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四十一狂目 『超和菓子屋職人マーマレードじいさん』

 ある説によれば、紀元前より昔から、残された記録からしても少なくとも4000年(自称)は続く、伝統の和菓子屋こと『蔵菊堂くらきくどう』。

 無形文化財に指定された超絶技法もさることながら、店の入り口をショーウィンドウにして“魅せる販売”も行う温故知新を具現化したような老舗である。


 その古き和式旅館のような入口に、沿岸地帯の工場のような外観がミスマッチしていた。いや、工場に無理やり和風建築の出入口を取って付けたかのようだったのだ。

 波型スレート屋根からは、場違いなほど巨大な煙突が飛び出ており、このエコの時代を嘲笑うかのように、1960年代の工業黎明期を彷彿とさせるほどに、これでもかと黒煙をモウモウと立ち込めさせている。


「ほ、本当にここは和菓子を作ってる店なんだーよね?」


 ヒートたけちよが、若干引きつった顔でディレクターに尋ねる。

 ディレクターはコクリと頷き「間違いありません。確認済みです」と自信満々に答えた。


「じゃ、撮影開始です! 学生さんもうちょっと下がって! 出番が来たら声かけますから、打ち合わせ通りにね! ぶっつけ本番ですから不用意な発言はしないで下さいね!」


 スタッフがそう言うと、引率の教師、浦河は頷いてクラスに指示を出す。


 カメラが回った瞬間、ヒートたけちよもユンコリンも雰囲気が一変した。即座に撮影モードへと入ったのだ。ベテランのなせる技である。


「さーて。今日はぁ、この活き活き山里商店街の老舗和菓子屋さんに来ていまぁす♡」

「いやー。楽しみだねぇー。ユンコリン」


 店の入口をバックに、二人はカメラの前で決め顔をする。


「アンコの良い香りがここまできてますねぇ。ヒートたけちよさん。さ、早くお店の中にお邪魔しちゃいましょう♡ 楽しみぃ!」

「お、いるねぇ。あちらに。店のご主人が仕込みをされてるのが見えるねぇ〜」


 ショーウィンドウ越しに、アンコを練っている老人がいた。

 天井まで届かんばかりのコック帽。そこからはみ出したモジャ毛は、モミアゲを通ってヒゲと一体化している。なんなら鼻毛まで混じってそうなぐらいの剛毛だ。

 ピッチピッチのコック服の両袖からは、黒光りしたムッキムキの筋肉がはみ出ている。



「んー!? ちょ、ちょっと待っ…」

「バカ! 生放送だぞ! 撮影中だ!」


 何やらスタッフの間で揉め始めるが、すぐに騒ぎはおさまる。



「えーと、なんか洋食のコックさんみたいな格好をされていますが、この方が蔵菊堂の店主、 黒皮くろがわ 餡憎あんぞうさんでーす」

「…“マーマレード”」


 店主、黒皮がギロッと睨んで言う。


「え?」

「ワシのことは“マーマレード”と呼べ…」

「あ。はい。えっと、“マーマレード”…さん?」

「“マーマレードじいさん”、だ…」

「は、はぁ…」


 まったくもって台本にない台詞だ。

 しかし、黒皮の迫力に圧倒され、言われたままヒートたけちよとユンコリンは苦笑いして頷く。


「黒皮…でなくて、マーマレードおじいさんは、長年に渡って伝統ある和菓子職人をされているんですよね?」

