フランクリンの場合
(=ↀωↀ=)<11月1日発売の第一巻に先駆け
(=ↀωↀ=)<特典SSと同じく「料理」や「食事」を題材に
(=ↀωↀ=)<一巻に出番ない面子で記念SSの連日更新しますー
( ̄(エ) ̄)<最初は発売前日に一本だけ載せるつもりだったが
( ̄(エ) ̄)<「折角の書籍化だから」と思った作者が特典数と同じく六本やることにしたクマ
(=ↀωↀ=)<自分で首締めてますが頑張りますー
□■某月某日 <叡智の三角>・本拠地
技術者クランである<叡智の三角>は【マーシャルⅡ】の開発によってドライフのトップクランに躍り出た集団である。
トップに立っても彼らは驕らず、常に【マーシャルⅡ】の性能向上や新装備や新型機の開発に向けて精力的に活動していた。
今も改修型である【マーシャルⅡ改】の耐久試験の最中である。
テストパイロットのMPが尽きても、ポーションや支援スキルで強引に回復させながら敷地内のトラックを何百周と走らせる……何とも過酷な試験であった。
「ふむ……」
その現場にはクランオーナーのMr.フランクリンも立ち会っていたが、彼……もとい彼女は走り続ける【マーシャルⅡ】ではなく手元の本に目を向けていた。
「オーナー、それ何読んでるんですか?」
この人は何をしているのだろうと、古株の【高位技師】であるぶーらんたんが声をかけた。
「見て分からないかねぇ。料理のレシピ本さ」
「【レシピ】……あ、本来の方か」
生産職の間で【レシピ】と言えばスキルでの自動アイテム生産に使うガイドアイテムだ。この<叡智の三角>でもレシピと言えばそちらを指す。
しかし現在フランクリンが読んでいるのはそういった生産のガイドアイテムではなく、料理の作り方が順を追って書かれた普通のレシピ本である。
「オーナー、自分の手で料理作るんですね」
「私だって料理くらいするねぇ」
『そんなにも意外だったかしら?』とフランクリンは首を傾げるが、ぶーらんたんの言いたいことは違う。
「いやそうじゃなくて……普通に料理作るんですね」
「当たり前だろう? というか、それ以外にどうやって作れと言うのかねぇ?」
「そこはほら、『料理専門の改造モンスターさぁ!』とか言いそうじゃないですか」
「ハハハハハ」
フランクリンの口からは、『そこまで何でもかんでも改造モンスターで解決すると思われてるのね』と乾いた笑いが出た。
「……ちょっと考えれば分かることだけどねぇ。うちのグロめな改造モンスターが作ってしまったら、たとえ安全な料理でも『何が入っているか』と不安になってしまうからねぇ。その時点で料理の楽しみが雲散霧消してしまうよ」
その至極納得のいく返答にぶーらんたんは『なるほど』と頷き……同時に思ってしまったことを口にする。
「いえ、オーナーが作った時点で『何が入っているか』の不安は残ります」
「…………」
それもまた至極納得のいく返答であり、フランクリンは笑い顔のまま硬直した。
そして、
「おーい、耐久試験のパイロット交代だ。ぶーらんたんを代わりに乗せちゃって。――機体がぶっ壊れるまでね」
「ひどくないですか!? ひどくな……ぎゃああ!」
ぶーらんたんは悲鳴を上げながら強制的にコクピットに放り込まれ、コクピットは即座に外部から溶接されてしまった。
そうして耐久試験は再開し、ぶーらんたんは「早く壊れてくれ! いや、壊れたらそれはそれで技術者として悔しい……!」というジレンマに襲われながら【マーシャルⅡ改】を走らせ続けるのだった。
◇◆
「さて、と」
そんなぶーらんたんから視線を外し、フランクリンはまたレシピ本に視線を戻す。
そのレシピ本の表紙には……「ベジタリアン料理の作り方」と書いてあった。
「リアルで明日。こっちだと三日後だから、色々準備しないとね」
フランクリンはそう呟いて、三日後に初めてログインする予定である妹の歓迎準備を続けるのだった。
Episode End
(=ↀωↀ=)<ちなみに料理はまともに美味しかったそうです