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四狂目 『ヘッド・キャノン・オヤジ』

 突如、教室に現れた老人!

 それは私の夢の中の登場人物だったと思われた、自称カリスマ理容師!

 あのアインシュタインみたいな、白木のおじいちゃんだった!


「なんでやねーん!」

 

 と、自分の思考に声をだしてツッコミを入れる私!


「なんじゃーい!? どこのクソジジイじゃーい!?」


 ゴンザレスが鼻息荒く怒り狂う。

 驚く以前に、怒り狂うってのがなんだかスゴイ…。


「ウヒヒ。ワシの名前は、白木しらき 卓郎たくろう! 人はワシのことを隠れた"天災"科学者と呼ぶ!!」


 天才? え? いや、なんかニュアンスが違ったような…。


 白木のおじいちゃんは、前の理容師の格好ではなく、なぜだか白衣姿だ。

 それを着ていると、理科の先生のようにも見える。眼鏡を外せば本当にアインシュタインだ。


「ハァーン!? なに、寝ぼけたこと言ってるんだ、クソジジイ!! その老いぼれたジジイが、聖なる我学舎に何の用じゃーい!? 葬儀屋ならここじゃねぇべ!! 葬儀屋は三軒隣のヤブヤ食堂の裏じゃーい!!」


 年配者に向かって、かなり失礼なことを言うゴンザレス。

 ってか、その聖なる学舎でセクハラを働くのはいいのか、と問いたい。問いつめたい!!


「指導という名のいきすぎた凶行三昧! あ、お天道が見逃しても、このワシは見逃すわけには…あ、いかぁねえぇぇーーッ!」


 なぜだか歌舞伎役者のように見栄みえをきりながら、白木のおじいちゃんはたたらを踏む。


「子供は世界の宝! やがて必要とされるワシの実験材料…もとい、必要人財! 故に、こんなところでお前みたいな邪悪な教師にペロペロされるわけにはいっかーん! 故に、ワシが貴様を成敗しに来たわけじゃ!」


 なんだか怪しいことを言っていたようだけれども、どうにも私たちを助けにきてくれたらしい。

 感謝…はできないけれども、とりあえず今すぐの危機は脱したみたい。

 

 ゴンザレスは怒りに震え、頭から煙がモウモウと立っている!

 ってか、え? 比喩ひゆじゃなくて…本当に煙が出てるんですけど、なにこれ?


「グワハハハ! 笑わせる! 貴様みたいな枯木のような死に損ないが、この俺を成敗だと!」


 竹刀をブンッと振り回すゴンザレス!


 やばい! やばいよー!

 白木のおじいちゃんより鬼瓦の方が二倍は体格がいい。

 年齢差もそうだし、絶対に勝てるわけないじゃーん。

 象に挑む蟻、もしくは猪○に挑む○村…のような状況だ!


「うーん? 誰がワシが戦うと言った? 戦うのは…こいつじゃ!!」


 白木のおじいちゃんが、懐から取り出したボタンを「あ、ポチッとな」なんてセリフをわざわざ言いながら押す。


 突如、聞こえるモーターが唸る駆動音! 教室中の窓がビビビッと揺れた!

  

 なにごと!?

 そう思った瞬間、外の窓から何かが飛び込んで、教壇をグシャリと踏みつぶす!!


 教壇を踏みつぶした者は、片膝を付いた姿勢でいた。

 辺りに煙がたち、ジジジッという青白い電流が迸る!

 

 なんだか未来からきた殺人ロボットのような感じだ!

 全裸じゃないことを祈る!


 だが、ある意味…私の祈りは聞き届けられなかったのである。


 ゆっくり立ち上がる、その異様な存在。


 頭に光り輝く巨大な大筒、解りやすく言えば、バズーカ砲を付けたメタボリック気味な中年男性。

 戦車のような装甲版を身にまとい、完全武装している…というか、そういうコスプレにしか見えない!


「な、なんだ。こいつは…」


 さすがのゴンザレスも、今回の登場には驚いたようだ。


「さ、サイボーグ?」


 いやいや。セイカ様。そ

 んなわけないって。これ、単なるオッサンのコスプレだって!


「その通り! 還暦型決戦兵器かんれきがたけっせんへいき、コードネーム『S-001』! ワシの自信! ワシの右腕! ワシの愛人! そして、ワシの最高傑作!! その名も通称"ヤオキチ号"じゃ!」 


 パンパカパーン!


