Frag.3 ゼタ先生の解説講座 ジョブビルド編
(=ↀωↀ=)<前回重かったので
(=ↀωↀ=)<今回はライトなエピソードです
(=ↀωↀ=)<時期は遡って六章手前くらい
■二〇四五年四月上旬
【魔将軍】ローガン・ゴッドハルト。
皇国の<超級>の一人であり、かつては決闘一位でもあった。
だが、その名も既に地に落ちている。
第一の躓きは、カルチェラタンにおける敗北。
【奏楽王】ベルドルベル、“不屈”のレイ・スターリングの両者との連戦によって敗れた。
しかし、その後に流布された映像により、あたかもルーキーであるレイ・スターリング一人に敗北したかのように思われ、『<超級>でありながらルーキーに負けた男』と嘲笑われた。
レイ・スターリングに敗れたのはMr.フランクリンも同様だが、あちらは元から戦闘職ではなく、戦力であるモンスターの大半は【破壊王】によって倒されたことが周知されている。
そのため、余計にローガンの敗北が目立った。
しかも件のフランクリン相手にさえも、ローガンは敗れている。
第二の躓きは、決闘王者の失冠。
【盗賊王】ゼタとの決闘に敗れ、決闘一位の座を明け渡すことになった。
拠り所としていた地位までも失ったのである。
そのことに彼は心折れ、<Infinite Dendrogram>を引退しようかとさえ考えていたのだが……それを引き留めたのは彼を破ったゼタだった。
ゼタは彼を自身の所属クランである<IF>に誘い、対価として彼を強くすることを約束した。
時は、ゼタが彼を強くするプランを提示した頃にまで遡る。
◆
ローガンが皇都に所有する豪邸の一室で、全身を包帯に包んだ【盗賊王】ゼタがホワイトボードの前に立っていた。
なお、ホワイトボードはゼタの持ち込みである。
「自覚。あなた自身がよくご存じとは思いますが、あなたの<エンブリオ>は応用力において最強クラスの<エンブリオ>です」
「…………」
ゼタの言葉に、ローガンは素直に頷けない。
最強と言われても、ゼタ含め散々負け通しているのだから。
「職業。自身の使用可能なジョブスキルの数値を十ヶ所まで十倍化する。それで得られる総合力の上昇はもはや説明するまでもありません」
ローガンのルンペルシュティルツヒェンの能力特性、『ジョブスキル改竄』。
いかなるジョブスキルであろうと、スキルの作用に数字が混ざるのであれば書き換えてしまう。
できることの幅広さで言えば、全ての<エンブリオ>の中でも間違いなく最上位に位置する。
「説明。今回はまず、有用なビルドについての説明を行いますが、まず前提として【魔将軍】は他のジョブとのシナジーが最悪です」
「……おい」
いきなり自分の持つ超級職に駄目だしされた。
だが、メインとサブのジョブ同士のシナジーの重要性はローガンも分かっている。
これまで、模索はしていたのだから。
「将軍。超級職の中でも【将軍】シリーズは、癖が強いですから。まず、パーティの限界を遥かに超えた一〇〇〇体単位の軍団で動けるということ。次いで、それら全てに全体強化のアクティブバフを与えられること。他のジョブとはこの時点で明確に違います」
ホワイトボードにジョブの特徴を書きながら、ゼタが解説する。
付与術師系統の全体強化でも、そこまでの規模の強化は出来ない。
それこそ、【超付与術師】でもできないだろう。
「喪失。だからこそ、【将軍】シリーズは代償として汎用性を失っています」
「…………」
「専用。あなたも試したことはあるかもしれませんが、サブジョブに置いた《魔物強化》系のスキルを使用できません。なぜなら、【魔将軍】は悪魔種専用の指揮官。他のモンスターにも広く強化が行きわたるスキルは、シナジーの対象外です」
それはローガンにも覚えがあった。
超級職になる前は併用して使えていたのに、【魔将軍】をメインにしてからは使えなくなっている。それさえシナジーできていれば、最大で六〇〇%のステータス強化を一ヶ所分の消費でできたというのに。
しかしそれは他のジョブにもあるようなメインとサブの相性問題というだけでなく、【将軍】であるがゆえの欠点があったということだ。
「強化不能。なお、他の【将軍】……例えば【蟲将軍】ならスキルレベルEXの《魔蟲強化》で全体に一〇〇%のステータス上昇が付きますが、【魔将軍】にはありません」
「はぁ!? 【魔将軍】に無いのは知っていたが、他にはあるのか!?」
「代償。代わりにインスタントの悪魔召喚がありますので」
