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バレてはつかまるの世界線シリーズ

悪役令息を助けたら何故か幸せになっていた悪役令嬢の孫の私

作者: 桃井夏流

ひょっとして私、悪役令嬢ではないかしら?の孫のお話。孫はモブだけど転生者です。転生者が多過ぎる世界線。ラブコメです。

誤字報告ありがとうございます、訂正しました。


今日我が家に来たグレリア・アーワイド公爵令息ってあの『溺愛と偏愛の狭間で』に出てくる偏愛のグレリアじゃない!?


突然だが、私には前世の記憶がある。私は大学の入学式に間に合うように慌ててたところ、信号無視の車に事故られて死亡。せめて入学したかったなぁ。と言う。で、何故遅刻しそうだったかと言うとその小説『溺偏』を遅くまで読んでしまっていたからなんだな!

『溺偏』はヒロインの伯爵令嬢クレアが王立魔法学園に入り、その素直さと愛らしさ、聡明さでメインヒーローの第二王子カステッドに溺愛される話だ。一方グレリアはクレアに惹かれながらも、昔の事件のせいで人間不信であり、クレアを試すような行動を繰り返す。悪役令息の立場だ。そしてその過去の事件と言うのが、グレリアに起きた毒殺未遂事件である。もうこの事件は起きた後だ。防ぎ様が無い。

今グレリア様はハンストを起こしている。先程会ったグレリア様はもう痩せ始めていた。何とかならないかと年が同じ私が居て、同じ公爵家の我が家に相談に来たのだ。お父様は私の事を信頼出来る者にしか話せない、と黙っていたけれど…。私はフェリチーナお祖母様の血を受け継いでいる。状態異常無効化魔法所持者なのだ。


「シュゼットちゃん、あなた転生者でしょう」

「なんのことでしょうかお祖母様」

「そう言うの良いから。嫌ねぇ、磁場でもあるのかしらこの世界。転生者が妙に多いのよねぇ」

「さっぱりしてらっしゃる」

「南の隣国の前では気をつけなさい。お嫁に下さいって言われちゃうからね」

「ワァ、面倒くさい国!」

「まぁ私が悪役令嬢だったみたいだからシュゼットちゃんは平和に暮らせると思うけど、気をつけなさいね」

「はいお祖母様!」



フェリチーナお祖母様!平和に暮らせる未来を自ら叩き壊してしまうかもしれません!!


だってさぁ、私がこのまま見捨てたらあの人誰も信じられなくなっちゃう訳じゃない?凄い心に引っかかるものー。私グレリア様嫌いじゃなかったし。むしろグレリア様派だったし。最後まで読めなかったけど。今更ながらに心残りだわ。


ここは元王女のお母様から口説き落としましょう。お母様さえ落とせば後からお父様はついてくる。我が家はそう言う力関係だ!リカルドお祖父様に請い願って降嫁して来た大切なお姫様だからね!今もお父様はお母様強火同担拒否だからねー、あーこの単語使っておいて懐かしいわ。そんな事考えてる場合じゃなかった。お母様を口説かなければ。


「お母様。今日いらしたグレリア様。痩せてしまわれてお可哀想です」

「そうね。どうにかなると良いわね」

「アーワイド公爵家は王族派ですよね?どうして助けてあげてはいけないのですか?」

「うーん、王族派寄り、だからかしら。まだね。もしシュゼットちゃんがどうしてもグレリア令息を助けたいなら、味方に引き込むくらいの事をしないと駄目よ。あと、秘密を絶対黙っていてくれる、と言う確約ね」

「つまり」

「婚約、のち結婚するなら味方してあげる」

「やはりそう来ますか」

「どうする?」



シュゼット・ナッシュワイト、覚悟を決める時です。



「します、婚約。ただ、結婚は、愛が生まれたらにして下さい。秘密は黙っているよう誓約魔法をかけていただきます。お願いしますお母様」


だってグレリア様はクレアちゃんを好きになる筈だもの。愛しても、愛されないのはちょっと助ける対価として私には重過ぎる。


「……しょうがないわね。ちゃんと落とす努力はするのよ?」

「はい!それではお父様への根回しよろしくお願いします!」

「私も娘には甘いのよね。全く、お返事だけは良いこと、この子ったら。私のシュゼット。頑張るのよ?」


すみませんお母様。シュゼットは頑張りません!だってグレリア様が好きになるのはクレアちゃんだから!



