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第十四話 竜車に乗って

( ̄(エ) ̄)<ブックマーク8000件突破ー


(=ↀωↀ=)<ありがとうございまーす


そろそろ評価ポイントも20000に到達しそうです。

本当にありがたいことです。

これからも胃薬のみながら修正と書き溜め頑張ります!

□王都アルテア冒険者ギルド前 【聖騎士】レイ・スターリング


 クエストを受注して冒険者ギルドから出ると、


「ギデオンまで行く交通手段は僕に任せてください」


 ルークがそう言って、右手を掲げた。

 そこでようやく気づいた。

 ルークの左手の甲には俺と同じく、<エンブリオ>を格納する紋章がある。

 対して右手の甲にも何か薄い宝石のようなものが張り付いているのだ。


「それは?」

「【ジュエル】と言って、中にテイムしたモンスターが入っています。モデルの仕事の報酬で貰いました」


 そうしてルークは説明してくれる。

 それは、俺がルークのスキルを見てから気になっていたことへの答えでもあった。

 【女衒】であるルークのスキルには《女魔物強化》と《女奴隷強化》があった。つまり、システム上そういったものが存在するということ。

 そこで気になるのが、テイムしたモンスターや購入した奴隷の扱いである。

 俺達プレイヤーはリアルに戻る。

 その間、配下のモンスターや奴隷はどうしているのだろう、と。

 もし仮にプレイヤーがモンスターや奴隷を檻か何かに入れて、そのままゲームを引退でもしたら……想像するだけでも悲惨すぎる。

 それらの答えが、ルークの右手の甲に収まっている宝石だった。

 この宝石――【ジュエル】は俺達が普段使っているカバン型アイテムボックスの生物版らしい。

 テイムしたモンスターや購入した奴隷など、自身が所有する生物をあの中に格納できるようだ。

 そして、格納している間は中の生物の時間は経過されないようにも設定できるらしい。

 また、ログアウトする際にも収納でき、プレイヤーがリアルで二ヶ月、こちらの時間で半年ログインしなかった場合は自動で解放される仕様とのこと。

 なるほど。そうでもなければこれだけリアルな世界でモンスターや奴隷などの配下を抱えるのは難しいだろう。

 まぁ食事等々や【ジュエル】から出しての休息を用意する必要はあるらしいが、それは配下を抱える上で必須の甲斐性というものだ。

 ちなみにジュエル収納中の時間経過をONにしたり、開放したままログアウトすることも設定すれば出来るそうだ。

 開放中のトラブルもありえるので人によるらしいけど。


「で、その中には既にモンスターが入っている、と」

「はい。依頼主だったグランティアンさんにいくつかの報酬から選んでいいと言われたんですけど、僕に《魔物強化》のスキルもあったのでこの子を選びました」


 基本的に【女衒】自身の戦闘力は低いらしいので、モンスターで戦力アップを図るというのは正しい選択だろう。


「じゃあお見せしますね。《喚起コール》――マリリン」


『VAMOOOOOOOOooo!!』


 ルークが文言を唱えると右手の【ジュエル】が発光し、マリリンと呼ばれたモンスターが内部から現れる。

 だが……。


「……マリリン?」


 そのモンスターをマリリンと呼ぶのが適正であるかは、議論の余地があるだろう。

 そのモンスターについて簡潔に説明するならば、馬車を引くトリケラトプスだ。

 巨大な体躯は重厚な甲殻に覆われ、背中や肩はまるで鎧甲冑。

 そして極めつけとして頭部のツノが城壁も粉砕しそうな威圧感を放っている。

 どう見たって今の俺達より強そうなモンスターだ。

 あの【デミドラグワーム】とも良い勝負ができそう。むしろ勝つかもしれない。


「【三重衝角亜竜トライホーンデミドラゴン】のマリリンです。竜車はオマケでもらえました」


 デミドラゴンってやっぱりそのレベルじゃないか。種族名が強い。

 これが報酬で貰えるって……まぁ、俺がやったクエストより更に難易度高いしおかしくはないのか。

 俺も難易度:五のクエストの報酬で【聖騎士】になったようなものだし。


「なぜ、マリリンなのだ?」

「女の子なので、有名な女優さんから名前をつけさせてもらいました」


 そうかー。女の子なのかー。なら仕方ないねー。

 ……マリリン・モンローが草葉の陰でどう思うかは不明だが。


「いやぁ、壮観ですねぇ。でも、これだけ強いと従属キャパシティオーバーしそうですねー」

「「従属キャパシティ?」」


 俺とルークが声を揃える。


「あ、じゃあちょっとその辺を説明しますね」


 そう言ってマリーはアイテムボックスからスケッチブックのようなものを取り出し、絵を描きながら俺たちに説明を始めた。

 なぜスケッチブックを持ってる……【記者】だから?


