決闘ランカーの場合
(=ↀωↀ=)<時期的には三章と四章の間ー
□【聖騎士】レイ・スターリング
フランクリンの事件の後、俺は決闘ランカーの人達と度々模擬戦をさせてもらっている。
<マスター>の戦いに精通した人達との模擬戦は俺にとって得るものが多い。お陰で『攻撃を受けると同時に叩き返す』新しいカウンターもあと少しで形に出来そうだ。
さて、そうして模擬戦をした後は一緒にご飯を食べに行くのが定例となっているが、このときの店はランカーの人達が順番に行きつけのお店に連れて行ってくれる。
ギデオンに来て日が浅い俺よりも彼らの方が知り尽くしているし、こちらとしてもありがたい。
実際、彼らの紹介してくれる店は良い店が多い。
チェルシーのときは安くて美味しくて沢山あるという実にネメシス(と俺の財布)に優しい店だったし、ジュリエットは非常に上品で味も良いレストランだった。後者については店よりもジュリエットのテーブルマナーや食事の所作の優雅さが印象に残っている。
「よし、今日は俺の行きつけの店に行こうぜ!」
そんな流れで何回目かの模擬戦後食事会だが、今日は初めてビシュマルさんの順番だった。
“炎怒”のビシュマルさん。戦術がほぼ自爆じみた特攻オンリーではあるが、その攻撃力はランカー屈指とも評される人だ。
大胸筋を見せ付けるような男らしい格好も含め、何から何まで「男!」という感じのビシュマルさんだが、そんなビシュマルさんはどんな店に連れて行ってくれるのだろう。
「やっぱりラーメンとかかな。それとも盛り方がジャンボな店?」
「私はどっちでも嬉しいのぅ。じゅるり」
またネメシスの女子力が下がった気がする。
「お、着いたぜ。ここだここだ」
「あ、わりと近いんですね、……え?」
模擬戦をしていた闘技場から歩いて五分ほどの場所にその店はあった。
店の名は――<メイド喫茶 ラブリィラヴィ>。
「…………」
繰り返そう、<メイド喫茶 ラブリィラヴィ>である。
店の前には呼び込みとしてフリフリのメイド服を着たウサミミのメイドがチラシを配っている。
うん、どう見てもメイド喫茶。
どう見ても男っぽくない。
……これは何かの間違いではなかろうか。
「よーし入ろうぜ」
あ、間違いじゃなかった。ビシュマルさん思いっきり率先して入ってる。
だが待って欲しい。これは模擬戦後の食事会で、面子にはジュリエットやチェルシー(ついでにネメシス)という女性陣もいる。
その上で、メイド喫茶をセレクトするだと……!
「……男だ」
『レイ君。これは男らしいのではなく、ビシュマルがやらかしてしまっただけだ』
横から同じく模擬戦メンバーである“仮面騎兵”マスクド・ライザーさんがそう言った。
ちなみに、この人は常時フルフェイスのヘルメット型仮面を着けている。これまでの食事会の時も仮面は外さず、ストローを使って飲み物だけ飲んでいた。
『ビシュマルの奴、お勧めの店を紹介するということだけ考えて、他の面々にまで気が回らなかったようだ。これでは女性陣は……』
……ドン引きになる。
そう考えて、俺とライザーさんが彼女達の方を見ると、
「へー! こんなところにメイド喫茶あったんだ! デンドロにもあるんだねメイド喫茶」
「これなるは奉仕種族の館。対価によって悦楽の食を饗する等価交換の食卓。……あ、グッズ販売でメイド服売ってる。可愛いし買って帰ろうかな」
「デラックスジャンボハートフルオムライス、さらに美味しくなる魔法付き、だと? これは頼むしかないではないか!」
あ、引いてない。むしろ乗り気だ。
『……入ろうか』
「……そうですね」
◇
その後、ビシュマルさんは女性陣もいる中でメイドさんとのジャンケンゲームや「あーん」のサービスを満喫していた。
その堂々とした振る舞いは実に男らしかった…………ベクトル違うけど。
Episode End
( ̄(エ) ̄)<(ある意味)勇者クマ
(=ↀωↀ=)<うん
(=ↀωↀ=)<ちなみにライザーさんお勧めの店はスムージー専門店だったそうです