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第二十六話  時よ このままで

第二十六話    時よ このままで



新政府軍の猛攻があった翌日、穏やかな朝を迎えていた。


「おはようございます」 花は、落ち着いた声で皆に挨拶をする。

そして花は目立っていた。 新選組の羽織が特に目立っていたのだ。



「おはようございます。 花さん」 鈴が花に挨拶をすると

「おはよう…… んっ?」

 “鈴の顔つきが おかしい…… ” 花は気づいた。


「それで晋太郎さんと進展はあったのですか?」 鈴の顔が真面目な顔になり、花を見つめる。


「この状況で進展なんて……」 花が否定している。


朝から女子トークなど、余裕さえ感じるような雰囲気であった。



 その時、

「く、来るぞー」 見張りの声が響く。


花は急ぎ、鉄砲隊の持ち場にいた。


この日も朝から銃弾の雨が降り注ぐ。

両軍の怪我人も増えながら、勝敗はつかずにいた。



昼頃になり攻撃のピークが去っていった時、花は城下に出ていく。


傷ついた家屋かおくや、営業できていない店などを見ている花の眼は寂しそうだった。


(ここも、こんなに……あっ、家はどうだろう?)

花は、周辺を警戒しながら自宅の様子を見に行くと



「ほっ……まだ大丈夫だ。 少し家の中にいよう……」

花は久しぶりに自宅に入る。


(ほんの少しの間だったけど、懐かしく感じるな……)

