「ともあれ、ここしばらくはその読みを外していないようですね」
「ええ、もちろん。そうでなくては意味がないでしょう? ああ、珠の件もね。こんな書状が届くわ」
それはラ・プラスの直筆のメモだったが、差出人の名は黄河の第一皇子のものだ。
まるで、『近々こんな内容の書状が届くはずだ』と予知したように。
「カルディナに散逸した珠の所有権放棄。対価は<黄河四霊>グレイ・α・ケンタウリの通行許可。目的は王国にいる第三皇子とその婚約者の回収。……なるほど」
「問題はないでしょう?」
マニゴルドも理解する。
これでヴェンセールにいるファトゥム達も動きやすくなる、と。
「ただ、【ドラグノマド】が手薄なのは変わらないわね。しばらくはこの街にいてくれるかしら?」
「了解。どの道、イサラもしばらく忙しいでしょうからね」
増えた子供のために、新しい孤児院を手配する必要もある。
しばらくは都市防衛の任務に就きつつ、イサラをフォローするつもりだった。
「では議長、失礼します」
「あら、用件は済んだのかしら?」
「【七光要塞】がよりバケモノになる確認と、議長との話だけでしたからね」
そう言って、マニゴルドは通路の向こうへと戻っていった。
彼の背を見送りながら、ラ・プラスは微笑む。
そして……。
「さて、あちらはそれで良し。こちらは……と」
懐からもう一つ、自身がメモした書状をラ・プラスは取り出す。
それもまた、未来を予知して書き記したもの。
ただし先ほどと違い、公的な書状を予知したものではない。
ある人物より送られてくる……私的で後ろ暗い文面だ。
「内容は暗殺の密約」
とある人物を暗殺する対価に、カルディナへの様々な優遇措置が書かれている。
それはとても美味しいが、彼女にして見ればこの依頼の内容自体が美味い。
彼女の本来の目的を推し進める一因になりうるからだ。
「まぁ、多少の脚色は必要でしょうけれど。それにしても、この娘もつくづく運がないわね」
文面に記された名を、愉快そうにラ・プラスは読む。
暗殺対象の名は――。
「――――エリザベート・S・アルター」
◆
予知された書状が届くのは、今よりもさらに時計の針を進めた先のこと。
王国と皇国の間で、<トライ・フラッグス>と呼ばれる戦争が起きる直前。
けれど、そのための布石すら、彼女は既に打っている。
訪れるそのときを瞼の裏に描いて……未来視の打ち手は嗤っていた。
To be continued
(=〇ω〇=)<年内に……終われた……
(=〇ω〇=)<……明日からは更新優先して後回しにした
(=〇ω〇=)<正月明け締め切り作業の数々だー……
(=〇ω〇=)<とりあえず……書初め代わりに100冊近くのサイン本から……
(=〇ω〇=)<あ、七章はアニメ放送中には始めます
( ̄(エ) ̄)<一月九日から放送開始のアニメも始まりますクマー!
( ꒪|勅|꒪)<ノベルアップ+のコンテストもよろしくナ
https://novelup.plus/event/dendro/
(=ↀωↀ=)( ̄(エ) ̄)( ꒪|勅|꒪)<皆様、よいお年を―




