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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
Episode Ⅵ-Ⅶ King of Crime

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358/716

第一話 同級生

(=ↀωↀ=)<予告なし連続更新。まだの方は前話のプロローグからお読みください


(=ↀωↀ=)<WEBでは半年ぶりの主人公ですよー


(=ↀωↀ=)<書籍と漫画もよろしくね!


追記:

随分と後になってから日付のミスに気づいたので修正。

 □椋鳥玲二


 四月も三分の二が過ぎようかという頃。

 俺が通うT大学もどこか浮ついた空気に満ちていた。

 それも無理はない。再来週五月三日水曜日から五月七日日曜日までは五連休……要するにゴールデンウィークなのだから。

 友人や恋人との旅行計画など、楽しげな話題が自然と耳に入ってくる。中には五月一日二日の授業も自主休講し、来週末から九連休の長期旅行に行くと話している者もいる。

 新入生の間では、『実家に帰省する』という話も多い。慣れない大学生活も一ヶ月経つ頃なので一度実家に帰る。あるいは実家から一度戻って来なさいと言われた人が多いのだろう。

 今朝のことだが、俺自身も母さんから「帰ってきたら?」という電話が来た。

 少し悩んだが、別にホームシックの類にはなっていないし、実家に帰ってもすることがないので今回は見送ろうと思っていた。

 しかし「今回は帰らない」と言おうとした矢先に、母さんから衝撃の一言が放たれた。


「今年はお姉ちゃんも帰ってくるのよ。ほら、五月五日がお姉ちゃんの誕生日でしょう?」


 その一言で、少なくとも五月五日は実家に帰省する必要が生じてしまった。

 実家で姉の誕生祝いする際に不在だと……後が怖い。

 あの姉は俺相手ならそんなことで機嫌を曲げはしないだろう。

 しかし逆に、「この前は会えなかったから」とでも言いながらマンションに突撃してきて、埋め合わせと称して俺をまた海外のどこかに善意で連れ去る(・・・・・・・)危険はある。……もう南米は嫌だ。

 実家のあるN県N市には新幹線で二時間もあれば着く。それにデンドロでのゴールデンウィークの用事は今のところないので、五日には実家に戻れるだろう。


 誕生日といえば、兄の誕生日は三月三日だ。

 姉と兄は端午の節句と雛祭りの年子という、何ともレアで目出度い組み合わせである。男子と女子のお祭りが逆ではあるが。

 ちなみに俺の誕生日は七月七日だ。

 ……両親も狙ってそんな日に産んだわけでもないのだろうが、子供の頃は……というか今も不思議に思ってはいる。


 ◇


 朝から気疲れしてしまって、午前の講義もどこか上の空だった。

 まぁ、今抱えてる悩みは帰省と姉のことだけでなく、デンドロのこともあるけれど。

 そうして講義の内容も頭に入らないまま午前が終わり、俺は大学の第二食堂でミートソーススパゲッティをぼんやりと見下ろしていた。

 フォークをクルクルと回してパスタを絡めるも、口にも運ばず回し続けている。


「どしたん玲っち? 夏バテ? 大丈夫? あやとりする?」

「夏には早ーべ? 五月病っしょや。こっちもちょい早いけど」

「きっと血に飢えてるんだよ。最近デンドロで悪魔肉食べてないから」


 俺の様子を見て、同級生で共に食事をしていた夏目、春日井、冬樹がそんなことを言い始めた。


「……お前ら好き勝手言ってくれるな、特に冬樹」


 悪魔肉なんて【魔将軍】との戦闘以外では食ったことねえよ。

 なお、悪魔肉云々の発言からも分かるように、三人ともデンドロユーザーだ。

 同級生には他に秋山というユーザーもいるが、今は同席していない。

 偶然だが、全員苗字に四季が入っているのでとても覚えやすかった。……おまけに俺以外は全員が天地に在籍しているので、若干仲間はずれ感あるけど。

 ちなみに春日井と冬樹が男性、夏目と秋山が女性だ。


「じゃあ何で物憂げ? ……まさか失恋? 本当に大丈夫? あやとりする?」

「……椋鳥。来週合コンやるけど来るけ?」

「二人とも待ってほしい。彼はメイデン持ちだからデンドロでは自動的に女の子と二四時間一緒なんだ。あとネット情報だと彼の周りには変な女性が寄りまくるらしいから、失恋ではないはず。むしろ逆に……女性と付き合い過ぎて疲れているのかも」

