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二十三狂目 『変愛の魚屋ブルース<終章>』

 ― ラヴについて ―



 君は愛について知っているかい?



 オイラが知っているのは海の砂粒よりもちっぽけだけど、人魚の涙のように透き通ったブルーウォーター。



 それを一瞬というトキメキの中に散りばめて、小瓶に詰めて送り届けよう。



 それが君に届くかは、太陽と海だけが知っていることさ☆




 愛…それは地下にたぎるマグマのような情熱。



 愛…それは人知れず積もりゆく決して溶けない粉雪。


 

 愛…それはオイラを勝手に動かす1,800CCのモンスターエンジン。



 思えば想うほど恋しくて、いてもたってもいられずに見えない虹に向かって走って行く。



 オイラだけがこんなに真剣(マジ)なのに、それでも君は氷の彫像アートのような顔でブフンっと鼻を鳴らすのさ。


 

 HEY! もっとオイラだけを見なよ!



 HEY! もっと真夏の太陽のようにたぎっていこーぜッ!!




☆☆☆




「なにこれ。ポエムそれともソングなわけ? 語呂わるいし…キモすぎ」


 地面に落ちていた紙切れを拾った女子高生は、身震いしてそれを放り捨てて校舎へと向かう。

 その後ろを歩いていたユウキは、その一部始終を見た後、危うく風に飛ばされそうになった紙切れをハシッと持ち前の運動神経を活かして取った。


「無くした人、困ってるんじゃないかな…」


 さっきの女子高生の台詞からして何かが書かれているのは解っていた。人の書いた物を勝手に読んではいけないと良心が言うのだが、落とし主を特定するという大義名分がユウキの好奇心を後押しした。

 今時、文豪でも使わないであろう薄い便箋だ。書いた字をみる限り書き手は男性だろう。力強く、ぶっきらぼうながらも、なぜか書き手の繊細さが感じられる。所々、お世辞にも決して巧いとは言い難いイラストが付け加えられている。本人の心証を余すとこなくぶちまけているのだというのは伝わってくるが、遺跡の壁画から飛び出してきたような絵だ。端的に言うと落書きである。


「…この人、きっと"恋"してるんだ」


 筆跡の末尾には涙の痕跡。

 一字一字を全力を通して書き、一行の終わりには読み返して涙を流してたであろう、書き手の熱すぎる想いがユウキにも何となしに伝わってきた。


「きっと素敵な人だろうな……。会ってみたい」


 手紙を折り目にそって優しくたたむと、それを胸に当ててユウキはホウッと息を吐く。


 さて、本来であれば、「なにバカなこと言うとんねーん!」とツッコミを入れる場面のはずであるが、残念ながら生憎としてこの場にはユウキただ一人だけしかいなかった。

 であるが故、ツッコミは読者たる皆様にお願いする他ないのだろうか…




☆☆☆




 と、 同時刻、山中宅にて……

 

 ピキーン!


 第六感で何かを感じ取った白木博士が食っていた納豆を鼻から吹き出す。


「きったな!」

「そんなことはどうでもいいんじゃ!」

「よくないでしょ!」

「うるせー! さっさと学校行け! テメェのキンキン声のせいで野球が聞こえねぇぞ! バカヤロー!」

 

 行儀悪く、腹をだして寝そべってテレビを見ていたヤオキチが怒鳴る。


「だから、さっき言ったでしょ! ウチの学校は今日は第二期創立記念日で…」

「やかましゃぁ! そんな話はどうでもええ!」


 唾液とともに、白米と納豆をナミとヤオキチの顔に吐きかけ、白木博士が怒り狂う。


「ギャー! なにすんのよぉ! きったなぁ!」

「とりあえずじゃ! ナミよ。"なんでやねーん!"とツッコミを入れるのじゃ!」

「はぁ!? なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ!」

「いいからつべこべ言わずはよせんかーい!」

「だからなんでよ!?」

「あいかわらず、トチ狂ったジジイだぜ!」

「カーッ! 理由なんてどうでもいいんじゃ! 未来のためじゃ! 未来のためにひと肌脱ぐ覚悟もないんかぁ!」


 白木博士はナミに掴みかかり、歯の隙間からなおも納豆を吹きかける!


