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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
蒼白詩編 四ページ目

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工房と遊戯 その七

(=ↀωↀ=)<年内終了目指して更新ペースを速めていく……!


(=ↀωↀ=)<短めだけどキリのいいところまでー

 □【装甲操縦士】ユーゴー・レセップス


 【エルトラーム号】で同行した際に、イサラさんがカルディナの各地で孤児院を経営していることは聞いていた。

 その理由はイサラさんの過去によるものとだけ聞いている。

 詳しくは聞いていないし、聞く資格もないだろうと思ったからだ。

 ただ、この過酷な環境のカルディナで孤児院を、それも複数運営することは困難だった。

 正確には、子供を劣悪な環境に置かずに運営するのが難しいのである。

 孤児院の多くはギリギリ生きていられる程度の施設か、あるいは将来的に奴隷として売買して採算をとるための施設だったそうだ。

 イサラさんはより子供が健やかに生きられる孤児院をカルディナに増やそうとしていた。

 しかしそれには莫大な金銭が必要であり、超級職であるイサラさんでも届かない。

 死線を潜るようなモンスターの討伐で得た賞金も、運営費に消えていく。

 過酷なカルディナでは、あまりにも恵まれない子供が多すぎた。

 孤児院を増やしても、抱えきれないほどに。

 救われない子供を救おうと、自らをすり減らすように戦っていたイサラさん。

 けれど、その生き方を続けていればいつかは命を落とし、彼女も孤児院も終わってしまっていただろう。

 そんなとき、彼女のスポンサーになったのがマニゴルドさんだった。

 「俺には金しかない」と嘯く彼は、イサラさんをそれまで彼女が稼いだ以上の大金で雇い入れたのである。

 俗物を自認する本人に訊けば、「腕の立つ超級職で尚且つ美女の護衛兼愛人を手に入れたかっただけ」、「渡した金をどう使うかもイサラの自由で、俺は知らない」とでも言うだろう。(実際に言ったのだろうけど)


 しかし今、【ドラグノマド】の孤児院に向かいながら思うことがある。

 マニゴルドさんはイサラさんの孤児院までの地図を、すぐに描いて渡してくれた。

 とても分かりやすく、「どうやって孤児院に向かうか」を理解した者が描いた地図だ。

 だからきっとマニゴルドさんも……イサラさんが行っている孤児の救済を気に掛けていたのだ。


 そんな場所に今、あの【呪術王】が向かっている。

 ただかくれんぼのためか、あるいは何かの目的を持ってかは分からない。

 けれど……今朝の新聞で見た『カルディナ各所での孤児の行方不明』事件が私の脳裏をよぎる。

 何事も起きていないことを祈りながら、私達は孤児院へと急いだ。


 ◇


 結論を言えば、孤児院に不穏な空気はなかった。

 けれど、どうやら平常通りでもないようだった。


「これは……」


 空気には音が乗り、子供達の笑い声も聞こえている。

 孤児院の雰囲気は賑やかで……愉しげなものだった。


「すごーい!」

「もっとやってー!」


 遊具が置かれた孤児院の敷地。

 そこには沢山の子供に囲まれた五人の男性がいた。

 一人が吹く笛の音をBGMに、ジャグリングや手品を子供たちに見せているようだった。


 ただし、五人はいずれも仮面を着けている。


 酸素マスクを着けているものは……流石にいなかったが。


「……何で五人も?」

「あ! またおきゃくさんだー!」


 想定外の光景に戸惑っていると、子供達がそう言って駆け寄って来た。

 その目はキラキラとしていて、私に何かを期待しているようでもある。


「おにいちゃんもなにかげいしてくれるのー?」

「芸?」

「うん!」

「おじちゃんたちねー。ざつぎだんなんだってー」

「きょうはトクベツにわたしたちにみせてくれてるのー」


 男達を指差す子供達は声を弾ませている。

 余程に楽しいのだろう。あるいは、娯楽に飢えているのかもしれない。


「…………」


 しかし、はっきり言えばこの男達は露骨に怪しい。

 このタイミングに慈善公演の雑技団?

 あまりにも、都合が良すぎる。

 あのHENTAIが予め仲間にここで芸をさせていたのではないだろうか?


「……そうか!」


 そこまで考えて、HENTAIの思惑を察した。

 私達はあいつの素顔を知らないし、雑技団全員が仮面を着けていれば誰がHENTAIかの判別もつかない。

 仲間の中に紛れれば、確率は五分の一。

 誤答でアウトになることを考えれば、こちらのリスクが高く……中々上手い手だ。

 どうにかして、見極めなければならない。

 まずは子供達に訊いてみよう。


「あの五人の中で、後から来た人はいるかな?」

「?」

「みんないっしょだったよー」


 遅れてきた者……かくれんぼを開始してから来た者がいれば、それがHENTAI本人だと考えたけれど読みが外れた。

 仲間と合流してから孤児院に来たのか。周到だな。

 いや、そうだとしても、ここで公演する許可を取るときは、代表者……あのHENTAIが話したはずだ。

 そのときのことを、この孤児院の職員に訊けば……。


「せんせいたちもみればいいのにねー」

「どこいったんだろうねー」

「おかいものかな?」


 いないの!?

 クッ、手詰まりだ……!


