二十一狂目『空飛ぶエチケットと空飛ばない鬼娘』
「吾輩は、マスター浦河が造りし"紳士型サイボーグ"!! 別命、紳士型決戦兵器!! "シンシーズ"が一人、"男爵バロン"デス!! お見知りおきを!!」
と、言われても……。
ツッコミどころ満載でもう、私ついていけないんですけど!
「マスター浦河? 紳士型サイボーグ? なんだ? 白木博士が作ったサイボーグ以外にも存在していたのか……」
うう、どこまでもシリアスなセイカ様。
対して、ヤオキチとゴンザレスはどうして我関せずって感じに鼻ほじくってんのよ!!
「そうデス! しかしなーがら! ドクター白木が作りだしたポンコツと一緒にされてはこまりマス! 我々は"最新型"! サイボーグ化されたあらゆる還暦型決戦兵器のデータを解析し、その中で有用かつ最も粋たる技術のみを抽出して造られたのが我々である紳士型決戦兵器なのデス! つまり、言うなれば、我々はエリート中のエリート! 粗悪で乱雑なそこらへんの兵器とは違うんでジュテーム!」
えーっと、つまり、ということは……ここにいるオッサン二体よりも強いってことじゃん!
さっきガナルドォンとカネカースを一撃で倒しているし……。これってマズイ状況なんじゃないかしら?
「いま、我々と言ったな……。シンシー"ズ"ということは、他にもいるのか!?」
「イエス! 吾輩を含め、他に三体もの優秀なサイボーグがおりマス! も・ち・ろ・ん、強さは折り紙どころか保証書つきでございマスよ!」
「うるせぇ! さっきから上から目線で喋ってんじゃねぇぞ! バカヤロー!」
「まったくじゃーい! この水風船デブが! その締まらん身体と同じぐらいゆるい頭しておるんじゃあるまいなぁ!」
ああ、やはり空気が読めない二体が暴言を……。
でも、こんな安い挑発もないでしょ。確かに浮いてて高い位置にいるし、そら雪だるまみたいな体型だけれども……。
自分で優秀だって言うほどのサイボーグが、そんなことでいちいち怒って……
「フッシッシッ! なんとも礼儀作法に欠ける御仁デス!! 吾輩、怒り心頭デス!!」
……なんか顔真っ赤にして怒ってる。
なんだろ。こんなんで怒ってるとか、ヤオキチとゴンザレスと同レベルってことなんじゃ。
「オンアァ! 『グラビディ・エチケット』!!」
ドゴォン!!
「うんももッ!?」 「うんももッ!?」
あ! やばい! なんかさっきの技だ!
ううッ、なんか身体が重い! なにこれ?!
「も、もしやこれは……じゅ、重力波による攻撃か!?」
頭から煙をだしながら、 ヤオキチとゴンザレスが耐えてる!
私とセイカ様のダメージが少ないのは、どうにも二体が見えない防壁みたいので覆われているからみたい。
敵からの攻撃があっても、ヤオキチに乗っていればなんか痛みが少ないみたいだし……どうやらパイロット保護を第一優先にしてあるみたいね。
「フシュシュ! なかなか鋭いデスね! しかしながら、半分アタリで半分ハズレといったところでジュテーム!」
「な、なんじゃこりゃぁ! う、動けねぇぞ! こんなのはジョジーの店からパクッたフグを丸ごと食って以来だ!」
「ぬぅう! 正常位と後背位しか認めぬ俺が膝をつくなどあってはならぬぅ!!」
「バカヤロー! 両方とも膝をつくじゃねぇか!」
「そ、そうか! そうだったな! だが、強制されてのプレイはこの鬼瓦!! 認めるわけにはいっかーん!!」
「そ、そんな卑猥な話はいいから! なんとか脱出する方法を考えてよ!」
なんでこの二体はこんな状況になっても馬鹿なの!?
「無駄デース! 吾輩の力から逃れることはありえませんデス!」
「おーし! こういう時はアレしかねぇな!」
「あ、アレ?」
ヤオキチ、なんか笑ってるけど何かいい方法でもあるっての? なによ、アレって?
「アレといったらアレだ! 野菜を狙うカラスどもをぶったたくにはアレしかねぇ!」
そう言って指差したのは、バーガーショップの登り旗だ。
「ほう。貴様も気づいたか…。確かにアレしかあるまい!」
いきなり走り出す二体!
