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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
Episode Fragment

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437/740

Frag.7-1 “トーナメント”・最終日 α

(=ↀωↀ=)<とりあえず四日ペースで更新試み


(=ↀωↀ=)<駄目そうならペース戻すかお休み挟みながらの更新になります


 □■決闘都市ギデオン・“トーナメント”十日目


 十日間の“トーナメント”も、ついに最終日を迎えた。

 これまでに九日間の日程を終えた“トーナメント”。いずれの日も多くの参加者が集まったが、この十日目は一際参加者の層が厚い。

 今回の賞品となる珠は神話級……通常存在しうる<UBM>では最高峰であり、特典武具としての品質も高くなることが予想されたためだ。

 加えて、王国の決闘王者フィガロもこの日の“トーナメント”への参加を明言しており、普段はランキングの壁に阻まれて挑めない彼への挑戦者も集まっている。

 観客も多い。観客を入れるのは九日目までと同様に五回戦からであるが、それでも徹夜で会場の周囲に陣取る者がいるほどだ。

 あるいは、何日も前から最終日に焦点を合わせていた観客もいるかもしれない。


 そうした事情から、闘技場を運営するティアンの職員は忙しさに悲鳴を上げていた。

 闘技場内の事務室では多くの者が書類に目を通し、通信魔法で各所と連絡を取っている。

 だが、「今日が終わればこの忙しさともおさらば」と考え、必死に仕事をしていた。


「…………」


 そんな中、十代後半になったばかりの若い男性が事務室の奥にある一室……地位ある者のための執務室で書き物をしていた。

 男性の名はアッシュバレー・ギデオン。

 この決闘都市ギデオンを治める若き伯爵であり、そして騒動の中心になりやすいギデオンで多くの苦労を背負い込んでいる人物である。

 もっとも、最近はカルチェラタンや王都でも事件が勃発しているため、「まだギデオンはマシなのではないか」と錯覚しかけていたが。

 そんな彼の執務は激務である。特に十日間連続開催の“トーナメント”で彼も部下達も限界に近い。

 直属の諜報機関である忍者集団まで、いくらかこのイベントの運営に回しているほどだ。

 連日の睡眠時間を削り、今もポーションを飲みながら執務室で仕事をしている。

 闘技場で仕事をしているのは、伯爵として臨席の必要があるためだ。伯爵邸と闘技場の移動時間すら惜しんでいる。

 限界の責務の中で<UBM>が逃げたときは、胃に穴が空いて回復魔法が必要になった。

 そんなブラック貴族労働も、今日が最終日である。


「……ようやく、か」


 手元の書き物を終えて一息吐き、壁に貼られた紙を見る。

 そこには確認のため、これまでの九日間の“トーナメント”の結果が記述されている。


 一日目:【毒手拳(ポイズン・フィスト)(拳士系統毒拳士派生上級職)】レイレイ

 二日目:【鎧巨人】Barbaroi・Bad・Burn

 三日目:【亡八】ルーク・ホームズ

 四日目:【堕天騎士】ジュリエット

 五日目:【女教皇】扶桑月夜

 六日目:【抜刀神】カシミヤ

 七日目:【嵐王キング・オブ・ストーム(風属性魔法超級職)】ケイデンス

 八日目:【疾風騎兵】マスクド・ライザー

 九日目:【奇襲者】グリムズ


 九日間の“トーナメント”と九人の優勝者。

 小休止がてらに目を通していた彼は、優勝者の経歴を思い出そうとする。


(<超級>と決闘ランカー、三日目はあの(・・)<デス・ピリオド>のメンバー。七日目は討伐三位兼クラン四位<ウェルキン・アライアンス>のオーナー)


 見知った者から順に思い出していく。<デス・ピリオド>のメンバーには助けられたことも騒動を起こされたこともあるので、複雑な気持ちだ。


「九日目はどんな人物だったか……」


 しかし、最後の人物が何者か思い出せない。

 もしかして国外から新たに加わった<マスター>なのかと思ったが……。


「グリムズ氏は王国西方を拠点とする<童話分隊>というパーティに属しています。【ゴブリンキング】の討伐や、キオーラを騒がせた自爆幽霊船事件の解決などで活躍しています」