「……その辺にしておけよお前ら、特に冬樹」


 こんなやりとりも、これまでに何度かあった。

 この同級生達は個性的な面々が揃っている。

 夏目は癖っ毛とワンポイントフェイスペイントで、なぜかいつもあやとりに誘ってくる。

 春日井はモヒカンとサングラスで言動もヤンキーっぽいが、実は一番まともな奴だ。

 冬樹は春なのに屋内でオーバーコートを着ている。おまけに動画とネット情報のせいか俺をかなりクレイジーな奴だと誤解している節がある。

 ちなみに、ここにいない秋山は講義中もロング丈メイド服で恐ろしく目立つ。

 ……改めて考えると本当に濃いなこいつら。全員T大生なのも相俟って更にだ。

 この四人と比べれば俺はきっと個性が薄いのだろう。


「夏バテでも五月病でも、ましてや失恋でも多恋でもない。ちょっと家のことで疲れてたんだよ。あとは……この一ヶ月、デンドロで起きたことを振り返ったら気疲れしただけだ」

「「「あー」」」


 三人とも納得したようにそんな声を出した。

 この三人(と秋山)は動画もチェックしているので、なぜか録画されることも多い俺の動画を見てはあれこれと話しかけてくる。


「王国は大変そうだからね」

「……ああ」


 ……本当に、この四月は色々ありすぎた。

 最初の土日がトルネ村とカルチェラタンでの事件。

 次の土日がハンニャさんの事件。

 そしてその後の土日は講和会議。

 内部では三倍時間なので体感はまた少し異なるものの、リアルタイムだと王国は三週連続で何かしら大事件が起きている。

 まぁ、それ言ったら三月からそんなだった気もするが。

 ……四週目は何もないよな?


「しかもほとんど全部関わってるんだよ……」


 例外は講和会議と同時に起きた王都のテロだけだ。


「ああ。それは物憂げる(・・・・)ね。よしよし」


 夏目は不思議な日本語を言いながらうんうんと頷き、俺の肩をポンポンと叩いた。


「気晴らしにあやとりする?」

「しない」


 何の衝動が彼女をそこまであやとりに駆り立てているのだろう。

 見たことはないけど、彼女は<エンブリオ>もあやとり系かもしれない。

 ……いや、あやとり系ってなんだ。


「椋鳥君。【獣王】との動画はとても見応えあったし、再生数も伸びてたから安心しなよ」

「……それ安心か?」


 冬樹が言うように、あの【獣王】との死闘も、どこかから録画されていた。

 しかも投稿者は【魔将軍】の時と同じ人物であり、内容もなぜか非常に王国側を……そして俺を持ち上げた編集だった。

 他に映像記録もないため、ネットなどではその動画の内容が事実として広まっている。

 ……流石にもう誰がやっているのかの見当はついている。

 白衣の<超級>の影がちらつくことにも、俺は溜息を吐く。


天地(うちら)は特にないっぽい? とりあえず東青殿(アタシのとこ)はお暇かな?」

南朱門(うち)はイベントねーべや」

「僕の所属する北玄院家が最北端の黒羽家との戦に勝ちそう、ってくらいかな」


 天地は一つの国ではあるものの、内側では幾つもの大名家――日本語への自動翻訳の結果なので本来は違う名称かもしれない――に分かれている。そして戦国時代のように大名家の間での内戦が多いらしく、冬樹の属する北玄院家はその最中であったらしい。


