十九狂目 『地獄のガナルドォン・マジカル』
ヤバいよ、ヤバいよ~。
私の頭の中で緊急サイレンが鳴り響く。例の芸人さんが裸で踊ってる……。
目の前にいるのは、隣にいるオッサンニ体とまったく同じニオイがする。
だって、ハンバーガー食べに入って、歌舞伎役者みたいな格好をしたピエロがいたら、誰だって回れ右をして出て行くに違いない。
あ、どさくさに紛れて入口にいた親子が出て行ったけれど。なんか泣いてたし。
ああ、あれに続いて私たちも出て行くべきだと絶対に思うし。
「腹がへったー!」
「なんでもいいからもってこんかーい!」
おおおおーい! このニ体は! この状況が見えてないの!?
明らかにおかしいじゃん! 店員さんだって…いつの、どこの不良だってのよ! 明らかに眼がイッちゃってるし!
「ふむ。店の入口で騒ぐものではない。予約は入れていないのだが、4名なんだが、席は空いているだろうか?」
「へい! 喜んで! ささ、どうぞ奥までずずいっと! 逃げられないように!」
へ?
いや、いま逃げられないようにって言った?
あれ? なんか、別の店員がさっきの親子追いかけてったけど。「待てや、コラァ! 金払え!」とか聞こえてんですけど…。
と、振り返ろうとしたらさっきのピエロが凶悪な笑みで立ち塞がる。まるで私たちに外での騒ぎを見せないようにしているみたい…。
あ、でも、肩越しにチェーンを振り回してる店員が見えるんですけど。あの親子追い掛けてってるんですけど!! モロ見えてるんですけど!!
「さぁ! おいしいバンバーガを食べようよ! ガナルドォンが席まで案内するドォーン!」
猫なで声で言われても、見た目が普通に怖いせいで意味ないんですけど…。逆効果なんですけど…。
後ろをガナルドォンとかいうピエロに、左右に店員が張り付いて、私たちは前にしか進めない。
私はイヤイヤながら奥に進むけど、セイカ様やオッサンニ体はなんとも思ってないみたい…。
なんだろう。私ももっとセイカ様みたいに動じない女になりたい。オッサンたちはただ鈍感なだけだからどうでもいいけれども……。
「さぁ! メニュー表ドォーン!」
「ああん! なんでもいいわーい! ここに書かれてるの全部もってこんかーい!」
「バカヤロー! さっさとしろ!! まずはビールだ!!」
いや、かなり理不尽なことを言ってるんですけど! スゴイ恥ずかしい…。
しかもヤオキチ号め。こんなとこでビールがでるわけないじゃん!!
「…そうだな。山中。何がお勧めなんだろうか?」
「え? あー、えーっと。そ、そうですねぇ! 私もこういう個人店は初めてなものでして…」
ああーん。セイカ様、ごめんなさい。この頼りない私を許して下さいませ!
メニュー表を見ても、なんでか写真が全部白黒でわかんないし。
地獄とか悪意とか、食べ物につけるはずもないような名前がついてて…。
なによ、この”ストマック・ボンバー”って……胃袋爆破させてどうすんのよ。まったくどんな料理なのか、むしろ本当にハンバーガーなのかすら怪しいし。
「そうか。こういう時はシェフのお勧めに任せるとしようか」
「わかったドォーン! なら、ガナルドォンが大好きな"フォールダウン・アポカリプス・セット"にするドォーン!」
「さっきからなんでもいいってんだろー! クソピエロが!」
「まったくじゃーい! この店はオシボリも出さんのかぁー!?」
おおーい!
オッサンども! 勝手に何してんのよ!?
いつの間にか紙ナプキンを手洗いで濡らして、脇の下をゴシゴシ拭き始めてるんですけど!
最低! 最悪! そもそも定食屋じゃあるまいし、オシボリなんてでるわけあるか!!
っと、そんなことをやっている間に、なにやら厨房の方で大騒ぎしている音が聞こえる。
ガッチャン!
ゴッチャン!
ゲゲゲチョン!
ブビビビビッ!!
あの音って、本当にハンバーガー作ってんでしょうね?
あれ、いまなんか「あ…やっちまったぜ! まいっか! 俺が食うんじゃねぇし!」とか大声で聞こえたんですけど!
ちょっとちょっとぉ! ホントーに、ホントーーーに! 大丈夫なんでしょうねぇ!?