「…違う」

「え?」


 またもや台本に無かった回答に、二人は硬直する。背中に冷や汗が伝う。

 これって放送事故…そんなテレビに決してあってはならない単語が頭を過る。


「…ワシは和菓子職人などではない。あんな物と一緒にするでない」

「え? じゃあ、いったい…」

「“超”和菓子職人…だ」


 真顔でそう言うマーマレードに、作った笑顔もさらに引きつる。


「ちょ、超和菓子職人…な、なるほど! さ、さすが長年やっていらっしゃるだけあって肩書きもスゴイ!」

「そ、そうですね! まったく! 普通の和菓子職人のレベルを超越しているってことですもんね!」


 二人はプロである。どんな状況でも取り乱さず、上手く話をまとめる自信があった。

 撮影を止めなかった判断が正しかったことに、撮影スタッフたちはホッと胸をなでおろす。


「…えっーと、今はなにをされてるんで?」


 “さらに質問を”という合図をアシが出したので、ユンコリンが話しかける。


「…見りゃ解るじゃろ。アンコを練っておる」

「え? あの、素手で…」


 黒皮は、湯気がたっている熱々のはずのアンコを叩きつけてはコネ回す。普通は鍋で木ベラを使うはずなのだ…。


「…ここまでできるようになるのに50年じゃ」

「は、はあ。す、スゴいですねぇ。ホント、これが熟練の技ってやつなんですね!」

「でも、これって小豆…なんですか?」


 黒皮が練っていたのは、色こそ黒いが何やらテカテカしていた。


「…アズキ、だと?」


 黒皮がゲジゲジのような太い眉を寄せる。


「ええ。小豆を使ったアンコなんで…すよね

?」

「…知らん。裏庭で取れた天然素材だ」

「て、天然素材…?」

「……砂糖さえ入れれば何でもアンコになるもんじゃ[※]」


[※あくまで個人の見解です]


 ヒートたけちよはゴクリと喉を鳴らす。どうみても泥か土…いや、ぶっちゃけ汚いヘドロのようにしか見えなかったからだ。


「で、でも、ホント。アンコを手でこねるなんて知らなかったー♫」

「おー、ユンコリンは甘いもの好きなのかな?」

「うん。とっても好きでぇす! 甘いのに目がなくてー。特に和菓子なんて大・大・大好物ぅ♡」

「おお、なら今日はうってつけだねぇ。何が好きなんだぁーい?」

「どら焼き、みたらし団子、おはぎに桜餅…うーん、ユンコリン決められなーい!」

「アハハ。ここのお勧めは…」


 持ち前のトーク力でその場を乗り切ろうとした、ヒートたけちよの顔が凍り付く。

 黒皮がアンコを練っていた容器は鍋ではなかった。なぜか、洋式便器を使っていたのだ。


 洋式便器を脇に抱え、その中にヘドロの塊を叩き入れてはコネくり回す。


「そ、それはいったい…」

「この形状が、一番、練りやすいんじゃ…。超和菓子職人ならば常識じゃ[※]」


[※…あくまで個人の感想です]


「えっと、イメージ的には悪いけど…もちろん新品を」

「…3度洗った。問題ない」


「う、うぉえええ!」


 ヒートたけちよとユンコリンは青い顔をしていたが、それでもカメラの前とあって平静を装っていた。だが、スタッフの一人はたまらず嘔吐する。

 

