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私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


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千絃、下剋上を目論む3

「な……っ」

 コーデリアが目を見開く。

 木造の家の壁くらいなら穴を開けられる威力の攻撃だったはずだ。それが弾き飛ばされたのである。

「ふっふっふっ。どうやら私の立てた仮説が正しいことが証明されたようね……」

「どういうことですか?」

 腕を組み満足そうにしている千絃に、静花が尋ねる。

「蜘蛛はコーデリアの爪を食べた。そのことによってあの女と同じ属性を付与されたということになるのよ」

 これも共感呪術の話である。

 例えば蛇の抜け殻を財布に入れると金運アップ!なんて迷信がある。これは金運をもたらすという蛇の抜け殻を手元に置くことによって、その金運を自分のものにしようという考えに基づいている。ある動物の一部を身につけることで、その動物の属性を獲得することができる。

 だから蜘蛛はコーデリアの属性を手に入れることができた。

 コーデリアは水の妖精であるため、水を使った攻撃を受けてもたやすく受け流すことができる。蜘蛛たちはコーデリアの爪を食うことによって彼女の力をわずかなりとも得て、彼女と同じように水に対して強くなったわけである。

「水タイプのポケモンに同じ水タイプのポケモンを戦わせても、大してダメージを与えられないでしょ?そういうことよ」

「なるほど、無駄にわかりやすい……って、コーデリアがピンチじゃないですかっ」

「そうよー。いやー、日々偉そうに振る舞って虐めてくる女主人を追い詰められるって本当に爽・快っ!最高のエンタメだわー」

 千絃が高笑いを上げている。なんだかんだ相当鬱屈したものを溜め込んでいたらしい。

 だが静花はコーデリアの友人として、彼女をこれ以上好きにさせるわけにはいかなかった。

「なんでそこまでしてコーデリアを困らせたいんですか?」

「言ってるでしょ?これは実験なんだって。私はあの女の存在の謎を暴きたいだけ」

「存在の……謎?」

 千絃の様子が打って変わって真面目なものになる。

「そう。そもそも魔術とは無を有に、有を無にする奇跡を実現する術を総称して言うんだけど」

「……もっとわかりやすくお願いできますか?」

 静花は初っ端から挫折した。

 千絃が「これだから素人は……」と言わんばかりに眉をしかめたが、彼女なりに噛み砕いて話を続ける。

「要は何もない箱からハトが出てきましたとか、猫が入っているはずの箱の蓋を開けると猫がいなくなっちゃいました、とかそういうことができるのが魔術なのよ。

世にある魔術ってのは大体、呪文や魔方陣、儀式みたいに込み入った素材や手順が必要なわけ。だけどそれらが少なければ少ないほど、魔術としては高位なの。何もないところ、つまり0から1にすることよりも0.5から1にする方が簡単なはずだから」

 ちなみにハトをどこかから移動させたんだったら1→1。そんなものは魔術としても下位ね。ハトを猫に変えるのは難しいかもしれない。異なるものに変えるわけだから。それこそ0.5→1とか1→0.5って話しになるわね。それでもさっき言ったように材料0のところから始めるよりはよっぽどたやすい……と千絃がぽんぽんと例えを挙げる。

 魔術師ではない静花にはぴんとこなかったが、このへんは千絃も独り言のように頭に浮かんでいることを話しているようだったので、今回は理解しなくても良いのかもしれない。

「で、コーデリアはあんたの前に突然出現したんでしょう?本来生命にあるべき誕生や成長の段階を踏まず、17歳のコーデリアという存在が造り出された。これはまさに魔術よ」

「造り出された……?」

 静花は困惑した。

 千弦の物言いは妙だ。まるでコーデリアがあの日、第一美術室で「生まれた」ようなことを言う。

「ええ。魔術の中でも最高位の術式の一つ。いわゆる「模造生命」。0から1つの生命を造り出す。無から一個の存在を造り出す魔術よ」

 どんどん大きくなる違和感に静花は「ちょっと待ってください」と遮った。

「コーデリアはゲームの中から出てきたんですよ?その時に造られたとかじゃなくて。ほら、異世界転生とかあるじゃないですか」

 そうだ。静花は話しながら自分の言葉に納得する。

 当時の状況を見れば、普通に考えてコーデリアはゲームの世界から私達の世界に移動してきたのだと考える。千絃風に言えば1→1の魔術だ。彼女があの瞬間に生み出された0歳児の生命だなんて信じられない。

 だが千絃は容赦なかった。

「ゲームは虚構よ。だったら何もないところから「生まれた」ってことじゃない」

「う……っ」

「あんたの話を聞いた限りじゃ、呪文も儀式もなく唐突に出現したってんでしょ?いくらゲームのキャラクターっていうベース、言うなれば生命の設計図があるにしても、かなり0から1に近いことやっているはずなのよ」

 静花は少なからず反発を覚えながらも、千絃の言わんとするところはわかった。そして自分が今までコーデリアの出現についてあまり深く考えていなかったことに気がついた。

 コーデリアはなぜ、どうやって静花の前に現れたのか。本当に千絃の言うように、彼女は「造られた生命」なのか。

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