「へいへいへーい! お・ま・ち!!」
モヒカン店員が持ってきたけど…。
いやー、なんか半分予想できてたけど…。
うん。まずそう。心底まずそう。ありえないくらいにまずそう。
そこらへんの木の皮をはいで、そこらへんの雑草を引き抜いて茹でて、カラー粘土のすべての色を混ぜ込んでコネ合わせたものを挟んだような感じ。
人間が食べてはいけないもののような気が……あ、セイカ様、口にしちゃった!
「……なんだ。これは?」
お美しい顔にシワを寄せ、口元にナプキンを当てる。
ああ、仕草は美しいけれども、そんなもの食べる前にお気づきでしょう! 口にしちゃいけないものですって!
「バンスはパサパサ…。野菜は萎びている上に繊維質すぎて噛み切れん。肉もかなり時間が経って劣化しているな。品質管理もなっていない。そして、極めつけは味付けだ。ただ濃いだけで何を食べているのか解らないようになっている。多量の化学調味料を使用しているようだが、これでは食べる客の健康を害するだろう」
いやー。なんかそんな詳細なコメント、こんな"ゴミ"にはもったいないような…。
ええ。私にはゴミにしか見えません。もうこの際、ゴミでいいでしょう。異臭も放っているし……。
でも、あのジジイのマズイ豆腐料理食べてて平気なオッサンたちなら……
「うまままま……まずんももすッ!」
「うまままま……まずんももすッ!」
ハイ。やっぱりダメでした。
ってか、セイカ様のコメント聞いてなかったのかよ!
何も考えず、口に放り込んでいたニ体がゴミを吐き出す。
ってか、汚い! こっちに向かってオモクソ吐くな!
「なんじゃこりゃぁ! バカヤロー!! 食えるかこんなもんが!!」
「不味い不味いぞぉッ!! 口の中がクソまみれじゃぁーい!」
汚い例えを言うなゴンザレス!!
「な、なにぃ!? そんな馬鹿な!」
ガナルドォンが慌てて、私の目の前にあったバンバーガとやらを口に放り込む。
いや、客に出したの勝手に食べるなよ……。ま、私、食べる気さらさらなかったんでいいんですけど。
「うま………」
うまくないだろう?
そりゃそうだ。試食だってちゃんとやってるのか怪しい…
「うますぎるぅッ!」
ズコーッ! うまいんかい!!
ポロリと涙を流し、感動に震えるキモコワ系ピエロ。
ってか、こんなのが美味しいだなんてどんな味覚してんのよ!!
「すべてこの店の裏庭で調達できるローコスト食材! そして、このガナルドォン様直々の配合調味料! 早さ、旨さ、安さ……すべてを超越した至高のファーストフードだ! それをマズイだのとよくも言ってくれたなぁ! この俺の心は激しく傷ついた! シェイクのごとくにテロンテロンだ! よって、慰謝料を請求する! 200万だ! 耳をそろえて200万払うドォーンッ!!」
えー! なにここボッタクリ商売じゃん!
「バカヤロー! こんなゴミに一銭たりとも払えるかッ!」
「そうじゃーい! そもそも俺は金など持ち合わせておらん! タダ食いする気だったからな!」
「まったくもってその通りだ!!」
うあー。こっちもクズっぷりは半端ないけど! でも、めずらしく私も同意かしら。
「食べれないものにお金は払えません! しかも慰謝料だなんて、こっちがもらいたいくらいよ!」
「何が食べれないだ! 食べてないだけだろ! 食え! 黙って食え! そして、うまいと言え! そして200万を払うんだドォーン!!」
え!? なんで私に向かってだけ言うの!?
おい! そこの二体! なんで耳かっぽじって知らん顔してんのよ! アンタらも同じこと言ってたやん!
ちょっと、止めて! 無理矢理そのイモケンピ食べさせようとしないで!
「200万なら安いものだが……。しかし、納得できぬものに払いたくはないな。これは金銭の問題ではない」
いやいや、安いって……。
セイカ様の金銭感覚っていったいどうなってるの?
「だまれぃ! ならば、力ずくで食べさせて美味しいと言わせてやろうドォーン! むしろ、"ガナルドォン・マジカル"で美味しい以外の単語は言えぬようにしてくれるドォーン!」
あ。いちおうまだ自分がマスコットキャラだという意識は残ってたんだ…。
ってか、なにメチャクチャなこと言ってんのコイツ!?
店の奥にいたらしい従業員がワラワラと出てくる。
なんか、チェーンソーとか斧とか普通に持ってるんですけど!? ここまがりにも飲食店でしょ!? なのになんで!?
