寒いですね
湿気…水気…雨音…雨粒……。
俗に言う梅雨の季節。
正直この季節は好きじゃない。
天気が悪くて気分的に優れないから。
「お前…この時期になると保健室に引き込もんのやめろよ」
保健医が保健室でタバコを吸いながら私を注意するが、ハッキリ言わせてもらえば説得力皆無だ。
「私のは一時的なものなのでお気になさらず」
サッサっとベッドを整えて自分の寝やすいようにする。
「それより、保健室でタバコを吸うの辞めたらどうです?生徒に示しがつきませんよ」
そう告げてベッド周りのカーテンを閉め切った。
それからしばらくは珍しく晴れの日が続いていて、少しは気分が良かった。
だからこその油断と言う奴だろう。
家を出る前は晴れていたから傘を持ってきていなかった。
さらに天気予報を見ていなかったのだ。
その為生憎折りたたみ傘も忘れた。
しかも降ってくるのは学校に着く直前。
制服はベチョベチョだ。
色の変わってしまった制服で保健室に入ると、ギョッとしたようにこちらを見る先生。
「おまっ、何でそんな濡れてんだよ…」
ズカズカと保健室に入って、タオルを取り出す。
「傘持って来てなかったんですよ。途中で雨に降られたんです」
髪の毛をタオルで包んでパンパンと水気を吸い取ってゆく。
その間にも重苦しい色になった制服から水が落ちてゆく。
「ジャージ出してやるから、それに着替えろ」
吸っていたタバコを灰皿に押し付けて立ち上がる。
戸棚を開けて取り出されたジャージを、差し出され素直に受け取った。
それを持ちそそくさとベッドまで行き、カーテンを閉める。
その遮断された世界で先生の「いや、別に見ねぇよ」という不快な発言を耳にした。
とりあえず着替えが終わると、先生を睨みつけるがタバコを吹かして無視。
実に不愉快だ。
それにしても…と溜息をつく。
「寒いですね」
雨に打たれたせいで体温が下がっている。
二の腕をさすっているといつの間に近づいたのか、先生がソファーに腰をかけた。
「なんっ…」
何ですかと聞こうとした瞬間に、ぎゅっと抱きしめられた。
先生の白衣からはいつものタバコの匂い。
噎せそうなその苦い匂いに包まれて、混乱状態に陥る私。
「な、にして…」
かぁっと顔が赤くなるのがわかる。
先生は未だタバコを吹かしながら私を抱きしめる。
「大和言葉で寒いですねは抱きしめて下さいだ」
独り言のように言い、その腕にさらに力を込める。
じんわりと体が熱を持っていった。
今度こそ季節に合わせて(笑)
本編で解説されてますが
大和言葉で寒いですねは
抱きしめて下さいです
ここから二人の中は発展するんでしょうかねー(笑)
まぁ、それは作者も知らないことってことで!