そんな訳で場を整えていただきました。


「改めて、シュゼット・ナッシュワイトです。この度は随分恐ろしい目に遭われた様で、頑張りましたね」


グレリア様が光の無い目で私の鼻の辺りを見ている。目が合うのも怖いのだろうか。お労しい。


「あの、誓約魔法をかけていただく事になります。そのかわり、グレリア様には今後毒は効かなくなります」

「……え?」

「私との婚約は、内緒ですよ?無いものと思って頂いて構いません。それなりに上手くやっているように見せていただければ、お好きな方が出来たら解消出来るよう努めます」

「…随分、聞いていたお話と違います」

「反王族派にさえならなければ、大丈夫です。後はこのシュゼットが何とかします」


グレリア様がようやく困惑した眼差しを私に向けた。


「どうしてそこまでして下さるんですか?ナッシュワイト家は公爵家の中でも四大公爵家と同等。我がアーワイドは一公爵家です。理由がありません。正直ありがたいお話ではあるんでしょうけど…」

「裏がありそうで怖いですか?」

「すみません…」


どうすれば信じてもらえるかなぁ。これ、言っちゃっても良いかなぁ?まぁこの後誓約魔法かけてもらうからそれも含めてもらえば良いかな…。


「私転生者なんです」

「え。転生者ってあの、南の国が躍起になって探して祀ってるあの?」

「はい、その転生者です」

「本物…?」

「証拠を出せと言われると今すぐは難しいです。車とか作れないですし」

「くるま?」

「機械の馬車的な物です。それに轢かれて前世私は死にました」

「きかいの馬車…それは痛かったでしょうね」


なかなか優しい子である。好感度アップ。


「痛い!と思う間もない感じです。即死だったと思います。まぁそれは置いておいて」

「置いておいて?」

「私の前世にとある小説がありまして。そのヒロインに偏愛を抱くのがグレリア様、貴方でした」

「偏愛!?」


お、食いついてきたな、よしよし。


「今のまま育つと貴方は誰も信じられなくなります。今、グレリア様が私を信じられないように」

「………それは」

「好きな子も信じられない未来なんて変えたくないですか?ちゃんと人を愛せる人になりたくないですか?」

「なりたいよ!なりたいけど…義理の母に殺されかけて、もう嫌なんだ!怖いんだよ!」


義理の母に殺されかけたのか。それは信じたくもなくなるなぁ。でもここで諦めては駄目だ。


「グレリア様、多分信じても大丈夫、から始めませんか?」

「…何それ」

「例えば私!今多分信じてみても大丈夫な物件No.1!だって貴方に提示してる内容、ただの私の自己満足ですもの!」

「自己満足?あんな僕に都合の良い内容が?」

「えぇ!だって私には見て見ぬふり人生もあった訳ですが、と言いますかそっちが原作の本筋。私がやっているのはおそらく原作改変になるでしょう。ヒロインのクレアちゃんが転生者だった場合ガチ嫌われてザマァされるコースです」

「シュゼットの言う事は難しい」

「転生者ワードなので分からない所はサクッと流して下さいな。そんな訳でそんな危ない橋を何故渡っているかと言うと…」

「言うと…?」

「寝覚めが悪いからですわ!!」


わ!わ!わ!わ……とエコーがかかりそうな感じで私が言うと、グレリア様は実に微妙な表情をされた。


「そこは嘘でも僕が好きだからとか言うべきなんじゃないの?」

「嘘、お好きです?」

「嫌い」

「でしょう?ならこれが正解なのです。私は自分が嫌な思いをしたくないから原作を改変しちゃっても良いか⭐︎って思っているだけなのです。なのでグレリア様は安心して私と婚約して誓約魔法をかけられるまでは我慢して、後は毒の効かない人生を歩んでいただければ歪みを少なくて済むかと!」

「……毒だけ効かなくても、継母に殺されそうになる人生は変わらない」


そっか、そりゃそうだなぁ。うーん、どうしようか。どうしたら良いかなぁ。


「じゃあ我が家に婿修行と言う形で滞在してはどうです?」

「君簡単に物事決めすぎじゃない?」

「あ、そう言う事仰います?言われますけど。この前も従兄に『お前豪速球なんだよな。ちょっと物事の機微ってやつ考えた方が良いぞ』って言われました」


まぁその従兄、貴方の恋のライバルのカステッドなんですけどね!


「激しくその人に同意する」

「あらぁ、仲良くなれたら良いですわねぇ」

「いや、多分仲良くはなれない。きっとライバルになると思う」

「え?出会う前から?」

「うん。なんかそんな雰囲気を感じ取った」


??そうなんですか、運命の恋敵なんですかね??


「ねぇシュゼット、都合が良いかもしれないけど、僕、君なら信じられそう」

「まぁ、都合が良くて良いのですよ。ではまずお父様に婿修行と言う名を借りた保護の話を通してもらいましょう」

「名を借り無くて良いよ。いずれ僕は君のお婿さんになる訳だから、何も違わないでしょ」

「いやいや、大分違います。いずれヒロインが現れたら困るでしょう?」


何憑き物が取れた様に良い笑顔になってるの?


