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四十三狂目 『やまもりパパイヤロード』

 俺こと、秋月あきづき 狂平きょうへいは超能力者だ。

 人呼んで超能力者エゴロジーだ。略して“エゴ”と、皆そう俺の事を呼ぶ。

 超和(令和より先の元号)にもなって何を言ってるのかと思われるが、現に超能力者だ。


 そういや、最近、ファンタジー的な転生ものばかりが流行ってて、サイキックものが流行らないと聞く。まったくもって嘆かわしい限りだ。


 ちなみに俺のサイキックは、正義のサイキックだ。


 例えば…ほら、いま居た道端に空き缶をポイ捨てしたヤツ!

 あの薄い頭をした幸の薄そうなオッサンだ!


 俺はすかさず空き缶を拾い、側にあった犬の糞を擦り付ける。


「サイコメトリー!!」


 空き缶に意識を集中し、この缶の持つ情報を読み取る。


 この糞をしたのは異世界転移から戻ってきた柴犬…名を犬次郎いぬじろう。世界を滅ぼすチート能力を持つ。しかし、今は散歩に夢中。


 しまった! 間違えて糞の方をサイコメトリーしてしまった!


 缶の方だ! 缶の方に意識を集中し直す!!


 この缶のアルミニウムは超静岡で採れた…いや、こんな前の情報じゃない。


 成型されて、珈琲を充填され、ゴキブリが徘徊して飲み口のところを行ったり来たりしたのもどうでもいい。


 ん!?


 読めてきた!


 読めてきたぞ!!


 俺にも読める!!!


 場所は、超山梨の奥地にある工場だ。

 なんかエプロン姿のボンバーヘアーのババアが視えてくる…

 

 珈琲を充填したのは、超広島県出身の現超東京都在住の苦下くのした ミツエ(58歳・主婦)。5浪の息子が1人いる。趣味、浮気。よく行くスーパー“トトイチ”の副店長と週末にデート(お泊り)している。夫と息子にはフラメンコの練習と偽っている。


 くそ! こんな情報はいらん!


 ってか、この珈琲は手作業で充填してるのか!? 普通は機械じゃないのかよ! パートのおばさんがヤカンで注いでるのが出てきたんですけど!!


「最近の情報が欲しいんだ! サイコメトリー!」


 よし! 出てきた!


 さっきのハゲくたびれたリーマンだ! 


 名前や生年月日や細かいことも出てくるが、そんなん今は不要だ。


 自宅を特定する。そして、部屋の中を読み取る。


 よし! 押入れの中で見つけたぞ! ローンがまだ残っている250万で購入したダッ○ワイフが!

 しかもロリ物か! なんてけしからんヤツだ!! ハゲ散らかしてるくせに、オ○ホしか買えない俺の苦しみもついでにぶつけてくれるわ!!


「テレポーテーション!」


 犬の糞をふんだんにつけた空き缶が消える!


 そう。俺はリモートビューイングも使える。

 あの空き缶は、リーマンの大事なダッ○ワイフの最も大事なアタッチメントと換装されたのだ!

 

「見たか! 次に使う時はよーく洗って、それでも取れない悪臭に耐えながらになるぞ! ザマァ!!」


 そう! これが正義のサイキックパワーなのだ!



 さて、俺の能力の片鱗も紹介し終えたことで学校に行こう。


 そう。俺は17歳の高校2年生。正義のサイキックとはいえ学校には行かねばならない。

 なんってる間に学校ですよ。これが義務教育の辛いところね(超和時代には高校も義務化されてるような気がする)。


 そして俺も年頃の男の子だ。当然、同級生に好きな女の子がいる。


 その名は、間門まかど 昼香ひるかちゃん!


 1年の時から気になっていて、2年に上がった時にようやく同じクラスになれた!

