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第四十三話 土方、死す

第 四十三話   土方、死す



「マズい!」 花が鈴に肩を貸し、影に隠れる。



土方と多田も隠れ、鉄砲を構えた。


『ドクン ドクン……』

(心臓がウルサイ……敵に気づかれそうだ) 花の心臓の音が激しくなっていく。



「まだ、発砲するな。 敵に気づかれてしまう……」 土方は、多田に小声で話す。


多田も頷き、花と鈴の周りを見渡していた。



「―はっ」 花が突然、発砲した。


“ バンッ バンッ ” 銃口が土方と多田の方を向けていた。



「血迷ったか?」 土方が叫ぶと、後ろで音がする。


“バタッ ”  「えっ?」 土方と多田は唖然としていた。



花が鉄砲を向けたのは土方ではなく、後ろで土方を狙っていた新政府軍の兵士であった。



(気づかなかった……) 



花は、『クイッ』 っと、顎を動かして土方に合図をする。

これは、「行くぞ」の合図である。



そして、新政府軍が待ち構えている近くまで来ると、足を止めた。



「ここを突破しないと先に行けないのよね?」 花が地図で確認する。


「そうだな……三人で行けるか?」 多田は、遠くから新政府軍の人数を数える。



「ざっと二十人かな……」 多田が言うと


「鈴ちゃん、ここから動いちゃダメよ」 花がそう言って、前に歩きだす。



「花さん……」 鈴が弱々しい声を出すと、


「すぐ戻ってくるから♪」 花はニコッと笑った。



土方が手で割り振りをすると、三人は散っていく。



そして

“バンッ バンッ ” と、銃声が響いた。


仕掛けたのは花だった。



「本当に凄いな……」 土方は驚いていた。


ここから激しい銃撃戦になっていく。



(さすがに二十人じゃなかった……もっと居たな)

多田は反省していた。



土方は花の後ろに回り、後方射撃をしていた。


(女ばかりが活躍じゃ、かっこ悪いな……)

土方が花の前に出ようとした時、



「もらったー」 敵兵が横で待ち構えていた。


(しまった!) 土方が観念した時

“パンッ ” 


 鉄砲とは違う、軽い音がする。



「気をつけてください」 花が拳銃で敵兵を撃っていた。



「そんな物まで持っていたのか……」 土方は、負けを認めたような顔をしてしまう。



しかし、銃撃戦は終わらない。


「二十人じゃないんじゃないか?」 土方が多田に大声で言った。



しかし、多田は聞こえていないフリをしていた。


「私、二十人以上は倒しているわよ!」 ついに花まで言い出したので



「ごめんなさい……見誤りました……」 しっかり謝っていた。



「このままじゃラチがあかん。 前に出るぞ!」

土方は大きく前方に出た時



“バンッ……”


花や多田も、この発砲音だけがスローに聞こえた。



「???」 花と多田は不思議に思った。


そして、この発砲音が聞こえた瞬間に土方の身体が宙を舞った。



「土方さま―っ」 花の声が悲鳴のように響き渡る。


「えっ?」 鈴も、花の声に反応する。



土方の身体が地面に叩きつけられ、

「土方さまー」 多田と花が土方に駆け寄る。



「くっ……良いところを見せようと思ったのにな……」



そう言って、土方は目を閉じた。


「土方さまーーっ」 花は叫んだが、土方の目は開かなかった。




『ビクッ―』 多田の背中に寒気が走る。



ふと隣の花を見ると、明らかに顔つきが変わった。



「花さん、ダメー」 鈴が叫ぶ。


「???」 多田は何が起こっているか分からなかった。



花はキレていた。 

この中で、鈴だけが知っている。


会津戦争の時、鈴や晋太郎が撃たれた時の事を思い出していた。



この時は多田が新政府軍に潜入していた為、知らない。


「ふーっ ふーっ……」 花の呼吸が荒くなっていく。


(何が起こっているんだ……?) 多田は襲い掛かる寒気に、必死に耐えていた。



すると、瞬間移動したかのように花が消える。


(早い―)


そして敵陣に向かって鉄砲を撃ちだしていく。


五人を狙撃し、倒れている新政府軍の兵士にトドメをさしている。


 