「おもしろい!!」
あれ?
なんか、隅のボックス席に座っていたオッサンがいきなり叫んで立ち上がったんですけど。
豊かな白髪頭、ダブリューの口ひげ、和服に両袖を入れた姿……かなり渋めだ。まるで後光がさしているかのように見える。ピッカーって、一昔前のアニメの背景とか、海軍の国旗みたい。
「ファーストフード店の頂上決戦! 裁定が必要だろう!!」
はあ? 裁定、ですか?
「かたや何十年と修練を重ね磨き続けられてきた至高のバンバーガ。かたや生まれいでて十数年ほどの、ちょーど熟れはじめたピッチピッチのムッチムッチの……ハァハァ。ジュルル! 究極の女子高生たち! どちらがうまいか! このワシが直々に判定を下してくれよう!!」
うあー。眼を見開いて何を言うかと思えば……。
見た目に反して、やっぱりおかしい人だった。こんな店で普通に食事しているだけでおかしいってのは解ってたけど。
「フッ。ワシが誰かと不思議がっているようだな。そうだろうそうだろう。世界の食という食を口にし続けて幾星霜……超日本料理界最高責任者! 人呼んで『味……おうぁっちゃあぁああああ!!!!」
"味なんとか"さんが大騒ぎで飛び回る!
そりゃそうだ。ガナルドォンの手下が熱々の油を床に撒いたからね!
「人の店でガタガタ騒ぐなドォーン! 客の仕事は、俺のバンバーガをうまいと言って食べて、持っている有り金を全部おいていくことだドォーン!!」
「なんてひどいことを!」
「そうだな…。どうにも、お仕置きが必要らしい」
私とセイカ様は頷き合う。うん、どうやら考えは一緒らしい!
うふふ! うれしい! セイカ様と同じだなんて!
「いくわよ! ヤオキチ号!」
「いくぞ! ゴンザレス!」
心底イヤではあるけれど、この窮地から逃れるには還暦型決戦兵器の……ってあれ?
ガツガツガツ!! ジュルルル!!
「マズイぞ! バカヤロー! バカヤロー!!」
「食えたものではないわ! こんなものぉ! こんなものぉ!!」
いや、アンタら文句言いながら食ってるじゃん!
「戦うわよ!」
「バカヤロー! 食後休みぐらいさせやがれ!」
「うるさーい! いいから! 立って!!」
うー、なんか休日にお父さんに遊びに連れて行ってとねだったことを思い出す。
もちろん、ヤオキチ号がお父さんだなんてぜったいに、ぜーーーったいにイヤだけれど!
「一枚だ。一枚だけしか渡せん!」
「二枚じゃ! 二枚でないと俺は動かぬ!!」
セイカ様の方も苦戦しているらしい。
一枚だの二枚だのって……まさか! もしかしてお金をせびってるの!?
「一枚しかないのだ。競泳の時の写真は…」
「ぐぬぅ! ならば、今年の夏はもっと撮っておけい!!」
ピラッと見えたのは写真だ。どうやら、セイカ様の水着姿、そんなお宝写真でつっていたらしい。
おのれ、ゴンザレスめ! 私だったら三枚ほしい! ……って、私はオヤジか!
そんなやりとりをしつつ、ようやく私たちは還暦型決戦兵器にまたがる。
その間、律儀に待ってくれたガナルドォンの皆さま。本当にありがとう。
変身シーンと搭乗シーンは襲ってはいけないという暗黙のルールはキチンと守ってくれているようね。
「では、完食する用意はいいドォーン!?」
「いいわけねぇだろ、バカヤロー! ゲフィー!」
「こんなもん腹の足しにもならぬわ! ゲフィー!」
いやいや、アンタらゲップしながらじゃ説得力ないって!
「いくぞぉ! 『フライング・ポテトンランチャー』!!」
油を滴らせたフライヤーを担ぎ、そこからミサイルのようにポテト……ではなく、イモケンピが勢いよく飛び出す!
なんでこんな機能があるのよ!? それって、ポテト揚げる機械でしょうが!
「ドゥフォドゥフ! 気づいておらんと思うったか! 貴様らが還暦型決戦兵器であることは、このガナルドォン・マジカルにて察知済みよぉ! かくいうこの俺もそうだったとういうだけのこと! 無銭飲食防止のために力が必要だったドォーン!!」
ああー! やっぱりそうだと思ってたらやっぱりそうだった! あのクソジジイ! この場にいなくても私に迷惑かける気ね!
