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私のヒーローは悪役令嬢  作者: ウール100%


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14/27

悪役令嬢、生徒会に乗り込む1

「学校、どうだった?これからもやっていけそう?」

「もちろん。この世界の学生の様子も授業内容も私にとって見慣れぬものでしたが、興味深く思いましたわ。シズカ、私うまく馴染んでいたでしょう?」

「うーん、まあ初日にしては、そうだね……」

 放課後、静花とコーデリアは教科書を鞄にしまいながら話していた。

 今日は静花もこのまま千絃宅……今やコーデリア宅に一緒に行って、コーデリアの命令で千絃が焼いているはずのケーキを食べる予定である。

「ふふ、ありがとうございます。だけどこのくらいで満足する私ではありません。最終目標は静花を日多木なにがしに嫁入りさせること。ここからが勝負ですわ」

 こぶしを握りしめるコーデリアに、

「ちょっ、ここ学校!あんまりそういうこと大きな声で言わないで」

静花が慌てて注意する。

「誰もいませんわ」

「それはそうだけど、でも壁に耳あり障子に目ありって言うし……」

「そうよ、ここにいるわよ」

 二人は驚いて、声のした方向に振り返った。

 教室の扉の向こうに半分、黒いおかっぱ髪の、純日本風な容貌の少女が姿を見せていた。

 コーデリアは自分がまったく彼女の気配に気づかなかったことに衝撃を受けた。

 こんなことは今まで一度も無かった。この娘は声も身体も小さく、動きは必要最小限で、容貌も平凡。全身見回しても個性と呼べるものが一つも見当たらない。

 それが意味するところはつまり。

「なんて、地味……!」

「私より地味な人がこの学校にいたなんて……」

 口々に驚きの言葉を漏らす二人に、

「うるさい、地味地味言うんじゃないわよ!」

と怒鳴りながら彼女は教室に入ってくる。

「失礼ですが、どちら様?」

「3組の河井蜜かわいみつ

 彼女は簡潔に名乗った。

「ほう、カワイさん。私達に何か用ですか?」

 コーデリアが一歩前に出て訊ねる。

 彼女は女子生徒の中でも背の高い方なので、蜜と向かい合うと見下ろすような感じになった。

「ええ。でもあなたにじゃなくて、そちらの地味眼鏡だけに用があるのよ」

「わ、私?」

 蜜がコーデリアの背後に半分隠れるようにしていた静花にびしっと指を差す。

「そう、井本静花。あなたのような地味な人間が日多木君に好かれようとしているなんて思い上がり甚だしいわ」

 その言葉に静花は蜜がこの場に現れた理由をおおよそ察した。

 彼女はいつぞやの三人娘のように日多木君のことが好きで、彼に近づこうとする女を排除しようとやって来たのだ。

「あなたに地味って言われてもねぇ……」

 コーデリアが呆れたように言うが、

「外野は黙っていなさい」

と蜜は言って捨てた。

「う、た、確かに私は地味ですけど、でも」

 何とか言い返そうとする静花を遮って、蜜は続ける。

「日多木君のことが好きな人はたくさんいる。皆、あなたより美人で、あなたより頭が良くて、あなたより目立つ人ばかりよ。そんな人達に勝てると思っているの?」

「あなただってシズカのことを言えないのでは?」

「だからあなたには言っていないわ」

 蜜はついつい口を挟むコーデリアを追い払うような仕草をして、

「それに私には少なくとも一つ、井本さんに勝っていることがある」

と言い、まっすぐに静花を睨み付けた。

 自分と同レベルに地味な少女から放たれるには鋭すぎる眼光に、静花はごくりと息をのんだ。

「そ、それは……」


「私は、日多木君と同じクラス!」


「……」

 静花は押し黙った。

「……」

 コーデリアも無言だった。

「井本さんよりは一段上にいるのよ、私は!それに比べてあなたは日多木君と関わる理由も機会もないでしょう。無駄な努力はやめることね」

 蜜が拳を握って力説する。

 そして、

「忠告はしたわよ。このまま大人しく身の丈に合った学生生活を送りなさい」

と言うと、ぴしゃりと戸を閉めて教室を出ていった。

 後にはあっけにとられた二人だけが残されたのだった。



 2組の教室を出てずんずんと大股で歩いていた蜜は、廊下の途中で足を止め、その場にしゃがみ込んだ。

(何てことを言ってしまったんだ、私は!?)

 今になって後悔のあまり、崩れ落ちたのである。

 元来、蜜は他人に啖呵を切ることができるような種類の人間ではない。ただ日多木君のことが好きなだけの、地味で大人しい、平凡な少女なのである。

 そう、彼女は静花と同じく教室の中で誰も気に留めないような、存在感のない生徒だった。一緒に行動するような特定の友人もいない。

 だから2組と合同で体育の授業を受けているときに、隣のクラスに自分と同じような類いの人間がいることに気がついた。そしてその静花という生徒に対し、共感とそれ以上に強い同族嫌悪を抱いていた。

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