「汚すぎる! 臭い!! やめてー!!」

「ならばやれ! いますぐ!」

「わかったわよ! やればいいんでしょ! やれば! …えーっと、な、なんでやねーん」


 アゴを少しシャクらせ、台詞を棒読みをするナミはひどかった。 


「なんだそりゃ! 馬鹿にしてんのかぁッ!」

「なんでアンタが怒ってんのよぉ!?」

「気持ちじゃ! 気持ちがこもっておらーん! ワンモア!」

「なによ! 気持ちなんてこめろなんて言ってないし……。はいはい。じゃあ、なんでやねーん!」

「勢いがなーい!」

「色気もねぇぞ! バカヤロー!」

「なんで朝っぱらから、こんなこと…」

「いいからもう一度じゃぁ!!」


 山中家のいつもの朝はまだまだ続く……




☆☆☆




 ということで、無事にツッコミが入ったことで話を再開しよう。


 ユウキは拾った便箋をそっと胸ポケットにしまう。

 残念ながら、持ち主の名前も手がかりとなる情報もなかった。しかし、学院の前に落ちていたことから、恐らくは学生か学院の関係者に違いないだろう。もし持ち続けていれば、いずれはこの持ち主に出会えるような気がしたのだ。


 しかして、その願いは程なくして叶うこととなる……。



 一日の授業を終え、玄関で靴を履き替えていると、例のメガネ三人組がどこからともなく現れる。


「ユウキ氏。今日も真理の探究の時間ですぞ♪」


 胸の前でハートを作り、羽鳥が気持ち悪い…いや、本当にエグくて気持ち悪い顔で笑う。


「いや、今日は…」


 ユウキは自分の胸元を見やって困った顔をする。

 今日の放課後は、この詩を書いた人物を捜してみたいと考えていたのだ。


「まあ、いいですからいいですから♪ 拙者らに任せておけば無問題!」


 三人は素早くユウキの周囲を囲む。三猿、鴉犬がユウキの手を掴んで逃げられないようにした。


「今日は天気もいいですしなぁ! 夕日をバックにしての写生とシャレ込みましょうぞ!!」


「で、でも!」


 問答無用と言わんばかりに、強引な三人に引きずられて行く。


 ポロローン♪ ポロリーン♪


 人工池の方でギターを鳴らす音が聞こえ、四人はハッとして振り返る。


「青い空~♪ 白い雲~♪ オイラぁ、渡り~鳥さぁ~♪」


 人工池の縁に座り、長いリーゼントの時代錯誤の男が野太い声で歌う姿があった。音程の外れた歌は決して上手いとは言えない。


「な、何者だ!?」


 羽鳥が震える指でさす。彼は人を指でさしてはいけないと教わらなかったのだ。


「オイラが何者かだって? HA・HA・HA! そんなのは過去のことは忘れたゼ☆」


 そんな馬鹿な話があってたまるかと四人は思ったが、目の前の男の異様さに圧倒されてそれを口には出せなかった。

 小山のように盛り上がった両肩に、全員の眼が止まっていた。そうショルダーだけが、どんな厚手の肩パッドを入れているのかと問いただしたくなぐるらいに盛り上がっていたのだ!


「それはそうと、一人のBOYをよってたかって校舎裏に連れていくとは、こいつはいわゆるイジメってやつかい☆?」


 バチンとウインクしてみせるが、元から糸のように細い目なので誰にも気づかれることはなかった。


「部長。も、もしやヤツが例の不審者では?」

「そ、そうでふぅ~。と、特徴が一致するでふぅ~!」


 羽鳥は眼鏡をクイッとかけ直し、そして再びビシッと指さす。彼は人を指でさしてはいけないと教わらなかったのだ。


「学徒と学徒の清く正しい交際を邪魔する不届き者めが! ここは聖なる学び舎! 部外者は即刻でていってもらうでありますぞ! でなければ、警察を呼ぶのも致し方ありますまい!」


 堂々とした羽鳥の姿に、三猿と鴉犬がパチパチと大袈裟に拍手する。


「あ、あの…」

「学びか。そうさ、オイラもここに今一度学びに来たのサ☆」


 ユウキの言葉を遮り、リーゼントが立ち上がって縁に足をかけて空を見やる。もし後ろにあるのが海だったら完璧な構図だ。

 これまた時代錯誤のラッパ式に裾が広がったパンタロンに、今時はまず見ない大きな星形をしたバックルだ。


「今一度…ですと?」

「時代は変わっても、あの場所だけは変わっちゃいねぇゼ。ほら、見てみな。あの時計塔の下を…」


 リーゼントが眩しそうに片手でひさしを作り、校舎の端にある三角屋根を指さす。

 その時にちょうど良いタイミングでチャイムが鳴り響いた。半円の隙間から、大きなベルが左右に揺れているのが見える。


「いつも放課後になるとよ、あの下でオイラと"ヤツ"は毎日のように殴り合ったもんさ。

 …ヘッ、互い本気マジでやり合うもんだから、勝負はいつまでもつかねぇんだ。んで、今みたいにチャイムが鳴る頃には同時に倒れちまうのサ。

 んでもってよ、あの下に二人でボロボロのまんま横たわって、鐘の響く音を聞きながら、互いの強さを健闘しあったもんだゼ☆」


 懐かしそうに微笑むと、リーゼントが鼻の下を擦る。


「え? いや、あの時計塔って…確か、去年にできたばかりで…」

「去年? そんな昔のことは忘れたゼ☆」

「いやいや、アンタ、さっきから何言って…」


  羽鳥の話をまるで聞かず、リーゼントはクルッとターンを決めてみせる。


「オイラの名かい? いいぜ、波間から飛び出したチンアナゴ、"浅瀬のジョジー"たぁオイラのことさ」


 誰も聞いてもいないのに、親指を立てて歯を光らせて名乗るリーゼントことジョジーに、羽鳥たちは口をパクパクとさせた。その姿はまるで餌をねだる鯉のようであり、彼らはこの状況を理解するソロモン王もビックリの知恵を何よりも必要としていた。


