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第二十二話  二輪の花

第二十二話    二輪にりんの花



「夜明けだ……いくぞ」

華の号令のもと、山賊たちと花は白河、小峰城こみねじょうを目指す。



遠くに見える黒煙が次第に大きく見え、

「さて、どう行くか……」 華は、小高い山の上から戦況を見ていた。



「ほう……」 花の眼がキラキラする。

「―花、どうした?」 華が聞いた。



「あれ、欲しくないですか?」 花は遠くに見える大砲を欲しそうにしている。



新政府軍の最前列に大砲が二機あり、その大砲は小峰城に向けて発射していた。


「確かに欲しいけどよ……」 



「フンフンフン♪」 花は鼻歌を鳴らしながら、捕虜として同行させていた新政府軍の男たちの服を脱がし始めた。



(どうする気だ?) 山賊たちは黙って花の行動を見ていた。



花は脱がし終えると山賊たちをジロジロと見渡し、

「アナタでいきましょう♪」

花は山賊に一人を指名し、新政府軍の服に着替えさせた。



「みなさん、コッチを見ないで! コッチ見たら撃つからね!」


花は山賊たちに言って、着替え始めた。



「これでよし!」 花は髪を服の中に入れ、男のような姿に変身した。

そして、もう一人の着替えた山賊に耳打ちをする。



「ゴニョゴニョ……」 花の耳打ちに着替えた山賊は頷き、

「行ってくる♪」 花と山賊の一人は、新政府軍の攻撃隊の中に入っていった。



その二人の姿が遠くに見えていったとき

かしら……大丈夫なんですかね……?」 山賊の一人が、華に話しかけると



「大丈夫なんだろう……多分……」 華も心配そうな顔をしていた。



新政府軍の最前列の大砲に辿り着いた花たちは、


「交代します。 弾を入れて離れてください」 と言い、新政府軍の人たちを離れさせると、大砲を回転させ


「いくぞ!」 との掛け声の瞬間に、もう1機の大砲に向けて発射した。


「よしっ! いったれ~♪」 花の声が軽やかに響く。



『ドンッ』 と音と共に、もう1機の大砲が爆発し粉々になった。


「むふっ、命中♡  逃げろ~」 花は1機の大砲を粉々にし、走って城に向かって逃げだした。



(ポカーン) 山賊たちは放心ほうしん状態じょうたいになった。


「あれは、何が起きたんだ?」

小峰城に居た斎藤と多田もポカーンとなっていた。


遠くから見れば仲間割れのようである。



そして銃弾の雨が花に襲い掛かった。 

「―キャッ」 銃弾の1つが花の帽子をかすめ、脱げてしまう。



「―あれは? えっ? 花さん?」 多田が花の存在に気づいた。



「新政府軍の鉄砲隊に撃て! あの二人を援護して救出するのだ!」

多田が叫ぶと小峰城の援護が始まり、花は逃げ出せた。



救われた花の元に、斎藤と多田が駆け寄った。



「どうして、こんな無茶な真似を……」 斎藤はハラハラが止まらなかった。


「一機でも潰せばと思ってね~ ほら男性に見えるでしょ♪」

花は、新政府軍の服を斎藤に見せつけると



斎藤は花の胸あたりを見つめ、「はい……」 と返事をした。


「ムカーーッ」


花は刀を抜き、斎藤に斬りかかろうとしたが、多田が後ろから押さえ込んだ。

「まぁ まぁ……」 多田は苦笑いをする。



後に新政府軍は後続こうぞくの部隊が次々と押し寄せ、小峰城は劣勢となっていく。


「ここに会津の者はいるか?」 斎藤の声が響いた。


「はい、私たちです」 会津の兵が数名、斎藤の元に駆け寄ると



「今からお前たちはこの城を出て、会津に戻れ! 近藤様を守り、会津にお届けしろ!」 斎藤は、会津の兵に大声で指揮をする。



「さぁ、近藤様 ここでお別れになります。 会津を守ってください……」


斎藤は笑顔で花に言うと



「―出来る訳ないでしょう! 私も戦います!」

花は、斎藤の言葉に反対していた。


「いいえ! 貴女は会津で戦ってください」

斎藤は遠くにある会津の方向へ指さす。



その時、「やっとは入れたぜ~」 華が小峰城に辿り着いた。



「―華さん、よくご無事で!」 花は笑顔で華に抱き着いた。


「そんな喜んでいる場合でもないぜ。 花、案内するから付いてきな!」

華は、花の腕を引っ張る。



花の警護には華と斎藤、そして会津の兵が付いた。


華は辺りを警戒けいかいしながら花を誘導するが、

「いたぞ!」 新政府軍も次々と城にまで押し寄せてきた。



華の鉄砲で後方から発射すると、斎藤が斬りに掛かる。

花も後方から鉄砲を撃っていた。



「―斎藤さんが危ない!」 花は、斎藤の護衛に向かったが


その時に『バンッ』 と、音がして斎藤が崩れ落ちた。



