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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
Touch the GAME OVER

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第十五話 【■■】――Don’t touch the GAME OVER

(=ↀωↀ=)<辛うじて間に合ったので投稿(10分前)

 □■師弟の会話


「……<終焉>が足切りだと言うのなら、どうして【邪神】の死で止まるのですか?」

「救済措置、と言うよりも及第点か。『私達はこの世界の存在理由を知っています。努力もしています。ルールも忘れていません。だからこうして<終焉>降臨の前に【邪神】を捜して倒しました』という具合に、『努力はしているので見逃してください』と言うための仕組みだ。もっとも、既にこの仕組みを知っている者は、この世界にどれほどいるものか。三桁はまずいないだろう。人間に限定すれば二桁にも届かないかもしれない」

「……新たな【邪神】は既に生まれているのですか?」

「さてな。分からない。【邪神】にはカモフラージュの力があるからな。成体になる前に間引きされないための仕組みだ。<終焉>の一部でしかない【邪神】の全力すら倒せない世界なら、いよいよ見込みがないということだろう。【邪神】にも降臨回数を経るごとに強化される仕組みは適用されるからな。そういう意味では、あれも【龍帝】と似たようなものか」

「伝説の【聖剣王】パーティでも辛うじて勝利した【邪神】より、強い【邪神】……」

「ああ、だがなインテグラ。もしも幼体時点の【邪神】を見つけても……絶対に殺すな(・・・・・・)

「……え? ですが、世界が消えるのでは?」

「ああ。この世界が、消える」


「――“化身(・・)が歪めたこの世界が(・・・・・・・・・)、な」


「…………!」

「我々は“化身”を倒して、この世界を正す。だが、もしもそれが叶わないならば……」

「<終焉>の降臨で……この世界の、本来あるべき終わり(・・・)だけでも迎えさせる」

「その通り。これが善後策だ。だからこそ、【邪神】を早期に討伐するために【聖剣王】が遺した言葉の多くは歴史の中で削除してきた。最も【邪神】を警戒すべきこの国の者達から、その脅威の認識を省いてきた。どうしようもなくなればこの世界を終わらせるために、歪めてきたのだ」

「…………重いです」

「重荷ならば、私の弟子を辞めてもいい。この役目を継ぐことを破棄してもいい。【契約書】で情報の口外と【邪神】の殺傷だけは縛らせてもらうが」

「……いいえ。私は、師匠から離れません。師匠の荷を託されることを、拒みません」

「…………そうか」

「それと師匠。一つ気になったのですが、<終焉>の鍵となる【邪神】の殺害。それをこの世界を消されたくない“化身”が行うことはあり得ないのでしょうか?」

「不可能だ」

「……?」

「劣化“化身”の一人、かつての【猫神】と【邪神】の戦いを私は見た。<UBM>や変換機能を植え付けられたモンスターとの戦いも。そして確信した。【邪神】、そして<終焉>であれば確実に奴らの目論見を砕ける、と」

「どういうことですか?」

「<終焉>、そして【邪神】はこの世界の足切り機構。ゆえに、前提を破綻させる外部の異物による排斥を拒む」

「それは、つまり……」


「ああ。【邪神】は……異物が混ざった者(“化身”に連なる者)に対して無敵(・・)だ」


 ◇◆◇


 □■王城四階


「……何、が?」


 己の爪を、驚愕の眼差しでモーターは見る。

 確実に、息の根を止めるだったはずのそれ。

 しかし、爪は皮膚に沈むことすらなく、受け止められていた。


 ダメージはおろか……何の影響も(・・・・・)受けなかった(・・・・・・)かのようにそこに在り続ける。


 やがて、モーターが起動した《暗黒結界》の効果が切れて、世界に光が戻ってくる。

 音響による認識から視覚による認識へと切り替わった時、


「……バカな!?」


 モーターは更に大きな衝撃を受けた。

 それは自身の爪を首という急所で受け止めていたのが……一人の幼い少女だったからだ。


「…………」


 無表情な少女は四足の獣に乗りながら……感情を感じさせない目でモーターを見返す。


(小柄だとは思ったが、子供!? 俺の奥義での全霊で、一つの傷も負っていないのが……子供!?)