「キューコ、分かるかい?」

「……………………」


 キューコは何も言わない。

 ただ、視線をあちらこちらに向けている。

 子供達に囲まれながら芸を見せている男達。


「けっ! あんなのみてなにがたのしいんだよ!」

「いいよいいよ! いまならブランコもすいてらあ!」

「わーい♪ もっとはやくおしてー♪」

「お、おう」


 集まった子供達とは離れ、芸に興味がない素振りで遊具に乗った子供達。

 みんなが夢中になっているものに、あえて背を向けてクールぶりたいお年頃の子供達なのだろう。

 まぁ、一人だけ普通にブランコで楽しんでいる女の子もいるけれど。


「…………」


 キューコは、首を傾げながらそれぞれに視線を巡らせている。


「キューコ?」

まだ(・・)、わからない」

「……そう」


 何事か考えているようだけど、まだ考えがまとまらないようだ。

 なら、私は私で考えてみよう。


『さあ! 次はこの帽子からハトが出るよー!』


 仮面の男の一人がそう言って帽子を脱ぎ、手にしたステッキでコンコンと叩く。

 子供達が期待と共に帽子を見るが、何も出てこない。

 すると、ステッキの先端からパタパタとハトが飛び出し、子供達が大喜びしている。


「…………」


 ……違う(・・)


『数を七つに増やしますぞー!』


 ジャグリングをしている男が、回していたバトンを七つに増やす。

 口調はあのHENTAIに似通っている。


「…………」


 ……だけど、これも違う(・・)

 他に芸をしている二人も、違う。


 声が違う(・・・・)


 五人のうちの四人の声を聞いた。

 けれど、それはいずれもあのHENTAIの声ではない。

 つまり、残る一人。笛を演奏し続けている男こそが【呪術王】LS・エルゴ・スム!

 私は笛を吹く男を指差す。


「LSみーつけた!」


 そして辿り着いた答えを確信と共に宣言し、


『――ブッブーですぞー!』

 ――誤答の報せと共に、光に包まれた。


 光が消えたとき、私の身体は幼稚園児ほどの年齢にまで縮んでいた。


「すっげー! こどもになった!」

「すごいてじなだー!」


 私の周りでは、事情を知らない子供達がキャッキャと喜んでいる。

 男達は特に驚く様子もなく、芸と演奏を続けていた。


「お、おい! あれちょっとすごくないか?」

「へ、へへん。あ、あんなてじなより、ブランコのほうが……ほうが……」

「わーい、いっかいてーん♪」


 遊具で遊んでいる子供達も、そわそわしながらも縮んだ私を見ている。

 一人、お構いなしにブランコを満喫しているけれど。

 いや、そんなことよりも……。


「な、なぜ……?」


 なぜ、私の解答が誤答なのか。

 完璧に、見切ったはずなのに……。


「……はっ!」


 まさか……声はブラフ!?

 変声のアクセサリーを身につけることで、狙いを逸らした!?

 ならば、HENTAIは残り四人のうちの誰か……!


「くっ、あとはキューコだけなのに……!」


 確率は四分の一、賭けになる。

 ……私、師匠と違って賭け事は苦手なのに。


「ごめん、キューコ……。四分の一の、分が悪い賭けだけど……」

「…………べつにいい。ユーゴーに、あたまのよさはきたいしてない」

「久しぶりに毒舌ひどくない!?」


 わ、わたしだって年相応よりは頭いいはずだもん!

 あの銀髪とかレイが頭良すぎるだけなんだよ!

 ……まぁ、ちょっと、悩み過ぎるところがあるのは自覚してるけど……。


「わたしもかんがえたよ。だめだったら、もとデブにたくすけど……」


 キューコは腕組をして「んー」ともう一度何かを考えてから、


「たぶん、わかった」

 そう、宣言した。


「本当に? 残った四人の誰がLS・エルゴ・スムか、分かったの?」

「わかるわけないよ?」

「え!? 十秒前と言ってることが……キューコ?」


 キューコは五人の男達に背を向ける。

 そのままトコトコと歩いて、離れていく。


 そうして歩いて行った先には……ブランコがあった。


えるえす(・・・・)みーつけた(・・・・・)


 キューコが指差したのは……雑技団から離れて遊んでいた子供達の一人。


 一番楽しそうにブランコを漕いでいた……女の子。


 その子はキョトンとした顔でキューコを見返した後、


「――みつかっちゃった♪」

 ――笑いながらそう言った。






 ◇◆◇


 ■???


「はい、もしもし。俺です。俺俺」

『…………』

「……すんません、リヒテルです」

『こっちもアンタ宛に通信をかけているから、アンタじゃなければ困る。それで聞きたいんだが、【ドラグノマド】で変わったことは起きてないか?』

「あー、ちょっと変なバイトしました。そしたらあの【放蕩王】まで寄ってきてビビりました。たぶん、気づかれてないですけど。顔違いますし」

『……アンタならどうにかするだろうが、気をつけてくれよ。<セフィロト>のお膝元に配置してるのは、アンタ一人だからな』

「了解でぃす。で、この通信の本件は何ですか? 定期連絡じゃないですよね?」

『少し問題が起きた。その街でも厄介事が起きるかもしれない』

「あ! それってやっぱり【呪術王】関係の?」

『……何の話だ?』

「あれ? 違った……? 何関係の話です?」

『ラ・クリマの取りこぼしだ』

「……うーわ、めんどくせー」

『本音が零れてるぞ』

「いや、あの人の案件ってめんどくせーんですよ。カルディナ担当のサポートだからよく知ってますもん、俺」

『……何かあれば、こちらに繋がらないように処理してくれ』

「うぃっす。仕事しなくて済むように祈ります。ラスカルさん(・・・・・・)


 To be continued


(=ↀωↀ=)<ちなみにルークだったらノーミスで正解に辿り着いてた

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしやHENTAIは女だった……!? [一言] ルークチートやん
[気になる点] ドラゴン○ールとか言ってたし日本人?だとしたら絶対めんま意識してるだろ
[気になる点] HENTAIはマジで女なの? スキルで女体化してるとかじゃなくて? [一言] (=ↀωↀ=)<ちなみにルークだったらノーミスで正解に辿り着いてた レイ君やクマにーさんだったらどうだった…
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