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第二話 《月面除算結界》

□王都アルテア・<月世の会>本拠地 【聖騎士】レイ・スターリング


 目が覚めると、眠る前とは全く違う天井があった。


「……俺、宿屋のベッドの上にいたはずなのだけれど」


 今は何故か木造で和風な部屋の中、布団の上で目を覚ましている。

 一瞬リアルの実家を思い出したが、そこともまた部屋の見た目が違う。

 和の侘び寂びを感じるけれど、同時にものすごく金がかかっていそうな部屋だ。


「ここはリアル……じゃないな」


 顔にかかる前髪はアバターであるレイの金髪で、メニューも開ける。

 ここはリアルではなく、まだ<Infinite Dendrogram>の中だ。


「起きたか、レイ」


 左手の紋章からネメシスが出てきて、俺の布団の隣にちょこんと正座する。

 意外と綺麗な姿勢だ。


「ネメシス……ここどこだ?」

「知らぬよ。御主の中で寝ているうちにここにいた」

「…………」


 その発言から一つの事実が浮かび上がる。

 俺を宿屋のベッドからこの部屋に運んだ人物は、俺どころかネメシスも起こさない静けさでそれを成したらしい。

 【絶影】のときのマリーでもできるかわからない芸当だ。

 不安になり、アイテムボックスの中身をチェックするが……幸い何も盗られた様子はなかった。


「だがレイよ。ここがどこかはマップを確認すればわかるのではないか?」

「それもそう……か?」


 答えながらマップを開いた俺は、再び首を傾げた。

 そこにはこう書いてあったからだ。


 【王都アルテア・<月世の会>本拠地】、と。


「……落ち着け」


 所属国の首都のマップは始めた時点で入手状態になっているので、ウィンドウには詳細な場所が表示されている。

 位置としては王都を囲む壁の、外縁よりの区画。

 それそのものに問題はないが、現在地の名前には大問題がある。


「<月世の会>本拠地……」


 それは取りも直さず、王国最大のクランにして現実にも存在する宗教団体、<月世の会(やばい連中)>の本拠地ということだ。

 宿屋で寝ていたはずの俺が、寝ている間にそんな場所に移動させられているということは……。


「拉致されてるじゃねえか!!」


 何で俺を誘拐してんだよ!?

 何で俺が誘拐されてんだよ!!


「……こういう施設に赴くのは普通、顔見知りの美少女を助けに行くシチュエーションではないかのぅ?」

「そうだな……って言ってる場合か!」

「落ち着くがいい。こんなもの、あの糞白衣の悪巧みに比べれば修羅場としてはまだ足りぬ」

「カルト宗教団体に拉致されるのは毛色が違って普通に怖いわ」

「むぅ……」


 どうする、どうすればいい……そうだ!


「ネメシス、考えてみれば何も慌てることはなかった」

「ほぅ」

「一回ログアウトしてからギデオンのセーブポイントに戻ればいい」

「それは名案だの!」


 じゃあ早速メニューからログアウト処理を実行して……。


【他者接触状態につき、ログアウトできません】


 ……………………なんですと?


「ログアウト……できない」


 俺は膝をついて崩れ落ちた。


「……デスゲーム系VRMMO物の主人公みたいな台詞だのぅ」

「いや、本当にログアウトできないんだよ。他者接触がどうとか……」


 ログアウトには30秒間、誰にも接触されていない必要がある。

 だが、ここには俺達以外の誰もいないから、触れられているわけがないのに。


「ああ。なるほど、先ほどから感じる気配はそれか」


 気配?


