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第十六話  晋太郎を取り戻せ

第十六話    晋太郎を取り戻せ



「晋太郎さん!(工藤様)」 色んな声が交じり合った言葉の中に、晋太郎がいた。



「貴様ら、会津藩と知っての狼藉ろうぜきか? この白虎隊の隊士、工藤晋太郎が相手つかまつる!」


晋太郎の登場に会津の兵がいた。 

とてもカッコイイ登場であり、もちろん花も鈴も見惚れてしまった。



「いざ参る!」


晋太郎は刀を抜き、山賊に向かっていったが、わずか数秒で山賊から刀を取り上げられ捕虜ほりょとなってしまった。



(弱い……弱すぎる……)


会津の人たちの心の声が、今にも聞こえそうな瞬間であった。 


花と鈴も開いた口が塞がらないほどの瞬殺しゅんさつのされ方であった。



「じゃ、この男を連れていく。 こいつの命は今後の交渉次第だ!」

そう言って、山賊が晋太郎を連れて去っていった。




ただ見つめるしか出来なかった会津の藩士は悔しがっていた。



(晋太郎さんは弱い……まごうことなく弱い……どうにかしないと……)


花は、晋太郎を救うことだけを考えている。



そして多田や婦人隊たちで作戦会議が行われた。



「まず、奴等ヤツラのアジトを探しだそう。 とにかく工藤様の身の安全が優先だ!」

作戦の指揮しきは中野、そして補佐ほさに多田が決まった。



「現在では手の打ちようがない。 単独行動は敵から狙われやすいので集団行動が必要になる。 まずは情報収集だ!」 多田が指示を出す。



数人が一組ひとくみで白河での情報収集のために町に出たが、一切な有力情報がなかった。



花のストレスはピークにきていた。

夜も眠れず、深夜にも外に出て探していたのだ。



「このままでは私の思考も変になってしまう……お風呂にでも入ってサッパリしよう……」


そう独り言を言いながら浴場に向かう。




(深夜だから誰も居ない。 ゆっくり入ろう……)

そうして花は、風呂に入っていた。  



しばらくして、脱衣所の方から 『ガサッ』 と音がする。



「―誰?」 花は慌てて声を出す。



そこには男性が立っていた。 



「うおぉぉぉー??」 花はつい声を上げてしまった。



男性は慌てて、「―も、申し訳ありません……」

そう言って後ろを向いて話し出す。



「私は新選組しんせんぐみ土方ひじかた様の使いで来ました。 斎藤さいとうと申します。 近藤 花様ですよね?」 男は後ろを向いたまま名乗ると



「はい、近藤です。 それが何か?」


花は首まで湯に入り、身体を隠しながら答えた。



「実は京の白木様より、会津のことを気にするように言われていて、今回の工藤様の誘拐について調べておりました……」


斎藤は、まだ後ろを向いたまま話を続けている。



「それで山賊のアジトですが……見つかりまして、ご報告にきたのです。 なかなか、お一人の時間を見つけられず、この場所に来てしまったのです。 お許しあれ!」


さらに斎藤は続ける。


「アジトを探し出すまでに数日を要してしまい、おそくなりましたがコレを……」


そう言って、斎藤は山賊の情報の紙を花に渡そうとした。



「―本当ですか!」 花は驚きのあまり、湯から立ち上がった。



「――あっ!?」 花と斎藤が同時に声を出した。


湯から立ち上がった花は、裸であった。


 『ザブンッ』 

花は慌てて湯の中にもぐった。



斎藤は紙を引っ込め後ろを向いたが、しっかりと見てしまった。



「すみません。 お見苦しいものを見せしてしまって……」


花の顔は真っ赤になって斎藤に謝った。



「先程は失礼しました……」 着替えを終えて、花は斎藤と話しをし始めた。



「……では、夜が明けたらアジトを包囲ほういしましょう」

花は、斎藤の応援に感謝していた。




           ●

「さあメシだ!」 山賊は晋太郎に食事を出していたが、とても質素しっそでわずかな量である。


(情けない……) 晋太郎は涙をこらえ食事を摂る。

 

晋太郎は少しの量の食事を終えると正座をし、自分の弱さを悔やんでいた。



少しの時間が経って、晋太郎の元に二人の山賊がやって来た。


「おい、喜べ。 明日はカシラに会えるぞ!」

そう言って、二人の山賊はニヤニヤしていた。 



「そうか、あの連中の中に頭と呼ばれている人は居なかったのか……僕は頭に会ったらどうされるのだろう……」 晋太郎の頭に不安がよぎった。



そして朝


「ほら朝飯だ!」 山賊は晋太郎に朝食を持ってきたが、相変わらずの粗末そまつな食事だった。 


それでも生きてゆく為に、晋太郎は我慢して食べはじめる。



その頃、会津の兵たちは晋太郎救出の為、宿場を出発していた。


山の方へ進み、道も険しくなっていく。



新選組の斎藤が足を止め、兵に止まれの合図を送ると、

兵は歩みを止めて斎藤を見た。



斎藤は口に手を当て『シーッ』の合図をした。



そこに斎藤は足元を指さす。 そこには、細い紐が横に張りめぐらされていた。



知らぬ者が来た場合、紐に触れてしまえば音がする。

そして、警戒けいかいするようになっているようだ。



(この先、罠があるかもしれないな……)