 そんなファンファーレが鳴ってもおかしくないハイテンションな白木のおじいちゃん。

 よく見たら、手で握ってプァンと鳴るラッパを持って自分で鳴らしていた。


「さあ! 教育おしおきの時間じゃ!」

「グワハハハ! 笑わせてくれる!! そんな変態に何ができるというのじゃーい! だが、ワシより変態がこの世に存在することは許せーん!」


 そんなことを言いつつ、ゴンザレスが先制攻撃をしかける!!

 持っている竹刀を振り回し、えっと…確か、ヤオキチ号に叩きかかる!!


「…"自動防衛機能作動"!」


 あわや竹刀が当たるかと思った瞬間、ボシュッとヤオキチ号の肘が鳴る!!

 

 ズガンッ!!


 うあー。いい音。そして、痛そうな顔。

 ゴンザレスの顔面に、猛スピードのヤオキチ号のストレートが当たった音だった!!


「うんももすッ!!」


 変な悲鳴をあげ、ぶっ飛んでいくゴンザレス!!


「鬼瓦先生!」


 セイカ様が悲鳴をあげる。


 それもそのはず。ゴンザレスは…ぶっ飛び"過ぎ"ていたから。

 窓を叩き割り、ベランダを壊し……青い空の向こうへ……。まるでスローモーションのようだった。


 そして、ヒューン。私たちの視界から消えていなくなった。

 

 テレッテ、テレレレレ……という、某有名アクションゲーム、排水管工の赤帽子が落ちたような効果音はしない。


 えっーーと、ここ何階だっけ?

 少なくとも落ちて無事で済む高さじゃないよね?


 クラスを包む気まずい静寂………。


「ひ、人殺し!!」


 クラスメイトの女子の一人が叫んだ! 


「…んー、えー。あー。 なんじゃかのぉ。歳をとると耳の聞こえが悪くていかんわー」


 嘘つけ! さっきまで一緒になってキョトンとしてたじゃない!


 知らん顔を決め込むつもりだったようだけれど、皆の冷たい視線に耐えきれなくなり、白木のおじいたんはコホンと咳払いをする。


「まあ、っちまったもんはしゃあないのぉ! いいか。お前はちゃーんと罪を償って出てくるんじゃぞ。ワシ待ってる! んで…ワシはこの件とは無関係じゃ! アユーアーオケ?」

「YES! マイマスター!!」


 野太い機械音で即答するヤオキチ号…ってか、YESじゃまずいでしょ!


 白木のおじい…いや、このクソジジイ、最悪だわ! 全部の罪をなすりつける気なの!?


「ブワハハハハ!!」


 いきなり窓の外から笑い声が響く。

 この特徴的な笑い方と声…聞き間違えるわけがない、ゴンザレスだ!!


 皆が驚いて一斉に窓の外を見やる!!!!


 そこには信じられない光景が広がっていた。


 二本の竹刀を持って、ヘリコプターのように旋回しているゴンザレス。

 破れた尻から、ジェット噴射のような炎を噴出して飛ぶゴンザレス。

 なんだか壊れたように大笑いしているゴンザレス。

 

 殴られた顔面は皮膚がめくれ、その下から…メタリックな色合いの骨が見えている!


 えっと…なにこれ?

 私の理解を遙かに越えすぎていて、開いた口が塞がらない…。


「さ、サイボーグ?」


 いやいや。セイカ様。

 もう止めましょうよ。そんなサイボーグだなんて非科学的な…


「ブワハハハ! よくぞ、俺様が逃げ出した還暦型決戦兵器、つまりはサイボーグだと見破ったものよ!! おおかた、この俺様を回収しに来おった刺客だな!?」


 え? えええッ!?

 鬼瓦先生…いや、ゴンザレス…まさか、本当に?


 私はハッと白木のおじいちゃんを見やる。


 あれ? 白木のおじいちゃんも「へ?」って顔をしている。

 え? どういうこと?


「そ、そうじゃ! 貴様がサイボーグだなんてワシには三年前から解っておったわーい!」

 

 嘘つけ!

 絶対、今初めて聞いたんでしょ!! 

 

「ならば、容赦はすまい!! 喰らえ! 我が"ダブル竹刀"の威力を!!」


 ボウン!


 ゴンザレスの尻がさらに火を噴いたかと思いきや、教室に突っ込んでくる!!!!