花は思い出にふけいっていた。  



そして城に戻る最中、晋太郎や鈴も城下に出ているのを見つける。

「花さん……」 晋太郎が呼ぶと


「晋太郎さん、鈴ちゃんまで……」


「晋太郎さんの家や、鈴ちゃんの家は無事?」 花は倒壊とうかいしている家屋を見ながら話した。


「これから見にいくのです」 鈴が答えると

「じゃ、危ないから一緒に行きましょう」

晋太郎の提案で、三人で行動することにした。



「鈴ちゃんの家は大丈夫ね。 じゃ、晋太郎さんの家に行きましょう」 花の言葉で三人は晋太郎の家に向かった。



「―えっ?」 三人は驚いた。

晋太郎の自宅は半壊していた。 武家の屋敷だから狙われたのだろうか、見事に壊れていた。



「お母さま……逃げてくれて良かった……」 花は安堵する。

必死に説得した甲斐があったと思った。



「花さん、母を救ってくれて本当にありがとう」 晋太郎は、花に心から感謝していると



そこに一人の中年の男性が晋太郎の家の前を歩いてくる。


「あの……危ないのでお逃げください」 花が中年の男性に話しかけると



「おぉ……ありがとう。 この会津が心配になって、避難先から戻ってきたんだ。 それで、この悲惨な状態を写真に残しておこうかと思ってね……」


中年の男性は写真機を持っていた。 そして様変わりした会津の町を写真で撮っていたと言う。



「そうだ、お前さんたちの写真も撮らせてくれ。 こんな若い兵士は珍しいからね……」 中年男性は、三人の写真を交互に撮っていく。


「また会えたら、この写真を渡すよ。 それまで元気でな」

中年男性は手を挙げ去って行った。



「初めて写真と言うものを撮ったね……」 三人は初めての経験に楽しかったようだ。


「さぁ 城に戻ろう……」 晋太郎の声に三人は城に戻っていった。




城に戻った三人は、城内の空気の異変に気づくと

「どうしました?」 晋太郎は、中野に聞く。


「なかなか戦況が良くなく、上の方で揉めているんだ…」

中野は、城の未来を心配していた。


「……」 花と晋太郎は返事が出来ずにいる。

誰もが心配になっているのが分かる状況だからだ。



晋太郎は白虎隊の隊長に話をしに行く。


「ここは白虎隊で仕掛けましょう。 道を切り開きましょう……」

晋太郎は隊長に提案をすると、


「しかし、鉄砲の弾も残り少ない……上からの指示が出るまで少し待たれよ」隊長は晋太郎の言葉で流されることはなかった。



花は鉄砲の手入れ、弾の残数などを数えて出撃の準備を始める。


「花さん?」 鈴が花の戦準備に驚いている。


「まだ早いです……また一人で行くつもりですか?」

鈴は花の様子を察知し、必死に止めようとしていたが



「鈴ちゃん、ごめんね……」 花は、鈴へ感謝と謝罪が混ざったような言葉を告げ、城を出て行こうとした。



「ならば、俺も行こうかの……」 花に続き、白虎隊の小田が花の後に立ち上がる。


「ならば俺も 俺も……」 こうして白虎隊の精鋭たちが次々と立ち上がった。



「みんな……」 花は少しだけ笑顔になっていた。


「花さんには恩があるからな……」 小田は、屈託のない笑顔を花に見せる。


そして花と白虎隊は古民家に向かい、弾や武器の補充をすると

「こんな場所にあったのか……花さん、どうして此処を知っていたんだ?」

小田は目を丸くして花に聞いた。



「これもえんですね……この縁に感謝しています」 花はこの言葉だけ言う。


「これだけの人数が集まり、同じ目的の為に戦う……本当に良い縁だ。 時の流れを止めて、このままでいたいものだ……」 小田は感慨深く言った。



花と白虎隊は新政府軍が待機している場所に向かうと、

「いた……」 花はゆっくりと新政府軍に近づいていく。



『バン バン』 と、晴天の空に銃声が響く。


花の銃声を先頭に、次々と白虎隊の銃声が追従ついじゅうする。

そして新政府軍も反撃に出る。



この銃撃戦により、白虎隊や新政府軍にも死傷者が出ている。


花と白虎隊は、負傷者を連れて撤退し、怪我人の手当を行った。



そして膠着こうちゃく状態じょうたいのまま数日が経った。



「このままですと、兵糧ひょうろうも底を尽きますぞ……」

だんだんと籠城戦ろうじょうせんもろさが出てきた。



こうして会津軍の士気は低下していく。



翌朝、新政府軍の攻撃が始まる。

そして攻撃は更に強まり、会津にとって大打撃となっていく。



「―もちません……行きます」 花と白虎隊は城を飛び出し、城下での決戦に打って出た。


しかし、この作戦も想定内の新政府軍は城下に鉄砲隊を配置していた。


『バン バン……』

「うわー」 白虎隊の他、数名の武士も銃弾を浴びることとなる。



さらに新政府軍は新兵器、連射銃 ガトリング砲を使い、会津の兵を撃ってきた。



「逃げて!」 花の叫び声が響く。


花の声を聴いた白虎隊の隊長は、隊を率いて飯盛山に避難した。


「よし、ここで待とう……」

隊長は避難した白虎隊の隊士に言い、自身でも傷を癒しながら花の到着を待った。



花は晋太郎と一緒に戦っていた。


そして、 「はぁ はぁ……」 花も晋太郎も疲労困憊になってきている。


「晋太郎さん、私に構わずに逃げて……」


「ダメですよ! 僕には出来ません。 母を逃がしてくれた恩もあります……」 晋太郎は拒否をする。


「一度、花さんの家に行きませんか?」 晋太郎は、周囲に目を配りながら話す。


「えっ? 何で? まさか……したいとか……?」 この期に及んでも、花は花であった。



花の言葉を無視して、二人は花の自宅に向かった。



「まだ家は無事でしたね……」

晋太郎はホッとした様子で、花と自宅の中に身を潜めている。


家の外には銃声や大砲の音が響いていた。



「花さん、母を逃がしてくれて ありがとうございました」

晋太郎は改めて花に感謝を伝えると


「いえいえ、晋太郎さんの家が壊されていたのを見た時、逃がせて本当に良かったです」 花は首を振りながら答えた。



「そこで、花さん……」 晋太郎は言葉に詰まった

「な、なに?……」 花はドキッとする。



「あの……戦争が終わって、その後……」 晋太郎が照れながら下を向いた。


「はい……」 (も、もしかして……♡) 花の顔が真っ赤になり、晋太郎を見つめる。



「戦争が終わったら、僕と……」 晋太郎は唾をのみ込んだ。

「はい♡」 (確定―♡ さあ、来い、濃い、恋♡)



『ドカーン ドカーン』  近くで大砲が落ちた音がして、花の家が激しく揺れる。


「うわっ  キャッ」 二人は衝撃に驚く。



「花さん、大丈夫ですか?」 晋太郎は慌てて花を見ると、


「大丈夫です。 それで続きを……」

花は大砲の衝撃よりも、晋太郎の衝撃の言葉を待っていた。



しかし晋太郎は立ち上がり、外の様子を見ている。


「あの……晋太郎さん……?」

花は外の様子を見ている晋太郎を呼んだが、晋太郎は外を見たままだった。



(誰だ? このタイミングで大砲を撃った馬鹿は……見つけたら撃ってやる……) 花は怒っていた。


実は会津軍の大砲の衝撃であったが、花は知らないままである。



「花さん、ここも危ないかもしれない……行きましょう!」

晋太郎は衝撃に危ないと察したため、花を起こして家を出た。


「お~ん……」 花は泣いていた。



なんとか逃げ切った二人は、次の攻撃の話しになっていた。


しかし、花は先程の晋太郎の言葉を聞きたくてウズウズしている。



「花さん、もしかして?」 晋太郎が花の顔を覗き込むと

「えっ?」 花の顔が、また赤くなりモジモジしだす。



「もしかして、花さん 小用ですか……?」 晋太郎は真顔で話した。


「ちゃうわい!」 花は晋太郎に怒鳴った。



(こんな状況なのに、ドキドキした~ 時間が止まって欲しかった~)


戦場の花は、こんな時でも花のままであった。








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