「ムッキー!! このようなかのような変態不審者に邪魔される言われはないのですぞ!! プンスカプンプンプン!!」

「ぶ、部長! 落ち着いて! か、顔が70年代の漫画チックに!!」


 足をバタバタとさせ、頭から湯気を出して怒り狂う羽鳥。これで上空に向かって拳銃を撃っていたら完璧であった。

 そう。表向き、漫画会の巨匠を否定していても、その影響はどうやっても受けざるを得ないのだ。


「オイラもイジメだなんてみっともねぇ真似は見過ごせないねぇ☆ 男の闘いってのは、タイマンステゴロって相場が決まっているのサ!」


 どこから取り出した、飛び出しナイフ式のコームで、リーゼントを気障キザにセットする。いちいち台詞を言うときにポーズを決めなければ気がすまないらしい。


「あの、さっきから私のこと男の子って…」

 

 ユウキがおずおずとしながら発言しようとするのに、ジョジーは一指し指を左右に振って止める。


「いけねぇナ! BOYの一人称は昔から"僕"って決まってるゼ☆ "私"だなんてのは、気取った書生が使うもんだ★ あーいう、牛乳瓶の底を眼ん玉につけた頭デッカチのサ!」

「ぼ、ボク…ですか」

「ああ。そいつのが自分らしい! 自分らしく生きれねぇヤツは、みんな腐った鯛みたいになっちまうゼ!」

「く、クゥウーーッ! 黙って聞いていれば、我々を牛乳瓶だの、頭デッカチだの、腐った鯛だの!! 許せぬ!!」


 地団太を踏み、三人の眼鏡がギラリと光る!


「我々は芸術の完遂のためには手段を選ばない!! さあ、三猿、鴉犬! ユウキ氏との輝かしい子午線を迎えるために! やっておしまい!!」


 最後は妙に甲高い素っ頓狂な声で、羽鳥はジョジーを指差す!


御意ラジャー! 準備完了セットアップ! 性欲限界突破システム・オールグリーン!!」

「むふぅぅ!! 欲望100倍! 鴉犬、いっきまーふぅッ!」


 二人が仕掛けるのを見て、羽鳥はニヤリと不適に笑う。

 幼稚園時代より、女子のスカートをめくるためだけに鍛え上げた反復横とび。その眼鏡の輪郭しか残らぬほどの速度から、スカートをめくったは良いけども、あまりの速さに本人はパンツの色を視認することすらできない"高機動型(ハヤトチリ)"との異名を持つのが三猿。

 かたや、その恵まれた体型から、小学生の頃より相撲クラブや柔道クラブに無理やり入れられ、いつかは女子に寝技を決めるんだ…との妄想を抱きつつ、諸先輩の愛のシゴキを受け、いかなる状況もマゾ気を持ってプラスに脳内変換できるようになった"肉弾防壁(モットツヨメガイイノ)"と恐れられる鴉犬。


「は、速い!!」


 その動きは陸上部のユウキから見ても素早いものだった!

 薄汚い欲望が彼らの力を数倍にも高めているのである!


「フッ☆」


 ジョジーはニヤリと笑ったかと思うと、おもむろに両手を突き出した。


「そんなカメのような動きで二人を止めることなどできはせぬわ! なぜなら、我らは運動音痴とはいえ花の10代! この若々しい動きに翻弄されるがいい!」


「速ければいいってもんじゃないゼ☆」


 グワッシッ! グワッシッ!


「な、なんだとッ!?」

「わ、我らのコンビネーションを見切ったというのでふぅーかッ!?」


 二人の頭部をわしづかみにして止める。


「どっから攻撃からしてくるか解れば止めるのに苦労などしないゼ☆」

「は、離せ!」


 二人が暴れると、ジョジーはすんなりと手を離す。慌てて二人は距離を取った。


「クッ! 眼鏡のフレームが危うく曲がるところだったぞ!」

「敵の実力は確かでふぅ! 部長! 次の指示をぉ~!」

「むむむ! フォーメションBですぞぉ!!」


 羽鳥の指示で、三猿と鴉犬がジョジーの回りをグルグルと駆け回る!