「…………」
散々悪魔召喚を使ってきたローガンである。
しかし、他の【将軍】同様に強化であったならば、自分の場合は一〇〇〇%強化だったことを考えると惜しい気もした。
零から軍団を呼べる召喚と、軍団の全てを底上げできる強化。
どちらが有益であるかは判断が分かれるだろう。
「技巧。加えて、スキル系のジョブとも相性が悪いです。鎧スキル系や盾スキル系のジョブでダメージを一〇%カットするスキルを十倍化で一〇〇%カット、とは考えたことがあるでしょう?」
「…………」
図星だった。これで無敵になれると思い、使えなくなった【高位従魔師】の代わりに鎧スキル系のジョブを試しに取ったが駄目だった。
「立場。【将軍】はサブにスキル系を置いても効果を発揮しません。なぜなら、【将軍】シリーズは指揮官であり、戦いの技巧を駆使する達人ではないからです」
「歴史上一対一が強かった将軍など腐るほどいるだろうが!」
古代中国の武将等を思い浮かべ、ローガンは納得いかないと吼えた。
そもそも、【魔将軍】のローガンからして悪魔を指揮するものの前線には出ている。
「同感。ええ、私もそうは思います。ですが、<Infinite Dendrogram>のジョブシステムではそう判定されるのです」
「運営の分からず屋め!!」
ローガンはそんな仕様にした運営に怒りを持った。
もっとも、運営……管理AIからしてもジョブ周りは先代管理者の仕事であり、手を付けられてはいないのだが。
手を付けられるなら、まずは成長への意欲を活発にするために超級職を増やして枠を広げるだろう。できないのだから、そういうことだ。
「例外。そんな【将軍】シリーズでも、ダメージカットスキルを取れるジョブもあります」
「おお! それは何だ!」
「【聖騎士】」
ジョブの名を聞いて、ローガンが固まった。
【聖騎士】とは騎士系の上級職であり、《聖騎士の加護》によるダメージ一〇%カットのスキルを有する。
そして現在の世界情勢的には……王国オンリーのジョブである。
しかも、厳重に管理されている。王国で指名手配中のローガンではまかり間違ってもジョブには就けまい。
心情的にも、あまり良い思い出がない。
「騎士。もっとも歴史文献上の組み合わせ例が【騎将軍】とのビルドなので、この一ケースだけ許容される限定的な組み合わせなのかもしれません」
「ああ、何だ。ならば仕方が……」
「問題外。まぁ、それ以前に【魔将軍】は悪魔種専門なので、サブに聖職者を置いても機能しませんが」
「どう足掻いてもぬか喜びじゃないか!」
ローガンは少しプレイヤー自身の地を出しながら再度吼えた。
だったら【聖騎士】の名を出す必要すらないだろうが、と。
「理解。さて、ここまでの説明でご理解いただけたと思いますが」
「…………」
「不適合。ルンペルシュティルツヒェンと【魔将軍】の相性は、現在良いとは言えません」
「だろうね!!」
ジョブスキルこそが肝であるルンペルシュティルツヒェンだが、どこまでも【魔将軍】のシナジー不適合によって強化案が潰されている。
【将軍】シリーズ自体が汎用性に欠けてスキルの幅が狭く、さらに【魔将軍】はインスタント悪魔召喚にもリソースを振っているせいか余計にだ。
「八方塞がりじゃないか!? もうどうしろっていうんだよ!!」
敗北と失冠に続き、ジョブまで駄目だったとなってはやはり引退物じゃないかと、ローガンは思った。
(……それらを差し引いても、なぜか【魔将軍】は他の【将軍】シリーズよりもバランスが悪い)
【魔将軍】というジョブそのものが抱えた歪さについて、ゼタは心中で疑念を吐露する。
ゼタの所感で言えば……まるで『大事な歯車が抜け落ちている』ような感覚だ。
(【魔将軍】のみの利点があるので、それに対する配点がシステム製作者の中では高かったのかもしれませんが……それにしても基本コストが重すぎる。……このことは後日考えましょう)
ゼタは目の前で落ち込むローガンを見る。
まるでゼタの交渉前の折れたメンタルに戻ったかのような(中身)小学生に対し、その利点を話すことにする。
「利点。他にはない【魔将軍】の利点として、インスタントの悪魔召喚が挙げられます」
「……他のジョブもやってるだろ」
「否定。召喚師系統や精霊術師系統は、予め召喚対象を用意する必要があります。召喚のための媒体であったり、得手とする属性の自然魔力が豊富な地域であったり、と。対して、【魔将軍】のインスタント召喚は、コストさえあればいくらでも呼べます。それこそ、コストさえも数値上のリソースを満たせばいいのだから」