つーか、あんなんで空飛んでいる敵を叩き落せるわけないでしょ! 長さがたりないちゅーの!
と、登り旗を通り過ぎ、さらに走り続ける!
「ちょっとどこいくのよ! ま、まさか…」
「いくぞ! うおりゃぁッ!」
「おうよ! ぬりゃああッ!」
顔を真っ赤にして踏ん張る二体。
二体がそろいもそろってつかんでいるのは、鉄柱でできたバーガーショップの看板そのものだった。
「こんなのどうやっても無理…」
「いや、そうでもないぞ!」
グゥーン! グゥーーーン!!
え? なんかグラグラ動いている…。マジで?
ボッキィン!
なんか根本で折れた!?
なんつー馬鹿力! この人らが本当にサイボーグだっての忘れてたわ!
「…そんなもので吾輩と戦おうだなんて、なんと礼儀作法しらずな!」
「バカヤロー!! こいつはエリンギじゃねぇぞ!?」
「エッチなチケットがどうしたちゅうんじゃぁーい!?」
いや、ヤオキチ…。『エ』しか合ってないし。
いや、ゴンザレス…。教師がエチケットって言葉しらないなんてどうかと思うし。
「よぉーし! とりあえず、これで倒す!」
「どうやってよ!?」
「力一杯ぶん殴るだけじゃーい!」
そうだとは思ってはいたけれど、やっぱりそうか!
ドドドドドッ!!
「うおりゃあぁッ!」「ふんりゃぁッ!」
走り出す二体での初の共同作業、ケーキ入刀ならぬ、ポールぶん回し!!
「な、なんと醜悪な! こんなグロテスクな戦闘方法を吾輩みたことがないでジュッテーム!!」
悔しいけれど、言い返せない。どう見ても私らの方が悪役にしか見えないし!!
「バーット、この吾輩相手にそのような無法な戦いが通用するはずもありまセーン! いきますデスゾ!! オンアァ! 『グラビディ・エチケット』!!」
うあッ! きた!! 重力攻撃!!
「耐えろ! 山中!!」
「はいぃ!!」
あのダルマみたいなオッサンに近づくにつれて重力は重くなっているみたい。
けれど、ヤオキチもゴンザレスも歯をむきだしにして必死で走る。
「バカヤロー! こんなもの、毎朝市場で運ぶ野菜に比べれば軽いぜ!!」
「この鬼瓦! 幾人もの女人の"尻圧"に耐えてきた実績がある!! アメリケンウーメンに比べれば軽いわー!!」
「ガッデーム! な、なんてこと…吾輩の礼儀作法を守らぬ気デスか!?」
よし! いける!!
重力波に耐えきって進み、敵の真下で勢いよくポールを振り回す!
まずは左から右へ!
ブォオオン!!
スカッ!
次は右から左へ!
ブォオオン!!
スカッ!
えーっと…
ブォオオン!!
スカッ!
「…………」
「…………」
私たちも敵も沈黙に固まる。
「当たらぬだとぉ!?」
「当たり前でしょ! 最初から解ってたことよ!!」
だって、明らかに長さ足んないもん!
相手の足先にもかすらないわ!! こんなものなんの脅威でもないわよ!!
「フシュシュ! 信じられぬほど馬鹿デスな。マスター浦河が作られし最新型である吾輩に楯突こうなどということ自体がもはや思考回路の欠如を意味してるでありマス」
遥か高みで大笑いする敵。なんだろう。白木のクソジジイを擁護するわけじゃないけど、なんか悔しい…。
だって、この二体だって旧型かも知れないけど…別にだからだって馬鹿にしていいってわけがない。
私だって最初イヤだったけれど、このヤオキチに乗っていたら…うん、いや、ないわ。イヤだわ。イヤの一言だわ!
「フッ。驕る平家は久しからず…とはよく言ったものだ!」
え? セイカ様!?
「むぅ!?」
「グワハハハッ! 貴様の脳天に一撃くれてやるのはこの俺様だぁ!!」
ポールに飛び乗り、ゴンザレスが走る! そうか、斜めになったポールを伝ってジャンプすれば敵に届くんだ! さすがセイカ様!
「ヤオキチ! しっかり、ポールを支えてて!」
「くぬぅ! 抜け駆けしやがって!!」
いや、アンタが支えてなかったらセイカ様が落ちちゃうでしょ! ゴンザレスはどうでもいいけど!