「起きたときからずっと<エンブリオ>の気配がする。恐らく、ここはテリトリーかキャッスルの<エンブリオ>の効果範囲内なのであろう。ならば当然ログアウトなど出来まい、相手に触れているのだからの」

「……!」


 俺のログアウトを封じるために予め手を打っていたというわけか。

 しかしそれは……。


「どうやら、御主をここに連れてきた者は御主を逃がすつもりはないらしいのぅ」

「そうみたいだな……」


 そのとき、部屋の襖が開いた。


「!?」

『レイ!』


 俺とネメシスは警戒を強め、黒大剣に変形したネメシスを構える。

 襖を開けて入ってきた相手は、


「おはようございます。レイ様、ネメシス様」

 …………仲居さんだった。


 ……うん、高級旅館にでもいそうな仲居さんだよ。左手の甲に紋章ないからティアンだし。

 強いて言えば、着物に“三日月と閉じた目”のマークがしっかりと描かれていることが違和感だ。


「朝食の準備が出来ております。お着替えが済みましたらご案内いたします」


 仲居さんは俺達に用件を伝えた後、丁寧に礼をして、襖を閉めた。


「…………」

『…………』


 完全に警戒の空気がほつれてしまった。


『どうする?』

「……とりあえず、着替えるか」


 まだパジャマのままだし。

 鬼が出るか蛇が出るかはまだ不明だが、場所が場所だ。臨戦態勢で備えておくべきだろう。


『うむ。そして朝食だのぅ』


 ……いや、飯はどうだろう。

 何を盛られているかわからないぞ。


『それはそれでありではないか?』

「なに?」

『毒薬なり痺れ薬なり仕込んであるなら、《逆転》を使えばいい』


 ……なるほど。

 たしかにそれなら問題はない、か。


『そうと決まれば早く朝食に向かおう。なぁに、誘拐された身だ。精々相手の金でたらふく飯を食べようではないか』

「ネメシス……」


 最近、うちの相棒の食い意地が増してきた気がする。

 食い溜めして冬眠でもするんだろうか……。


 ◇


「……美味い」

「これは、すごいのぅ」


 意外と言うべきか、見た目通りと言うべきか。

 用意されていた朝食は滅茶苦茶美味かった。


「素材の味を、本来以上に引き上げてるというか……うぅむ」

「薄味なれど確かな満足感のある味付けだのぅ」


 懐石料理もあるんだな、<Infinite Dendrogram>。

 右手だけだとお茶碗持てないから少し食べづらかったが。


「味の方面でここまでの満足感を覚えたのは初日以来だのぅ」

「たしかに」

「気に入ってもらえてよかったわー」


 兄が開いた歓迎会での【天上料理人】の料理は、<Infinite Dendrogram>で食べた料理の中でもトップクラスだ。

 しかし、今の朝食はそれに匹敵する。


「実に繊細な味付けだったのぅ」

「やっぱり王国最大のクランだから人材豊富なのかね。料理人系統の上級職や超級職がいるとか?」

「これなー。うちの秘書の影やんが自前でやってるんよー。影やんの料理はリアルでも料理漫画みたいで見ごたえあるんよ」

「あー、そういえば《料理》ってセンススキルの一種で――!!」


 瞬間、全身の細胞が反応した。

 それは別々の反応を、一度に起こしていた。


 いつからか自然と会話に混ざっていた声への反応。

 いつの間にか、後ろから俺を抱きすくめていた(・・・・・・・・)女性への驚愕。