「ま、まあ、ちゃんと洗って…るなら」

「うん。そ、そうですね」


 そんなわけねぇだろと思いつつも、一応フォローするのはプロ根性がなせる技と言えるだろう。


「えっと、アンコを作る上で秘訣とかは…」

「あ。私知っている。お塩ちょっと入れると甘み増すんですよね!」

「お。ユンコリン、よく知ってるねー。もしかして料理得意だったりするする?」

「えへへ。たまーにやるだけですってぇ♫」

「おほほ。でも、ユンコリンが家庭的である一面が見えましたねぇ」

「…入れん」

「は?」

「塩なんか入れん」


 どこまでも空気が読めない黒皮が答える。


「え? 塩いれないんですか?」


 驚いた顔でユンコリンが訪ねると、黒皮はコクリと頷く。そして、自らの二の腕を掲げた。

 ダラダラと垂れる汗が、容赦なく便器の中に注がれているのが解る。


「…これがあるからな」


「う、うぉえええ!」


 二人目のスタッフが嘔吐した。

 さすがのヒートたけちよとユンコリンも半分白目を剥いている。


「えー、あー、と、とりあえず。制作風景はこの辺で。えっと、では、できあがったものは…」

「…完成品がこれじゃ」


 黒皮は棚から、完成されたマンジュウを取り出す。ブッと勢い良く息を吹きかけ、上にかかったホコリを吹き飛ばす。

 もはや硬直してしまった作り笑顔を浮かべつつ、二人がのぞき込む。


「な、なんで顔が描かれて…?」


 なぜか茶色い表面に、リアルな人面が描かれていた。今にも叫びだしそうな血の叫びをあげている絵だ。もはやわざと食欲を失わせるために描いているとしか思えない。


「ワシが望むのが、“生きたパン”ならぬ“究極の生きたマンジュウ”だからだ…」

「生きたマンジュウったって、なにも人面にしなくても…」


 さしものヒートたけちよもツッコミを入れてしまう。


「いや。ワシの和菓子や人生を揺さぶるようなある出来事が昔にあってな…」


 しみじみと勝手に語り出す黒皮である。

 もちろん、誰も割り込むこともできない声量と雰囲気による圧力をかけてのことだ。なんとなしに全部聞かねばならない感じになる。


「かつて、ワシが夕方にふとテレビを見ておったときのことだ。ある児童向けのアニメがやっておってな。それを見たとき、“やられた!”と思ったよ。何を見たか解るか?」

「さ、さあ…」


 何の脈絡もなく尋ねられても解るはずもない。そもそもその話題に興味を惹かれすらしないのだから当然だ。


「なんとな。そのアニメの主人公は、“パン”だったんじゃ! 生きたパンのヒーローじゃよ! 解るか!? 同じアンコを使った職人として、これは負けたと思ったわい!! ワシの予想通り、翌週からパン屋はバカ売れよ! そりゃ笑いが止まらんじゃろ! パン屋が起こしたテロじゃ! 企業テロじゃ!!」

 

 ヒートアップした黒皮のツバが、ビシャビシャッとヒートたけちよに滝の如くかかる。


「それって、もしかしてアンパ…」

「その名を口にするんじゃなぁいッッッ!!!!」


 怒り狂う黒皮に、ヒィッとユンコリンが身をすくませる。


「さあ、話は終わりだ…。食せ。ワシの魂のこめられた“生きたマンジュウ”をな!」


 黒皮がマンジュウを掲げると、ビュッと目鼻口からアンコが飛び出す。そして、それらが生きているかのようにビチビチと蠢いていた。まるで、本当に生きているかのようだ!


「な、なにこれェッ?!」

「さあ、食え! 食うんじゃ!!」


 ガシッと太い腕で二人を掴む。両手がふさがっているのにどうやって食べさせるかと? 簡単である。黒皮が生きたマンジュウを口にくわえ、口移しで食べさせようと試みてるのだ!!


「ギャアアアア!」

「ヒィイイイイ!」

「さふぁ、くふぇ! くふぇんだ!」




☆☆☆




 私たちが見せられたのは惨劇。どこの世界にマンジュウを無理やり喰わされて気絶させられた芸能人がいるというのだろう。

 しかもそのうち一人は国民的アイドルだ。それが白眼をむいてアンコを鼻と口に詰まらせて痙攣しているのが放送されるなんて悪夢以外の何物でもないだろう。


「違う! コイツは店主じゃない! 俺が会ったのはこんなヤツじゃなかった!」


 若手スタッフが叫ぶ。店前に立った巨人…黒皮とかいう老人が睨みつけるかのように振り返る。


「ワシこそが正真正銘、この蔵菊堂店主! 超和菓子屋職人マーマレードじいさんだ…」

「う、嘘をつくな!」

「…本当じゃ。打ち合わせに出た男は金で雇った。この店に不審感を持たれテレビ撮影中止とならぬようにな」

「な、なにぃ!? な、なんでそんな真似を…」

「クソ保健所と、クソ超日本和菓子屋連盟とやらがワシの仕事の邪魔をするからだ!」


 肩をいからせ、黒皮…もうなんかマーマレードでいっか。どうせ確定だし。

 マーマレードが怒り狂う。


「彼奴ら、無実のワシを“チョウリシメンキョ”とやらを持ってないというだけで責め立て、“エイギョウキョカ”がないだの、“ショクヒンエイセイホウ”違反がなんたらという訳分からん呪文のような言葉を繰り返し、この4000年の歴史(自称)ある超和菓子屋をブッ潰そうとしておるのだッ!! 断じて許せん!!!」


 いやー、もうそこまで堂々と言い切ると逆に立派だわ。


「…毎回追い返すのも面倒になった。そこでテレビじゃ。テレビで広くワシの活動を広めれば認められる。そう思ったわけじゃ。だからこそこの放送を逃すわけにはいかんかった」


