ep.2 小さな確信
ごく普通の高校生活を送っていた相川蓮。
しかし「未来を垣間見るような違和感」に悩まされ始めたとき、隣に現れたのは親友・小田切翔の軽やかな笑い声と、転校生・篠宮彩花の静かな視線だった。
平穏と非日常の境界線が揺らぐ教室で、三人の言葉が交差する。
それは友情か、恋か、それとも――もっと暗いものか。
誰を信じ、誰を疑うのか。
ほんの小さな選択が、未来を決定的に変えていく。
第二話 小さな確信
翌朝
「小田切翔、欠席」
担任の声が教室に響いた瞬間、僕は思わず顔を上げた。
黒板に赤いマーカーで線が引かれる。
(……やっぱり休んだ)
昨日の胸騒ぎが、そのまま現実になった。
偶然──そう思いたかったけど、鼓動が速くなるのを抑えられなかった。
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放課後
授業が終わるころには、体が妙に重かった。
熱はないのに、全身がだるい。机に頬を伏せると、鉛を飲み込んだみたいに内側が重い。
「……相川くん」
背後から声。振り返ると、篠宮彩花が立っていた。
黒髪を束ね、涼しい表情のままこちらを見ている。
「今日、顔色悪いよ」
「……そうかな。ただちょっと疲れてるだけ」
「無理してるように見える」
彼女はそう言って、じっと僕を見つめた。
まっすぐで、逃げ場のない目。
「……体育のあとからでしょ」
「……!」
言い当てられて、言葉が喉に詰まった。
なんで分かるんだ。誰も気づいてないのに。
「……気をつけたほうがいいよ。無理すると、長引くから」
彩花はそう言って微笑んだ。
それはほんの小さな笑みだったけど、胸の奥を刺すように残った。
(……なんで僕のこと、こんなに気にするんだ?)
彼女の背中を目で追う。
昨日までと同じはずなのに、彩花の存在が少し違って見えた。
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二日後
「おーっす! 復活だ復活!」
翔が元気よく教室に入ってきた。
その声だけで空気が一気に明るくなる。
「大丈夫なのか? 結構しんどかったんだろ」
「いや、それがさ……なんか変なんだよ」
翔は笑いながら席に座る。
「俺、いつもなら一週間は寝込むのに、今回は二日で治ったんだよな。むしろ体軽いくらい」
「……そうなんだ。良かったな」
僕は笑って答えたけど、手の中で鉛筆が少し震えていた。
昨日も今日も、僕の体はまだ重いままだった。
⸻
放課後
窓の外に夕焼けが広がる。
ふと前を見ると、彩花がこちらを振り返った。
目が合った瞬間、彼女はふっと笑みを浮かべた。
ただそれだけ。
けれど僕の胸は、鼓動を速めずにはいられなかった。
(やっぱり……彼女は何か知ってる)
(でもそれ以上に……なんで、俺を見て笑ったんだ?なんでそんな俺に構うんだ?)
胸のざわつきは、もう“違和感”だけじゃなくなっていた。