「ヘッ! 次はなんだい? まるでメリーゴーランドだゼ☆」

「鴉犬! 『変態(ストーカー)捕縛(ホールド)』だ!」

「オウでふぅ!」


 鴉犬が、ジョジーの後ろから突っ込む!


「フフフ。例え告白して振られようとも、体重100kgを越す体重で、女子を物理的に拘束する鴉犬の必殺技が炸裂しましたな!」

「OH! いいゼ! なかなかウェイトある踏み込みだナ☆」


 巨漢の全体重をかけた一撃に、さすがのジョジーも腰を落として踏ん張った。


「あ、危ない!」

「ハハハ! これで身動きはとれないだろう! すべて計画(プラン)通り!!」


 三猿は懐から何かを取り出して口に含む。


「カラーッ!!」


 そして一気に、赤い液体を噴出した!!


「ムゥ!? コイツはタバスコか!?」


「ハーッハッハ!! 見たか! 痴漢撃退スプレーを幾度となく浴びせられかけ、浴びさせられる前にこっちからかけてやれと結論付けた三猿の必勝パターンですぞ!」


 羽鳥が拳を震わせて意気込む!


「そんな手はお見通しだゼ!」

「なにぃ!?」


 ジョジーはタバスコを浴びせかけられてもビクともしない。陽光に反射するのは歯だけではない。いつの間にかサングラスをかけていたのだ! しかもデザインがデカクて四角い古臭い物だった!


「こ、こんな手で俺の『飛沫(セクハラ)()薔薇(スプレー)』を破る(クリア)とは…!」

「こんなものが必殺技だって? 笑わせてくれるゼ☆ 随分と、今の若人は軟弱になったもんだなぁ! 必殺技というのはこういうのを言うんだゼッ!!」


 鴉犬のホールドを弾き、逆にジョジーがその腰のベルトを掴む!


「グゥ!? ど…ドゥフフフッ! しかーし、拙者の捕縛を逃れようと、体重100kgはあるこの身体を持ち上げることは不可能でふぅ!!」

「そいつはどうかなッ!? うおりゃあッ☆」

「な、なんでふぅと!?」


 ジョジーが両腕に力を入れる。袖がパンパンに膨れ上がり、その筋肉がピクピクと動くのをユウキは間近で眼の当たりにした。

 なんと、鴉犬の身体が浮き上がり、まるで重量挙げのように高く持ち上げられたのだ!!


「も、もちつけ、我!!」

「ま、まさか!!」

 

 三猿が青い顔をして尻餅をつく。


「どりゃああッ!!」


 ズドォン!

 放り投げられた鴉犬が、三猿の上に容赦なく落とされた!


「うぎゃんももす!」

「どふぅんももす!」


 潰れた二人はピクピクと痙攣し、羽鳥の眼鏡がズリ落ちる。


「せ、拙者は夢でも見ているのか…。まさかあの二人がこんな不審者一人に遅れを取るなどとは」

「さあ、残すはチェメェだけだゼ☆」

「ぐぬぬぬうッ!!」

「さあ、1,800CCのエンジンも温まってきた頃合いだゼ! ラヴのお仕置きの時間だ!」

「え?」


 ユウキの眼が驚きに開かれる。そして胸に入れた便箋に眼をやった。


「もしかして、この詩を書いたのは…」


 黒光りする顔を見て、ユウキは胸が高鳴るのを感じる。

 これほどまでに情熱的で自己主張の激しい男性を見るのは初めてだった。もしかしたらこの人ならば恋の秘密を知っているのではないか…何をどうしたらそうなるのかは常人は露知らずとも、ユウキの持つ特有の感性が彼女にそう告げていたのだ。


「三猿! 鴉犬! なにをいつまでも寝ているでありますか!!」


 羽鳥の怒鳴り声に、二人はヨロヨロと立ち上がる。


「拙者らが目指す理想郷は目の前にありますぞ!! それをこんな志半ばで果てるつもりかぁ!? 果てるならば、大きな胸の中と誓い合ったあの日のことを忘れたのかぁ!?」


 三猿、鴉犬の眼がカッと輝き、そしてユウキに視線が注がれる。もちろん、注視しているのは欲望の双丘である!


「おお、帰るべき居場所(プレイス)…あれこそが俺らの理想郷(エルドラド)!」

「ふぅふぅ! し、辛抱たまらんでふぅ!」


 戦意を取り戻した二人を見て、羽鳥は大きく頷く。


「こうなれば、もはや全力を尽くす他ないのではないだろうか!」


 羽鳥の眼鏡がキラリと光る。顎に梅干シワを寄せた厳しい表情だ。


「ま、まさか、部長!?」

「あれをやるというのでふか!?」


 激しく狼狽する二人に、羽鳥は遠い目をして頷く。


「来るべき時のために力を温存しておきたい気持ちは痛いほどよく解る。しかーし、目の前の障害を露払いできなくてなぁにがマン研部だ!! 我々の女体の神秘を紐解くという崇高な野望は非常に気高い! このようなところで理不尽に夢潰ついやされなるものか! 断じてそんなことは認めぬ!!」

「フッ☆ 吼えるか…。漢ならそうでなくちゃな。これで少しは楽しめそうだゼ!」


 三猿、羽鳥、鴉犬の順番で直列に並ぶ。


「むぅ!?」

「見ろ! 我らの勇姿を!! 合体!!」


 羽鳥の合図で、三猿と鴉犬が屈む! そして三猿が両腕を後方に回し、それを鴉犬が掴む!