あの「ウヒヒ」っていうイヤらしい笑みを浮かべてる姿がありありと想像できるし! ムカつく!!
「なにが無銭飲食よ! ただ脅してあくどい商売してただけじゃないの!」
「うるさいドォーン! ドロドロに溶けて、お飲物専用ゴミ捨て場に行くがいいドォーン!!」
「な、なんとかしなさいよぉ!」
「うるせぇ! こんなもん食っちまえばいいんだ! あーーん!」
「ブワハハ! すべて俺の胃袋へと消えるがいい!!」
オッサンニ体が大口をあけ、その中にポテト……じゃなくて、イモケンピが吸い込まれていく!
「な、なんとぉ! この俺が作ったファーストフードをすべて食べきるとは驚きだドォーン!」
ガナルドォンは感動に涙しているけれど…。
「マズイ! バカヤロー! この世の地獄だ!」
「糞尿が俺の胃袋で暴れておるわ!」
うう、食ってる割に評価がひどすぎる……まあ、そりゃ当然なんですけど。
「ならば次だ! 切り刻まれい!! 『チョパッパー・ミート・カッター(ただし肉は薄く切っても値切りはしないドォーン)』!!」
シュパパパパッ!!
店員が肉を焼き、受け取ったガナルドォンがフリスビーよろしく投げてくる!!
ただの柔らかい肉ならともかく、焦げるほどに固くなった肉だ! 柱や天井に容赦なく突き刺さってる!
危険すぎる! ってか、さっきから食べ物を武器にすんな!!
「クッ! ゴンザレス!! あれも食べてしまうんだ!」
「ゲフィー! もう腹が一杯で食えんわーい!」
「なに? 何か他に回避方法はないのか!?」
「この俺、性教師・鬼瓦を誰と思うておるんちゅうんじゃい! 任せておかんか!!」
お! なんかゴンザレスが頼もしい!
バコンと腹部が開き、ゴンザレスがそこから何かを引き出す!
「あのクソジジイに副兵装を増やしてもらって正解だわーい! こいつでも食らえ!!」
あれ?
あの束、なんかA4の用紙っぽいんだけれど…。
「赤井43点! 青山59点! 伊能55点! 井原89点! ……カーッ! なんだコレは! バカタレが! 宇佐見! こいつは15点だとぉ! 赤点じゃぁい!!」
「ギャー! それって、それってもしかして!!」
「そうだ! 貴様らの答案用紙なのだー!!」
やーめーてー!!
なんでそんなものを撒いてるのよぉ!! しかも点数を読み上げる必要ないじゃん!!
ってか、なんか投げている答案用紙、フツーに敵のミートフリスビーを打ち砕いてんですけど!!
「やめてー! かんべんして! 私の答案だけは! 点数を読みあげないで!!」
「山中か! 山中の保険体育(性教育のみ)の点数は…」
「だから言うなってのぉ!!」
うう、なんとか、ゴンザレスから答案用紙は回収した…。
けど、まあ、敵の攻撃もなんとか回避したみたいだし……ゼェゼェ、あれ、なんて私こんなに疲れてんだろう。
「オノレらぁ!! 俺の愛のミートを粉みじんにするとはぁ! 俺の心をジューサーにかけるよりも残酷なことだドォーン!!」
「だったら最初から投げるな!!」
いちいち泣きながら文句を言ってくるガナルドォン。
逐一、リアクションがうざい! しかも、怒る度に提灯が揺れてるのがめざわりだし!
「よし! チャンスだ!」
「いや、ダメだ!」
コラ。なに、セイカ様に逆らってんのよ! このオバカが!
「なぜだ?」
「トイレットタイムだ!!!」
うっ! 二体がお尻を押さえてモジモジしている!
もうそれだけで大か小かわかるっつーの! キタナイ! キタナイ!
「排泄か? クッ! 戦闘中だぞ!」
「出物、腫物ところ構わずだ! バカヤロー!」
「俺らは出したいときに出す! そう言うとろうがぁーい!」
理不尽なことでキレまくりの二体!
クソジジイ! なんでこんな余計な機能つけたのよぉ!?
「しかたあるまい…。手洗いタイムは?」
「認めるわけないドォーン!!」
ですよねぇ!!
ってか、さっきの油攻撃してきてんすけど!!
いやぁ! 盾になるべき兵器二体はさっさとトイレいってんですけどぉ!?
「山中! テーブルやイスを利用して間合いをとれ! ヤオキチとゴンザレスが戻るまで時間を稼ぐんだ!」
「は、はひぃい!」
バシャッ! バシャシャァッ!
