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第二十四話  鶴ヶ城防衛戦(上)

第二十四話    鶴ヶつるがじょう防衛戦ぼうえいせん(上)



遠くまで逃げた花は一息ついている。


「はぁ はぁ……ぜぃぜぃ……」

「まさか、こんな豪快に外すとは……」 花は深い反省をしていた。



一九六八年 六月 新政府軍は会津に侵攻しんこうする。


会津藩主、松平容保は迎え撃つことを決断。 この会津で決戦の幕が切っておとされた。


しかし新政府軍は最新式の武器を手に入れ、会津との力の差は明白であった。



花は、町娘の恰好で町の様子を探っていた。


「まず、城と外が自由に出入りできる場所を探さなくては……」

花は敵軍の少ない場所、そして城に通ずる場所を探している。


(この道はどうかな?) 花は裏道を抜け、角から顔を出して様子を見ると


(ここも敵軍ばかりか……包囲されているな……)



その頃、白虎隊の隊士は城内で作戦の指示を受けていた。


「城下で敵の攻撃を抑える……? 出来るのか?」

隊士も少し不安になっていた。


しかし、作戦とあれば仕方がない。 白虎隊の隊士は城下に出ようとしたが、早々と新政府軍が城下に侵攻しているのをの当たりにする。



「城から出れない……?」 早くも焦りに色が出てきたのである。



城の出入り口は数か所あるが、いずれも敵軍が付近に居る為、城から出られない状況に中野や婦人隊が現れた。


「まだまだ子供だな。 私たちに任せろ!」

中野はそう言って木のたてを用意する。



「鉄砲隊、前へ!」 中野の号令により、鉄砲隊が前に出て敵軍に発射した。


「今だ、行け!」 鉄砲隊が引き付けている間に、中野が声を出して白虎隊は城の外に出て行く。



白虎隊は城の裏手に回り、攻撃の場所を探す為に奔走ほんそうしていく。


ただ、新政府軍の人数も増してきており、段々と白虎隊が構えられる場所が見つからない。


「何処で戦えば良いのか……」


やはり戦などの経験もとぼしく、まだ少年である。

そう簡単に見つかるものではなかった。


なかなか戦える場所が見つからない白虎隊は城に戻り、敵軍の状況などの報告を行った。



そして、城門の手前に新政府軍が押し寄せ、会津藩は完全に劣勢となっていき



「こんなにも早くに……」 城の者も驚いていた。


上層部は頭を悩ませていた。

籠城ろうじょうしかないのか……」 囲まれた以上、他に作戦も見当たらない。


時間が経つにつれ、作戦の選択肢が狭くなっていく。



花は、まだ城に入れる場所を探していた。

「この町娘の恰好では動きづらいし着替えようかな……よし、家の方は大丈夫か見てみよう」 花は、一度自宅へ戻ってみると



「ほっ! ここは大丈夫か……」 花は自宅に入り着替えと武器を用意する。


「残るは……よし……」 花が脇差に手を掛けて 



『ザクッ……』



花は手荷物いっぱいで城に辿り着いた。

「あれ? ここ誰もいない……」 偶然にも裏からの侵入口に新政府軍がいなかった。  花は急いで城に入ろうとした時であった。



『ドーン  ドーン』 と音がした。


「はっ!? これは大砲?」 城に振動しんどうが響く。


「これ……危ないわ……」 花は城の出入り口に敵軍が居ない理由が分かった。

 

(たまたま人が居なかった訳じゃなく、大砲の砲撃が来るから避難していたんだ……これは、時間が無い……) 花は急いで戦闘の準備をし、城の中の階段を駆け上がっていく。



『ドーン ドーン』  砲撃が続き、城が揺れる。



「どうにかならんかー 鉄砲を大砲に撃ちこめー」

城からは必死の抵抗を行っていたが、走って向かっている花には分からなかった。


その時、大砲の一撃が会津の鉄砲隊に向かってきた。


「ギャー」 会津の兵士の叫び声が聞こえた。 それも沢山の悲鳴だ。



そして この一撃を皮切りに城に届く砲弾も増えてくる。

「このままじゃ……」 晋太郎は悔しさを口にした。




「まだ負けた訳ではありませんよ」


大人しくなった会津の兵に声が届く。



「あの『誠』の羽織は新選組の……」


会津の兵が声を出す。 中には京で新選組と共闘した兵には見覚えがあったのだ。 


「あんな高い所から……さすが新選組」 会津軍の士気が上がっていく。



(ちょっと階段を上りすぎたみたいだ……)


花は一気に階段を上りすぎて、少し上から顔を覗かせた結果がキマって見えていたようだ。


花は新選組の羽織を着ていた。 髪をバッサリ切り、男前になって城に戻ってきたのだ。

花の長い髪は肩上まで真っすぐに切っていた。



「あなたは新選組の……?」会津の兵士が問いかける。


「……?」

(さっきから新選組って……なにそれ?) 花は、新選組を知らなかった。



そして、少し上の屋根から飛び降りる。



「こんど~~~です!」 


その口調は昭和の俳優、近藤正臣のようであった。 (ただ時代が幕末なので誰も知らない……)


少し時間が経ち、誰も様変さまがわりした花に気づく者は居なかったが、


「―あれ? 花さん?」 



ここで最初に気づいたのは晋太郎であった。


「ふふふっ♡」 花は、晋太郎が気づいてくれてご機嫌になっていく。



「さぁ、反撃です!」 花の声により会津が反撃にでる。


花は敵軍の大砲を撃っている兵士を狙い、鉄砲を撃つ。



ふと、横を見ると 同じように鉄砲を撃っている人に気づいた。


(あれ? 女の人……?)