 そしてその組み合わされた腕の上に羽鳥が乗り、土台となった二人が持ち上げる!!


「これって…騎馬戦の時にやる…」


 ユウキは運動会の光景を思い起こしていた。これで羽鳥の頭に鉢巻きでも巻かれていたら完璧である。


「これこそ我らが最終形態!! 戦隊物の常識!! 合体すれば強くなる法則でありますぞ!!」


 目線が高くなったことで、羽鳥は勝ち誇った笑いをあげる。

 しかし、周囲にいた者たちはユウキも含めてこう思った。


 "こんなことで強くなるわけないよね"…と。


 しかし、この馬鹿トリオの得意気な顔を前に、あえてツッコミを入れるものは皆無であったのであーる!


「お、おおお!」


 ジョジーは顔面蒼白となって震える。


「ど、どうしたんですか?」


 ユウキが声をかけるが、それすら聞こえていないようでジョジーは歯をガチガチと鳴らした。


「ホーリーシットだゼ…。まさか、オイラの弱点を的確に突いてきやがるとは…」

「弱点…」


 何がどうなってこれが弱点になりうるのか、ユウキには皆目検討もつかない。


「ムフフ! どうやら我らの結束力の高さに恐れをなしたようですな! さあ、降参するならば今のウチですぞ!!」


 羽鳥がここぞとばかりにジョジーに近づいていく。


「ぐぬぅ…。あれはオイラがまだ10代だった若かりし頃の話だゼ★」


 ジョジーはいきなり語り出す。側にはユウキがいたが、その存在に気づいていなかったのでそれは勝手な独白であった。




☆☆☆




 唐突ではあるが、ジョジーの回想。



 真夏だというのに、長ランにボンタンという出で立ちの当時15歳のジョジー。意味もなく葉っぱを口にくわえ、この頃から1メートルを超すリーゼントは健在であった。


 ジョジーは放課後になると、必ず寄る場所があった。乗馬部の馬小屋である。

 ジョジーは馬が好きだった。だったら乗馬部に入ればいいじゃないかと思われるかも知れないが、指定された制服を着ず、鞍も着けずに馬に乗ろうとする根っからの無法者が、紳士たちの集いたる乗馬部に入れてもらえるわけがなかった。それ故、乗馬部が外で活動している際にこうやってこっそりと忍び込むのである。

 馬小屋には必ず一頭だけ馬がいた。見事なまでに雪のような毛並みの白馬である。見た目は優雅だが、これがとんでもない暴れ馬で、乗馬部の生徒でも乗りこなせず、こうやってただ馬小屋に置かれているのだ。


「ヨオ! スーザン。今日も来たゼ☆」


 入口の扉に身体をもたれさせかけ、人差指と中指を伸ばし合わせた手を、ピッと額に当ててから振り降ろすジョジー。リーゼントが激しく上下に揺れた。

 白馬スーザンは、水を飲むのをやめ、顔を上げて長い睫をパチパチと瞬く。


「今日もお利口にしていたかい? 寂しかっただろ? オイラもさ☆」


 馬相手だというのに、まるで恋人に話しかけるように、いちいち決めポーズをしながらジョジーは近づいていく。スーザンはジョニーのお気に入りだったのだ。


「乗馬部のヘナチョコは全然解ってねぇよな。オメェみたいな素晴らしい馬をこんなみすぼらしいとこに放置してんだもんな…」


 ジョジーが頭を撫でようとするが、スーザンはフイッと顔をそむけてしまう。ジョジーはわざとらしく肩をすくめてみせた。


「簡単には尻尾はふらねぇか☆ そういうことろもオイラと似ているところなのかもな♪ よーし、今日はとっておきの物をもってきたんだゼ!」


 ジョジーは懐に手を差し入れ、警戒するように左右を見回しつつ何かの包みを取り出す。


「ほら、遠慮しねぇで食ってくれ! なぁに、オイラにとっちゃ…」

「ヒヒーンッ!」

「っと、どうしたんだい!? スーザン!!」


 布を開いて差し出すも、スーザンは怒り狂って暴れる!

 そして、柵に思いっきり体当たりした! ジョジーはそれに驚いて、持っていた物を取り落として尻餅をつく。


「な、なんだい。今日は腹が減ってねぇって…ブッ!?」


 スーザンは前足で土を蹴り、ジョジーに遠慮なしにかける!


