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第二十一話  ならぬことは ならぬことです

第二十一話   ならぬことは ならぬことです



新政府軍は鳥羽伏見の戦いで勝利し、幕府軍は江戸に撤退した。

さらに勝海舟の働きかけもあり、江戸も開城となる。


敗れた会津藩は急ぎ会津に戻り、軍の立て直しを図っていくこととなる。




そして春になり、会津では田植えの季節になっていた。

晋太郎は十七歳、花は十九歳となり、少し大人になったかと言えば……


「晋太郎さん、待ちなさい! また女子と話していたな!」

花は晋太郎を走って捕まえようとしている。


「違うから~」 と、晋太郎は叫びながら逃げていたのだ。

……特に大人になった様子はなかった。



五月、新政府軍は宇都宮まで攻撃を進めていて、その行軍の先は白河になる。


会津藩は目と鼻の先までとなるため、演習も厳しさを増している。

もちろん婦人隊にも強い稽古がされていた。




「本当に来るんだよね……白河、大丈夫かな……」


鈴のつぶやきに中野が反応する。



「少し前に行った白河が戦地となると心配になるな……佐藤 華だっけ? アイツも戦うのかな?」

中野は、城に入らず自力で戦う華の事を心配していた。



「……」 花は その会話には入らなかった。



夜になり、花は古民家の二人組の所に訪れる。



「以前に文で白河に武器の輸送をお願いしていたのですが、どうなりました?」

花は白河に駐在して、先に会津に戻った鈴に依頼した文の事を話すと



「確かに文は受け取った。 ただ勝手に武器は送れないんだ。 金の事、白木様の許可も必要になってな……」 二人組の村田は、花に申し訳なさげに話す。



「私、これから白河に行きます。 少しで良いので武器になるものを下さい。 あの……今、小遣いがこれしかなくて……」


花が袋から小遣い程度の金を全て出して、二人組に渡すと



「えっ? これじゃ弾も買えないぜ……」 村田は唖然としていた。


(あぁ……これが現実なんだよな……) 花は肩を落とすと



「ただよ、白木様が “花に何かあった時は手を貸してやれ” とも言われているんだよ……お前、白木様と、どんな仲なんだよ……?」

二人組の木田は呆れたよな、含み笑いのような顔で話した。



「お前、一人で行くのか?」

「はい、一人です」


花と二人組は話し合って、拳銃の弾や女の子でも扱える鉄砲を渡してもらった。



明け方、花は一人で白河に向かった。



家には置手紙を書いていた。


 “友人との約束がありますので白河に向かいます。 これは他言無用にてお願いいたします。 必ず戻ってきます ” 


と、母に書いた置手紙であった。



花は重い荷物を持ちながら白河に向かっていく。



歩くこと数日が経ち

(静かだな……まだ戦は始まってなさそうだ……)

花は安心して歩いていると、遠くから黒煙が見える。



(まさか……?) 花の足取りが早くなり、白河宿に到着すると


(城はまだ先、宿場はまだ安全かな?)

花は、宿場を用心しながら歩いて回る。



そこに、宿場の店主らしき男が立っていた。

「すみません。 こちらの方は安全ですか? 新政府の人は来ていないですか?」 花は店主に話しかける


 店主は首を横に振り

どうやら、まだ来てなく安全を聞いた。



安心した花は、宿場から離れた山賊の家に向かった。

(黒煙の方に向かうな……用心しないと……) 花は、鉄砲を用意して向かっていた。



そして山賊の家がある山に入り、

(なんだか前と違うな……あれ? 草が折れている……?)


花が周辺を見渡すと、広い範囲で草が折れているのを見つけた。



(この周辺には罠が沢山あるはず……把握している彼らが勝手に広範囲で歩くはずがない。 何かいるな……) 花は警戒心を高めて前に進む。



そして山賊の家の手前まで来ると、花は隠れて家の様子を伺っている。



(いち、に、三人か……刀が二人の鉄砲が一人…… いけるか)