「まず、この<Infinite Dendrogram>におけるパーティ人数は六人です。もっともこの人数もパーティに《部隊指揮》スキルを持っている人がいれば上限が増えるそうですが、これについて今は置いておきましょう」


 マリーはスケッチブックに俺とルークとマリーのデフォルメされたSDイラストを描いて見せる。特徴を捉えていて妙に上手い。


「ボク達の場合はまずこれで三人埋まっています。さて、空いている三枠ですが、ここには<マスター>やNPCではなくテイムモンスターやガードナーの<エンブリオ>を入れることも出来ます」


 俺達のイラストの隣にSDのバビとマリリンを描き足す。


「このようにパーティに入れて戦闘した場合のデメリットはパーティの枠を圧迫することですね」

「パーティに入れた場合、ということは入れないで戦闘させることもできるんですか?」

「はい。パーティメンバーにカウントせず、所有者の戦力の一部としてパーティにカウントしないことも出来ます。そこで必要になるのが従属キャパシティですね」


 今度はルークのイラストの下にツリー状にバビとマリリンを描いていく。


「まずメリットから説明してしまいますが、当然ながらパーティの枠を圧迫しないことです。それとモンスターの得るはずだった経験値の半分がモンスターではなく所有者に入ることですね。残りの半分はモンスターに入ります」

「ほう」

「デメリット、というか制限事項は従属キャパシティが必要になることです。ステータス画面の付記項目を見てください」


 そう言われて俺とルークはステータス画面の補助画面を見てみる。

 そこにはマリーの言う従属キャパシティについても表示されていた。


従属キャパシティ 0/50


「これが?」

「ええ、そのキャパシティまでなら戦闘中にモンスターを使役することが出来ます。掛かるキャパシティは個体によって違いますが、モンスターなら基本的には『種族の強さ×レベル』で算出されます。例えば【リトルゴブリン】なら1レベルごとに1のキャパシティ消費ですね」


 つまり今の俺はレベル1の【リトルゴブリン】なら五十匹まで使役できるわけか

 いや、多いけど微妙。範囲攻撃一回で吹っ飛びそう。


「僕のキャパシティは500ですから五百匹ですね」


 俺の十倍もキャパシティがあるのか。


「【女衒】は大別すれば従魔師系統にも属しますからキャパシティも高めですね。レイさんも騎士系統で騎獣を扱う必要があるので上級職の平均より少し高めだと思いますよ」


 なるほど、騎獣。そのうち手に入れたほうがいいかな。


「従属キャパシティはレベルの上昇や【従魔師テイマー】の《従属拡張》スキルで増加します。【女衒】もそういったスキルはあります。たしか習得条件は従属モンスターや奴隷での戦闘ですから、そのうち習得できるようになると思います」


 ルークはふむふむと頷いている。

 俺もここまでの説明で納得していた。

 パーティの枠を圧迫しなければモンスターを出せないのであれば、使役するモンスターを除いた基本戦闘力が他職より低いであろう【従魔師】はパーティを組むのが辛くなる。

 しかしキャパシティで“自身の戦力”に含めたモンスターを使役する分には他職に劣らない、むしろ超えることすらあるジョブだろう。


「キャパシティをオーバーしたら?」

「能力に制限がかかりますし、経験値も入ってきません」


 なるほど、結構でかいデメリットだ。


「そこで問題があるのですが、このマリリンちゃんはルーク君のキャパシティ500では足りませんね。亜竜は“単体で下級職パーティ一つ分”と言われる強さ相応にコストも高いものですから」


 ……まぁ、そうなるだろうな。

 俺だってレベル1の【リトルゴブリン】五百匹とあの【デミドラグワーム】のどちらと戦うか選べと聞かれれば絶対に前者を選ぶ。

 そのくらいの差が両者にはある。


「ああ、遅れましたがパーティに入れるメリットはキャパシティを消費しないことですね」


 なるほど。

 極論、自分と強いモンスター五匹でパーティ組んでもいいわけだ。

 ……ちょっと寂しいからそれはやめておこう。


「ですので、今回のパーティ編成としてはマリリンちゃんにパーティ人数の枠を割きましょう。今回は人数も少なくて枠が余ってますしねー」

「ねーねー! 質問なんだけどバビのコストってどうなってるのー?」

「TYPE:ガードナーを含めて<エンブリオ>のコストは一律0ですね。そうじゃないとガードナーに進化した人は従魔師系統にならなきゃ自分の<エンブリオ>さえも十全に扱えなくなってしまいますから」


 そりゃそうだ。


「さて、長いお話をしてしまいましたが、ギデオン行きの話に戻しましょう。マリリンちゃんの竜車に乗っていけば明日出発しても明後日にはギデオンに着くと思いますよ」

「なら、今日はここで解散して明日の朝出発にするか。二人とも予定は大丈夫か?」


 ここで言う予定はリアルの話だ。

 今日明日明後日と三日間、リアルでは丸一日潰れることになる。


「大丈夫です。今日明日は特に予定もありませんし」

「ボクもOKですよ。今は無職なので」


 ……これ、笑い返した方がいいのだろうか。

 