「わ、解った! 今日は機嫌が悪かったんだな。すまねぇ。そうとは知らずに、で、出直すよ!」


 ジョジーは慌ててその場から這って逃げ出したのだった……。




 あくる日。ジョジーはいつものように馬小屋に向かっていた。


「へへ☆ スーザン、オイラには解るぜ。オメェの気持ち。人を信じてぇけれど、信じれねぇんだよな。いつの日か、オイラがオメェの凍り付いた心を溶かしてやるぜ☆」


 ジョジーは夢想する。スーザンに乗り、大草原を駆けるその自身の姿を。


「ンン?」


 馬小屋に入り、いつもと違うことに気づく。そう。スーザンがいないのだ。


「そ、そんな…。スーザン、どこに…」


 あわてふためくジョジーの耳に、外から歓声にも似た声が聞こえる。


「まさか乗馬部のヤツらが!? ホーリーシット!!」


 ジョジーは外に向かってダッシュする!!


 そして、その信じ難い光景を目にするのであった!


「す、すごいぞ! あのスーザンを乗りこなしている!?」


 乗馬部顧問の教師が口をアワワと震わせている。生徒たちも固唾を呑んである光景に目を奪われていた。


「ヒッヒーン!!」


 ジョジーは我が耳を疑った。それはスーザンの鳴き声に間違いなかったが、それは歓喜に満ちていたからである。今までにそんな鳴き声を聞いたことはなかった。


「なんだ。馬に乗るなんて簡単だな」

「ちぇ、チェメェーは!」


 まるでスーザンを手足の如く走らせているのは、若かりし頃のヤオキチであった!

 スーザンは涎を巻き散らして興奮している。それはニンジンを括り付けられて走る馬…いや、これは例えではなく、ヤオキチは本当に釣り竿の先にニンジンを括り付けて走らせているのであーる!!


「ガッハッハッ! うちの野菜にかかれば、こんなクソ馬なんて赤子同然よぉ!」

「スーーーーザーーーーーーン!!!!」


 血の涙を流し、若きジョジーの叫びが木霊したのだった!!



 回想…おわり。




☆☆☆




「そ、そんな悲しい過去が…」

「それ以来、オイラは馬に関する物をみる度にスーザンのことを思い出しちまってよ☆」


 目頭を抑えて、ジョジーは肩を震わせる。


「長い! 話が長すぎて、三猿が限界を迎えそうだわ!!」


 羽鳥が怒り狂う。その言葉通り、一番小柄な三猿は青い顔をして小刻みに痙攣していた。というのも、律儀にジョジーの独白が終わるまで待っていたからである。


「とにかく! 不審者よ! 貴様の弱点がこの最終形態であるとは僥倖ぎょうこうであったわ! このまま成敗して、ユウキ殿を魔の手から救うのであーる!!」


 魔の手は三馬鹿の方であろうが、そんな自分のことは棚に上げてジョジーへと迫る!!


「しっかりしてください! こんな素晴らしい詩を書けるアナタが!」


 ユウキは便箋を広げて、ジョジーを鼓舞する。


「ソイツは…オイラが書いた…」

「そうだと思いました! 喋り方がだって同じなんだもん! 

 "ラヴ"を知っているアナタが負けるわけないです!

 だって、きっと…スーザンにはアナタの想いが届いていたはずだから!!」


 さっきの馬の話で感傷的になっているユウキは、眼の端に涙をためてそう叫んだ。

 そう。彼女の独特な感性は、ジョジーのわけのわからない青春話に大変強く共感を覚えたのであった。


「スーザンにオイラの想いが…」

「私はそう思います! 少しだけ恋のことが解った気がします! それは誰かを想う気持ちってことですよね!?」

「恋…恋か。そうだな。オイラも、スーザンへの恋を通して、本当の愛に目覚めたんだってこと忘れてたぜ☆」

 

 ジョジーが鼻の下を擦って立ち上がる。

 その表情にさっきまでの自信が戻っていた。ユウキはホッと安堵する。


「私もいつか…アナタみたいに恋や愛を知れるでしょうか?」

「当たり前だろ☆ なら、オイラと行ってみるかい? 青春のその先へ!?」

「え?」


 ユウキが小首を傾げた瞬間、ジョジーの身に変化が起きる。

 逞しい背中からパキンと何かがはずれ、背骨の部分が浮き上がって二股に分かれた。それはバイクのアメリカンハンドルである。

 そしてふくらはぎにステップが現れ、ジョジーは少し前屈みになった。


「こ、これって…」

「さあ、覚悟があるなら乗りな。向こうが馬で来るなら、こっちはモンスターバイクだゼ☆」

「でも、私に…」

「男なら誰でも夢を追い求める権利があるんだゼ☆ それに"私"じゃねぇーだろ!」

「ぼ、ボク…ボクに乗れるなら、行きます!!」


 ユウキは覚悟を決めて、ハンドルを握ってステップに足を乗せる!


