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四十六狂目 『ヒーローアカンデミア』

 いったい何が起きているのか…


 いや、実は知っている。


 すべてあのクソジジイによる、誰も求めていない回想っぽい情報提供で、ここで何があったかは委細まで知ってはいる。


 まさか隣の市の学校、嶽亜愚ごくあぐ高校に“還暦型決戦兵器”と“シンシーズ”がいるだなんて…


 私の目の前では、小石堕というオッサンと、秋月とかいう男子生徒がグラウンドで2体に追いかけ回されていた。


「や、やめろぉ! 涼子!!」

「ハハハ! やめろと言われてやめる愚か者はいないよ! それに今の僕は涼子でも、ましてやトップスターの☆百合でもない…そう。いまや僕は“シンシーズ”が一人、“伯爵アール”さ!!」


 そう。小石堕のオッサンの奥さんがまさかのシンシーズだったのだ。


 歌劇団の衣装をベースに、より戦闘的に特化したかの様な、戦隊ものに出てきそうなバトルスーツ。

 彼女は背中につけたバックパックのバーニアを使って空中に浮いている。

 手にはターミ○ーター2でシュ○ちゃんがブッ放していたガドリングガン。アレって人間が手に持って使うのは無理だって聞いたんだけれど、よくよく考えたらシュ○ちゃんはサイボーグだし、シンシーズもサイボーグだ。


 そして…


「「「待ちなぁ! 逃さないよ!」」」


 白木のジジイの頭のようなボンバー頭のオバサンが何十体も集まり、土埃を巻き上げてグラウンドを疾走する!

 

 オバサンはT10○0のような液体金属みたいなメタリックカラー。もしくは、映画版ドラゴン○ールのメタルク○ラみたいだ。


 もうこんなんじゃイチイチ驚いてらんない。驚いてたらやってられない。


「ミツエ! なんで増えてるんだぁ!?」

「「「なんで増えるかだって? 決まってるだろ! アタシャの愛の深さ故さ!!」」」


 意味はわからないけれど、この人が還暦型決戦兵器だってのは解っている。

 ジジイのうろ覚え説明によると、どうやら自分も何体も複製できるらしい。



「…で、なんで私だけなの? セイカ様は? ユウキちゃんは? あとゴンザレスとジョジーは?」

「知るか! 俺に聞くなバカヤロー!」


 今回は私とヤオキチだけ…


 しかもヤオキチはご機嫌斜めだ(いつもだけど)。


「…で、どうするの? どっちを倒す?」

「知るか! 俺に聞くなバカヤロー!」


 ダメだこりゃ。


 でも、正直、今回は私もやる気がでない。

 

 三つ巴なのはいい。


 ☆百合もミツエも、小石堕と秋月を追いかけ回しているけれど、共闘しているってわけじゃなく、互いに邪魔になるようだったら攻撃し合っている。


 ジジイはたぶん、私とヤオキチに小石堕と秋月を助けさせたいんだろうから、この場合は☆百合とミツエをブッ倒すのがいいんだろうけど……


 はあ。


 ダメだ。やる気しないわ。


 だって、一方は、不倫して浮気相手を病院送りにした最低最悪のクズ男。


 もう一方は、超能力者だかなんだか知らないけれど、最低最悪の男子(なんでこの男子の情報が私に流れてきたかはそもそも知らないけれど)。


 うん。正直、助けたくない。


 全員ブッ飛ばした方が世のため人のためな気がする。


「おい! どうでもいいから早くしろ! あのクソババアの香水の臭いがここまで漂ってきてムカつくぞ!! バカヤロー!」


 ああ。確かにそうね。エレガント武田の時もそうだったけれど、なんで無駄に香水つけまくってるんだろう。屋外で、これだけ離れて臭ってくるって相当ヤバイだろうとは思う。


「全員倒す?」

「あ? 知るか! どうせ全部オメェのせいになるんだからよ! バカヤロー!」

「そうよ! それがとっても不愉快! どうせジジイのことだから、私を悪者にして終わるんでしょ!」

「はぁ!? なに逆ギレしてんだぁ、このバカ女が!!」


 あー、腹が立つ!


 なにをどうやっても悪い方にいくなら…


 ん? 待てよ。


「なら、なにもしなきゃいいんじゃね?」

「あ?」

「うん。そうよ。ただ見てましょ」

「な、なに言ってんだ! このバカ女!」


 そうだよ。いままで私がなにかやって不幸に巻き込まれてるパターンじゃん!


 シカト! 今回はフルシカト!!


 そもそも三つ巴で潰し合ってくれるなら、私が手を下す必要まったくないじゃーん!


 もし残ったヤツが攻撃してきても、そいつを軽く始末するだけで終わりじゃーん♪

 

「お、おい。そう都合よくいくか?」

「いくわよ! さ、購買でミルクティでも買ってこよー」


 私はヤオキチから降りて、校舎へと向かう。


「待て!! 俺はビールだ!! バカヤロー!!」

「高校の購買部にそんなものおいてるわけないでしょうが!!」




☆☆☆




 俺こと、秋月あきづき 狂平きょうへいは超能力者だ!