召喚師系統の扱う召喚モンスターは、媒体に情報と概念が保存されている。
媒体に魔力を注いで実体化させることが彼らの召喚であり、倒されれば再召喚までには幾らかの時がいる。(中には【バルーンゴーレム】のように、復帰速度の速さを特性とする召喚モンスターもいるが)
また、【妖精女王】を筆頭とする精霊術師系統は、属性ごとに精霊召喚に適した環境があり、そこでしか十全に使用できない。
対して、【魔将軍】の悪魔召喚はいつでも、どこでも、何度でも、だ。
コストがあるならば、倒された端から呼び続けて尽きることすらない。
尽きぬ軍団。他の【将軍】シリーズの利点に勝るとも劣らないと言えるかもしれない。
「……そのコストだって無限じゃない。特に、【ゼロオーバー】はな」
特典武具を捧げなければ呼べない神話級の【ゼロオーバー】を除くとしても、伝説級の【ギーガナイト】も決して呼び出すのは安くない。
得られるコストを十倍化するローガンであってもそれは同じだ。
「呼んだところで悪魔の戦力も絶対じゃない。……【ゼロオーバー】はあいつに負けた」
格下だと思い続けてきたフランクリンに、自身の切り札である強化【ゼロオーバー】を一蹴された。
そのことがローガンの自己評価にも大きな罅を入れているのが現状だった。
だが……ゼタは首を振って否定する。
「問題外。悪魔の単体戦力は、問題の核心にはなりえません」
「何?」
「得手不得手。【魔将軍】とルンペルシュティルツヒェンの組み合わせは、間違いなく広域制圧型です。一体の悪魔の戦力に依る……個人戦闘型や広域殲滅型の土俵に立つべきではありません」
「じゃあ、どうしろと?」
「単純計算。10×20は100よりも大きいのだから、【ギーガナイト】を大量に呼べばいいのです。それこそ、今の【ソルジャーデビル】と同じ数だけ……軍団を埋めるほどに」
「…………なんだって?」
ゼタの発言が明後日の方向に跳んだような気持ちになりながら、ローガンが聞き返す。
言っていることは分かるが、話が通じていない感覚があった。
「複合。サブに召喚師系統を置き、《多重同時召喚》を習得しましょう。これならば恐らくは【魔将軍】とのシナジーがあり、サブにおいても使えます。同時召喚数の十倍化もいけるでしょう。伝説級の悪魔を瞬時に大量展開できます。一度に一〇〇〇体はできずとも、複数回の召喚で埋められるでしょう。一〇分の一でもオーバーキルになりかねませんが」
「あのなぁ! さっきも言ったけどそんなコストはないんだよ!」
一度に召喚できる数を増やす《多重同時召喚》との組み合わせはローガンも考えた。
だが、同時召喚の上限数が増えるだけであり、コストは召喚しただけ増していく。
ソルジャーデビルと同じ数……一〇〇〇体単位での使役など、<超級>であるローガンの財力でも不可能だ。
ただでさえ毎度召喚コストを強いられるために、貯蓄に乏しい部分がある。
皇国からの依頼はその都度必要なコストを受け取っている形だ。カルチェラタンでの戦いなど、それをオーバーしたために大赤字である。
当たり前のことが分かっていないと、ゼタの机上の空論に怒りをぶつけようとしたが。
「疑問。そもそもなぜコスト不足なのですか? 特性を考えれば、コスト不足などありえないのに」
ゼタの方は、心底疑問に思った様子で言葉を発した。
「転換。もっとも、今まで気づいていなかったからこそ、強化案として私が提示できることではありますが……」
「……だから、それは一体何なんだよ」
問われたゼタはローガンの肩を叩き、
「――転職。今日から生産職になりましょう」
――彼が今まで思ってもいなかったことを口にした。
「何で生産職になんか……」
ローガンの脳裏にはフランクリンの姿が浮かび、どうしても否定的な感情が湧く。
それに構わず、ゼタは言葉を続ける。
ホワイトボードに単語を書き連ねながら、今回の解説の核心に至る。
「近似。理屈としては、【ジェム】生成貯蔵連打理論に近いものです」
「【ジェム】生成……?」
何だったかと思いだそうとするローガンに、ゼタは順を追って説明する。
【ジェム】生成貯蔵連打理論とは、ガードナー獣戦士理論以前のまだジョブも<エンブリオ>も上級程度しかいなかった頃に、最強のビルドの一つとして挙げられていたもの。
【ジェム】は魔石職人系統の生産職が、サブに置いた魔法職が使える魔法を封じ込めることで作成する。