「なるほど」


 隣にいた秘書……の装いをした女忍者が彼の疑問の答えを口にする。

 ギデオン内の情報収集だけでなく、西方にも情報網を伸ばしているらしい。

 ともあれ、これでグリムズの素性も分かった。


「こうして結果を見ると、意外でもあり、順当でもあり、だな」


 優勝者には<超級>やランカーでない者も含まれており、この“トーナメント”が単純な実力だけでなく、組み合わせを含めた運も重要だったことを示している。

 そもそも、“トーナメント”に参加すること自体も競い合いであり、運も絡む。決闘や討伐ランカー、超級職が優先されることや、王国が認定した優先出場権を除けば抽選となるからだ。

 余談だが、<デス・ピリオド>のメンバーは全員が優先出場権の恩恵に与った。

 それはアルティミアの判断である。中核メンバーは講和会議で肩を並べて戦っているし、霞達三人も王都襲撃の際の功労者だ。

 仮にレイと仲間でなくとも、選出はされていただろう。同様に、<バビロニア戦闘団>や<K&R>なども認定されている。

 そして幸運か、あるいは必然か。“トーナメント”を勝ち上がった結果、それらのクランはいずれも珠への挑戦権を得たのである。

 もっとも、<K&R>が挑戦した<UBM>は空の彼方に逃げ去ってしまったが。


 なお、脱走の一件があったため優勝者による<UBM>への挑戦は一時的に停止し、対策を整えた上で都合のついた者から順次行うことになっている。そのため、七日目から九日目の優勝者はまだ挑戦していない。

 六日目よりも前の優勝者では三日目の優勝者であるルークが未挑戦であり、待っている状態だ。

 彼がすぐに挑戦しなかったのは、元々挑戦までには内部時間で最大二週間程度の猶予があったためだ。少しでも自らの戦力を高めて準備し、挑戦の成功率を上げる心算だったのだろう。


「……そういえば、結局優勝者は元々王国にいた<マスター>だけか」


 国外から新規に参入した<マスター>の名前が多く並ぶかとも思っていたので、意外と言えば意外だ。

 しかし責任者である彼が把握する限り、王国に所属変更してこの“トーナメント”に臨む<マスター>はそれなりにいたはずだし、登録もされていた。

 結果の詳細を見れば予選で消えた者や本選に入ってすぐに敗北した者には、新規所属者が多い。

 しかしトーナメント表の組み合わせはランダムであり、意図的に不利にする操作はなかったと断言できる。運も含めた実力の結果、勝ちあがることができなかったのだろうか?


「キャンセル分の当日抽選、終わりました!」


 そんなことを考えたとき、職員が報告にやって来た。


「そうか。もう締め切りの時間だったな」


 登録済みの選手が既定の時間に現れなければ参加を取り消し、空いた枠への当日抽選を行うというルールだ。

 一日目の優勝者であるレイレイも、このルールで“トーナメント”に参加した口である。

 それ自体はおかしくはない……が。


「……しかし、最終日でもキャンセルが出たのか」


 <マスター>は自分の予定を考慮して参加の日付を決めたはずだが、それでもこうしてキャンセルは出る。

 無論、マスターにも事情はある。ティアンからすれば<マスター>特有の『向こう側に消える現象』、<マスター>からすれば『リアルの急な都合』でそうなること自体は不思議ではない。

 しかし、結局十日間すべてで数人の不参加が出ている。

 全体の割合としては三%にも満たないだろうが、多い気もする。


「…………?」


 伯爵はふと気になり、登録したが参加しなかった者達の書類を探した。

 執務室の引き出しに収めた書類はすぐに見つかり、彼はそれらに目を通す。


「…………これは」


 そして目を通していくうちに、気づく。


 登録して不参加だった者達ほど……新規に所属した猛者だということに。


 レジェンダリアやグランバロアの元ランカーも参加予定だったが、欠場している。


「こちらが本日分です」

「……ひどいな」


 そして秘書忍者が手渡した今日の書類はよりひどい。

 神話級が賞品の今回に狙いを絞った猛者は多いとは考えていた。

 しかし参加するはずの猛者が複数人、キャンセルになった。

 フリーの準<超級>が三人、そして<超級>が一人……規定の時間になっても現れなかったのだ。


「“トーナメント”のルールは……」


 伯爵は、何度も確認したことを思い出す。

 今回の“トーナメント”には、主となる四つのルールがある。


『その一、参加資格者は王国に所属する<マスター>のみとする』

『その二、参加者は“トーナメント”後の三年間は他国に移籍不能』

『その三、参加者は王国内で懲役一年以上に類する犯罪行為を行った場合、全てのセーブポイントが使用不能となる』

『その四、参加者は順位に応じて<UBM>への挑戦権を得る。また、『三年以内に王国が関与した<戦争>への参加意向』の【契約書】にサインした場合、副賞として希少武具の選択獲得権も得る。選択順は“トーナメント”の順位に応じる』