新政府軍は山賊の家の前に来て、中の様子を伺っている。

山賊は気づかずに家の中にいるようだ。



花はキョロキョロとして、周辺あたりに他の新政府軍が居ないかを確認していく。


その中で草むらの中の物が目に入る。


 「あれ? この紐は、まだ生きている……」

花は以前、山賊の家に来た時に侵入者が来ると音がする罠の紐を見つける。



花は鉄砲を取り出し、構えると


『ドンッ』 と音がして、新政府軍の鉄砲を持っていた者が倒れる。


花は、鉄砲を撃った瞬間に草むらの中にある紐を引っ張り、侵入者の知らせの罠を鳴らした。 『カランコロン……』


そして家の中から山賊が出てくると、


「―お前ら、長州の……―捕まえろ!」

山賊が叫び、新政府軍の残り二人はらえられた。



(ふぅ……) 花は息を吐いた後、山賊たちの前に姿を現した。


それに気づいた山賊の一人が、

「あんた……花さんか!? 助かったぜ!」 花を抱き寄せた。



花は、新政府軍三人が来ていたことや自身が白河に来た目的を話すと


「そうか……かしらが居なくて良かったぜ!」 山賊たちはホッとしていた。


「それで華さんは何処に?」 

「今、一人が走って呼びにいっているよ」 山賊の一人が言った。



 待つこと十分……

「花! 来てくれたのか!」 華が機嫌よく家に入ってきた。


「お久しぶりです……無事だったのですね」 花は笑顔で挨拶をする。



「あっ? でも顔に傷が……」 花が華の顔の傷を心配していると



「この傷を忘れたのか? お前が撃って傷になったやつ!」


華は笑い半分と、怒った感じ半分の表情でツッこんだ。 そして山賊たちは たまらず噴き出す。 



「そ、そんな事もあったかしら……そうそう! 華さんにコレを……」


花はそう言って、横に置いていた鉄砲を華の前に置くと



「会津から持って来たのか?」 華は驚いていた。

「はい。 二つ持ってきました。 一つは私が使いますので、一つは華さんに……」


花の優しさに華の心も撃たれたようであった。



そして白河の簡単な地図を書き、戦略を練り始める。



「……こうしていきましょう」 花は山賊たちに提案すると、

「わかった。 それで、あの坊やは? 来ていないのか?」


華の言う “坊や ” とは晋太郎のことである。


「はい。 私、一人で来ました。 晋太郎さん、足手まといなので……」

花は少し恥ずかしそうに言った。




            ●

会津では、晋太郎が花を探していた。


「鈴さん……花さん知りませんか?」

晋太郎は鈴に最近、花を見かけないことを伝えたが


「私も会っていないんです……何処にいるのか……」 鈴も探していたようだ。


「そうか……見つかったら僕に教えてください」

晋太郎は鈴に言い残して、別の場所に向かって走っていった。



「ごめんください」 晋太郎は、花の家に来ていた。


「あら、工藤様。 どうされました?」 雪は笑顔で晋太郎を迎えると



「あの……花さんは居ますか? 最近、見かけてなくて……」

晋太郎は心配して、雪に話すと



「ごめんなさいね~ 数日前から帰ってないのよね……」


花の母親は本当は知っているのだが、花の置手紙の通りにしていた。

そして晋太郎はトボトボと歩いて引き返していく。



時は夕暮れになり、晋太郎は城下を歩いていた。 

そこに鈴が歩み寄ってくると



「晋太郎さん、一緒に食事をしませんか?」 鈴が晋太郎に夕食を誘った。

頷く晋太郎は花の店に足を運んだのだった。


そして晋太郎と鈴は食事を注文して、料理が運ばれてきた。

雪に再度、花の居場所を聞いた。 


「お願いします。 教えてください……どうしても花さんを守りたいのです」晋太郎は雪に頭を下げると



困った雪は 「私は言えないの……」

と言い 背を向けたのだったが、振り向きざまに紙を落とした。


そして晋太郎は紙を拾い、内容を読むと



「―くっ……」 晋太郎は意を決したように立ち上がる。

「―ダメです!」 鈴が制止するが、

「―でもっ」 晋太郎は行こうとする。



鈴は大きく息を吸い、

「ならぬことは ならぬことなのです!」 と、大声で晋太郎に叫んだ。


晋太郎は目を丸くして鈴を見つめている。



「行って どうするつもりですか? 助けるのですか? 晋太郎さんが行っても、秒で負けて捕虜になるか斬られて終わりですよ。 邪魔になるだけです!」


鈴の言葉は、的確に晋太郎のプライドを真っぷたつに斬ってしまった。



晋太郎は立ち尽くしている。



さらに鈴は、 「いいですか? 晋太郎さんはハッキリ言って弱いです! 女子よりも弱いです! 刀術も下手だし、読みも悪いし…… ぶつぶつ……」


鈴の言葉は、晋太郎の心を四つにも、八つにも切り裂いていった。



「プッ ククッ……」 そして雪は笑いを堪え、肩を震わせていた。



「ですので、ならぬことは ならぬことなのです。 晋太郎さん、貴方の武器は隣で笑っていること……なのです。 だから花さんを信じて待っていましょう……」


鈴の言葉は晋太郎のみならず、雪の心まで撃ち抜いたのであった。



「鈴ちゃん……おばさん、泣けてきたわ~ はい! お団子、一本♪」

花の母親としての感謝だったようだ。




そして京では……


「幸太郎! しっかりしろ……」 晋太郎の父親が叫んでいた。



鳥羽伏見の戦いで晋太郎の兄、幸太郎が銃弾を浴びて瀕死ひんしの状態である。

「……」 その二人の姿を見つめる白木の姿もあった。


この戦いは、会津にとって大打撃となっていった。






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