一話 ああ、イケメンに出会ったよ
俺は埋まりかけていた。正確にいえば胸元から下が埋まっていた。......ファンタジーでよくある魔方陣っぽい奇妙な図形のえがかれた地面に
どうしてこうなった?
少し振り返ってみる
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俺は走った。多分、人生で自己ベストが出ている。そのくらいの速さで走っていた。理由は、
「やべぇ!は、は、は、......ま、まに、間に合わねぇ!ぜぇ、ぜぇ、くそ!こんなことなら、中途半端に、毎日、ぜぇ、歩くんじゃなく、走りゃあ、よかった!」
今日は友人の結婚式である。俺こと久留島 白人は朝まで仕事をしていたため遅れていたのだ
「つーか、何で、今日、に、限って、残、業、なんだ、よ!!」
俺は自分の仕事に愚痴りながら何度目か分からないため息を吐いた。
と、そこで、
「うわぁっ!!」
「っっっ!!」
おもいっっっっっっっきり誰かにぶつかった。酸欠不足で思考が朦朧としていたため、ぶつかってしまったのだ。謝ろうと思い相手を見てみると、
ちょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
美形の男だった
いや、なんかもう嫉妬するのもバカバカしくなるような美形だ。100人中100人が振り向く、そう言われても何ら疑問を抱かないほどだ
「わりぃ!ちょっと急いでてな!ぶつかってスマン!」
「いや、こちらこそ周りをよく見ていなくてね。申し訳ない。」
なんか俺に罪悪感を抱かせないようにフォローまでした。なんだ、この完璧なまでのイケメンは!私は主人公です、的なオーラを発しているぞ!そこら辺のやつが同じことしても何コイツ調子のってんの?って思うのにこのイケメンがやると自然に思える、何、この不思議!?
そんなアホなことを脳内で考えながら俺は最後に一言謝って、ここから去ろうとしたんだが、
『見つけました』
と、脳内に響くような美しい声が聴こえてきたと思ったら、
ブゥン
急に足元に魔方陣らしきものが現れ、まるで地面が無くなったかのように落ちた。が、俺は魔方陣の描かれていない地面にしがみつきギリギリ大丈夫だった。ちなみにイケメン君はすでに落ちている
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はい!回想終了!
さて、落ち着いて状況を確認しよう。あれは小説なんかでよくある異世界召喚だよな、やっぱり。で、その対象はあのイケメン君だろう。あんなに主人公オーラを発している存在が異世界召喚の対象でないはずがない。そこは疑っていないが俺は?多分、巻き込まれただけだろう。で、そこで俺はどうする?今、俺は手を離せば異世界に恐らく行けるだろう。が、そこでは命の保証は期待出来ない。......考えるまでもないか。俺は異世界に行かないことにした
まず自力で魔方陣の外に出てみる。......出来ねぇ、つーか、抜けねぇ!まぁ考えていると当たり前か。自力で抜け出せたりしたら異世界召喚の意味がないしな。次に助けを呼んでみる。携帯は......ポケットだ!もうすでに魔方陣のなかだよ!じゃあ、大声で叫んで見る。.....................あの......声が......出ないんですが。ちぃぃぃ!ここまで徹底しているのか異世界召喚!
ブゥンウゥン
なんかどんどん魔方陣が小さくなってきてる!?やべぇ、ヤバイ、ヤバイぞ!!このまま小さくなって消えたら俺の胸元から下どうなんだ!嫌な予感しかしねぇ!くそ!考える時間がねぇ!結局、異世界に行くしかないのか、コノヤロウ!!どうとでもなれ!!!
俺は手を離し、魔方陣の中に消えていった。魔方陣の中は真っ白で何もなかった
ああ、結婚する友人よ。スマン!行けなかったよ、結婚式。そして、その他の友人よ。これから心配を、......心配を......心配、を......しないだろうな!間違いなく!絶対に!アイツ等のことだから「白人がいない?マジか!?みんな聞け!白人が超常現象に巻き込まれた!探すぞ超常現象!!......ついでに白人も」って言う。と言うか簡単に浮かぶぞその光景が!くそ!アイツ等絶対に恨んでやるぞ、コノヤロウ!
俺はそこまで考えて自分の意識が失いつつあるのを感じた
あ、マズイ、なんか意識が、保てなく、なってきたかも。くそ!今日は、厄日、だ。絶対。ああ、せめて、家に、残っていた、ガンプラ、を、つ、く、......たっ、......たっ............
この日、世界より行方不明が二人出て世間が大騒ぎしたのだがそれはまた、別の話
白人のプロフィール
人種 日本人
年齢 22歳
身長 176センチ
容姿 中の上くらい
性格 身内に優しく、敵に容赦ない
趣味 ガンプラ
頭の良さ 結構良い
運動能力 下の上くらい