「古典的な戦法デスな。やはり性能差は明らかでジュテーム。吾輩の礼儀作法に"抜け落ち"があるとでも!?」
え? まだなんか他の攻撃手段があるってこと?
バロンがバトンをクルッと回して、その先端を押し付けるようにゴンザレスに向ける。
「オンアァ! 『リパルション・マナー』!!!」
なんかバトンの先が円形に大きく歪んでる! その背景がグニグニと!
そしてそのグニグニがドンッ! って撃ちだされた! それに当たったゴンザレスがポールから外れて吹っ飛ぶ!
「ぐぬぉおッ?!」
「クッ! 重力波を全方位だけでなく、集約させて飛ばすこともできるのか!」
「吾輩に反抗する者は、皆、退出を命ずるデスよ!! まあ、貴方がたの場合は、"この世"からという意味になるんでショウが!!」
「ぬぁめるなぁああッ!!!」
ブビイイイイッ!!!
ゴンザレスの尻が火を噴いた! それで空中で体勢を立て直す!
「屁だ! 屁をこきやがったぞ!!」
アンタもこくじゃん! なんでそんなに嬉しそうなのよ!
「んがぁ!? 礼儀&作法しらずな!」
「礼儀も作法もクソッ食らえじゃーい!」
「行け! ゴンザレス!!」
ゴンザレスがヘリコプターのように舞う! そうか、空飛べたんだ! すっかり忘れてたわ!!
「オンアァ! 『リパルション・マナー』!!!」
バロンが撃ちだす攻撃を、セイカ様が見定めてゴンザレスに的確な指示を与えて避ける!!
「不届き者め! 吾輩に近寄るんじゃないジュテーム!! オンアァ! 『グラビディ・エチケット』!!」
「やかましいわ! そんななまっちょろい作法などよりも、この俺様の生活指導のが上じゃーい!!」
ズゴオオンッ!!
ゴンザレスのダブル竹刀がバロンの頭にヒットする!!
「トレビアンモモスゥッ!!!」
絶叫して、地面に叩きつけられる! うあー、痛そう。コンクリにヒビ入ってんですけど。
ゴンザレスがシュタッ…ではなくて、オッサンが和式便器に腰を下ろす様な感じに着地する。
「礼儀や作法を言うは易く行うは難し、だ。さりげない日常の動作でこそ活きるもの。貴様のようにやたら口にだして成り立つものではない」
髪を払ってそう仰るセイカ様。ああん、かっこいい!
でも、下のゴンザレスとどうかペガサスとかユニコーンとかと入れ替えさせてください!!
「……こ、こんな馬鹿なことが。攻撃値が、吾輩の計算を上回ることなどあり得ぬでジュテーム」
「ええ? あれだけの攻撃を受けてまだ動けるの!?」
風船ダルマみたいだったのが、みるみるしぼんでいく。圧力釜から蒸気がでていくように全身から空気を噴出す。どうやら浮かぶためにガスを蓄えてたらしい。
そして、小柄なおじいちゃんの姿になった。ほら、あれ、某有名ボードゲームのイメージキャラクターにそっくり!
「貴方たちを過小評価していた非礼はお詫びしまショウ。どうにも、吾輩も本気でやらねばならぬようデスな」
帽子を直し、バトンの先を私たちに向けてくる。
「バカヤロー! 横にデカかったのはハッタリか! オメェみてぇなヘチマみてぇなチビな年寄りになにができる!!」
「待て。ヤオキチ。男爵バロンの力は見た目では判断できない」
「そうよ。空に浮いてた方がどう考えても有利なのに、下に降りてきたからには何かあるはずよ」
「フン! 俺様にブッ飛ばされるのを恐れてのことだろうが!」
「違うわよ! だって、そうじゃなきゃあんなに余裕あるはずないでしょ!」
私の言葉に、バロンはニヤリと笑う。やっぱり何かを隠しているんだ!