この紐を見て会津の兵たちも警戒する。



 「これは……?」 花が周辺を見渡す。


山の中は茂みである。 しかし、茂みの中には人が通ったような不自然に草は折れていて 道となっていた。


 (ここが通路か……)


会津の兵たちは折れた草を頼りに進んでいく。


そこに手ぬぐいらしき、切れた布があった。 

斎藤と多田が、布の付近を注意深く見渡す。



「これは罠……?」 多田は布の横から出ている紐を見つけた。



その紐は長く続いていて、何の罠があるのか探すのには、茂みの奥深くまで入る為に困難だった。



花は布を見つめていたが、布を手に取る。

「クンクン……んっ? クンカクンカ……」 深くにおいをぎだした。



花は集中する為か、全員から背を向け、しゃがみこんで匂いを嗅いだ。



しばらく時間が経ち、


「おい、花?」 中野が花に声を掛けた。



「―はい?」

花は我にかえり、振り向く。


その姿は、花が嗅いでいた布をくわえていた。



「―おい。 お前、何をしている?」 中野は、花の奇行に驚きの声を出すと



「はい。 間違いなく、晋太郎さんの手ぬぐいです!」

花はキリッとした顔で答えた。



「いや、そんなキリッとした顔で言われても……いやいや そうじゃなく、何で分かるんだ?」 中野は理解に困っていた。



「それは分かります。 許嫁ですから、将来の旦那様の匂いは分かります!」


これまた花はキリッとした顔で答えた。



「花さん、それは聞き捨てなりません! 私の方が晋太郎さんの嫁に相応しいと思います」


ここで、あまり会話に参加していなかった鈴が割って入ってくる。

さらに鈴は、


「匂いなんて犬でも出来ますわ。 もっと晋太郎さんの嫁に相応しいのは私なんです!」 そう言って、鈴は自身の胸を両手でアピールを始めた。



「ぐぬぬぬぬっ……」 花と鈴は、二人で威嚇いかくし合っていた。



当然ながら周囲は唖然としている。



すると、『ゴツン ゴツン』 と音がして


「今、することかっ??」 と、中野は花と鈴にゲンコツを落とした。



「き、気を取り直していきましょうか……」

斎藤が女性たちに声を掛けて前に進む。



「どうやら、あそこみたいだな!」 斎藤が少し先にある家を指さす。


その家は、まずまずの大きさで、周囲には沢山の紐が張り巡らせてあった。



「よし、ここは家を包囲して少しずつ片付けよう」


そして山賊のアジトを包囲したのだが、

そんな多田の言葉を無視して花は真っすぐに家に歩き出した。



「こ、こら花!」 中野は慌てて花を静止すると、



「何で止めるのです? 隊長?」

花は不思議そうに言ったが


「お前はパーかっ? 作戦を聞けよっ!」

中野もムキになって大声を上げた瞬間であった。



「誰だ?」 山賊の一人が慌てて外の様子を見に出てきた。



(あちゃ~ 見つかったかぁ……私が大声を出したばっかりに~)

中野は苦笑いになった。



「仕方ない。鉄砲、かまえ!」 多田の号令ごうれいが響く。



「ダメ! 鉄砲はダメ!」 突然、花が叫んだ。




「どうして?」 多田は驚き、花に聞いた。


「鉄砲隊は家の周りを囲んでます。 中の晋太郎さんも心配だし、弾が外れたら相打ちになります!」 花は、必死に多田に説明する。



(実戦も経験していないのに、瞬時に判断するとは……このむすめ……)


斎藤は花の判断の良さに感心している。



そうしている間に、家から山賊がゾロゾロと出てきた。



「仕方ない。 刀でいくぞ!」 多田は刀を抜き、構えた。


敵味方の全員が戦闘態勢に入ったとき、後方に居た会津の兵の叫び声がした。



「ギャー」 全員が声の方向へ振り向いた。


そこに、沢山の山賊が現れたのだ。



「ちっ、分が悪くなった……」 斎藤が呟く。



すると、後方から現れた山賊たちはジリジリと間を詰めて立ち止まった。



少しの時間 睨み合いが続いた時、『バンッ』 と音がした。


会津兵の鉄砲が暴発ぼうはつしたようだ。 この音を皮切りに山賊と会津の兵が動いた瞬間であった……



「待て!」 と、高い声が響いた。 そして山賊と会津の兵は止まった。



後方の山賊たちの間から、綺麗な女性が出てきた。

全員が女性に目を向ける。



「私は佐藤さとう はなだ。このカシラをやっている。 お前たちは何者だ?」


この山賊たちの頭は女性であった。



見た目は花に似て、スラッとした体形に少し地味目な服ではあるが、なんとも品があるようにも見える美しい容姿であった。



「それで、お前たちは何者なのだ?」 華は長いキセルを持って火をつけた。









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