そしてこの理論は、戦闘前に上級攻撃魔法の【ジェム】を大量に作り、いざ戦闘になれば魔法を使いながらも延々と【ジェム】を投げ続けるというもの。
生産にコストはかかるものの、【ジェム】ならば上級魔法の奥義に近い威力をノータイム&MP消費なしで連打できるという恐るべき理論だった。
ただし、後にAGI型戦闘職が亜音速に足を踏み入れるのが当然になった時点で、
『投げ続ける前に殺される』ので廃れた。
ステータスに特化したガードナー獣戦士理論にも真っ向から負けている。
それでも……一世を風靡した理論の一つであることは間違いない。
ゼタはそれを再び呼び起こそうとしていた。
「俺に【ジェム】を作れと?」
「否定」
否。ローガンにしかできない進化を遂げさせようとしていた。
「金策。まずは金を作りましょう。金属的な意味で」
「……は?」
首を傾げるローガンに対し、ゼタは人差し指を立て、表情の見えないミイラ顔のままどこか陽気そうにこう言った。
「――レッツ錬金」
◆
<Infinite Dendrogram>における錬金術は多岐に亘る。
マジックアイテムの作成に特化する者、薬品の調合に特化する者、人造生物の製造に特化する者、スタイルは様々だ。
中でも基本に近いものが、『下位素材を上位素材に変換する』というスタイル。
その一例として、《ミスリル錬金》というスキルがある。
しかしこのスキルの中身は人によって異なる。
たとえば、《ミスリル錬金》のスキルレベルが一で、DEXが100の【錬金術師】がミスリルを錬成する際はこのように書かれている。
『材料とする【銀】の1/10の質量の【ミスリル】を、100(DEX)×1(スキルレベル)÷100の確率(%)で生成する』
所有者のDEXに依存した計算式と成功率の表示が、スキルの内容に含まれる。
生産系はある意味では戦闘系よりも、数式を重視する。
錬金術による金属の錬成は、数値が異なるだけでほぼこの形だ。
DEXに依存した成功率で、下位素材の何分の一かの上位素材を作成する。
つまりDEXもスキルレベルも低い錬金術師は素材を無駄にするだけで何も作れないのが常だ。
だが……ここにルンペルシュティルツヒェンが手を加えるとこうなる。
『材料とする銀の『10』/10の質量のミスリルを、『1000』(DEX)×『10』(スキルレベル)÷100の確率(%)で生成する』
つまり――成功率100%で下位素材と同じ質量のミスリルが出来上がる。
文字通りの錬金術だ。
スキルを使えば使うだけ、財貨が……捧げるコストが生まれていく。
多少の元手とステータスがあれば、延々と世界からリソースをふんだくれてしまう。
早々に気づいたゼタからすれば「何でやっていなかったのだろう?」という話である。
元よりアイテムや生贄を捧げた後のポイントをルンペルシュティルツヒェンで水増ししていたローガンだ。『捧げるアイテム自体を水増し生産する』という発想がなぜ沸かないのかと疑問に思って当然と言える。
そんな当然のことになぜ気づかなかったかと言えば……戦闘系ならともかく生産系のジョブなどローガンの眼中になかったためだ。
戦場で相対することもないので、調べてすらいなかったのである。
皇国の生産職の代表格が彼に取ってあまりにも悪印象だったことも一因だろう。
ともあれ、こうして彼は歴代最高効率の【錬金術師】となった。
無論、【魔将軍】をメインにしていては錬金術師系統のスキルは使えないが、錬金するときだけメインジョブを変えればいいだけだ。
それに【魔将軍】をサブに置いてもMPやDEXは変わらないため、錬金に使うMPや判定のDEXにはかなりの余裕がある。(逆に錬金術師系統のレベルを上げれば多少は【魔将軍】での戦闘時もMP消費の足しになる)
ジョブレベルやスキルレベルの上昇に伴ってさらに錬金効率が上がることは既定路線であり、そうなればやがては無尽蔵のコストを手に入れることができるだろう。
【ジェム】生成貯蔵連打理論に近いとはそういうことだ。
生産職と戦闘職の融合。【錬金術師】の無尽蔵な錬金で事前に莫大なコストを捧げておき、戦闘時は貯蔵したコストに任せて《コール・デヴィル・ギーガナイト》で伝説級悪魔を何十何百と呼び続ける。
悪魔を使い分ける必要も、戦術を考える必要も、コストを惜しむ必要もなく、大抵の相手はあっさりと蹴散らせてしまう強大な悪魔の大軍で潰す。
要するに、大量リソースで好き放題強力な悪魔を呼びまくる脳筋ビルドである。