 女性が身に纏う十二単に焚き染められた香木や女性自身の匂いへの陶酔。


 そして――生物としての根源的な恐怖心。


 今まさに、首筋を虎に咥えられているかのような錯覚。

 虎がほんの少し戯れに力を込めて――首が断裂する寸前の感触。


「…………ィ!?」


 俺を抱きすくめるこの女性は、容易くそれができると実感する。

 似た感覚に覚えはある。

 あの<墓標迷宮>で、フィガロさんと初めて遭遇したとき。

 <超級激突>の前に、迅羽と小競り合いをしたとき。

 だが、直接この身に触れられている今の方が、あの二回よりも遥かに……怖い。


「んー? どうしたんー? ふるえてるんー? あー、そっちのメイデンちゃんもにらまんといてー。ちょっとしたスキンシップやからー」


 女性は俺の耳元で囁くように言葉を発し、細く白い指先で俺の喉を撫でながら俺の背から身を離した。


「……ッ!!」


 解放された瞬間、飛び込むようにネメシスの元に駆けて、大剣へと変化したネメシスを右腕に握る。

 《カウンターアブソープション》のストックはフル、三回分ある。

 だが、それがどうしてこんなにも心細いのだろう。

 かつて、強敵との戦いでストックを切らしたときとは違う。

 迅羽との最初の接触で発動が間に合わなかったときとは違う。

 リベンジでマリーに欠点を突かれたときとは違う。

 模擬戦で砕かれたときとは違う。


 全く別種でありながら、無為とされる予感だけがある。


「やーん、ごめんなー。ちょっとからかいすぎたわー」


 朗らかに笑いながら、手を合わせて謝るその姿はとても可愛らしいものだ。

 世の男性の百人中九十九人はその仕草を魅力的だと思うだろう。

 俺自身も、何も感じていなければ見蕩れていたかもしれない。

 だが、今の俺にはその魅力よりも……先刻感じた恐怖心の方が何倍も信じられた。


「レイ・スターリングちゃんに、メイデンのネメシスちゃん」


 女性が――女性の形をした化生が俺達の名を呼ぶ。


「真剣やねぇ。うん、ええわー。それがええわー」


 化生は、いつか“水晶越し”に見たときのように、コロコロと笑う。

 そして――


「うちは、【女教皇】扶桑月夜。<月世の会>のオーナーや――よろしゅう」


 兄、レイレイさん、フィガロさんに続く四人目。

 アルター王国、最後の<超級>は俺たちにそう言って挨拶をした。


 ◇


 挨拶の後、扶桑月夜は人を呼んで食事を片付けさせた。

 その間も、俺はネメシスを構えたまま、微動だにできずにいる。


「…………」

『…………』


 俺もネメシスも、相手に対して……俺達を誘拐した主犯であろう相手に対してどう反応すればいいか、決めあぐねていた。


「その左腕」


 しかしその間を、扶桑月夜が名乗ってから生じた沈黙と緊迫を、他ならぬ扶桑月夜自身が崩す。

 扶桑月夜は、俺の左腕――フランクリンとの戦いで失われ、今はフック状の義手を装着した腕を指差している。


「本当に治ってへんのなー」

「……生憎、治せる人がいなくてね」


 そういえば、マリーは司祭系統超級職である【女教皇】ならば治せると言っていた。

 だが現状、目の前のこの化生に「治してください」などと頼む気は全く湧いてこない。

 マリーが薦めなかった理由もよく分かった。

 これに頼み事をする?

