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十狂目 『年金制度を真面目に考え…ZZZ』

 超国会議事堂前にて。

 一人の若い議員が、メガホンを片手に叫んでいた。


「国民の皆さん。年金とは、支払った額を老後にもらえる制度では決してないのです!」


 議員は辟易へきえきしていた。

 年金制度をまるで理解していない国民たちに…。

 

 年金は老後にもらえるお金だと思っている人々が多いが、老後にもらう老齢年金以外にも、障害年金、遺族年金といったものもあるのだ。

 障害年金は自分がもしも働けなくなったときの保障としてもらえ、遺族年金は本人が亡くなった時に家族がもらえる年金だ。

 本来の年金制度の意味、これを知らない人が多すぎるのである。


 また老齢年金にしても、決して働いて納めた分だけがもらえるものではなく、事実、それ以上の支払いがでる分は国庫から負担しているのだ。

 加え、年金を納めるということは、所得税や住民税の支払い減額という素晴らしい恩恵があるわけである。つまり、これは国民のために作られた優良制度なのだ。


 年金支払い負担が大きいという声があるが、万が一の保障という意味では、保険料は支払った方がお得だと言えるのだろう。しかもこれは掛け捨てではない!

 それにも関わらず、世代間の不平等、つまり少子高齢化で納税者が少なくなり、もらえる金額が少なくなってしまっている…これが、国民の不満の発端ではあった。

 だが、そこはやはり民主国家のシステムとして、国民が有利になるように作られているのにも関わらず、理解が進んでいないのである。

 

 国が『国民たちのために作った制度』なのに、どうして、この国の民は解ってくれないのか…そう考え、議員は疲れ果てていたのである。


「国民の皆さん!」

「うるせぇ! 年金を寄こせ!」

「そうじゃ! ワシらの老後の生活を裕福にせんかいッ!」

「年金支給を60歳にもどさんかい! 100歳まで働けるか!! クソがッ!!」

「くーでーたーじゃ! もう我慢ならーん!!!」

「さいぼーぐなぞになってたまるか! 人間として、人間らしく生きて死ぬ!」

「火葬場で焼かれることこそ、人間じゃ! さいぼーぐなったら、壊れたら、焼却炉行きっちゅうじゃねぇか!! ふざけんな!」


 目を血走らせた老齢者たちが叫ぶ!


 いま議員の目の前、フェンスの前で立ち並ぶ老齢者たちを警備員が必死で抑えているのだった。

 怒れる彼らは、超日本国への不満が爆発し、この議事堂前に集結したのである!!


「国は公正です! このように法に従って、制度を維持しているのです! ですから、何卒、何卒、ご理解を!!」


 年金の仕組みがかかれたパンフレットを掲げる。


「そんなん読めるか! 文字が小さいんじゃい!」

「老眼の苦しみ、貴様には解らんでしょうね!!」

「お前ら議員どもは議員年金があってガッポリもらっとるからええよ! ワシらにも平等に保障せい!」

「仕組みがわかりずらすぎるんじゃ! 老人にそこまで理解できるか!!!」

「最低所得すら保障できんのに、なーにが公正じゃぁ!!」


 ついに投石が開始された!

 警備員が大声で止めるが、もはや暴動は止められない!


「しかし、それでも…」

 

 話せば理解してくれる。そう思い、議員は唇を噛む。


「HEY!」 

 

 ズダダダダンッ!!


 マシンガンが火を噴き、フェンスを乗り越えようとしていた年寄りたちはピタッと動きを止める。


「お前は…アメリケンの…マイズルズ軍曹。我が超日本帝国国民に銃撃するなんて! なんてことをするんだ!」

「HEY! イイデスカー。国家ニ反逆スル者ハ、スデニ、スーパージャポニーズ デハナイノダ!!」

「そ、そんな馬鹿なことが…。民主主義国家でありえるはずが…」

「フフン。甘イデスネー。スーパージャポニーズ総理大臣モOKシタコトネ!」

「な、なんだと。総理が…」

 