此処で同じように鉄砲を撃っている女性を見た。



その女性こそ、後に “幕末のジャンヌ・ダルク ” とも呼ばれた山本八重である。



その八重も、花と同じく髪を切って男性のような姿で鉄砲を撃っていた。


(カッコイイな……) 花は、初めて女性にときめいたのであった。



会津藩は “二人の男装の麗人 ” によって奮闘していく。


「とにかく白虎隊を場外まで誘導させないと……」

花は覚悟を決めて、白虎隊を城外まで引っ張っていく作戦にでる。



花は自身が入ってきた城の出入り口を目指して走った。

また、白虎隊も同じように出入り口を目指す。



そして城外へ出たとき、敵兵が立っていたが、 『バン バン』 と銃声を響かせる。 花が敵兵に向けて発砲し倒していったのだ。



「行って!」 花の声と同時に、白虎隊の鉄砲部隊は走って敵軍に向かっていく。



「よし、次は……」 花の足が次へ向かう時であった。


「よし、いくぞ!」 と、声を掛けてきた女性の声がする。


花が振り返ると、中野を含めた婦人隊であった。



「なんで……?」 花は驚いていた。

銃弾が飛び交う中で、薙刀が何の役に立つだろうかと。



「―隊長、城にお戻りください……危ないですから」 花は中野に言ったが、

「お前ばかりに任せられん」 中野が粋な言葉を返してきた。



「とりあえず此処を離れましょう……」 花は、婦人隊と白虎隊の鉄砲を持っていない兵を連れて安全な場所に避難ひなんした。


「この中で鉄砲を撃てる人は居ますか?」 花は兵士たちにたずねるが、誰も手を挙げなかった。


「……」 (何しにきたんだ……) 花は苦虫にがむしつぶしたような顔になる。


「仕方ありません。 行きましょう……」 花は、遠回りしながら領地南部の街道に向かった。


「ここで敵軍の後方を叩きます。 増兵を防ぎます」


以前に花は、この街道に穴を掘り大砲を防いでいた。

そこには横たわる大砲が残っていた。



「また、穴を掘ればいいか?」 中野は花に指示を仰ぐ。


「いえ、道具がありません。 取りに戻るのは危険です」


「じゃ、どうすれば…」 中野は肩を落とした。



殲滅せんめつは出来ませんが、城下に来る時間を遅らせることはできます」

花は出来ることを考え、婦人隊や白虎隊に伝えた。


そうして花に指揮のもと、街道に浅い くぼみを作り、大量に木の枝を敷き詰めた。

「確かに 落とし穴に見えるな……進むには躊躇ちゅうちょしそうだ」

中野は、この策に感嘆かんたんとしていた。


「ただしバレます! ただの時間稼ぎですから……」 

「ですので、ここで隠れて鉄砲を持っていない敵軍なら奇襲きしゅうを掛けてください」

花が的確に指示を出す。



「さあ、晋太郎さん行きましょう」 そう言って花は晋太郎に手を差し伸べたが、

「僕が? ここで、みんなと一緒に戦うんじゃないの?」

晋太郎は不思議そうな顔をした。



花は大きく息を吸い


「アナタガ イタッテ ヤクニタタナイカラ……」

花はおかしな発音で答える。


(そんな片言で誤魔化した言い方しなくても……)



「とにかく行きますよ」 花は晋太郎の手を引き、次の場所に向かった。


そして、花が晋太郎を連れてきたのは町はずれの古民家である。


晋太郎には、初めての場所で戸惑っている。



「晋太郎さん、ここで見張っていてください。 中を見ず、とにかく敵軍が来たら声を出して私に知らせてください!」


花は晋太郎に言い残し、家の中に入って行った。



花は古民家の中を調べていた。


(置手紙か何かあるはず……何か力を……)

花の行動は、わらにもすがる思いであった。



棚にある引き出しを全て開け、物色ぶっしょくしていた時であった。


(何しているの? 晋太郎さん)

晋太郎が外を見て、警戒している姿が見えた。


(晋太郎さん? 何をしているの? まさか?)

花は慌てて外に出て、晋太郎の所に駆け付ける。



「晋太郎さん、どうしたの? って、えっ?」 花は驚いた。

晋太郎の元に古民家の二人組の男が来て睨んでいた。



晋太郎の背中越しからヒョコと花が顔をだす。



「こんにちは。 会津に残っていたのですね♪」

花は明るい口調で二人組に話しかけた。


二人組は驚いたように花を見つめる。


「なんだ? 花か。 白河で息絶えたんじゃなかったのか?」

二人組の村田が驚いた様子に、晋太郎も驚いていた。



(この人相の悪い大人と花さんは知り合いなの?) 

晋太郎は花の交流の凄さに驚きを隠せなかった。



「もしかして斎藤さんと一緒に死んだと思っていたわけ? 私は斎藤さんにたくされたのです。 この羽織……斎藤さんのですよ」

花は、新撰組の羽織の内側に書いてある斎藤の名前の部分を二人組に見せる。



「やはり斎藤は死んだのか……残念だ……土方副長と一緒で、少なからず交流があったからな……」 木田は斎藤の死をしんだ。



ここでの晋太郎は “服に付いたホコリ ” ほど小さな存在であり、無言であった。



花は晋太郎の存在に気づき、「あっ、この方は工藤晋太郎さんと言って……」


「花の好きな男だろ? 白虎隊か? 強いのか?」

村田の言葉に花は言葉を詰まらせた。 


「うぅ……好きな人なんですが……その……弱くて……」


花の顔がシュンとした。



晋太郎は苦笑いをしてから、肩を落としていく。








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