「ユウキ殿ぉ! いけませぬぅ! それは変態へと通ずる道!! どうせチョメチョメするなら我々とぉ~!!」


 羽鳥たち三人が涙を流して叫びながら特攻する!


「見苦しいゼ☆ パイロートを得たオイラに、眼鏡ヤロウがいくら束になろうと勝てるわけがねぇゼ!!」


 ボボーンッ!!

 膨張した肩からダブルリボルバーが姿を現す!!


「な、なんですとー!? なんですかアレはー!??」

「さあ、ハンドルのレバーを思いっきり引きな☆」

「え? は、はい!!」


 言われるがまま、ユウキは力一杯にハンドルを引っ張る!!

 

「ヘイ!! ファアッ!!」


 ドォン! ドォン!! 両肩のリボルバーから弾が撃ち出される!!

 そして弾は途中で破裂し、周囲に黒く生臭い液体がまき散らされる!!


「『イカスミ・ブレッド』…腹の底まで真っ黒なテメェらにはおあつらえ向きだゼ☆」


 ビチャジョバァッ!!!


「うごぉおッ!」「ぬあああぁッ!」「うぎゃああッ!」


 三人は黒い液体を容赦なく浴び、その場にズッコケて、あえなく騎馬は崩れた!!


『あああー、眼鏡、眼鏡…』


 三人はイカスミの中で眼鏡を探す。 しかし、眼鏡を失ったわけではなく、レンズにスミが付着して見えなくなっていたのである!

 それはよく漫画にありがちなベタな展開であった!! さすがマン研部といったところであろう!


「ヘッ、ヴィクトリーだゼ☆」

「アナタはいったい…」


 ユウキの問いに、ジョジーはニヤリと笑って応える。


「そこで何をやっているー!!」

「おっと、いけねぇ☆」


 騒ぎを聞きつけた教師陣が向かって来るのを見て、ジョジーはチラリとユウキの顔を見やる。


「いいのかい?」

「は、はい!」


 ユウキは大きく頷いてみせた。ジョジーの言う青春の先を見てみたいという好奇心の方が強かったのだ。

 ジョジーは深く屈むと、思いっきり飛び上がる!! 


「きゃあ!」


 なんと校舎より高く飛び上がった!

 噴水前に群がる人々がまるでアリのように小さく見える。

 巻き起こる風、流れる雲、そして何よりも西に沈み行く太陽の眩しさにユウキは眼を輝かせる。

 今までの人生でこのような光景を見たのは初めてだったのだ。


「しっかりつかまってなよ、ベイベー☆」

「え?」


 ドシュウゥ!!


 ジョジーの両方のカカトからジェット噴射が放たれる!

 いきなりの衝撃にユウキは悲鳴を上げて身を伏せた。ジョジーの背中に身体を押しつけないと吹き飛ばされると思ったのだ。


「す、すごい! 空を…自由に飛べる日がくるだなんて…」


 超高速で空中を前進していたジョジーがピタッと止まる。


「あ。あれ? どうしたの?」


 小刻みに身体を震わせてジョジーが振り返る。その顔は驚愕と恐怖に凍てついていた。


「ちぇ、チェメェ…このオイラをたばかってやがったのかぁッ!?」

「え、ええ? な、何が…です?」


 凄まじい剣幕で迫られ、ユウキは眼を白黒させる。何が何だか解らない状況だった。


「そ、そ、そ、そのオイラの背中にぶつかった脂肪の塊はなんだぁッ!?」


 ユウキは自分の胸を抑えてハッとした。そうだ。思わず胸を押しつけてしまったのである。


「ぼ、ぼ、BOYと偽ってオイラに近づいてきたのかぁッ!?」

「そ、そんなぁ…」


 勝手に勘違いしたのはジョジーである。だが、意外と内気なユウキはそんなことを口に出せなかった。


「パイロート解任だ!!」


 胸からコンソールパネルを出し、ジョジーは何やら打ち込む!