 悪魔と取引した方がまだ良心的だろう。


『まだろくに会話もしておらぬのに、随分警戒しておるのぅ』


 まぁ、拉致されたってだけで十分ではあるが。

 それ以上に、直に触れられ、言葉を交わしたときに直感した。


 “こいつ、フランクリンと同じかそれ以上にやばい”。


『……ふっ、私も同感だのぅ。あやつの後ろ(・・)から感じる気配を含めてな』


 そう言うネメシスが、扶桑月夜の背後……俺達からは死角となっている場所に在る何かを警戒しているのが感じられた。


「んー……」


 俺とネメシスの両方が発する最大限の警戒を、当の扶桑月夜はどこ吹く風という面持ちだ。

 俺達の態度など気にも留めず、また俺に問いかけてくる。


「治せる、治せない、やなくてなー。なんでデスペナせーへんのー?」

「なに?」

「デスペナになれば、二十四時間お休みした後は五体満足で復活するやん? 何も十日以上……こっちの時間で一ヶ月以上も片腕で不自由する必要ないんやないのー?」


 ああ、マリーもそんなことを言っていたな。

 けどそれは論外だろ。


「腕治すために死んでどうするんだよ」


 どこかで死ぬことはあるとしても、腕一本のために死んだら理屈に合わない。


「…………アハ」


 俺がそう言うと、扶桑月夜は目を丸くして……大笑した。

 大声で笑うわけではない、鈴の音のようにコロコロとけれど口元を押さえながら、笑い続けている。

 俺の発言の何かがツボに入ったのか、あるいは別の理由があるのか。

 それから三十秒ほども笑い続ける扶桑月夜と、それに対して迂闊に身動きが取れない俺達。

 そうして、


「最ッ高」


 笑い終えると同時にそう呟いて、扶桑月夜は俺とネメシスを見据える。

 その目つきは寸前までとは違う。

 目の奥に、何かが燃えている。

 その視線にどうしてか……ひどく身が竦む。


「実はなー、今日はレイちゃんをうちのクランに勧誘するために呼んだんよー。ほら、レイちゃんって今有名人やからー」

「断る」


 いつかどこかのクランに入るにしても、ここはない。

 宗教団体が怖い以前に……今は目の前の化生が怖い。

 言葉を交わせば交わすほど、その気持ちは強まっている。


「入ったらその腕治すけどー? うち以外で治せる人はこの国におらんよー?」

「それでも、だ」

「ふーん……」


 扶桑月夜は俺達に背を向ける。

 視線を外されて、少しだけ気が楽になる。

 そんな俺の心持ちを知ってか知らずか、扶桑月夜は背を向けたまま言葉を紡ぐ。


「合理的にデスペナ選ぶよーな輩ならいらへんしー」


 だが、なぜだろう。


「デスペナ選ばない理由がつまらなくてもいらへんしー」


 視線は外されているはずなのに。


「可愛くないならやっぱりいらへんけどー」


 身を締め付ける恐怖は増していく。


「でもなー」


 扶桑月夜は長い髪を靡かせながら、クルリと振り返り



あんたは欲しいなぁ(・・・・・・・・・)

 ――視線と共に、寸前までと比較にならないほどの恐怖を俺に叩きつけてきた。



「……ッ! 《地獄瘴気》!!」


 俺は咄嗟にネメシスを握ったまま、【ガルドランダ】の右手甲を扶桑月夜に向け、三重状態異常の瘴気を噴出した。

 ここが屋内であることも、相手と自分の距離が近いことも関係ない。

 三重状態異常よりも何よりも、今はこの化生が恐ろしい。


「ああ、これが噂の伝説級武具やねー、《ホーリー・ゾーン・ホライゾン》」


 瞬間、瘴気が消失した。

 黒紫の煙は、僅かも残らずに消え去ってしまう。


「!?」


 空間全てが輝きに包まれ、清浄な空気で満たされる。

 まるで世界そのものが塗り替えられたかのような……。


「これなー、【女教皇】の奥義の一つなんよー。範囲内の病毒系と呪怨系の全状態異常を無効化するスキルやー」

『状態異常無効化……!』


 【女教皇】は、回復魔法や浄化魔法を得手とする司祭系統の超級職。

 このくらいはできるってことか……!


「相手がうちやなかったら、それなりにイイ手やったけどなー」


 扶桑月夜はまた口元に手をやってコロコロと笑う。

 だが、まだだ!

 相手が支援職の超級職ならば、前衛戦闘職よりもステータスは低いはず。

 【大教授】だったフランクリンよりも脆弱とは思わないが、近接戦闘ならこっちにも分が……。


「ほな、次はうちなー」


 俺は畳を蹴って扶桑月夜の懐に飛び込、



「――《月面除算結界》」

 瞬間、世界が“夜”に包まれた。



 屋内だというのに暗い夜。

 屋内であるはずなのに、蒼い月が浮かんだ夜空が見える。

 異常な空間、異常な世界。


「これはあの映像、の……、……!?」

『レイ!?』


 いつか、マリーの水晶で見たモノと同じ“夜”が広がると同時に、俺の体に異常が生じる。

 空気が入ってこない。

 違う、息は吸い込んでいるのに、酸素を送るはずの、肺と心臓がまともに動いていない。

 おまけに、体もドンドン冷えていく……!