あえて前例に準えて名づけるならば、『錬金貯蔵伝説級連打理論』という……ローガンにしかできない理論が出来上がった。
◆
このビルドを教えてから一週間。ローガンは夢中で錬金を続けている。
スキルレベルも上昇中であり、時にはただの【ミスリル】ではなく大成功で【高品質ミスリル】が生成されることもある。
それらの一部を卸して下位素材を購入し、錬金を繰り返す。
今、ローガンが悪魔を召喚するためのコストは膨大な量が溜まっていた。
「…………」
目論見通りに強化されたローガンだが、それを意図したゼタにはふと思うことがある。
下位の【錬金術師】ではミスリルが限度だが、【高位錬金術師】になれば奥義で神話級金属も作れる。本来の成功率は低く、下位素材からの減少量も凄まじいが……それもローガンならば問題ないだろう。
加えて、超級職の【錬金王】は神話級金属の生成確率上昇や未知金属の生成が可能であるとされる。
神話級金属の価値は高い。
市場価値の高さだけでなく、金属自体が含有したリソース量も膨大だ。
現在人類が加工可能な金属の中でも最高峰であり、それこそ数百年と伝わる伝説の武器の材料にもなる。
それこそ、モノによっては逸話級の特典武具を上回る性能を発揮するモノもある。
(だとすれば……)
神話級悪魔。これまでは神話級のモンスターだからとしか思っていなかった。
だが、あるいは……『召喚に足る量の神話級金属塊を捧げて呼び出す』からこその名称であった可能性もあるのではと、ゼタは考えている。
一度のコストで支払うという条件も金属塊ならばいくらでも繋げ、膨らませて達成できる。
ならば最終的に【ギーガナイト】ではなく……【ゼロオーバー】で軍団を形成することもローガンには可能かもしれない。
そのことを想像し、ゼタは「少し与えすぎましたか」とも考えた。
少なくとも、<IF>のメンバーとして手綱を取り続ける必要はあるだろう……と。
◆
なお、このビルドに感銘を受けた……受けすぎたローガンは既存の下級上級職のほとんどを初期化。善は急げと、錬金術師系統と召喚師系統の下級職で埋めたのだった。
それでいて、錬金ばかりしていたのでレベルはほとんど上がっていない。手の内を秘密にするために錬金術師ギルドのジョブクエストも受けていない。
それでも問題ないと考えていたローガンはその後、講和会議で有り余るコストに物を言わせた伝説級の大量展開を行おうとした。
しかし、先手を打って放たれた扶桑月夜の《絶死結界》により……レベル不足で死亡した。
彼の『錬金貯蔵伝説級連打理論』は、まだ日の目を浴びていない。
To be continued
閣下の新ビルド
1:効率一〇〇倍どころじゃない錬金術で大量にリソース元の金属をゲットします。
2:金属を捧げてコストにした後、いつも通りポイントを一〇倍にします。
3:【ギーガナイト】を一〇倍化した《多重同時召喚》で大量展開します。
4:全員で殴ります。
5:勝ちます。
(=ↀωↀ=)<お手本のような数と暴力で押す広域制圧型
(=ↀωↀ=)<脳筋オーバーラン
(=ↀωↀ=)<フランクリンはこの理論についてとっくに気づいていましたが
(=ↀωↀ=)<あんまり強くなられても後で困りそうなので言いませんでした
余談
○生産
(=ↀωↀ=)<ここまであまりスポットライトの当たらなかった生産職についてのあれこれー
(=ↀωↀ=)<基本的には無から有を作るのではなく、材料を別のモノに変えます
(=ↀωↀ=)<《ミスリル錬金》のように材料だけでいい場合もあれば
(=ↀωↀ=)<【レシピ】が必要な場合もあります
(=ↀωↀ=)<【レシピ】+対応するスキルで鍛冶やら含めてオートでも作成できます
(=ↀωↀ=)<多くはスキルレベルに加え、DEX、あるいはMP、たまにSTR依存で成功率が変動します
(=ↀωↀ=)<この辺は魔法と同様にジョブスキルの方が制作をサポートしています
(=ↀωↀ=)<「腕が勝手に動くよ!」的な
(=ↀωↀ=)<なので職人は作業中に邪魔されると作業が途切れ、品質にも関わるので怒ります
(=ↀωↀ=)<ちなみに【レシピ】なしで新たなアイテムを作る場合は
(=ↀωↀ=)<スキルの補助が最低限の状態で作ります
(=ↀωↀ=)<ほとんどセンススキル染みた技術と知識での戦いになります
(=ↀωↀ=)<要約すると『【マーシャルⅡ】って作るの大変だったよ』である
 