オタマで投げつけてくる! 熱い! 熱すぎる!
しかも、この油クサーイ! なんの油よぉ!? 色も黄緑っぽいし!!
「創立以来、一度も交換していないフライヤーの油はどうだドォーン! ゆっくり味わうドォーン!」
一度も!? それって何十年も!?
うおぉえ! ホコリとか汚れとかいろんなの混ざってんじゃないのぉ!?
「あれだけ勝ち気なことをほざいておって、防戦一方だドォーン!! 謝罪を要求するドン! 和解金は600万円だドォーン!!」
うう! この変頭ピエロめ! なに勝ち誇った笑いを浮かべてんのよぉ!
でも、マジダメ! もうダメ! 油を避ける気力も……。
「しっかりしろ! 山中! もう少しの辛抱だ!!」
「ああ、セイカ様。最期はぜひセイカ様の手の中で……一緒に逝きましょう!! あの世で幸せに!!」
「何を言っている! しっかりするんだ! クソッ! あの二人はまだか!」
ブビーッ!
ええ。ここまでトイレから音が漏れてますとも……。そりゃまだでしょう。あれだけ飲み食いしてんですから。
「アハハ、思えばひどい人生だったわ……。とくに、ラストらへんの二週間は地獄よ」
ジジイと出会った時のことが走馬燈になってよぎる……ああ、なによ。死ぬときまで出てくるんじゃないわよ。
ガッシャァン!
「待てい!!」
ピンチの私たちの前に、 ショーウィンドウを破り、何者かが現れた!
ああ、もしかしてヒーロー登場!? ってか、ええ。もうこの台詞からして、現れてたのはもう一人しか考えつかないけれど!
でも、この危機を救ってくれるならもう誰でもいいわ。溺れる者、ワラをもつかむよ!
「こんぎゃ悪徳商売じゃ! ゆるせんばーい!」
へ?
あれ?
あの、白木のジジイじゃないんですけど!!
なんか、白い服と髪は一緒だけど……ビミョーに違う!
身体は痩せぎすの白木のジジイとは違って、大きくて太ってるし、白いタキシードを着て、髪はどこかのアストロボーイみたいにクワガタみたいになってるし!
「き、キサマはぁ!?」
ガナルドォンがかなり驚いている?
も、もしかして知り合いだとか!? うん。私たちが知らないんだから当然そういう展開になるんだろうけれど……。
「スーパーフライングヂキンの"ギャンタッギー"! "カーネカス・ザンダーカー"かぁ!?」
まぁたパチモンですか!! 読み辛いし!!
「こげんなチキンどもが!! モノホンの商いちゅうもんを見せてやるけんのぉ!!」
なんか知らないけど、白黒縦縞のジイサマが怒り狂ってらっしゃるんですけどぉ!?
なにが、どうなってるのよぉ!!?
ピンチなの!? これって!? やっぱりピンチなのぉ!?
やはり巻き起こってしまったハンバーガショップでの大惨事は、突如として現れたスーパフライングヂギンの店主により、事態はより混迷へと深刻化していくのであった。
しかし、こんなのはまーだまだ序章に過ぎず、まだ地獄のような苦しみが続くのことをナミは未だ知る由もなかったのであった………
はぁ!? 今度は地獄ってなによ!!
これ以上なにが起きるってのよ!? いい加減して!!
次回、『悲劇のフライングヂキンとカーネカス!』につづーーーーく!!
無視するな!
なんなのよ! ホントにもう!!!
☆還暦型決戦兵器カタログその(5)
・品番:『S-005』
・正式名称:『糧食支援兵器ガナルドォン号』
・生体名:茂頭 六手 61歳
・生体情報:身長170㎝ 体重80kg
・主兵装:ガナルドォン・マジカル(店舗の調理器具を兵器に換装できる)
・副兵装:ちょうちん(マジカルのみ・な・も・と)
・移動方式:マジカル
・攻撃力:150オヤジー
・防御力:250オヤジー
・機動力:75オヤジー
白木卓郎博士が造りだした還暦型決戦兵器。
どんな戦地に置いてでも食糧を支給できる支援型である。
戦闘能力としての期待値は低いが、非常時に際しては別である。その際には、使用している調理器具を兵器として換装して使用できる。しかし、その兵器に使用した器具でそのまま調理するため、味は格段に落ちる。……ってか、最初から食えたものを出した試しがないけどね☆
頭部の提灯がエネルギー源であり、そこを破壊されると何もできなくなる。