  人呼んで超能力者エゴロジーだ! 略して“エゴ”と、皆そう俺の事を呼ぶ!


 でも、いまはそんなことを言っている場合じゃない! 


 変な空飛ぶオバサンと、同じ顔がたくさんのメタリックなバアサンに追いかけ回されている!


 コイツらも超能力者か!? 


 クソ、超能力者は世間からは爪弾きにされるってのは本当だったってことかー!!!


「あぶなーい! 秋月クン!!」

「どわー!」


 小石堕のオッサンがいきなり体当りしてくる!


 次の瞬間、俺たちの居たところに、ドババババッと銃弾が掃射される!!


「クソー! 涼子! まさかそんなサイボーグになってまで私を追い詰めたいのか!?」

「ハハハ! 勘違いするなよ! 不純二! ボクがそんなことのためにサイボーグになるわけがないじゃないか! なぜなら、君はすでにボクのトリコロールなんだから!」

「そんなわけあるか! それだと3色だろうが! だとしたら、なぜだー!?」

「ボクの美貌を永遠に残すためさ!!」

「なんだとー!?」


 いや、サイボーグになるって時点でそういう目的もあるって気付くもんじゃね?


 そんなに驚くことか?


 ましてや自分の奥さんのことだろ…


 あ、油断してたらメタリックバアサンたちが!


「ミツエ!! お前もなのかー!?」

「アタシャの美しさは永遠だわさ! 目的はただひとつ! 老後の貯蓄2,000万のために決まってるだわさ!」

「なんだとー!?」


 いや、なんかこっちもありそうな話じゃね?

 

 でも、サイボーグってマジかよ。

 

 まあ、オッサンもサイボーグになってるらしいし……


 ん?


「おい! なら、俺が追い掛けられる理由ないじゃんか! オッサンが目的で、オッサンが原因じゃんか!! 俺関係ねぇーじゃん!」

「ん? いや、そうなんだが…これも隣の席になったよしみというか、触合う袖も多生の縁というか、同じ女性を愛した繋がりというか、超日本には古来よりそういうのがあってだね」

「ふざけんな! こちとらヒルカちゃんが処女じゃなかったって時点でトラウマになってんだぞ! しかも同級生ならまだしも、俺たちより何倍も歳喰ったオッサンに寝取られてんだぞ!! トラウマ以外のなんだってんだ!!」

「コホン! しかし、ここは協力しあわねば生き延びられん!」


 こ、コイツ…俺の服をガッチリ掴んでやがる!


「こうなったからには死ぬ時は一緒だ!」

「ふ、ふざけるな!!」

「それにヤツらは自分の益のためだけに還暦型決戦兵器になった人間のクズだ!」

「あんたもそうだろうが!!」

「私を始末した後は、きっと昼香クンにを害を為すに違いないぞ!」

「そ、それは…」

「それに! この窮地を救えば君は彼女のヒーローだ!」

「俺が…ヒーローに…」

「そうだ! 君はヒーローになれる!!」


 なんかこの場合はアカンような気もする。


 うーん。でも、ヒルカちゃんにイイトコみせるのは悪い気はしない。

 

「そして、私と君と3Pで幸せになろう!」

「オッサン! テメェー! ふざけるな!!!」


 俺は小石堕のオッサンの首を締める!


「わ、わかった! 私も男だ! 命があれば不倫はできる! だから、昼香クンは君に譲ろう!!」

「自分の物みたいな言い方すんじゃねぇ!! テメェの家をウ○コまみれにしてやるぞ!!」


 あー、実はこんなことをしている間にも俺たちは攻撃から逃げ続けていた!


「美しくないよ! いい加減に諦めたらどうだい?」


 バシュン! バシュン! バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!


 空飛ぶオバサンは、なにやら背中からミサイルみたいなのを飛ばした!


『キャー、☆百合サマ、ステキー!』


『完璧スギルー! ☆百合サマー!』


 電子音声で褒め言葉を繰り返して、卵みたいな形をしたものに顔がついているソイツらが、頭からレーザーを放って俺たちを狙う!


「なにするんだい! この空翔ぶブスがぁ!」


 そのレーザーの流れ弾が当たって、何体かが蒸発したバアサンが怒り狂う。


「不完全なサイボーグ! 醜い! そういえば、博士から君たちも処分されるように言われていたね! ついでだ! 星の瞬きのように消してあげるよ!」

「“干し柿のマタタビ”だって!? 舐めんじゃないよ!! ミツエ流総合格闘技の恐ろしさ、“四肢四人固め”を喰らわせて悶絶させてやるわ!!」


 オバサンとバアサンが戦いだす!


「よし、今がチャンスだ! 秋月クン! パイロート契約をしよう!」

「パイロート契約!?」


 小石堕のオッサンの背中からパキンと何かがはずれ、背骨の部分が浮き上がって二股に分かれたハンドルが出てきた。

 そして、ふくらはぎにステップみたいな踏み台が現れる。


「こ、これは…」

「君はヒーローになれる!!」

「それやめろ!!」

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