 この“トーナメント”を開く目的を考えれば、当然と言えば当然の条件だ。

 しかし、登録をしたものの、実際には参加しなかった(・・・・・・・)場合はどうなるか。

 登録だけの者をこのルールで縛ることはできるのか。


 答えは、否である。


 参加しない時点で、契約の対象外だ。代わりに当日抽選で参加した者にスライドする。

 副賞用の【契約書】は別かもしれないが、猛者であるほど副賞を欲さず、そちらにはサインしていない。


「……意図的なものか?」


 登録はしたものの、やはり条件が嫌になって不参加を決めた?

 あるかもしれないが、不参加の全員がそうだとは考え難い。

 であれば、何者かの意図が介入している可能性もあった。


「は、伯爵! た、大変です!?」


 伯爵が思案していたとき、慌てた様子の職員が駆け込んできた。

 秘書忍者が伯爵を庇うように職員との間に立つが、伯爵はそれを下がらせる。


「そんなに慌ててどうした? まさか、またどこかの<超級>が事件を?」


 フランクリン、ガーベラ(とシュウ)、ハンニャなど、<超級>が立て続けに事件を起こしたために、『ギデオンで何か起きればまず<超級>』というイメージが伯爵の脳内にはあった。次点で第二王女、その次が<UBM>である。

 だからついそんな苦笑交じりの問いを投げかけた伯爵に対し、職員は……。


そうです(・・・・)!」

 大きく頷いたのだった。


「…………」

「あ、いえ、事件は起こしていないのですが……」


 そうして職員は勢いで発してしまった自身の言葉を汗顔で否定する。


「……順を追って説明してくれ」

「は、はい。先ほど、当日キャンセル分の補欠抽選が終わりまして……」


 そうして僅かに冷静さを取り戻した職員は、説明を始めた。

 伯爵はそれを聞き終え……「どういうことだ!?」と叫んだのだった。


 ◇◇◇


 □中央大闘技場・控室


 予選と言われる四回戦までが終わり、次は観客も入る五回戦。

 控室では王国の決闘七位であるビシュマルが瞑目し、次の試合へ意識を集中していた。


「…………」


 神話級の特典武具の争奪戦となる最終日。

 かつてない激闘になることは想像に難くない。

 そして、決闘王者であるフィガロもこの日の“トーナメント”に出場している。

 だからこそ、ビシュマルもこの日にエントリーした。

 決闘三位のトム……相性ゆえに勝利できぬ相手を経ずに、フィガロと戦える機会があるのだから。

 決闘王者であるフィガロと、模擬戦ではない試合で力をぶつけ合う。

 ある意味では、ビシュマルにとってそれこそが賞品だった。


「……ライザーの奴は勝ってたな」


 一昨日の“トーナメント”で、友であるライザーは見事に優勝を掴んでいた。

 見ようによってはトム以外の彼より上位のランカーが全員、他の“トーナメント”に出場していたことも要因だろう。

 だが、討伐ランキングの猛者や<AETL連合>のオーナーなどもおり、決して楽な戦いではなかった。

 それでもライザーは勝ち抜き、優勝したのだ。


「…………」


 同じように壁にぶつかっていた友。

 しかし今の彼は、前に進み始めている。

 自分がデスペナルティになっていた間に起きた王都襲撃事件や今回の“トーナメント”で、ライザーは前に進んだのだとビシュマルは感じた。

 だからこそ、ビシュマルも前に進むべく、今日の“トーナメント”を選んだのだ。

 そのためには勝ち進まなければならない。

 自身が勝とうと思えば、一切の雑念なく一心不乱に突き進む以外に道はないとも思っている。

 だからこそ、通信機器の類は全てアイテムボックスに仕舞っている。

 また、本戦の組み合わせ表も見ていない。

 勝ち進めば、いずれはフィガロに当たる。

 それだけを考えて、ビシュマルは一試合一試合を勝ち進むだけだった。


「ビシュマルさん、お時間です……」

「ああ、分かった」


 やがて職員に呼ばれ、ビシュマルは入場口へと向かった。

 自らの内面に集中していたからか……彼を呼びに来た職員の奇妙な表情には気づかなかった。

 まるで同情しているかのような、その表情に。


 ◇


「?」


 入場してすぐに、ビシュマルは闘技場の空気がおかしいことに気がついた。

 ビシュマルの登場に歓声を上げる観客の姿はある。

 だが、それ以上の困惑が会場を占めていた。

 ビシュマルは入場で何かミスをしたのだろうかと考えたが、それは違うとすぐに察した。

 観客の視線の多くが、入場したビシュマルではなく反対側の入場口へと向けられていたからだ。

 まだ誰も入場してきてはいない。

 だが、確実に……何か異常な相手との試合であることをビシュマルは理解した。


(……本選からはトーナメント表が公開だったはず)


 恐らく今の観客の空気は、ビシュマルがあえて見なかったトーナメント表を見たためだ。


(まさか、フィガロとぶつかるのか?)