 若き議員は、驚愕きょうがくの表情で超国会議事堂を見やったのであった………。




☆☆☆




 超国会議事堂、首相室にて。

 大きなモニターを前に、超日本の権力者たちが固唾かたずを呑んで待っていた。


闇部あんべ総理。もう時間がだいぶ過ぎているようですが…」


 いかにも仕事ができそうな美人秘書が、遠慮がちに耳打ちをする。

 闇部が時計を見やると、13時15分。約束の時間よりも15分も過ぎていた…。


「…大統領はお忙しいのだ。その中、こうして会話の機会を作って下さるのだ。感謝せねばならないぐらいだ」


 そう言いつつも、眉間にシワを寄せて腕を組む。

 その他の大臣も溜息をついて渋面しぶづらだ。指で机を叩いたり、貧乏ゆすりをする。

 

 いきなり、ビビッとモニターに自動的に電源が入った。

 油断していた皆が、慌てて居住まいを正す。


「…ハーイ。スーパージャポーンの皆さん。お待たせして申し訳ありまセーン。まっことソーリね!」


 アメリケンの国旗が映し出され、そして国歌BGMと共に、画面に歯をニカッと光らせた陽気そうな男が映る。

 またなぜか、ガラガラという不思議な音までが響いていた。


「…アメリケン合衆国、大統領。ご無沙汰しております」


 闇部総理が深々と頭を下げると、画面横にいる通訳らしき鼻の長い金髪女性がペラペーラと訳す。


「オーゥイェー! 気にしないでチョンマゲ! そんなことで腹切りを望んではいまセーン!」


 大統領が英語で喋ると、金髪女性が訳すのだが、なんだか訳語がおかしい。

 だが、向こうの通訳に文句を言うわけもいかず、歯がゆい気持ちを闇部総理はグッと堪えた。


 ガラガラガラ!


「…失礼。大統領。その、さっから聞こえてくる、そのガラガラという音は?」

「OH! これデースか!?」


 大統領がポンと手を叩くと、画面が引かれる。

 カメラマンが下がって全体像を映そうとしているようだった。

 

 そして、胸しか映っていなかった大統領の全体が映し出された時、そのモニターを見ていた者は驚きのあまり声を失う。

 なんと、大統領は洋式便所の上に座り、トイレットペーパーをしきりに巻くっていたのだ!

 そう。ガラガラという音は、トイレットペーパーを巻き取る音だったのであーる!


「ハッハ! お食事中の方がいたらまっことソーリーね! こういうトイレットタイムぐらいでないと、小国超日本と話すタイムもまっこと取れないんデース! ま、超日本ごとき、トイレットタイムでもメニーメニーもったいなーいデスけどネ!」


 大統領が喋ると、すかさず通訳が訳すのだが、本当に正確に訳しているのかまったくもって疑問である。

 超日本に対する侮辱に、各大臣は悔しそうに握り拳を作って振るわせたが、それを闇部総理は眼で制する。だが、そんな総理の顎はエラが張り、額にも太い青筋が立っていた。


「で、それよりも闇部クーン。まだそちらは高齢者・年金問題がいまーだ片づいてないのデースかー?」


 大統領の目が急に鋭くなる。

 ゴクリと、闇部総理は喉を鳴らした。


「…対策はすでに立てております。Sプロジェクトは既に軌道に乗り、高齢者をサイボーグ化させ、労働力に戻すという我が国の方針は有る程度の成果をみています」


「…ホウ。それならノープロブレムなはず。バッド! にも関わらず、ミーの元には、超日本の老年者たちがクーデターをプランしてゴーしているとヒアしてマース」


 その言葉に、大臣たちは誰からともなく外を見やった。

 ちょうど、外で民衆がデモ活動しているのである。


「…大統領。アメリケンを煩わせることはない。我が国の問題は、我が国で解決する。私の任期のうちに」


「…YES。プロミスできマスか?」


「…必ずや」


 しばし、闇部総理と大統領のニラみ合いが続く。

 先に眼をそらし、大げさに両手を広げて笑い出したのは大統領の方だった。


「OK。ミーは、超日本の大和芋魂をビリーヴしマス!」

 