「いずれ現れる誰かより君を信じたんだシュゼット。お願いだから裏切らないでね」

「え、あ、うん。裏切るつもりはないけど」

「それなら君は僕のお嫁さんで僕は君のお婿さんだ。これから頑張るね。手強い恋敵も居るみたいだし」

「うん?なんか良くわからないけど随分前向きになった様で」


私の手を取ってグレリア様は跪いた。


「君のおかげだよシュゼット。君の話を聞いていたら自分がなんだか凄いちっぽけな事で悩まされている気がしてね」

「いや、大分重たい内容で悩まれていましたよ?」

「うん、そうなんだけど。このくらいで挫けて居たら君は手に入らないだろうなと思ったら俄然やる気が出てきたと言うか」


はにかむように笑うグレリア様は非常に可愛らしい。


「やる気が出て来た事は喜ばしい事ですね。ではお父様の説得はグレリア様にお任せしようかしら」

「え、えぇ…いきなり難易度が高くない?」

「コツは如何に私のお母様に利益になるかを説くことです」

「やっぱり凄く難しい!!」

「ふふっ、年相応の反応を見られたので許して差し上げますか」

「…シュゼットは少し意地悪だね」

「あら、意地悪な女はお嫌いですか?」


揶揄ってそう言うと、グレリア様は少しむくれた後、そっと握っていた手にキスをした。


「いいえシュゼット。貴女なら、なんだって。僕を捨てないなら何をしても許して差し上げますよ」


これは揶揄い過ぎたわ。何でこの歳の子がこんな色気があるの?もしかしてグレリア様も転生者だったりする??


でもそんな表情は一瞬の事で。


「でもあんまり苛めると、噛み付きますからね」


パチリとウインクしたグレリア様は、やっぱりまだまだ可愛らしかった。




あれから六年。私達は王立魔法学園に入学する日を迎えた。


「やっぱりシュゼットには敵わなかったなぁ」

「グレリアには剣技があるのですから良いではないですか。魔法は私に譲って下さいまし」


入学式の挨拶を任された私に、人が割れて道を作る。


「よぅ、首席様、次席様」

「まぁ、カステッド殿下。ご機嫌麗しゅう」

「カステッド殿下。ご無沙汰しております」

「で、いつグレリアはナッシュワイト家から出て行くんだ?」

「私は婿入りですから出て行く事はありませんよカステッド殿下」

「お前が望むなら城に部屋を用意してやっても良いんだぞ」

「あら、カステッド殿下にそんな権利がお有りで?叔父様にお聞きしておきますわね」

「シュゼット、お前少しは変化球を投げられるようになったんだな」

「人は成長するものでしてよカステッド殿下」


そんな私達を遠巻きに見ている人達の中に私は見つけてしまった。表紙、挿絵でしか描かれていないけれど、彼女がきっとクレアちゃん!


「グレリア、カステッド殿下。ちょっと」

「なーにシュゼット」

「なんだシュゼット」

「あの空色の髪の可愛らしい子を見て何か思いません?」

「空色?誰?そもそもシュゼット以上に可愛い子なんて見た事がないからなぁ」

「うわ、お前目が悪いのかグレリア。医師を紹介してやろうか?」

「要らないです。殿下は少し素直になれたら良いですね。まぁ私はずっと永遠にそのままで居ていただけたらと思いますけど」

「グッ…性格悪いぞ、おいシュゼット、お前の婚約者性格悪い」

「少しくらい性格悪い方が味があって飽きないんですのよ殿下。夫婦円満の秘訣ですわ」

「シュゼット、夫婦だなんて」

「それにほら可愛いでしょう?」

「……勝手にやってろ」



うーん、これは原作改変どころかルートすら成り立たなさそう。グレリアはもう諦めて貰おうと思ってたのだけど、カステッド殿下まで原作と性格違うのはどうしてかしら?


その後も空色の髪の少女は私達に関わる事は無く。


代わりに南の隣国からの留学生である第三王子に転生者だとバレかけて求婚されて、キレたグレリアが決闘を申し込んで大規模なイベント事になったり。


それにカステッド殿下がツンデレだった事が発覚して、自棄を起こした殿下が勝ったグレリアに更に決闘を申し込んで叔父様(陛下)にめちゃくちゃ怒られたり。


そんな事をしている間にいつの間にか学園を卒業して、今日この日を迎えている。




「シュゼット、綺麗だ」

「ありがとう。グレリアもとってもかっこいいわ」

「ははっ、子供の私に聞かせてあげたいな。君にそう言われるのが夢だったから」

「まぁそうなの?本当にかっこいいわよ。流石私の旦那様だわ」

「無事に今日を迎えられて嬉しいよ」

「あの日の私に教えてあげたいわね。捕まったら離して貰えないから簡単に手を差し伸べては駄目よ、って」

「……こんな日までシュゼットは意地悪だ」

「さっきカステッド殿下と決闘していたでしょう。負けたら私の花婿はどうなっていたのかしら」

「うっ、負けるつもりは…」

「私がどんな気持ちになったと思うの?」

「ごめん、悪かったよ。だって殿下が『もうお前の周りには沢山の人間が居るだろう。いい加減シュゼットを返してくれ』なんて言ってくるから我慢出来なくて」

「カステッド殿下の入場を禁止しましょう。私あの人に花嫁姿を見せる気無くなったわ」

「君の身内なんだから、駄目だよ。我慢」

「……世界で一番幸せな花嫁にしてくれたら我慢する」

「どうしたらなれるの?」




「グレリアが私を世界で一番信じてくれたら!」




シリーズ化しております。ひょっとして〜以外はほとんど絡みが無いので大丈夫です(何が)

いつもシリーズ化すると失敗するのですが、今回はどうでしょうか。少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

評価、ブクマ、リアクション、ありがとうございます。励みになります!

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