(あれがキレた花さんなのか……) 多田に襲い掛かる寒気の正体が判った瞬間である。



そして、花が進んでいくと……


「ここまでだ! もう降参しろ!」 新政府軍の兵士の十人ほどが、花に銃口を向けていた。



(ここまでか……) 多田が諦めた時である



“ドカーン  ドカーン ” 突然、大砲の弾が飛んできた。


敵兵が大砲に気をとられた瞬間に、花は素早く移動していく。



そして物陰から花が狙撃を開始する。


大砲と花の鉄砲により、敵軍は全滅した。


(あれ、本当に花さんだよな……?) 多田は震えていた。


キレた花が、鬼神のように見えて怖かったようだ。



そして、鈴が飛び出す。

「花さん、もう終わったよ。 戻ってきて」 叫ぶ鈴に声に、多田も正気を取り戻し



「花さん、もういい」 多田も必死に止めるが、花は敵兵の死体に鉄砲を撃ち続けていた。



「止めるんだーっ。 土方様がー」 多田の叫びで、花の射撃が止まった。



そして、花の顔が元に戻り

「土方さまー」 走りだした。



土方を抱き、花は叫び続けた。

「土方さま! 土方さま……」


しかし、土方は動かなかった。



新選組 副長、 土方歳三は散った。



花たちは、土方に手を合わせる。


そこに新政府軍とは違うような声がする。


「おーい……近藤 花さんは居るかーっ?」


男性の声がし、鈴が気づく。



「花さん? なんか呼んでるよ」 鈴が花の肩に触れると

「私を?」 花も声がする方に振り向く。



「失礼! 近藤 花さんとちゃいますか?」 


「花は、私ですが……」 花が目を丸くする。



「よかった……迎えにきました」

「迎え?」 首を傾げる。



「はい……土方様に文が行ってると思うのですが……」 水軍の兵士が言うと、



「あの……こちらへ」 多田が案内をする。


そこには土方が横になっていた。


「うわ……土方様……」 水軍の兵士は膝間づいてしまう。



「どうしたんだい?」 そこに金子が現れると


「俊江様、土方様が……」 


「なんてことだ……」 金子も土方の死を惜しんだ。



「あの……どちら様でしょうか?」 花が小声で聞くと


「私は、金子 俊江。 村上水軍の末裔だ」


「そうですか……存じ上げずに、すみません。 私は会津の、近藤 花です」



(近藤 花? この娘が? こんなに華奢きゃしゃな体の娘が、戦の……?)

金子は絶句していた。 噂程度に聞いていた者とイメージが違い過ぎたようだ。



「あ~ 派手にやったな~」 木田と村田も現れる。


「あれ? 木田さん、村田さん……」 花が声を掛けると


「お~、花! 久しぶりだな」 村田が手を挙げる。


「あの……どうして此処に?」 花は不思議でならなかった。


越後で一緒の船に乗り、蝦夷に居るものばかりと思っていたのだ。



「白木様が、お前を助けると言ってな……この村上水軍を使ったのさ」

村田が説明すると



「白木様が? そうですか……ありがとうございます。 では、五稜郭までお願いします」

花が冷静な口調で言うと



「いや、箱館は無理だ……新政府の軍艦がウヨウヨ出張でばっているからな……」


「では、何処に行くのですか?」 花の目が鋭くなる。



「京だ……」 金子が言うと


「京? はっ、無理です―」 花は簡単に返答してしまった。



「何でだよ? ここまで来たのに……」 金子はアタフタしている。


「晋太郎さんが箱館に居ます。 私は主人を助けないといけないのです」

花が頑なに拒否をすると



「それは、お前の主人ってことか?」


「はい、そうです」 


「私の主人でもあります」 何故か、鈴が出しゃばってくる。



「どういう事だ? どこかの国の石油王なのか?」 金子が目を丸くする。



(本当に、変わらない二人だな……) 木田や村田も、二人を知っていた為、苦笑いをしていた。



「私たちも仕事で来ているんだ。 大人しく船に乗りな」 金子は我慢の限界にきていた。



「いいえ、結構です。 多田さんと鈴ちゃんを安全な京に連れていってあげてください。 私は晋太郎さんの傍に居ます」 とにかく頑固な花が拒否を続けていると



「時間が無いんだ。 無理矢理にでも連れていくぞ」 金子が花の腕を掴む。


“パンッ ” 


花は、金子の頬を叩いた。



「やるね~ 小娘……」


「やりますよ。 オバサン……」 花が金子を睨む。


「……えっ?」 花と金子以外の全員が絶句してしまった。



その空気は、土方の死を忘れさせる事態となっていく。



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