 色々疑問点は山盛りだけれども、もう慣れたわ。還暦型決戦兵器に常識は通用しない。常識がないからそんなサイボーグになってまで人様に迷惑をかけるわけだしね。


「ナミ。まさか…」

「ええ。セイカ様。今度の敵はきっとあの和菓子屋の店主です」


 そうとなればさっさと倒すに限る。けど、クラスメートにヤオキチに乗ってる姿はもう晒したくはない。


「浦河先生! なんか様子がおかしいです! 避難した方がいいと思います!」

「え? え、ええ、そうね…」


 突然のことに呆気にとられていた浦河先生がハッとして頷く。

 そりゃそうだ。テレビ取材の見学で、取材元の店主が暴れだしてカメラマンの首根っこ捕まえてタコ殴りにしてたら誰だって同じようになるはずだ。

 でも、この理不尽な状況には慣れっこ(決して慣れたくはないけど!)の私からすればこのまま放置することで被害が大きくなるのは目に見えている。驚いている暇はないのだ。

 パニック映画でも「だいじょうぶだ」っている楽観主義者がまず犠牲になって、その次にられるのがボヤボヤしているヤツだ。主人公は真っ先に動くから助かるってのもはや定説よね!


「ナミ! 今の我々にはゴンサレスたちが…」


 そう。今はヤオキチもゴンサレスもいない。いないこと自体はありがたい上に喜ばしいことだが、こういう肝心な時にいないのはいつものことだ。

 セイカ様はスマフォで連絡しようとしたみたいだけど、基本的にオッサンたちは電話に出ない。その上、留守電も聞かない。メールも読まない(読めないが正しいかもしれないが)。

 理由は簡単だ。パチンコ屋では聞こえないし、上着に入れてりゃバイブにも気づかないからだ(貧乏揺すりの振動でかき消されている場合もある)。

 まして勝っていて熱中していたら尚更だ。負けていても、当然イライラしているから電話なんて出ない。出たとしても「うるせー! 今忙しい! 見りゃ解るだろ! バカヤロー!」ブチッ! …となる。電話なのに見れるわけあるかなんていうツッコミを入れる間も与えられず、ただただこっちのフラストレーションだけが一方的に溜まることになる。

 そのくせ当人が電話を掛けてきた時に私とかがワンコールで出ないと「なんのための携帯電話だぁ! さっさと出ろ! バカヤロー!」とブチ切れる。

 つまり自分が使う時だけ携帯電話となる。送信機としてしか使わない、まったくもって身勝手なそういう生き物なのだ。


「大丈夫です! 私に任せて下さい!」 


 そう。私にはジジイが取り付けた脳内交信がある! いつもは迷惑きわまりないクソみたいな機能だけれど、こういう時にこそ使わないと! ジジイならばヤオキチたちを遠隔で連れて来れるハズ!



(ジジイ! 白木のジジイ!)

(…シーン)

(聞こえてんのは解ってんのよ! 応えなさいよ!)

(…シーン)

(わざとらしいわ! わざと“シーン”なんて言うな! 緊急事態よ! 緊急事態なのよ!)

(…シーン)



 クソが! シカトか!

 …ハハーン。そうか。そういうことね。



(白木博士! 助けて! お願いだから! ヤオキチとゴンサレスをこっちに呼び寄せて!)



 これでどうだ! こっちが下に出てやればどうよ! 頭ん中ならいくらでも土下座してやんよ!



(“シーン”ってんでしょーが! K・Yなさいよ! 博士とは繋がらないわよ! このボケがぁ!!)

(…へ!? だ、誰?)



 ジジイの声じゃない。なんかどっかで聞いたような電子音声だ。



(あーん? このアタシを忘れたっての? ナミ・ヤマナカ!)



 えー…あ! 思い出した!

 あのジジイのラボにいた変なオカマロボットだ! オカッパ頭の!



(どうやら思い出したよーね。なんか失礼な感じがプンプン臭うけど!)

(そんなことは…ってか、ジジイは? ジジイと連絡とりたいんだけど!)

(ジジイ? 誰のことよ!)

(白木! 白木のジジイよ!)

(偉大な博士をジジイ呼ばわりとは失礼ね。はーん? で、博士と連絡ぅ?)

(そうよ! こんな悠長なやり取りしてられないの!)

(小娘がぁ!!!)



「キャ!?」

「だ、大丈夫か、ナミ? 何が…」

「…あ、いえ、セイカ様。な、なんでもないです」



(いきなり大声…じゃなくて、思念? やめてよ!)

(はん! ナマ言ってんじゃないわよ! 世界有数の5本の指で数えられる中でもトップの超級科学者の白木博士に、単なる女子高生風情が簡単に連絡とれるだなんて思ってんじゃないわよ! 雲上人よ! 雲上人!)