『ブッブー! パイロート解任できまてーん』


 ムカつく声…白木博士のボイスで拒否される。


「ホーリーシット!! なにぃッ!?」

『一度認証したパイロートは、ワシの許可ないと変えられないわーい』

「あのファッキン・オールドメェンかぁッ!?」

「だ、だれ??」


 ワナワナと震えるジョジーに、わけが分からないといった様子でユウキは顔に疑問符を浮かべる。


「く、クククッ。あのオールドメェンは確かヤオキチの野郎と一緒にいたな…どうやら、オイラとヤツは決して離れられない宿命の糸で結ばれているようだゼ☆」


 心なしか嬉しそうに、ジョジーは拳を握って太陽を眩しそうに見やる。


「BOY…いや、BOYみたいなGIRL。テメェの名前をまだ聞いていなかったな」

「あ、はい。私…いや、ボクは…雲上 祐希…です」

「ユウキか…良い名だ。あえてこう呼ばせてもらうゼ☆ ユウキボーイ、と」


 どこぞのカードバトルマンガの主人公を彷彿とさせる名前であったが、マン研部ではないユウキにそんなことが解るはずもなかった。


「オメェを乗せると決めたのはオイラだ。漢に二言はねぇ。オメェも男と偽った以上、男を貫き通してもらうゼ☆」

「は、はぁ…」

「返事はオウかイエスだ!」

「おぅ…イエス」

「オウィエッーーー!」


 ツッコミどころは満載であったが、有無を言わさぬジョジーの迫力にユウキはコクコクと頷く他なかった。


 ドギュウウーンッ!! 


 こうして空の彼方へと、ユウキとジョジーは飛び立ったのであーーーーった!




☆☆☆


 


 再び、山中宅にて…


 耳の上に赤ペンを差し、競馬新聞を握りしめて鬼の形相をしたヤオキチがテレビ画面に向かって怒鳴る!


「イケー! バカヤロー!! 単勝狙いだ! マウンテゲイオ! 勝てなかったら馬刺にすんぞ!!」

「ウヒヒ。本当にヤオキチは馬が好きだのぅ!」

「あのぉ…そんなに近くで見られると、私が見れないんですけど」

「バカヤロー! 今いいところなんだ! 話しかけんな!」


 ヤオキチはテレビに鼻がくっつくぐらいに近づいていた。


「あーチキショウ!! このバカヤローが!! 負けやがった!!」


 頭をかきむしり、新聞をテレビに叩きつけて悪態をつくヤオキチである。


「クソッ! 奮発してニンジンなんて差し入れするんじゃなかったぜ! 結局、ムダになったぜ!!」

「えー。わざわざ競馬場にニンジン持ってったの?」

「うちの野菜を食えば勝てる! だが、このバカ馬はうちの野菜の力を少しも発揮しやがらねぇでクソとして垂れ流しやがったんだ!」

「汚い話やめて!!」


 鼻毛を抜きつつ、ヤオキチは何かを思い出したらしく腕を組んで頷く。


「そういや、昔、高校で飼ってた馬にもニンジンくれてやったな…」

「学校に馬がいたの? へー、なら大きい高校だったんだね」

「ま、クソの役にもたたねぇから、本当に馬刺にしちまったんだっだが…確か肉が堅くてマズかったなぁ」

「は? た、食べた?」

「ああ、食っちまった」

「か、かわいそう…」

「何がかわいそうなもんか! せっかく俺が競走馬にしてやろうと思ったのによ! 年齢とか馬種がどうのこうのグダグダ言いがかりつけやがったんだ!」

「いや、そもそも学校の馬に何しようとしてんのよ…」


 ナミは呆れて物も言えないと肩をすくめる。


「んでよ、これには一つ笑い話があってだな…」

「ほう? なんじゃ?」

「俺と同じ目的で馬に近づいた野郎がいてよ。こいつがとんでもねぇバカヤローでな!」


 ヤオキチは喉の奥で笑い、膝をパンと叩く。


「馬によ、"魚"食わせようとしてやがんの!」

「マジか!? ウヒヒ!! そいつはひどいのぉ!」

「さ、さかな?」


 大爆笑しているヤオキチと白木博士。


「な、なんで魚なの? 馬に…食べるわけないじゃん」

「そうだろ? 実家が魚屋でよ! 余った魚もってくんだけど、馬にも見向きもされねぇでやんの! で、もっていく度に土かけられてんのよ! 馬に嫌われてんのに気づきもしねぇでよ!! とんでもねえ、バカヤローだよな! ダッハッハッハ!!」

「ウヒヒヒヒ! そりゃケッサクじゃのぉ!」

「汚い! ツバとばさないでよ!」


 笑い転げる二人をジト眼を向けに、ナミはわずかに後ずさる。


「…でも、魚屋って…まさかね」


 ナミの脳裏にある人物のシルエットが浮かび上がる。


「何か、勝手に俺のことをライバル扱いしてたけどよ! 番長の座なんて興味ねぇって話だ!!」

「ライバル? マジで? なんかすごいデジャブなんですけど。もしかしてごく最近に会ったことがある人ってオチじゃないよね?」

「そいつの名前までは忘れたがな!!」

「あ、そう。そっか、違うのか…良かった」




☆☆☆




「ベーーーッキショイ!」

「だ、大丈夫ですか?」

「ああ。っと、きっと今頃、誰かがオイラの噂をしてるみたいだゼ☆」


 ジョジーは哀れなスーザンの末路など知る由もなく、自分の名前すら忘れさったライバルの元へと向かってひたすら飛びつづけるのであーーーーった!

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