 その少女の情報を、モーターは《看破》で読み取ろうとする。


 テレジア・C・アルター

 職業:なし

 レベル:0(合計レベル:0)


 しかし《看破》の情報が伝えるのは、少女がジョブにも就いていないということのみ。

 名前から分かるのは、彼女がアルター王国の第三王女だということだ。

 だが、


『そんな訳が……あるか!』


 今、自分の手で確認した現実が、その情報の全てを否定する。


(この子供がレベル0な訳はない。この子供がただの王女な訳はない。奇妙な人物だと……、この子供以上に奇妙な、異常な者などいる訳がない)


 ゼタからの指示、奇妙な人物への攻撃命令が脳をよぎる。

 モーターが遭遇した<IF>のメンバーや彼と同じ改人ですら、目前の相手ほどの異常も違和感も与えはしない。


なにもおかしな(・・・・・・・)ことはないわ(・・・・・・)


 少女――テレジアが、静かに言葉を発した。

 モーターは瞬時に後方へと飛び退いて、距離を取る。


「わたしがあなたのコウゲキを耐えられたのは、【ブローチ】があるからよ。くだけたブローチがころがっていないのは、きっとたまたまこわれなかったからよ。わたしはあなたのコウゲキがこわいわ」


 テレジアはそのように……自分は普通の子供だと言葉で述べる。

 《真偽判定》を持たないモーターには、その言葉の真偽をスキルで知ることはできない。

 だが、そもそもそれが嘘だと彼には分かる。

 【奇襲王】の《サドンデス》は、【ブローチ】によって無効化されない攻撃なのだから。

 しかし、まだ何かの間違いで【ブローチ】が効果を発揮した方がマシだったかもしれない、とモーターは思う。

 同時に直感する。


 今自分は《真偽判定》なしでも彼女の嘘が分かったが、《看破》が本当だと思えないように《真偽判定》でもこの少女の言葉は嘘と見抜けないのではないか、と。


「あなたはマリョクをおってきたのね。でも、あなたがカンチしていたのは、きっとドーなのよ。だって、このこはわたしのモリヤクだもの。ドーはとってもつよいのよ、セカイをほろぼせるくらいにはね」


 テレジアはそう言って自身が乗る四足の獣――ドーマウスを撫でる。

 あるいは本当にモーターが感知していた魔力はドーマウスのものだったのかもしれない。

 しかしそうだとすれば……、否、だからこそモーターは思う。


 自分が感知していた莫大な魔力など問題にならないほどに……少女はおかしい(・・・・)のだと。


「わたしはふつうのおんなのこで、ドーがとってもつよいモリヤク。あなたのコウゲキはたまたま【ブローチ】でたえられただけ。ここにあなたの、あなたにメイレイしたひとがもとめるものはない。そういうこと(・・・・・・)でスジはとおるわ。……でも」


 テレジアは考えを一切読み取ることが出来ない目を向けながら、


「――そういうことにして(・・・・・・・・・)かえっては(・・・・・)くれないのよね(・・・・・・・)?」


 常人ならば狂死してもおかしくはないほどの威圧をモーターにぶつけた。


『な、ぐ……』


 威圧に返答をすることすらできないモーターにテレジアは、


「……仕方ないわ。情報が欲しいならあげるから、それを手土産に帰って」


 それまでよりも余程に大人びた口調と発音で言葉を紡ぐ。


「私が――【■■】よ」


 けれどその言葉は、モーターの耳には届かなかった。

 正確には、意味をなさない雑音として届いた。


「聞こえないかもしれないわね。私の存在は【■■】そのものにカモフラージュされているし、私自身が伝えることもできないから。けれど、私が知っていることを話すわ。聞こえないところがあっても、そのまま伝えてほしいの。きっとそれで意図も伝わるわ。この襲撃はきっと私を排除したい人の思惑だから、王都全部を襲ったのは、きっと誰が私か(・・・・)を確かめるためのものだもの。その答えなのだもの。情報だけでも十分な成果になるはずよ」

