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 挿話① 『99歳で野望尽きず! それを老害と呼ぶ!』

 戦時中、時の連合艦隊司令官、海軍最高元帥に恐るべき具申をした若者がいる。


 海軍の工作部隊の一兵卒に過ぎなかった19歳のその若者。

 

 彼は血走った眼で元帥の下に近づく。

 周囲が警戒の色を強める中、数歩手前で拳を振りかざし、おもむろにこう叫んだと記録にある。


「戦艦大和に三連式主砲を搭載させているのに、何故、人間の頭に搭載させてはいかんとですか!?」


 ツバを飛ばしながら、若者はなおも続けた。


「いいですか! 手に大砲を持つよりも、頭頂に載せた方が照準を合わせる手間を…」


 若者の言葉は、最後まで言い終えることなかった。

 そして、同僚や直属の上司に引きずられるようにその場から離された。


「な、なんなんだ…アレは」

「さ、さあ? 暑い日が続きましたからねぇ…」

 

 その若者が、すぐに営倉送りになったことは説明するまでもない…。


 そんな血気盛んな19歳の若者…当時の白木 卓郎の姿である。




☆☆☆




 それから数十年の月日が流れた…。


 戦後復興はめざましく、高度経済成長を遂げた我が国である。

 だが、それも長くは続かず、バブル崩壊による低迷の時代を迎えていた。


 様々な経済戦略が行われたが、立ち直ることはできず、2×××年においても未だその危機を脱してはいなかった。


 当時の総理は涙ながらに、


「国民の皆さんのご理解を! 国民の皆さんの預貯金…ではなくて、ご協力が必要なのです! 議員が国会で寝てても安心できる国家づくりを! そのための苦肉の策なのです! 国民の皆様に痛みを…(いや、激痛かもしれませんが。てへ☆)! それでも耐える、強き皆様を見てみたい!! あ、見てみたい! 何とぞ、何とぞ! ご理解くださーーーい!!」


 と、言いながら、消費増税50%を掲げた時には、凄まじい暴動が起きたことは記憶に新しい。


 経済悪化もそうであったが、その要因の一番のは超グレートスーパーエレキテル高齢化社会にある。

 国民のほとんどが老人となり、医療費は高騰し、保険制度が瓦解したために、個人負担10割を余儀なくされ、年金受給は100歳以上からといった現象が起きていた。


 だが、それに反して医療技術の進歩により、老人の寿命は格段に延び、中には150歳近くまで生きる者がいるいる。

 長寿自体は喜ばしいことであったが、労働力になりえなくなった超高齢者…それを支える国家の基盤はすでに破綻を迎えていた。

 

 また、それへの対策のため、基礎年金強制徴収令が発せられたことの影響も大きかった。

 黒服を身にまとったヤ○ザまがいの役人が、ケツの毛まで抜くほど徹底的に行った結果、全労働者の給与7割が徴収される運びとなる。

 

 まさに暗黒時代、"年金刈り"に国家は奔走することになるのである………。




 そんな中、一つの希望が光り輝いた!


 失意の元、細々と床屋家業を継いで生きていた一人の男が動き出す…。


「高齢者をサイボーグに! 還暦過ぎたら即サイボーグ!」


 そんなスローガンのもと、救世主は秘密裏に一つの国家戦略に参加することになる。


 それは超高齢化社会のみならず、社会に蔓延していた問題に対しても効果が期待できると知識人は言う!

 無職者ニートの転生願望による自殺、この小説のような不人気連載携帯小説ださくの蔓延、隣の犬の糞害から、甥っ子である大学生の幼女性癖ロリコンまで…

 それら全てにおいて、解決の糸口となる画期的な戦略!!


 それを、人は…『Sプロジェクト』と呼ぶ!!




 しかし、そんな国家の思惑とは別として………。

 その男が計画にはなかった、一つの個人的な野望を腹の中に抱えているとは、誰も気づいていなかったのであった……。


「…これで、ワシの時代キター! 頭に大砲を搭載しても良い時代キター!」

 

 ニカッと、アインシュタインのような顔がご満悦に微笑む。


 99歳という年齢に至っても、未だに情熱を失うことのない、あの若者…今の白木 卓郎の姿であーる!!!

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