「黒羽家っつーと噂の無謀な戦だべ?」

「うん。元々は当主交代した黒羽家が四大大名の一つである北玄院家(うち)に攻めてきたんだよ」


 四大大名というのは春日井の南朱門(なんしゅもん)、夏目の東青殿(とうせいでん)、冬樹の北玄院(ほくげんいん)、あとは西白塔(せいはくとう)という天地でも特に強力で歴史もある四つの大名家のことだ。名前から分かるように、東西南北に分かれている。

 なお、ここにいない秋山は四人の中では一人だけそれらとは別の家に属している。


「ちなみにそれ、戦国大名で言うとどんなバランス?」

「北玄院家が戦国時代の武田家、黒羽家が安土桃山時代の伊達家、ってところかな」


 ……わりとバランス取れてそうだが。

 わざわざ時代を言及したのは双方の最盛期として比較したのだろう。無謀という程に開きがあるようにも見えない。


「黒羽家も自領にセーブポイントを抱えた有力大名ではあったし、ティアンの戦力は六対四というところかな。でも、<マスター>は違う。北玄院家には【山賊王】ビッグマンさんと【斬神】無量大数沙希さんがいたからね」


 ……どっちも名前が大きい。


「結局、仕掛けられた戦だけどカウンターでこっちが圧勝した」

「……ふむ」


 西方での第一次騎鋼戦争に近い話だ。攻守は逆だったが。


「最初の会戦で大きく勝って、向こうの当主も討ち死にしたからね。あとは犠牲を抑えながらジリジリと領土を食んでいる状態さ。それに空白地に跋扈する賊に対処する必要もあった。戦にまだ参加できない僕なんかもそれ関連のクエストは受けてたしね。……と言っても、最近は変なことになってるんだけど」

「変なこと?」

「一言で言えば第三勢力だよ。モンスターみたいな見た目の……レジェンダリアとかにいそうな亜人が突然大挙して奇襲をかけてくるんだ。お陰で北玄院家の動きもストップ気味。僕もデスペナしちゃったし」

「モンスターみたいな見た目の亜人……か」


 冬樹の話と似たようなものは、王都でのテロでも姿を見せた。

 【蟲将軍】に率いられた蜂型亜人の軍団。

 蜂に似た亜人のほとんどは、指揮していた【蟲将軍】が倒された後はその場で動かなくなってしまったそうだ。モンスターではなくティアンであるため、今はティアン用の牢獄に収容されているらしい。

 捕まったティアンも本来はそんな姿ではなかったらしいが、元に戻せるかは分からないそうだ。


「…………」


 【蟲将軍】と相対した霞達の話によれば、【蟲将軍】は『ワタシに力と新たな兵士を与えてくれたあの御方』と言っていたらしい。

 大陸を挟んで真逆の位置にある王国と天地。距離が離れすぎているので糸を引いているのが同一人物とも思えないが……少し気にかかった。


「玲っちってばまたお悩み? 頭の体操であやとりする?」

「いや、これはきっと謎亜人の味を想像してるんだよ。彼のバトルスタイルならきっと虫や死体も食べるはずだからね!」

「……二人の発言に頭痛くなってるだけだと思うべ」


 とりあえずここで考えるのは無理そうだからまた後で考えよう。

 ていうか、本当に冬樹は俺を何だと思ってるんだ?

 …………死体は【ゴゥズメイズ】の時に食ったけどさ。


 To be continued

○何だと思ってるんだ?


(=ↀωↀ=)<暗黒騎死ですかね


(=ↀωↀ=)<余談だけど誕生日が連続更新の理由でもある


( ꒪|勅|꒪)<当日じゃねーカ


(=ↀωↀ=)<四日後よりは「今日かよ!」ってなった方が面白いので……

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 358話の椋鳥姉帰省イベントってスキップされた??それともそのうち本編で語られるのだろうか、、
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