『ま……』


 モーターが『待ってくれ』と口を挟む間もなく、テレジアは言葉を続ける。


「それに、近くで死なれても困るのよ。ドーが処理(・・)してくれるから進行は遅れているけれど、それでも近くで大量に死なれると少しは入ってしまう。それに私や■■が直接殺すと最も吸収率が良くなってしまうし、ドーは<エンブリオ>混じりのあなたを排除する権限がない。王城という人死にの少ない場所にいるのに、結界で外部からの■■■■■■も妨げられていたのに、これでは困るの。<■■>の降臨が早まってしまうから」


 その言葉の意味は、モーターには分からない。


「ドーは世界を滅ぼせるけれど、<■■>は世界を■■■■られるの」


 だが、本当は自分程度が聞いてはいけない情報だということだけは、全身の細胞で理解できた。

 本当ならばもっと特別な人間しか聞いてはいけないこと。

 聞いたら最後、もはや普通に死ぬことすらできなくなるような錯覚を覚える未知の情報。

 『なぜ自分がこんなことを聞かされているのか』と、モーターは正気を失いかける心の片隅で思った。


「だから私への攻撃はやめて。でないと、またゼクスの時みたいに(・・・・・・・・・)外れてしまう。私が危険にさらされると、セーフティは少しずつ外れてしまうから。ゼクスの一件で、《■■■■》が解禁されたように」


 自分を倒した者、改造した者、使う者のさらに上……。<IF>のオーナーの名が出ても、モーターはそのことに意識を割く余裕もない。

 しかしどうしてか、聞こえない言葉の中に先刻廊下で相対した異形にして異常なモンスターに関するものが混ざっている気がした。


「【グローリア】のときは、もしかすると諸共終わりにできるかもしれないと思ったけれど。あなたじゃ私を殺すまで届いてくれない。……もしかしたら、手が加わってしまっていたから【グローリア】でも届かなかったのかしら」


 少しだけ、無表情だったテレジアの顔が変わる。


「私のセーフティは自動的。私の危険を排除し、私を生かすために発動してしまう。さっきあなたを襲った■■のように。異物と混ざっているから効かないあなたの攻撃でも、スキルに反応してしまう。ダメージがないから反応は鈍いけれど、このまま続くと……きっと外れていく。最終的に<■■>も半分くらいは顔を出すわ。……それは怖いわ」


 『怖い』と言ったときに、本当に不安そうな表情を浮かべた。

 それはモーターに攻撃されることそのものではない。

 彼女が怖いものは……彼女自身の中にある。

 攻撃されることで、危険にさらされることで、先刻の異形のモンスターを創り出したように……自動的に周囲の(・・・・・・・)危険を(・・・)根こそぎ消し去らん(・・・・・・・・・)とする彼女自身に眠る力の防衛反応。

 それこそが、彼女は怖い。


「これ以上は力を開放したくないの。エリザベート姉さままで殺してしまうかもしれないから。だから……」


 そうしてテレジアは手土産の情報を伝え終わったと言わんばかりに、

 彼女に触れてしまった(・・・・・・・)モーターに対し、


「――Don’t(私に) touch the(触れ) GAME OVER(ないで)


 静かに最後通牒(・・・・)を出したのだった。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<テレジアが【■■】です


(=ↀωↀ=)<多分読者で予想ついてた人は多かったはず


(=ↀωↀ=)<大ボスラッシュだったグローリア編エピローグBにも出てたし


(○・ω・○)<我輩の仕事、マジで超重要である


(=ↀωↀ=)<あ。テレジアとドーマウスも金曜日更新予定の漫画最新話で出ますよ


(=ↀωↀ=)(まぁ、そのためにここまで話を進めたのだけど)


追記:

(=ↀωↀ=)<次の話で書くことだけど


(=ↀωↀ=)<【元始聖剣 アルター】は法則ごと一時的にぶった切ってるので


(=ↀωↀ=)<<UBM>認定されてても斬れます

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― 新着の感想 ―
[一言] まじかー。 テレジアちゃんまじかー。 だんだん明らかになってくる世界の謎、迫り来る<■■>、化身達が世界に介入した? ますます目が離せないです。
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