「吾輩の重力波は、この地球の重力を利用したもの。吾輩が地面に近ければ近いだけその影響を受けるのデスよ。…つまり、地面に足がついているこの状況であれば、さきほどの10倍の重力波が扱えるでジュテーム」
さっきの10倍……そんなことになれば、私はペシャンコになっちゃうんじゃないかしら。
「セイカ様」
「ああ。何かしらの防御手段があれば……しかし、重力となるとどうすれば」
ですよねー。『リパルション・マナー』はなんとかなるにしても、見えない範囲攻撃は避けようがないし。
「バカヤロー! 気合だ!」
「その通り! 気合があればなんでもできる!!」
ああ、こういう馬鹿に私もなりたい。なんでオッサンが言うのは根性論ばっかなのよ。
「では、本当の礼儀作法を堪能していただきまショウ!!」
ガシッ!! ガシッ!!
「ッ!?」
バロンのそれぞれの足を、ボロボロの手が掴む。
「貴方がたは!?」
「ドゥフォドゥフ!」
「チキチキチキ!」
ああ! はいつくばってて見えなかったけれど、ガナルドォンとカネカースだ!
「倒されても倒されても、不死鳥のごとく飲食店は蘇る! しらばっくれてさえいれば、異物混入なんてなかったことにできるんドォーン!」
「そうばーい! 諦めないことこそ商売魂!! 値上げしては、ちょっと値下げして、値上げしては、ほんのちょびっとだけ値下げして…代わり映えしないメニューで何年もしのいできた実績がある!」
いやいや、アンタら言ってることおかしいから!!
「吾輩に潰されたくなければ、その汚い手を離しなサーイ!!」
「離すわけがないドォン! 例えこの手が油にまみれていようとも!!」
「一度入った客は逃さんばーい! 離すときは、我らのメニューを堪能してもらってからとよ!!」
「もんがぁッ!!」
ああ! バンバーガとフライングヂギンを無理やりバロンの口の中につっこんじゃった! お、おぇえええ! あんな不味いものを……敵でも同情するわ。
「さあ、今だドォーン!」
「ハピネス・チャンスばい!!」
「え?」
ガナルドォンとカーネカスが今までにないほど良い笑顔で歯を光らせる。
「俺たちが抑えているうちに、こいつを倒してしまうんだドォン!」
「いまワシらのオイリーで、こやつはビショビショよ! さきの必殺技くらわせれば倒せるばーい!」
昨日の敵は今日の友…って、そんなドラマじゃあるまいし。
「山中。どうやら、ヤツらも白木博士の作った還暦型決戦兵器。おそらくだが、そのプライドがあの紳士型サイボーグを抑えつけているのだろう」
えー。ってか、絶対にあの二人もジジイに無理やり改造されたんじゃ…。恨みに思っていても、プライドなんてあるわけないと思うけれど。
「倒すなら今しかない…どうする?」
「え? どうするって…私が決めるんですか?」
「ああ。ゴンザレスでは、ヤオキチのキャノン砲ほどの威力はだせない…。山中、お前が決断を下すんだ」
ああ、セイカ様の真剣なお顔はいつ見てもお美しい…けれど、えー、まてまて。ってか、あの二体と一緒に破壊しなきゃいけないんでしょ!?
そりゃ縁もないヤツらだし、ましてや私たちを殺そうとしてきたヤツらだけど…それでも、この状況で倒すだなんてちょっと。
「よし! 解った!」
私が悩んでいると、ヤオキチがいきなり拳を突き出す。
「へ?」「へ?」
ガナルドォンとカネカースの顔が驚きに止まる。
「テメェらの犠牲は忘れねぇぜ! 一撃で葬ってやる! 最大出力だ!!」
男泣きしながら、ヘッドキャノンの照準をバロンに向ける。二体の眼が恐怖に歪む。
「ちょ、ちょっと待つドォーン! も、もう少し考えてからでも…」
「そうとよ! こういう場合は、“お前らを犠牲にするわけにはいかねぇ!”みたいなメッセージを言うのがヒーローの鉄則ばい!!」
やっぱりその場の雰囲気に流されて格好つけてただけか!
なーんで、男ってのはどいつもこいつもいらんところで格好つけたがるんだか……。
「ねえ、ヤオキチ。もうちょっと他の方法を……」
「オメェらのことは忘れねぇ!! あばよぉ!!」
ドッキューン!!!!!
えー!? 人の話も聞かずに発射ってどういうことよ!! ってか、アタシが発射ボタン押してないのに、勝手に自分で押すな!!!
チュボボボーーン!!!
「うんももすドォーン!!」「うんももすチキィー!!」
ジュボアッ!! ジュボアッ!!