 ◇


 翌日、俺達はマリリンの牽く竜車に揺られながらギデオンへの道を進んでいた。

 道幅は広く、マリリンが二匹並んでも通れるくらいの余裕がある。マリリンだと道を塞いでしまうのではないか、という心配は杞憂だった。

 そして意外にもマリリンの歩行スピードは速い。坂道などでも変わらぬ速度で竜車を牽いてくれるので、4WDのオフロードカーを連想するほどだ。

 これならスムーズにギデオンまで辿りつけるだろう。

 まぁ、度々飛び出してくるモンスターを討伐しているのでノンストップとは行かないが。

 この<サウダ山道>に出てくるモンスターは主に鳥系と獣系のモンスターが多い。

 初心者狩場の一つでもあるので多数のモンスターで群れを成して襲ってくるということはなく、同時に襲ってくるのは精々で三匹程度だ。

 それを俺、ルーク、バビの三人で各個撃破するのが現在の戦闘の流れである。


 ちなみにマリーは竜車の中から「頑張ってくださーい」などと茶を啜りながら応援している。


 ……いや、うん。それにも事情がある、というか聞いてなかった俺が悪いのだけど。

 そもそも【記者】というジョブは戦闘職ではない。

 【記者】の特徴的なスキルは《ペンは剣よりも強し》というもので、その効果は以下の通りだ。


《ペンは剣よりも強し》:

パーティメンバーの戦闘を見ることで経験値を得る。

パーティメンバーにも同量の経験値が与えられる。

パッシブスキル。

※【記者】系統のみが発動可能。

※スキル発動中は戦闘行為を行えない。

※このパッシブスキルはOFFにできない。


 要するに、【記者】はパーティ全体の経験値を増量させるが、戦闘面では全く役に立たない置物に近いジョブであるらしい。

 経験値ボーナスはありがたい。

 初心者狩場の一種なので俺達だけでも問題ない。

 俺達より経験豊富なので色々とアドバイスしてくれるしモンスターの情報も的確だ。

 しかし何か、何か……まぁいいか。


『ペンは剣よりも強し、というからペンで何もかも切るスキルだと思ったのだがのぅ』

「いや元々その言葉はそんな物理的な意味ではないから」


 この世界だと剣より強いペンもどっかにありそうだけどさ。


 ◇


 道のりは順調だ。

 マリーの経験値ボーナスの効果もあって俺もルークもレベルが上がっている。俺はレベル16になり、ルークも27になった。

 戦闘もバランスよく回っている。このレベル帯のモンスターなら苦戦はないだろう。

 なお、山道で一度だけ熊のモンスターが俺達の行く手を阻んだ。

 見た目からしてもこの山道のボスモンスターらしかったのだが、道を塞がれて腹を立てたマリリンが俺達が手を出す間もなく倒してしまった。

 ルークがドロップアイテムを回収していたが【箱】だったので、推測通り熊はボスモンスターであった。

 ちなみにボスモンスター、というのは中身がランダムの【箱】と呼ばれるタイプのドロップアイテムを落とすモンスターがそう言われているだけで、同じ種類が何匹もいる。

 ドロップアイテムこそおいしいが、基本的にボスモンスターはその生息域では最上位の戦闘力を持っているので注意の必要があるそうだ。

 今回はあっさり倒されたけど。


 ちなみに、ボスモンスターは同種で生態系を築いているが、逆にこの世界に一種一体しかいないモンスターもいるそうだ。

 それは<UBMユニーク・ボス・モンスター>と呼ばれるモノ。

 例外なく特殊な力を持ち、上級のパーティでも容易く壊滅させる力を持つものも珍しくないらしい。

 もっとも、一種一体しかいないこともあって遭遇することも早々ないらしい。


 ◇

 

 アップダウンのあった<山道>を抜けると今度は平地の道が続いている。

 マリー曰く、この平地は<ネクス平原>という名称でここから道なりに真っ直ぐ進めばギデオンに着くそうだ。

 <ネクス平原>にも当然モンスターはいて、その強さは<山道>のモンスターより一,二段階上のものだ。しかし俺達もレベルアップしているので対応できる。

 また、時折四体以上のモンスターが出現することもあったが、そういうときはマリリンが対応していた。結果は言うまでもない。

 またレベルも上がり、俺達の誰もが順調な旅路だと思っていたとき、<平原>の道の先にそれを見つけた。

 行商人らしい数台の馬車。


 そして馬車を襲っている最中の百を優に超える武装した小鬼ゴブリンの群れであった。


 To be continued


( ̄(エ) ̄)<あ、そうそう


(=ↀωↀ=)<区切りの問題で一章終了までの三日間は一日二回投稿だよー


( ̄(エ) ̄)<次は今日の22:00に投稿クマー

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― 新着の感想 ―
嵐の前の静けさ、か…全然関係無い話ですが、超級職にいるんですかね、ペンで何でも切れるジョブ。
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