 であれば、僥倖とも言える。

 自身の全てをぶつける機会が早々に得られたのだと、喜びもしよう。


(……いや)


 だが、すぐに違うと直感する。

 相手がフィガロであれば、この観客の空気はあり得ない。

 もっと純粋に……試合を望む歓声で満ちているはずだからだ。

 決闘ランカーのビシュマル以上に注目され、歓声よりも困惑が強い相手。

 そんな相手に心当たりはなかった。

 ただ眼前の相手にぶつかるのみだと定めていたはずの心が、抱いた疑念に揺れる。


 だが、程なくして答えが……一人の男が反対側の入場口から現れる。


 それは見事な肉体の男だった。

 革のジャンパーやレザーパンツを着ているが、服越しでも筋肉の凹凸が確認できる。

 顔にはサングラスをかけていて目元が確認できないが、肉体同様に精悍な顔つきであることは間違いないように思えた。

 ビシュマルもまた筋骨隆々のアバターであるため、並べばまるでプロレスの興行にも見えるだろう。

 だが観客は、そしてビシュマルは……そんな穏やかな感想を抱かない。


「…………どういうことだ」


 観客が抱いた困惑を、ビシュマルもまた抱く。

 現れた男とビシュマルは会ったことがない。

 しかし装いも含めて、その姿を見知っていた。

 直接は見たことがないが、ネット上に上がった動画で幾度となく見ている。

 脳裏に浮かぶ名前と共に、この“トーナメント”のルールの内の二つを、ビシュマルは思い出す。


『その一、参加資格者は王国に所属する<マスター>のみとする』

『その二、参加者は“トーナメント”後の三年間は他国に移籍不能』


 であれば、この男がここにいるはずがない(・・・・・・・)

 だが、男はここにいる(・・・・・)


『と、“トーナメント”十日目、五回戦第一試合……』


 舞台の上に二人が揃ったとき、アナウンサーもまた困惑を含んだ声で、しかし自らの職務を行う。


『西、決闘ランキング七位“炎怒”の【強力士】ビシュマル』


 先に入場したビシュマルの名を出し、


『東……』


 そして、


『元、カルディナ決闘ランキング二位……』


 ビシュマルと相対する男のかつての肩書と、





『――――【殲滅王】アルベルト・シュバルツカイザー』

 ――――王国に所属するはずがない名を告げた。


 To be continued


(=ↀωↀ=)<…………


(=ↀωↀ=)<デデンデンデデン!


(=ↀωↀ=)<はい。【殲滅王】、入りました


( ꒪|勅|꒪)<…………どういうことだヨ(困惑)



○余談


(σ■-■)←七日目で特に言及なく負けてる人


(=`ω´=)<何で負けたん?


(σ■-■)<途中で優勝者と当たって普通に負けましたよ


(σ■-■)<奇襲ならともかくヨーイドンで始まる試合だとどうしても不利ですね……


(σ■-■)<あと奥義の《消ノ術》は


(σ■-■)<闘技場の結界すり抜けるくらい存在が完全に消えるせいで


(σ■-■)<使うとその時点で消失=敗北扱いになって決闘の結界が解除されます……


(σ■-■)<無敵回避使えない状態で舞台全体攻撃とかやられたらどうしようも……


(σロ-ロ)<言い訳乙


(σ■-■)<ぐぬぬ……!



○蛇足


(=ↀωↀ=)<あ、Wikiに【殲滅王】のキャラメイクのオーダーが


(=ↀωↀ=)<ター○ネーター2って書いてあったけど違うよ


(=ↀωↀ=)<コメ返しで書いたオーダーの話は【殲滅王】のキャラメイクじゃなくて


(=ↀωↀ=)<漫画版で出るときに作者が今井神先生に出したオーダーの話だよ


(=ↀωↀ=)<まぁ、どっちにしてもター○ネーター2だけど

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