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私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


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27/30

悪役令嬢、自転車で爆走する3

「私が悪い?」

「だって寝ている間に勝手に爪を切られるのはホラーですよ」

「魔術的探求に善悪などあるわけないでしょ」

 食器棚の奥からバスケットを取り出しながら、千絃が鼻で笑う。

 確かにこの人に一般常識を求めても無駄そうだと静花は考えた。

「良い悪いはともかくとして、そうまでしてコーデリアと戦わなくても良いんじゃないですか?絶対勝てないんだから」

 魔術には門外漢の静花から見ても、コーデリアと千絃には圧倒的な戦力差がある。千絃がいくらゲームの登場人物コーデリアを出現させた魔術を探りたいと言っても、毎日のように突撃してはこてんぱんにやられているのである。そろそろ諦めて良さそうなものだが。

「ふっふっふ。そうでもないんだなあ、これが」

 静花の考えをよそに、千絃は不気味な笑い声を上げた。

「?」

「いつまでもあの女の天下じゃないってことよ」

 言いながら朝食のサンドイッチをバスケットに詰め終えたところで、

「チヅル!こちらはもう着替え終わりましたよ。早く髪を結いに来なさい」

と上階からコーデリアの声が飛んできた。

「あー、もうわかったわよ。急いでいるときくらい髪型なんてそのままで良いでしょうに……慌ててうまくいかなくても責任取らないからね!」

 千絃がびしょ濡れのローブを脱ぎ捨て、どかどかと足音を立てながら二階に登っていく。

 コーデリアも千絃さんも本当に朝からとっても元気だ。静花は思わずくすりと笑みがこぼれた。やいのやいの言い合う二人の声を聞きながら、彼女は憂鬱な気分が晴れていくのを感じていた。


* * *


「二人とも今日は来てくれてありがとう。あらためて自己紹介しようか。生徒会長の日多木優人ひたきゆうとです」

 生徒会の初顔合わせは、優人の穏やかな挨拶から始まった。

 放課後の生徒会室。一教室と同じ広さの部屋には黒板の前に白い長机が二つ並べてあって、そこを囲んで打ち合わせなどができるようになっていた。今いるのは優人を含む5人の生徒だ。

 黒板側の前に立つ優人は色素が薄いのか、髪が窓から差し込む陽光に透けてきらきらとしている。肌は白く彫像のようで、静花は密かにうっとりとした。

「会計の青井小蝶あおいこちょうです」

 優人の次に名乗ったのは、机の右側の席に座るベリーショートの少女だ。先日、コーデリアが生徒会に乗り込んだときに、二人の生徒会入りを大反対したのが彼女である。未だ内心納得していないらしく、静花らの方を睨んでいる。

「書記の基山友晴きやまともはるでーす。よろしくー」

 うってかわって気安い挨拶をしてきたのは、机の左側、つまり小蝶の向かいに座る少年だ。癖毛らしく髪に緩くウェーブがかかっている。大柄で、身長は優人より高いだろう。彼は二人に向かってひらひらと手を振って見せた。

「コーデリア・ウンディーネです。よろしく」

「ええと、井本静花です。よろしくお願いします……」

 黒板に対し正面に並んで座った二人が、それぞれに名乗る。コーデリアはいつも通り新参者なのに自信たっぷり。一方で静花は緊張気味だ。

「副会長の赤星は今、病気療養中で休学していてね。しばらくはこの5人で生徒会を運営していくことになります。今まで空席になっていた広報をウンディーネさんに、庶務を井本さんにお願いしたいんだけど、二人とも良いかな?」

「良いでしょう」

「頑張ります……っ」

 「ありがとう」とにっこり笑って、優人は二人の反対側の席に着いた。

「それじゃあ早速なんだけど、体育祭での二人の仕事について……」

と彼が話そうとしたとき、「ちょっとよろしいですか」とコーデリアが遮った。

「何よ?今から会長が話そうって時に」

 小蝶が眉をしかめる。

「重要な用件です。まずこの度は生徒会に入部を許していただきありがとうございます。しかしまだ入って日が浅いというのに、体育祭という大きな催しが迫っています。まだ実務についてよく知らず、未熟な新参者にとってはこの大舞台で皆様のお役に立てるものか不安で胸が縮む重いですわ」

 よよ……と涙をにじませるコーデリアに、その場にいる全員が「嘘をつけ!」と心の中で叫んだ。

「皆様のお役に立つためには、生徒会の先達である皆様からしっかり業務を学び、必要なときには密に連携を取っていく必要があります。そのために何より重要なのはできるだけ早く信頼関係を構築することです。そこで提案です。手っ取り早く気安い関係を築くため、お互い名前で呼び合いませんか?」

「え?」

 思わぬ提案に静花は勢いよく隣に首を向けた。

「主にシズカのことを!」

「ええっ!?」

 全員が目を見開く中、驚きすぎた静花は椅子から転げ落ちかけた。

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