間話 とある<超級>の来訪
(=ↀωↀ=)<本日、二話同時投稿
(=ↀωↀ=)<こっちが短いからね
□ギデオン忍軍・南方哨戒部隊通信
『レジェンダリアとの国境を巨大な構造物が通過。ギデオンへと北上中。追跡中でござる』
『報告は正確にするでござる。巨大とはいかほどでござるか?』
『見上げると首が疲れるでござる。一キロメテルはあるでござろう』
『マジでござるか?』
『マジでござる』
『……前は五万もの魔物に襲われたと言うし、この職場は呪われているのでござるか?』
『我らの故郷である天地も他所様のこと言えん呪われっぷりでござる』
『違いないでござるが……これはなんとも』
『仕事があるだけマシでござる。ギデオン伯爵を紹介してくれたマリーにも「今後は色々大変かもしれませんけど」とは念を押されていたでござろう』
『……あの時の妙に枚数のある【契約書】は我らがこの街の惨状に逃げ出さないためのものでござったか』
『まぁ、あのときの「色々大変」は主にエリザベート殿下についてのものでござろうが』
『……あの方の逃走技術は日々磨かれているでござる。あの溢れんばかりの才能に、頭領など「あの才能は惜しいから忍術を手解きするか」とマジな目で言っていたでござるよ。……そういえば、殿下の婚約の話はマリーに伝えたでござるか?』
『言えぬ。言った後が怖すぎて当事者にはなれぬでござる』
『まったくでござるなぁ……』
『お主ら、世間話より先にすべきことがあるのではないか?』
『『頭領!?』』
『その巨大構造物。<マスター>、モンスター、兵器のいずれなるや?』
『モンスターの名前表記なし。最上部に女子らしき姿が見えるでござる』
『ならば<マスター>とその<エンブリオ>か。形状は?』
『巨大な二本の塔……いや、あれはもしやあの女子の足でござろうか……』
『巨大な二本足の<エンブリオ>。該当するモノはいるな、数年前に騒がれていた【狂王】ハンニャだ。“監獄”に収監されていたはずだが、出てきたか。<エンブリオ>のサイズがかつての十倍近くなっていることからして、進化も遂げている。つまり、<超級>だ』
『『マジでござるか!?』』
『さて、何が目的か。南方のレジェンダリアからの侵攻ゆえにドライフの刺客である線は薄い。だが、<マスター>には向こうの世界という我らに知覚できぬ通信手段もある。そちらでドライフの依頼を受けて侵攻する可能性もあるが……』
『侵攻でござるか!?』
『……頭領。拙者、レベルのカンストはしてござるが、隠密特化ゆえにあんなでっかいの相手にするはきびしすぎるでござる』
『安心しろ。ワシでも無理だ』
『『余計ダメでござる!?』』
『案ずるな。幸い、今のギデオンは大きな決闘の最中であるゆえに戦力も揃っておるし、マリーもいる。街に到達する前に迎え討つことを伯爵に具申しよう』
『承知したでござる。それでは通信をそちらに繋いで……』
『待った。動きがあったでござる。北方から他にも巨大な……あれは【破壊王】の陸上戦艦でござるな』
『なに?』
『あ、二本足の前で停止して……。あ、二本足が消えて女子が戦艦の上に降りたでござる』
『……何が起きているのだ? まぁ、いい。戦闘に発展する気配がないのなら、一先ずは【破壊王】に任せよう。監視は続けよ。伯爵にはワシから現時点での報告をする』
『『承知したでござる』』
◇◇◇
『よーっす。久しぶりクマー』
「お久しぶり。フィガロのお友達。その着ぐるみ、前はカンガルーだったかしら? フィガロから『今日は病院の健診があるから迎えに行けない。代わりにシュウが迎えに行くよ。クマの着ぐるみが目印になる』とは聞いていたからすぐにあなただと分かったけれど。お手数かけてごめんなさいね」
『いいってことクマー。(……放置して何か問題起こされるよりは目の届くところにいてほしいからな)』
「それで、ギデオンの街はここから遠いのかしら?」
『俺のバルドルでも二時間もあれば着くクマ。乗ってればすぐクマ』
「それならお言葉に甘えさせてもらうわ。サンダルフォンもこれまで歩きづめだったから」
『(……地平線の向こうから続く足跡見れば一目瞭然ではあるな)』
「それに治安も悪くて少し疲れたわ」
『治安?』
「ええ。出所したらレジェンダリアの霊都に出たのだけど、すぐにプレイヤーが大挙して取り囲んできたのよ」
『……ところでサンダルフォンってどこから歩いてきたクマ?』
「それはもちろん霊都からね。私にはこの子以外に移動手段がないもの」
『(そりゃ首都の傍にこんなデカブツが突然出てきたら取り囲みもするわ)それで?』
「仕方ないから蹴散らして北上してきたわ」
『ちなみに、その<マスター>の中にマッチョで半裸なプロレスラーとか、緑色の服&仮面の変態とか、神経質そうなムッツリモノクルとかいなかったクマ』
「どうかしら? 覚えていないのだけど……サンダルフォンは覚えている?」
『そういった方々は見当たりませんでした、ハンニャ様』
「だそうよ」
『(<超級>とは交戦していなかったか)分かったクマ。じゃあギデオンまで送るクマ』
「お願いね。フィガロもいないし、今日のところは着いたらすぐにログアウトするつもりだけれど」
『ああ、あいつなら多分こっちの時間で明後日にはログインしてるクマ』
「そう、それなら私も次にログインするのは明後日かしらね。フィガロに会うのが楽しみだわ」
To be continued