二体が消し炭と化し、男爵の帽子と服が熱線に焼け焦げる! そして強い光の中で激しく痙攣した!!
「こ、この吾輩がこんな礼儀作法に反する結末を…マスター浦河、申し訳あり……ううんんんんもももすぅうジュディーーブゥウッ!!!」
ジュジュジュボアッ!!!!
バロンの身体は光の渦の中へと消えていってしまった……。
「あ、ああ…。なんてことを」
いや、敵だし倒していいんだけどさ……。なにこの後味の悪さ。ってか、倒した本人はのん気な顔で鼻ほじっているけれど。
「…倒した、か。手強い敵だったな。人道には反するかも知らんが、ここで倒しておいたのは正解かもしれん」
ですよねー。セイカ様もこれはどうかと思いますよね。
「まったく、恐ろしい決断を悩まずに下すヤツだ。さすが、この俺様に風穴を空けるだけはあるな」
ゴンザレスが腕を組んで言う。…ってか、視線をなんで私に向けてるのよ。
「前から怖い女だとは思っていたわ。この性教師に常々逆らい、事あるごとに大声を張り上げて威嚇する!! 貴様は間違いなく、"鬼"だ! "鬼娘"だあッ!!」
「は、はぁああ!?」
私の脳裏に、「だっちゃ!」を語尾につける雷を放つヒロインが浮かぶ。いや、あれなら可愛いけれど、きっとゴンザレスが言ってるのは……。
「なんだと!? 『悪い子はいねぇがー』と子供をさらい、家に招いてもてなす振りをして、菓子でできた家をたんまり食わせて太らせ、夜なべをして包丁を研ぐという…」
いや、ヤオキチ。それってなんかナマハゲとヤマンバと西洋の童話がごっちゃになってるから…でも、ゴンザレスの中でもそんな感じなんだろう。
「まあ、そう言うな。山中の決断は間違いではない」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいって!」
え? なんで私が決断下したみたいになってるの!?
「この鬼娘がぁ!! 人殺しがぁ!!」
ゴンザレス! なに調子のって騒いでるのよ! ってか、周りに人集まってきたし…。
「ヤオキチ! 私は悩んでたんだから!! ちょっとなんとか言ってよ!」
「俺はオメェの決定に従っただけだ!! バカヤロー!!」
「は…? はぁあああ!? ふざけないでよ! アンタが自分でボタン勝手に押したんじゃん!!」
「オメェがパイロートだろうが! オメェの指示でしか俺は動かん!!」
「この鬼娘がぁ!! 人殺しがぁ!! 貴様に人の心はないのかぁッ!!!!」
「私は決断なんてしてなーい!!」
「言い訳するなぁ!!」
「このバカヤローが!!」
なんだこの二体! 人に罪をかぶせるなー!!
なんとか紳士型決戦兵器を名乗る謎の組織シンシーズ、男爵バロンを無情な一撃で撃退したナミたち。
しかし、鬼娘ナミによる悪辣なる残虐非道な戦いの幕は開けたばかりだったのであーーーーった!!
ちょっと!! また勝手なナレーションいれないでよ! 誰が鬼娘よッ!!!
☆紳士型決戦兵器カタログその(1)
・品番:『U-01』
・正式名称:『拠点防衛兵器 男爵バロン』
・生体名:不明 75歳
・生体情報:身長145㎝ 体重30kg
・主兵装:グラビティコントローラーバトン
・副兵装:なし
・移動方式:空圧もしくは重力波移動
・攻撃力:800ポイント
・防御力:220ポイント
・機動力:バルーン時50ポイント(非バルーン時80ポイント)
浦河瞳博士が造りだした紳士型決戦兵器。
移動は空圧と重力波を利用してのものだがまだ実験の域をでていない。思った以上の推進力がでなかったので、他の移動手段を検討中とのこと。
現段階での実戦投入は、固定砲台のような拠点防衛を想定したものである。
強力な重力波を発生させられるが、自身を中心として展開する場合、本体の負荷を軽減するために風船のように膨らんでいる必要がある。これがバルーン形態であるが、この間は重力波を発生させていなければ無防備である。原理は、深海魚が水圧に耐えるために空気袋を体内に持つのと同じである。
重力波をピンポイントで射出することもできるが命中率は低い。
いずれも重力波を扱う上で、本体がダメージを受けてしまうことが今後の解決課題である。




