プロローグ
―人にとって大切な事とは何か
―考えればいくらでも出てくる。人ならば様々に
―その人の価値観で決まる
―世の中、面白く生きようとすればどういう事でもいい
―例え、それが死に繋がるとしても
―要は当人が如何に悔いの残らないものであるかだ
―大切なものは幾らでもある
―幾らでも
「俺たち、付き合わないか?」
「うん。いいよ」
それが始まりだった。傍から見れば何かの冗談ともとれる告白。
だが俺たちは2人して“らしい”と思った。
「ん……」
眠っていた……のか? 何時眠ってしまったのか覚えていない。
……いや、それも無理ないけど。
「すぅ……マーサ……」
「……ハハ」
息のかかるほどの距離に、俺と一緒にベッドの上で寝ている女が俺のあだ名を呼んだ。
政吉だからマーサ。
「ん……」
綺麗な寝顔だと思った。よく梳かされた柔らかいショートヘアを指ですくい、そして頭を優しく撫でた。すると起きたようで澄んだ瞳が俺を見る。そしてにっこりと笑った。
「政吉……」
「悪い、起こしたか?」
「ううん。………初めてってキツイね」
強がりなのは目に見えている。薄っすらと開く瞳が妖しく見えてくる。一瞬ドキッとしてしまった。まぁ…その、女になったからな。
ここはそういうホテルの一室。
今でも痛々しくも甘い嬌声が頭にこびりついて離れない。
高2で初体験、か。まぁそんなに珍しいって訳でも無いだろう。
「女は損よね。男の方が断然得じゃん」
「愚痴るな。あんなに乱れてたのに」
「馬鹿」
何故か、初めてだった割に感想はこんなもの、だった。別に悪くはなかったけど…。互いに好き合って、しかもこの歳での恋愛だ。興味が無かった訳でもない。実際に以前より、より
深くお互いを確かめ合う事が出来る訳だ。
…だけど、その反面ここまで登りつめていいものかと考えてしまう自分がいた。そんな自分に嫌気が差すのも事実。それじゃあいつを馬鹿にしている。
要するに、怖いのだ。
幸せを逆に怖いと思ってしまう。行き過ぎる気持ちはそれを破られた時、絶望してしまうからだ。
あいつが好きな俺、あいつを避ける俺。
どっちも俺であり、どっちが俺なのか分からない。
避けたくは無い。だが本当にそう思ってるのかといえば自信が無い。
どんどん自分が分からなくなってくるのが分かる。
これが恋のせい、と思えば納得する所もあるのだが。
まだプロローグですがどうでしょうか? このプロローグだけ見るとちょっとアレな小説みたいですが、いやらしいものではないのでご心配なく。