「"自動防衛機…"!?!?」


 ヤオキチ号のパンチが間に合わなかった!!

 二本の竹刀でバキバキッと殴られる!!!!!

 うあー、痛そう…。ボッコボコじゃーん。


「ブワハハハハ! どうだ、俺様の強さは!! この竹刀は普通の竹刀ではない!!! 一つで重さ100kgもあるのだ!! 竹に似せているが、実は超鋼鉄製の特注品なのよぉ!!!」


 いやいや。

 それ、もう竹刀じゃないですって! ただの鉄棒ですって!!

 そんなの、ベル○ルクの主人公だって持てないですって!!

 

 でも、100kgもある竹刀に殴られ、ヤオキチ号は辛そう!!! ってか、普通なら死ぬでしょ!!


「マズイ! このままでは!! 白木のおじいさま!!」


 セイカ様が呼びかけるけど、白木のおじいちゃんは知らん顔で耳をかっぽじっている…。

 このクソジジイ。セイカ様の呼びかけを無視するとは良い度胸だな!!


「お、おじい…さま?」

「…白木博士」

「え?」

「…白木博士」

「……白木はか…せ?」

「ほい! なんじゃ、綺麗なねーちゃん!」


 揉み手をしながら、ニコニコとクソジジイがセイカ様に近づいていく。

 博士って呼ばれたいなら、最初からそう言えって話よ!!


「あの、ヤオキチ号さん…でしたか。あのままでは破壊されてしまうのではないですか?」

「ふむん。まあ、耐久力は"300オヤジー"はあるから大丈夫だと思うがのぉ」

 

 なんだ。300オヤジーって…どういう単位なのか全く解らん。


「し、しかし。白木博士。防戦一方では…いずれ負けてしまいます」

「そうさのぉ…。手が無いわけじゃないんじゃが」


 そう言って、クソジジイは…私を見る。

 え? なんで、私を見るの?


「…ヤオキチ号は、"有人"式の兵器なんじゃ。人が乗ってこそ真価を発揮できるんじゃよぉー」


 人が乗る? あれに?

 

 セイカ様は難しい顔で、ヤオキチ号を見やる。

 そして、美しい顔を決意に固め、コクリと頷いてクソジジイの方を向いた。


「私が…」

「ダメー! 絶対ダメー!」


 クソジジイ。セイカ様にアッカンベーをするとは…。

 ゆるせーん!! クソジジイ!!


「ダメ? ど、どうしてですか!?」

「ワシの還暦型決戦兵器にゃあ、"適正"がある者しか乗せられないの!!」

「て、適正? それは…いったい?」


 ん? あれ? クソジジイが私をまた見てる。


「お嬢ちゃん。アンタじゃ!!アンタこそ、あのヤオキチ号のパイロットなんじゃよぉーッ!」

「ええーーー!!!?」


 とんでもない爆弾発言をして、私を指さすクソジジイこと白木博士。


 なんで私が? どうしてセリフもなかった私が?


 そんな疑問を抱きつつ、次回に進む!!

 ってか、やめてー!!!

☆還暦型決戦兵器カタログその(1)


・品番:『S-001』


・正式名称:『遠距離主戦万能兵器ヤオキチ号』


・生体名:八百屋やおや 八百吉やおきち 60歳


・生体情報:身長160㎝ 体重80kg


・主兵装:頭頂装着45口径キャノン砲一門


・副兵装:アイアンパンチ、丸めた新聞紙など多数


・移動方式:脚部ジェット噴射式


・攻撃力:600オヤジー 


・防御力:300オヤジー


・機動力:150オヤジー


 白木卓郎博士が造りだした最強の還暦型決戦兵器。

 生体が持つ丈夫な太い首により、強力な頭部大砲の反動にも耐えられる。

 主に遠距離専用だが、多種に渡る副兵装により近距離戦もこなす万能型。

 重装備のため、機動能力に難があり、出力の高いジェットを備えている。

 ちなみに射撃によるダメージを軽減するために、頭蓋はほぼ空洞であり、頭脳とそれをサポートするメインコンピューターはふくよかな腹部にある。


※上記に出ているオヤジー単位は、元スナック店主である山田太郎やまだたろう氏(60歳)が、チューハイを二杯呑んだ時の状態による能力値を1オヤジーとした、白木方式による算出値を準拠にしているものである。

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