(はー!? いつも向こうから連絡して…いや、今はそんな話はどうでもいいわ! 言伝でもなんでもいいから伝えて!)

(ムリよ)

(は? なんで!?)

(博士はネオストックホルムだからよ。ノーヴェル超平和賞を受賞しに旅立たれているわ)



「の、ノーヴェル? はぁ!? 平和賞!? あのジジイが!?」


 嘘でしょ! あのジジイは害悪しか振りまいてないじゃん! 国際指名手配の間違いじゃないの!?



(ン兆億の慈善活動寄付と、科学の超発展と世界平和に最も貢献された偉人聖人として登録されてるわ。正直、ノーヴェル賞なんて今更じゃないかってアタシなんかは思うけどね。もっと早く評価されてておかしくないシィー)



「はぁ!? ふざけんな!! 人様に迷惑ばかりかけて、マズい豆腐料理ばっか作るジジイのどこが偉人聖人よ! キィー!」

「ナミ?! なんだ? どうしたんだ!?」

「あ!」


 い、いけない! あまりにヒドい話につい声に出してしまった!

 なんかマーマレードがこっち見て、「春じゃからな…」だなんて言ってるんですけど! 失礼にもほどがあんだろ! お前の行動の方が非常識だわ!



(なんでもいいけど、そんなわけだから通信切るわよ)

(ちょ、ちょちょっと待って! こうなったらいいわ! あなたならヤオキチとゴンサレス…場合によってはジョジーでもいいわ! あいつらと連絡とれんでしょ?)

(は? そんなこと…)

(緊急事態なの! 還暦型決戦兵器に襲われてんの!! だから、あいつらの力が必要なの! ドゥーユーアンダスタン!?)

(還暦型決戦兵器が? …そんなわけないわ。リストにないもの)

(…へ?)

(だから、ナミ・ヤマオカが還暦型決戦兵器と遭遇する予定だなんて無いって言ってんのよ)



 え? どういうこと?



(えーっと、じゃあ、あそこでジャイアントスゥイングで肥ったスタッフをブン回して、周りの通行人をなぎ倒してるジジイはなんだってのよ?)

(知らないわよ。なんかの間違いなんじゃない?)



 え? 事故? 事故なのこれ? すべてジジイの筋書き通りじゃないの???



(なんかよく解かんないけれど、アタシの通信じゃ博士の兵器にアクセスする方法はないわ。自分で何とかしてちょうだい。それでは通信切るわよ)

(ままま、待ってぇ!)



 ブチッ! 無情にも通信は切られる…。


「どうした? ナミ。顔色が悪いようだが…」

「せ、セイカ様。ど、どうしましょ〜」

「そうだな。家に戻ればゴンサレスは…いや、そんな時間はないか」

「後はユウキちゃんに電話して、ジョジーと一緒なのを祈るしか…」

 

 あれ? でも何で戦うこと前提に考えているのよ。戦えないなら逃げるしかなくね?


「セイカ様! 逃げましょう!」

「倒されてる人々を見捨ててか?」

「ギクッ! い、いや、見捨ててというか…これは戦略的な撤退というかなんといいますか…私たちは一般市民なわけで、あんなサイボーグと生身で戦えるわけが…何と言いますか、その…」

「…そうだな。ナミ。お前の意見は正しいのかも知れん。

 だが、私はそれはできない。幕末より愛国の徒として名を刻んできた歴史ある越宮家に生まれた者がここで逃げ出すなど! 公明正大を掲げてきた祖先たちに顔向けできん! 強きを挫き弱きを助けることこそが、越宮の名に恥じぬ私の在り方!」


 太陽をバックに力強く語られるセイカ様。お、お美しすぎる! ああ、なんて素敵すぎるのかしら! 惚れてしまいそう!


「で、でも…」

「止めてくれるな、ナミ」

「待ちな!」


 は? なんか後ろから声がして…

 ジャゴー! ジャゴー! なんて、アスファルトの上を無理やり車輪を転がしたような音がする。


「ここは俺っちに任せときな!」


 なんかバンダナつけた老人が歯をキラリとさせて私たちの横を通り過ぎたんですけど…


「どいた! どいた! “いぶし銀吟(ギンギン)ボーイズ”のリーダー、“いぶし銀”のマロボシとは俺っちのことだぜ!!」



 ……ん? あ。…次回につづーーくぅ!!!

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