「この野郎!」 

花は新政府軍に向けて発砲し、負傷した斎藤を守る為に鉄砲を撃った。 

華も前に出て、花と共に新政府軍を撃つ。



ようやく敵を倒した花たちは、斎藤の元に駆け寄った。



「大丈夫ですか?」 花は涙を流し、斎藤を抱きかかえると


「花さん……私はもう動けません。 この先はどうか……」

斎藤は息が荒れていた。


「斎藤さん、しっかりして!」 花の涙が斎藤の頬を濡らす。



「花さん、最後の頼みになります。 この羽織を会津に連れていってもらえますか?」 


斎藤は最後の力を出して羽織を脱ぎ、花に渡す。



「斎藤さん……」 花は泣いた。 そして斎藤は静かに目を閉じた。



「花! 時間がない。 いくぞ!」

華の言葉により、我を取り戻した花は駆け出す。



走った花と華は、人声や物音が聞こえなくなる所まで逃げた。


「もう大丈夫だな……」 華は大きく息を吐いた。



「じゃ、私は城に戻るからな。 達者でな……」

華の笑顔が眩しく見えていた。



「どうして? 一緒に会津に行きましょうよ!」

花は必死に会津に行くことを勧めたが、華は拒む。



「まだ仲間が城に残っているんだぜ。 頭が逃げたんじゃ、恥ずかしいよ……」

華の言葉は最後までかしらであった。



「これ……お前に会えて良かったぜ」

華は花を抱きしめて、離れ際に白い花を一輪 渡したのだった。



「じゃ……な……」 華は走って城に戻っていった。



花は会津の兵と会津に向けて歩きだす。



そして華から手渡された白い花を見つめると 

「クチナシの花……」


(クチナシ……死人に口なし……) きっと華の最後の言葉なのだろうと花は理解した。 そして、花は大声で泣いた。



花は道端に咲いているクチナシの花を一輪取り、二輪のクチナシを持って歩いていく。


そして、川を見つけ休憩をすると、



「華さん……さよなら……」



花は小さい声でクチナシの花を川に流す。

そして花の涙は、川の水と共に静かに流れていった。



その後、花と会津の兵は歩いて歩きまくった。

新政府軍に追いつかれないように……



「―痛っ」 花が足を押さえる。 足を捻ったようだ。


「―大丈夫ですか? 動かさないでくだい」 会津の兵は、花の足を水で冷やし、休憩を取らせた。



会津の兵は、手ぬぐいを濡らし、足を縛って固定をすると

「ありがとうございます。 もう大丈夫です!」 そう言って、花は歩き出した。



そして数日が経ち……



「おーい」 遠くから声が聞こえてきた。



花と会津の兵は、声の先を見つめる。


そして声が段々と近くになってきた時、花が反応した。

「―この声は晋太郎さん♡」


花は痛々しい足を前に出し、声の方へ向かっていく。 



やはり晋太郎であった。



「おかえりなさい! ここは会津領です。 もう安心ですよ」

晋太郎の言葉に会津の兵は歓喜した。 もちろん花も笑顔になった。



晋太郎は花に肩を貸して、会津に戻っていった。



「ただいま戻りました……」 晋太郎の肩に寄りかかり、花は小さな声で自宅に戻った。


「おかえりなさい」 いつも通り、雪は優しく迎えてくれたのだが、花が足を引きずっている姿が目に入ると



「花、足はどうしたの?」 母親は心配そうに聞く。


「捻ったみたいなの……冷やしてきたから大丈夫よ」 花は気丈に振舞った。



「工藤様、花の部屋までお願いできますか? 布団で横にしてやってください」 雪は晋太郎に、花の部屋までの介助を頼んだ。



「さっ、花さん横になってください」 晋太郎が、花を横にすると


「ありがとうございます、晋太郎さん……」


「花さん、荷物も部屋に運びますね」 晋太郎は、部屋を出て荷物を取りに外に出た。 


(拳銃に鉄砲に刀……町娘の花さんがどうして……)

晋太郎の心は複雑であった。



「花さん、荷物を持ってきました。 こちらに置いておきますね……」


晋太郎が荷物を運び終え、笑顔で花に話しかけると……

「すー すー すー」 花は寝息をたてていた。 



(疲れたよね……本当にお疲れ様でした。 おやすみなさい)

晋太郎は心から花をねぎらい、静かに部屋を後にした。




そして、朝。


花は飛び起きるかのように体を起こすと

「―いたっ」 足の痛みを思い出す。



痛みで意識がハッキリした花は、大事なことを思い出した。



「しまった……晋太郎さんが布団まで来てくれたのに、中に引きずり込むのを忘れてた……」 こうして、いつもの花の朝を迎えたのであった。











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