 その言葉に、闇部総理も各大臣もホッとした顔をする。


「ただーし、ミーはファウルは許しまセーン。ビコーズ、アメリケンはパーフェクトなカントリーだからデース。もしファウルをすれば…超日本は、こうデース!」


 そう言いつつ、大統領は水洗便所のレバーを動かす。

 ザーーーッ! と、"それ"が流れて行った。

 それが超日本の未来の一つを現すのだと知り、闇部総理は身を震わせる。


「まあ、ユーには、最終兵器『アンベノミクズ』がありますからネ」


 その言葉に、闇部総理は固まった。


「…なぜ、それを」

「フフン。ミーはアメリケン大統領。それぐらいのシークレットはゲットしてマース」


 まるでお釈迦様の手の平で弄ばれている孫悟空のような気がして、闇部総理は悔しそうに唇を噛む。


「…まあ、期待してマスよ。超日本の皆様。では、アディオス!」


 こうして、モニターはプツンと通信を途絶えたのだった……。



「……総理、大丈夫なのですか?」


 一人の大臣が、恐る恐る問う。


「問題はない」

「ですが、Sプロジェクト研究の第一人者が逃亡中なのでしょう?」

「…ウム。だが、補足はできている。浦河うらかわくん」


 闇部総理が手をあげると、美人秘書が眼鏡をクイッと上げて頷く。


「はい。白木博士は、超東京都うんももす町にある住宅街の一つに逃げ込んでいます」


 リモコンのスイッチを押すと、さっきまで大統領が映っていたモニターに、超東京の地図と、アッカンベーをして尻を突き出した白木の姿が映し出される。

 誰もが、『もっとマシな写真はなかったのか?』と問いたかったのだが、あえて口には出さない。


「居場所が解っているのであれば、すぐに迎え…いや、拿捕だほすべきではないか!」

「ええ。もちろん。手は打ちました。超警察機関や超自衛隊も派遣しました」


 超東京の地図に、赤い点が幾つも表れ、超警察・超自衛隊が動いて捕縛作戦が展開される様子が流される。


「…それで?」

「すべて失敗しました」

 

 そうあっさりと答える浦河に、誰もが絶句する。

 地図上の赤い点は一気に消滅した。


「し、失敗しただと?!」

「そんな馬鹿な! 相手はジジイ一匹だろう!?」


 騒ぎ出す大臣たちに、闇部総理はゴホンと一つ咳払いをする。


「ただのジジイではない!」


 闇部総理の言葉に、大臣たちは互いの顔を見合わせた。


「…我が国の持つ最高戦力はすでに投入しました。もちろん、新作の決戦兵器も。ですが、ことごとく破壊されています。白木博士が造りだした兵器によって」

「この意味が解るか? 超東京うんももす町には、いまや国家規模の武力が存在しているのだ! しかも、一人の人間の意志によって!」


 ふざけた姿の白木を指さし、ガンッ! と、闇部総理が机を思いっきり殴りつける。


「この国を背負って立つ総理大臣として。民間に、国が持つより強大な武力が存在すること! それは決して許せぬ! 私は宣言する! 如何なる手段をとったとしても、この白木 卓郎を捕まえ、我が国がアメリケンにも匹敵する最強国になると証明するのだ!」


「…はい。これより、私、浦河うらかわ ひとみが、Sプロジェクト技研部より、数人の優秀なメンバーを引き抜き、白木博士とその作品の捕獲作戦に入ります」


 浦河の後ろに、ザッと黒いフードをかぶった四人組が集まる。


「…うむ。頼んだぞ。浦河くん!!」

「ハッ! お任せください」


 浦河はカカトを合わせ、45度に頭を下げた。


「我が超日本は永久に不滅である!!!」


 闇部総理の魂からの叫び声が、超国会議事堂に大きく響き渡ったのであった……………。

 年金問題は色々調べ、本も読みました!

 でも、なんでか3ページまでしか読めませんでした! 眠気に襲われたのです! ごめんなさい!

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