「これなー、うちのカグヤ……<超級エンブリオ>の固有スキル」


 胸を押さえて倒れる俺を、扶桑月夜が見下ろす。


「その名も《月面除算結界》。有名なんやけど知らへんー?」


 知らねえよ……!


「種明かしするとなー、このスキルは効果圏内のうちに都合の悪い数値(・・・・・・・・・・)を六分の一にするんよー」


 都合の悪い……数値?


「敵対者のステータスを六分の一に、

 敵対者の与ダメージを六分の一に、

 敵対者の心拍数(BPM)を六分の一に、

 敵対者の体温()を六分の一にってことやねー。

 他にも色々“割れる”んよー?

 あ、六分の一は多分“月面”だからやねー。あそこは重力六分の一やろー?」

「……!?」


 なんだ、それは。

 そんなもの、誰であろうと勝負にもならない。

 あいつが受けるダメージはステータスとダメージで二重にダウンして三十六分の一。

 それ以前に、身体機能が生存可能な値をあっさり下回る。


「レベルが高い人やとちょっとはレジストできるんやけどねー」


 つまり、レベルがまだ100にも達していない俺は、モロに効果を受けているわけか……。


「……だ、が!」


 こっちにも打つ手がないわけじゃない!


「ネメ、シス!」

『応!』


 ネメシスがその姿を黒大剣から黒旗斧槍に変じさせる。

 同時に、《逆転は翻る旗の如く》を発動。

 相手から受けた状態異常やデバフ効果を逆転させるネメシスの固有スキル。

 このスキルならば、扶桑月夜の<超級エンブリオ>の尋常ではないデバフを逆手にとって…………!?


「く、ぅ……」


 おかしい。

 《逆転》を発動させているはずなのに、息苦しさが失われない。

 多少軽くなって、それだけ(・・・・)だ。


『なんだ、これ、は……』


 黒旗斧槍から、ネメシスの驚愕した声が伝わってくる。


『逆転、できない? 押し戻せない? 私と、絶対的な、出力が……』

「ネメシス、どうした……!」


 ネメシスからは、信じられないものを目の当たりにしたような、茫然自失とした反応が返ってくる。


「そうやなー。うちのカグヤはデバフ特化やから、ネメシスちゃんのそのスキルは天敵やろうなー」


 こちらのスキルを《看破》で読み取っているのか。

 あるいは予め知っていたのか。

 扶桑月夜は《逆転は翻る旗の如く》についてそう述べてから、チッチッと指を振る。


「けど、それはうちとレイちゃん……そしてカグヤとネメシスちゃんが同格(・・)ならの話やん?」

「な、に?」


 同格ならの、話?


「ネメシスちゃんはまだ下級。対してうちのカグヤは<超級エンブリオ>」


 扶桑月夜はニコニコとしていた目を薄く開き……おぞましい光を宿した瞳でこちらを見る。


「――地力の桁が違うえ? 一○○キロをもてても……一○○トンはもてへんやろ?」


 扶桑月夜は「その分なら上級職の状態異常付与までなら逆転できそうやけどなー」と笑っていた。


「…………ッ」


 たしかに、《逆転》のスキル説明文にも、相手のレベルやスキルレベルによって効果が増減するとは最初から書いてあった。

 だが、これまで幾多の状態異常を、【大死霊】の悪夢の如き状態異常の束さえも逆転したこのスキルが、まるで通じない?


「これまで格上の相手に相性勝ちしてきたん? でも一つおぼえとこ」


 扶桑月夜は、寒気を感じるほど優しく語りかけながら俺に歩み寄り、


「絶対強者に――相性程度で勝てやせーへんよ?」


 ――俺の顎を十二単から伸びた素足で蹴り抜いた。


「……――」


 そのまま、俺の意識は強制的にシャットダウンされた。


 To be continued

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