 もちろんサイキックパワーで…いや、愛のパワーでそうなったんだ。やっぱり運命の赤い糸で繋がれてるんだなぁ、ボクたちはぁ♡


 俺の斜向かい前の席に…と、でも、彼女はまだ登校してきていない。


 彼女は優等生。おかしいな、いつも6時間前から登校して予習をしているハズなのに…… 


「ねえ、ヒルカちゃん…じゃなくて、間門さんは今日どうしたの?」


 俺は隣にいた同級生のケバい女の子に聞く。


「え? ヒルカ? そういえば今日きてないねー」


「おかしいよね。テレパシーで聞くことも…」


「テレパシー?」


 い、いかん。俺が超能力を使えるのは、秋月家の秘密だった。

 

「と、とにかくBOINとかあるじゃん! イマイチ、テレパシーより使い勝手が悪くて“既読スルー”とかされるローテクだけどさ、ないよりはマシとかいう…君もそれぐらいはやってるでしょ? チンパンみたいな見た目だけど、その程度の玩具はバナナ剥くなみに簡単しょ? まあ、夜のバナナの可能性も否定はしないけどさ…へへへ♡」


「な? 何言ってんのアンタ! なんでアンタなんかにそんなこと言われなきゃなんないのよ!」


 このクソビッチがッ! 用もないときはピコピコとスマフォ弄くり回してるくせに、肝心な時に役立たねぇッ!!


「あっち行ってよ! この変態野郎!」


 クソが! テメェん家も犬の糞便まみれ確定だ! テメェが使ってる化粧品の中身を汚物と入れ替えてやるから覚悟しろ! 超能力者舐めてんじゃねぇ!


「チッ。仕方ねぇ!」


「ちょ! アンタ、なに人の机ん中を…」


「うるせぇ! エゴに意見するな! 黙ってろや、チンパンが!」


 俺はヒルカちゃんの机を漁り出す。俺には知る権利がある。だから許されるのだ!

 鉛筆、消しゴムのカス、数学のノート、ヘアピン、輪ゴム、メリケンサック…チッ。ろくなもんが出てきやしねぇ! リコーダーか生理用品のひとつでも転がり出てきやがれってんだ!


「もう! まあ、いいや! 普段座ってる椅子でもやれんだろ! サイコメトリー!!」


 俺はパイプチェアに意識を集中させる!


 イメージで出てきたのは、工場だ。しかもまた超山梨だ! また生産元か! しかし、この過程を経ないことには……


 このパイプチェアを成型したのは、超広島県出身の現超東京都在住の苦下くのした ミツエ(58歳・主婦)。5浪の息子が1人いる。趣味、浮気。よく行くスーパー“トトイチ”の副店長と週末にデート(お泊り)している。夫と息子にはフラメンコの練習と偽っている。


 は? さ、さっきのババアじゃん?


 なんか作業着姿で、パイプチェアの脚を折り曲げてたんだけど…


 え? どういうこと?


 缶珈琲だけじゃなく、この椅子も作ってんの?


 副業? こんな偶然ある?


 しかも、これも手作業なの!? こういう量産品って機械で組み立てんじゃねぇの!? まさかのハンドメイド!?


「と、とにかく! 欲しいのはこういう情報じゃねぇんだよ!! なんでヒルカちゃんが来ねぇかってのが知り…」


 ガラガラ!


 チッ! 良いタイミングで、センコーが来たか……? 


 ん? なんだ? このチョビヒゲの生えたオールバックのロマンスグレーのオッサンは? 風と共に去りそうな良い男ではあるが……

 

 あれ? でも、なんかセーラー服着ていて…


「失礼。遅刻してしまったかな?」


「いえ、まだ予鈴のベルも鳴ってませんから…」


「そうか。良かった。ありがとう」


 キラリと歯を光らせる。でも、セーラー服だ。まごうことなき、この学校の制服だ。


「…そこに座りたいんだが」


「…は?」


 ヒルカちゃんの席で固まっていた俺に、オッサンが声をかけてくる。


「い、いや、ここの席は…」


「私の席だ」


「エ? だって、間門 昼香の席で…」


「私が間門 昼香その人だ!!」


 な、なんだってー!?


「私が間門 昼香その人だ!!」


「い、いや、いま聞いたから!」


「聞こえていないと思って…」


「驚いてたんだよ! ありえなかったから!」


「それがありえるんだなぁー!」



 風雲急! 突如として現れたヒルカを名乗るオッサン!


 このオッサンを相手に超能力エゴはどう立ち向かうのか!?


 ああ、次回につづーーくッ!

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